女子寮生活は難儀です   作:as☆know

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黒いヤツの対処は男に任せればいいと思うな

 やはりちゃんとアンプを通したベースとは良いものだ。イヤホン越しに聞こえるベース音も普通に好きだが、やっぱり指で引いてる金属の擦れるような音に合わせてなる重低音が俺の心の臓をわし掴みにして離さない。

 

 ベースって地味なのに何が良いんですかってたまーに聞いてくるド畜生がいるんだけど、俺はこう答えるね。

 重低音ってなんかシブくね? とさ。実際はシブいんじゃなくて低いんだけどさ。

 

 ベースの良い所ってバンドの縁の下の力持ちというか、ギターやドラムほどは目立たないけど、いないと絶対に物足りないって言う、その存在の大きさにあると思うんですよ。ベースの音が分からないって人も一回ベースを抜いた音源聞いてみればわかるから! あれ、なんかこの曲軽くね? ってなるから! そういう意味でもベースってやっぱりいいんですよ。

 でも正直ギターの方がモテるし派手だしかっこいいしそっちの方が絶対に良いよね。俺だってあんな風に女性にキャーっ! とか言われてみてぇよ。黄色い歓声を俺も浴びてm

 

 

 ダンダンダンダンダンダンダンッッッ!!!!!!

 

 

「ギャアーッ!!!」

「うぉあああああ!!!???」

「ひ、光クン! 早く! 早く出るにゃーっ!」

 

 

 いや違う違う違う! 俺が聞きたかったのはこんな力任せに連打されるノック音でもないし、誰かもわからねえ女の叫び声じゃねえ!

 って言うかドア越しからでもうるせえ! 近所迷惑ヤバイ! 部屋内の音漏れはしないだろうけど、ドアの外からの騒音は普通にシンプルに騒音なんよ。

 

 うわぁ、シンプルに出たくない。ドア越しにいる人物に大体の目安はつくんだけど、それでも出たくない。だって怖いんだもん。

 普通に今夜だもん。時計を見て見ろよ、ちゃんと午後7時だよ。言い換えるんだったら19時だよ。

 なんでこんな時間にこんな恐怖体験しなきゃいけねぇんだ。もう夜寝れないしトイレにも行けねーよ。助けて誰か。

 

 そんな泣き言を言ってもどうしようもなく。呼ばれてしまったからには仕方がないし、未だに外でギャーギャ―騒いでいるであろう猫野郎を鎮めない事には色々と不味い気がするのでとりあえず出よう。出るだけ出て速攻で追い返そう。

 

 

「うるっせえええええ!!! なんなんだ一体! びっくりしすぎて死ぬかと思ったわ!」

「でっでた! アレが出たにゃ!!!」

「前川ァ! やっぱりお前じゃねぇか!」

「っていうかなんでズボン履いてないのにゃ! 履いて! 変態履いて!!!」

 

 

 急にお前が来るから仕方ないじゃねえか。上だけ着ていただけちゃんと褒めてほしい。脱いでいる日があってもおかしくないからな。

 

 やっぱり前川だった。大体声の感じで前川っぽいとは思っていたし、何なら語尾で丸わかりだった。ちゃんとキャラを崩さなくて偉いぞ前川。それ以外は最低だけど。

 マジで怖かったんだぞ、どうしてくれるんだお前、俺がチビったら。高校生にもなって漏らしたくねぇよ。さっきトイレに行っておいてよかった。

 

 

「今はそんなことどうでもいいの! お願いだから早く食堂に来て!!!」

「嫌だわ! 今の時間帯って一番人がいるじゃねぇか!」

「そんな我儘言われても困るのーっ!」

「そりゃこっちのセリフなんじゃ!」

 

 

 なしてこんな一番人がいる時間に食堂に行かないかんねん。俺はいっつも大体20時過ぎとか人が減ったころを見計らっていくようにしてんの! 響子ちゃんにも協力してもらってんの!

 嫌だよアイドルに会いたくない! 迷惑かけたくない!!!

 

 

「光クンの事なら大丈夫だから! なんやったらこれを機会にみんなもっとだいじょうぶになるから!」

「何を根拠に言ってんだおめぇ!」

「それだけの緊急事態なのーっ!」

「良いから要件を言え要件を!」

「アレが出た」

 

 

 急にスンってなるなよびっくりしたな。高低差激しすぎてメテオ決められたみたいな衝撃走ったわ。本棚の角に足の小指ぶつけたよりも衝撃あったわ。

 マジでホラー映画だと思っちゃうからやめな? しまいには泣くぞ。

 

 

「アレって何よ」

「……G」

「あー、ゴキブリ?」

「なんで名前出すの!」

 

 

 嫌なんで逆に名前を隠すんだよ。名前に出したらいけない扱いなのか? ヴォル〇モートなのか? 加藤〇一なのか?

 別にゴキブリなんて名前を出したところで実害がある訳でもないだろ。名前を出した瞬間出没するわけでもあるまいし。配信のコメント欄が加藤〇一最強で全部埋まる訳でもあるまいし。

 

 

「食堂だもんなー。そらいくら清潔にしていても出るもんは出るか」

「良いから来て! もうみく達みんなあいつのせいで食堂に入れないの!」

「なんで俺なんだよー」

 

 

 もう俺本人からの了承とかどこへやら。ズボンを致し方がなく履いたと思ったら、今度は靴を流れで履かされ、そのまま戸締りもなく腕をがっちり掴まれてズルズルと食堂方向に引っ張られていく。

 前川って意外と力あるんだな。普段からちゃんとレッスンしてるもんな。線は細いから舐めてたけどすげーな。この調子でムッキムキになろうぜ。面白いから。

 

 

「って言うか、俺が来る前までゴキブリが出てたらどうしてたんだよ」

「茜チャンとか響子チャンとか夏樹チャンが退治してくれてたにゃ」

「そういや響子ちゃんは今日いないとか言ってたな」

 

 

 だから今日は適当に3日前くらいに作った筑前煮とセブンで買ってきた総菜とご飯レンチンして済ませるつもりだったんよな。

 響子ちゃんって料理も出来て家事も出来てゴキブリ退治も出来るのか。マジで何でもできるのな。何でもできるというよりも、主婦として必要なスキルが余りにも揃いすぎている。

 強すぎんか? 響子ちゃんの豆知識とかで上手い事退治してそう(妄想)

 

 

「茜チャンも今日はお仕事らしいし、夏樹チャンは遅くまで帰ってこないらしいにゃ! つまり今のみく達じゃ何もできないのにゃ!」

「お前がやればいいじゃん」

「無茶言わないで! 虫ですら得意じゃないのに、アイツが相手とかどう考えても無理に決まってるにゃ!」

「ほっときゃいいじゃん。どっか行くだろ」

「それだけはぜーったいにありえん!!!」

 

 

 何なんだよぉ、面倒くさいな。俺かてそんなに虫は得意じゃないんだよ。

 超絶苦手というわけでもないが、実家でゴキブリが出た時はうちの母親が目ん玉光らせて嬉々として新聞で叩き潰してたからな。俺の出番とかなかったんだよ。

 

 なんなら普通にゴキブリは嫌いだしな。あんなもん得意なやつはどっかの鬼くらいだろ。生物観察の鬼。素手でスズメバチつんつんするとか考えらんねぇ。絶対危ないって思ってないだろあれ。

 

 そんなことをぶつぶつと考えていたら、もう食堂についていた。

 食堂前にはなんかすごい数の女の子たちが入り口横から覗き込むように食堂内の様子を警戒している。なんか中にテロリストがいるみてぇだな。実質テロリストみたいなもんだけど。

 

 

「Это было реально! アーニャ、初めて見ました! 黒くて、速くて、凄いです!」

「そ、そっか……アーニャちゃん、北海道出身だもんね……」

「ゆいも虫は流石に無理~!」

「うちも流石にアレはなぁ」

「うぅむ……漆黒の悪魔の手先……」

「どうしたものか。今日は響子もいないからな……」

「ウチも流石にアレは……誰か無理なのか?」

 

 

 うおぉ……見事にあんまり見たことや話したことない人達ばかりである。飛鳥とか紗枝ちゃんとかCpメンバーとか知ってる人もいるけど。だとしても本当にあそこに行きたくない。

 何なら今すぐ全力でUターンして逃げたいが、ここで逃げたら確実にバレてなんかアレなので正直ここまで連れてこられた時点で負け確ではある。

 

 って言うかあの金髪の人って大槻唯さんだよな? 大分前に凛と見たテレビで美嘉さんと一緒に出ていた気がする。

 なんか知っている人がいると感覚狂うというか、余計に接触したくないというかなんというか。

 

 

「みんな待たせたにゃ! ヤツを倒せる人を専門業者を呼んできたにゃ!」

「お前なんて名目で呼んでやがるんだ」

 

 

 誰が専門業者だ。そんなに得意じゃねえって言ってんだろ。特別苦手というほどでもないけど。

 

 うわー、すっげぇ見られてる。本当に見られてる。よくわからんけど、多分なんだあいつって感じの視線だこれは。嫌なんだけど、本当に嫌なんですけど。いや、申し訳なさすぎるんですけど。

 

 

「さぁ松井光! にっくき敵のアイツを討ち取って来るにゃ!」

「ごめんなさい。誰かゴキ〇ェットか新聞紙持ってないですか? あと、あれば洗剤」

「洗剤なら、多分キッチンの方に……」

「おぉ、サンキュー智絵理ちゃん」

「い、一応新聞紙とかはここにあるぞ。後、お椀も」

「なんで???」

 

 

 そう言ってすでに丸められた新聞紙とゴキ〇ェットを渡してきた女の子は、中々個性的な子だった。

 中々ファンキーな赤のメッシュにストリート系のおしゃれな部屋着に少し前に流行った耳がピコピコする兎の被り物のようなもののピンク猫版を被った女の子。

 ちっこい。こんな小さい子も寮住まいしてんのか。偉いなー、この年齢で親元を離れるって勇気居るだろうに。

 

 

「凄いね。尊敬するわ」

「……今、ウチの事子ども扱いしなかったか?」

 

 

 じとーっと疑いの目を向けられてるけど大丈夫大丈夫。そういう変な意味じゃないから。

 子ども扱いはまぁしたっちゃあしたけどそういう意味じゃないからね。大丈夫大丈夫。

 

 

「んで、紗枝ちゃん。ゴッキどこにいるかわかります?」

「それが、うち見失ってもうて……」

「飛鳥は?」

「なるべく目に入れたくない」

「全然だめじゃねえか」

 

 

 飛鳥お前そんなに虫に弱いのかよ。普段かっこつけてるのに全然なんかい。

 智絵理ちゃんもまず苦手だろうし、なんかよくわからんけど飛鳥のこのビビりようを見てると多分蘭子ちゃんも多分ダメだろう。なんかよくわからんけどね。

 

 それにしても、ゴッキがどこにいるかわからんとどうしようもない。食堂もクッソ広いし、ここら辺を探し回ってるうちに逃げられたら一番最悪だ。というか、ここまで来てしまった以上、仕留めないと多分俺は死ぬ。辱めで死ぬ。

 

 

「Я там! 光、あそこです!」

「おぉ、でかしたアーニャ!」

 

 

 なんでかわからんけど目をキラキラさせたアーニャが指さした先には、壁にぴったりと張り付いているゴキブリ。そこそこ大きい人差し指の三分の二くらいはありそう。

 ゴッキもそうだけど、虫が急にピタッと止まって動かなくなるのって何なんだろうな。思考停止してんのかな。

 

 

「ちょっとグロいからアーニャは見ちゃダメだで」

「わかりました! 凄く、期待してます!」

 

 

 うん、見る気満々だね。あんまり見せたくないんだけどね、叩き潰す気満々だから。

 

 それはともかく壁にピタッと止まってんのなら話は早い。松井家のゴキブリ退治は作法が決まっている。

 一ノ型、新聞紙でダイレクトアタック。しっかり狙ってフルスイングすべし、情けは無用。

 逃げられたら二ノ型、ゴキジェット。逃げたあいつに向かってゴキジェット砲。適当に撃てば当たってそのうち効く。

 そして動きが鈍くなったら三ノ型、新聞紙でダイレクトアタック。トドメはしっかり刺せ。情けなどかけるな、死にかけだろうがしっかりフルスイングだ。

 

 奴の存在を許すな。叩き潰せ。抹殺せよ。

 それが松井家の家訓だ。なんつー教えしてんだあのババア。

 

 

「っしゃオrrァァッ!」

 

 

 呑気に止まっているターゲットに向かって速足で駆けより、射程圏内に入った途端に一気に右足で踏み込み間合いを詰める。

 奴の進行方向やや上側に焦点を当て、左手に握った新聞紙ブレードで一気に薙ぎ払う。

 

 だが、それを見越した奴の行動は、進行方向を変えることに合った。真上ではなく、真横に。

 とは言えそんなことはこちらも予測済み。即座に薙ぎ払った腕を真下に向けて振り下ろすことで、逃げた標的を地面に叩きつける。

 

 

「そこ!」

 

 

 そして、文字通り殺虫剤。必殺のゴキ〇ェット。そして、その上からキュ〇ュット泡スプレー! 本当は洗剤なら何でもいいらしいんだけどね。

 流石に二重の殺意には耐え切れなかったらしく、標的はピクピクと数秒最後の抵抗を見せようとしたが、あっけなく命を落とした。命とはそういう物さ。

 

 

「やりました」

「「「「「おぉーっ!」」」」」

「さっすがみくの連れてきた傭兵にゃ! これからもよろしく! 松井光軍曹!」

「何勝手に称号付けとんねん。そんなにゴキは得意じゃないって言っておろうが」

 

 

 あとは三重くらい巻いたトイレットペーパーでつかんで、ぶっ叩くのに使った新聞紙にしっかりと包んでポイ。これにて仕事は終了。本当に飛んだ迷惑だ。迷惑というか、本当に大変だった単純に。疲弊困憊よ。

 

 

「じゃ、これからも第四の戦士として、光クンは寮の四天王になってもらうにゃ!」

「さんせー! あいつを倒せる戦力は貴重だし!」

「光、凄かったです!」

 

 

 なんか大槻唯にも太鼓判推されてる。寮にいる人たちとの距離がちょっと縮まる要因がゴキブリってなんか嫌だな。凄い黒そうだし、菌を持ってそう(偏見)

 

 

 それから俺は度々黒いヤツやらクモや、家に出るそれといった虫たちが出没するたびに呼ばれるようになっていった。これを機に寮にも少しずつなじめて言ってる気がするけど、これで本当に良かったのだろうか。

 人生でゴキブリに感謝の意が一瞬でも芽生えそうになるなんて思わなんだ。

読者層気になるので知りたいアンケ

  • 男! 未成年
  • 女! 未成年
  • どっちでもないorわからん! 未成年
  • 男! 成人
  • 女! 成人
  • どっちでもないorわからん! 成人
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