女子寮生活は難儀です   作:as☆know

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政治と宗教と野球の話はするな

 画質が昭和かと思えるような画面からの横から、金属がきしむような音をさせながら真っ白な白球が一直線に飛んでくる。

 肩口から最短距離で走らせたバットで捉えた打球は射出口の真上に綺麗に飛んでいく。耳に残る金属バットで軟式球を捉えた独特の若干鈍い音が心地いい。

 振り抜いた右手でしっかりと捉えた感触を確かめながら、もう一度軽いルーティンに入る。

 

 

「っし」

 

 

 ホームベースバットでトン、そのままバットを軽く相手に向けてから、バットを胸前くらいの位置で軽く構える。

 左ひじと右足でタイミングを取りながら、プロ野球選手のシルエットに合わせて飛んでくる140㎞/hのたまーに曲がる真っすぐを、1・2の3で最後のボールもしっかりとジャストミート。セカンドの頭超えていくって感じ。

 バッセンのナチュラルシュートやナチュラル真っスラマジで鬼。絶対に打てない自信がある。

 

 まぁそれでもバッセンの140㎞/hを7割くらい打てればまだまだ現役だと思うよね。今からでも野球部いけるんじゃね? ってなるよね。もう現役じゃないし、死んでも野球部なんか入りたくないけど。

 

 

「君、ポジションはどこだね?」

「キャッチャーです」

「ふぅむ。君、キャッツに来ないか? 今なら大〇に次ぐ正捕手になれるよ!」

「フルシーズンきついんで嫌です」

 

 

 野球やってたのも昔々のそのまた昔の話だからね。小学校の時だから。元カノが小学校の時にいたからおれ彼女いない歴はゼロじゃないって言うようなもんだから。あんなもん実質ノーカンだから。

 

 

「ところで誰ですぅ? あなたぁ?」

「あれ、一回オチの時に会わなかったっけ?」

「オチとか言わないで」

 

 

 確かに事実だけど、あれがオチのシーンだったのは事実だけど、そんなこと言ったらなんかそれっぽくなっちゃうでしょ!

 

 居酒屋の暖簾をくぐるようなノリで後ろにある緑色のネットをよけて打席から外れると、後ろにはドヤ顔の滅茶苦茶顔が良い女の人が。童顔だけど多分年上。顔の感じが大人っぽい、童顔だけど。

 

 姿恰好が特徴的というわけではないのだが、一番に目立つのは黒の下地に見慣れすぎているオレンジ色に染まった大きく猫の耳が生えたCのようなGとYが合わさったようなマークのついた帽子。

 この帽子をかぶっているだけで、あぁこの人は私服でも野球の帽子をかぶってるやべー人なのかなと思われる最強の兵器だ。たまに私服でユニ着てる人いるけど、あれどういう思考でやってんだろ。野球観戦の帰りなのか?

 

 

「じゃあ定型文みたいな自己紹介する?」

「あんた良く知らんけど畜生だろ」

「そんなことないよー!」

「今年はヤマヤスとか大〇良とか大〇とかがFA権取得すると思うんだけど、どう思う?」

「ヤマヤスは目立ちたがり屋なら横浜よりも優勝できるキャッツの方が良いでしょ。大瀬〇は〇竹みたいに中継ぎに落ちそうだよねー、今年落ちてるし。〇田はハムで遊んできたしそろそろ戻ってきてもいいと思うよ、出番あるか知らないけど」

「本物じゃねぇか」

 

 

 オイオイオイオイ、ここまで模範的なキャカス初めて見たぞ。しかも何一つ悪気のなさそうな顔で言うじゃん。これナチュラル畜生だろ。

 

 なにが一番何が質悪いって、この人の言ってること結構正論染みてるんだよ。本当にちゃんと野球を見てる人の意見だもん。オタクもびっくりのド正論だよ。俺も悔しいけどちょっと確かにって思う部分あったもん。これガチガチの野球ファンだもん。

 

 

「今だったら二軍で阿〇監督に鬼みたいにしごいてもらえるよ! 山〇くんと競争だね!」

「絶対勝てない」

「右投げ左打ちなところも〇部監督とも被るし! 森〇哉!」

「西武やんけ」

 

 

 こちとら小学校で辞めた身だぞ。高校大学社会人と野球一筋の人たちの中からも、もっと選りすぐりのヤベー奴らの中から、もっともっとヤベー奴を引き抜いた軍団がプロ野球選手になるんだから。

 プロなんてマジの化け物集団なんだから。アマチュアから見たら伊藤〇太の守備だって上手く見えるんだから。アレ、プロの打球がヤバすぎるだけなんだから。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

「はえー、姫川友紀って言うと聞いたことある気がするわ」

「野球やってたなら年末の特番とか見なかったの? ジョブ〇ューンとか。あたし出てたよ」

「すげーじゃん。なんでバッセンで不審者みたいなことを」

「あまりにも良いバッティングをしてたからついつい」

 

 

 胸元付近に投げ込まれるボールを、手元までしっかりと引き付けて捕球する。癖になってんだ。手元でしっかりとキャッチングして流されないようにするの。シンプルに癖をつけただけなんだけどね。

 

 バッセンで運命(笑)の出会いを果たしたのは、なんとというか俺にとっては珍しくないというか。案の定アイドルだった。しかもそこそこ名の知れた有名人。

 

 名誉終身キャカス。某ジャ〇ーズを代表するアイドルの一人である中〇くんと同様に語られるくらい、野球ファンにとってはかなりメジャーな部類に入る人だと思う。

 まぁ俺はそこまでまじめにネットの野球の記事を見るほどのガチファンじゃないからそこまでありがたみはわかんないけど。

 

 

「それでもアイドルが一般人に気軽に話しかけるのはどうなんすか」

「大丈夫だよ。外野スタンドに行けばみんな友達だって」

「あそこバッセンですよ」

 

 

 そして何の因果か。俺はバッセンから場所を移した346プロの広場で、そんな有名人と対面して15mほどの距離から彼女と僕はキャッチボールをしている。

 

 ここに来る時にキャッチャーミットも入っていて良かったね。まさかこんな機会に使うなんて思ってなくて、段ボールの端の方に型だけ崩れないようにボールを握ったまんま保管されてたやつを引っ張り出してきたからね。

 もうぺろぺろの味しかないミットだけども。

 

 

「でもキャッチングはまだまだだね。今の時代、フレーミングは大事だよ~」

「ミットずらしをし過ぎる捕手は主審に嫌われるぞ。取って欲しい時にだけやるもんでしょ」

「でもさっきからミット全然音鳴ってないけど」

「核心付くのやめない?」

 

 

 やめなよ、キャッチング下手糞なの誤魔化せてないじゃん。なんならブロッキングも結構苦手なんだよ。

 勿論小学校の時の話で、体がでかくなった今ならブロッキングとかもよくなってると思ってるけどさ。

 

 高校生になってもキャッチングはもうずっと苦手。芯で取るのが苦手。

 フレーミングなんて余裕ねぇよ、ボールに流されないように取るのに必死なんだよこちとら。キャッチャー意外と大変なポジションなんだぞ。

 

 

「それにしても良い球来てますね。コントロールも普通に良い」

「始球式のお仕事とかあるし、スポーツ系の番組で呼ばれることもあるからね! 練習とか割としてんのよ」

 

 

 体幹がしっかりとしているんだろう。最近少なくなってきたワインドアップから左足をあげ、しっかりと踏み込んでから右腕を振り切る。

 あんまり癖が無いフォームだよな。力任せに腕を振ってる訳でもないし、体重移動もスムーズ。真っすぐも割と綺麗な回転をしている。若干荒れはするけど、構えたところに行くボールもかなり多い。

 

 

「姫川さん。野球やってたんすか」

「ううん。良い球行ってる?」

「はい。フォームも球も綺麗ですよ」

「テレビの企画で、プロ野球選手に色々と教えてもらったからね」

「やば」

「プロの指導ってやっぱ一番効くよねー!」

 

 

 そりゃあそうだろ。プロ野球選手なんてレベチの集まりなんだから。

 良いよなー。そういう企画でプロの選手から色々と教えてもらえるなんて。小学校までしか野球をやっていないとはいえ、そういう機会があったら人生で一度でいいから教わってみたいわ。

 

 

「松井くんも色々教えてもらえばキャッチング良くなるんじゃない?」

「俺は一般人ですよ。無茶言わないでください」

「あたし、一応プロの捕手の人とかの連絡先知ってるけど」

「誰?」

「里〇さん」

「ちゃんと凄い人の名前出すのやめない?」

 

 

 でもその人プロレベルの話だとキャッチングとか良い方じゃないんだよね。あくまでもプロレベルの話なんだけど。

 でも後ろにそらさない技術はハチャメチャに高いんだよな。というか、リードとかもプロで活躍するんだろうなーって言う考えしてる。

 いやらしいというか、割とデータだけじゃなくてその場の雰囲気とかでも臨機応変に変えていくようなそんなリード。

 やっぱプロで活躍するような選手はレベチなんだよ。

 

 

「普通に良い人だから言ったら教えてくれると思うよ? 忙しいかもしれないけど、多分時間あると思うし」

「勘弁してくださいよ。今はそこまで野球にお熱じゃないんです。息抜きでやる分にはとても好きなんだけどね」

「元球児みたいなこと言うじゃん」

「元球児なんだよ」

 

 

 この後、なんだかんだ滅茶苦茶仲良くなった。

 単純に野球話せる人が俺の周りって少ないし、ナチュラル畜生だけどなんだかんだ良い人だった。ナチュラル畜生だけど。

読者層気になるので知りたいアンケ

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