俺が寮に入って、もう三ヶ月ほど経つようになったのだろうか。いつの間にか六月も下旬に差し掛かってしまった。
未だに周りの超絶可愛いアイドル達に負担を与えないように警戒して生活している俺だが、ここ最近、新たな疑問が浮かび上がった。
「この部屋の防音ってどうなってるん?」
「それを聞くためだけにボク達を呼んだのか」
「あたしらって、光からしたら丁度隣人やもんねー」
「そゆこと」
そういうわけで、今日はこのお二方に協力していただく運びになりました。超人気アイドル塩見周子さんと超人気アイドルの二宮飛鳥さんです。わー。
こうやって思うと、俺ってすげぇ恵まれた立地なのかもしれんな。ここにいるアイドルほぼほぼテレビ出演を経験している凄いアイドル達なんだろうけど。
特にこの二人は露出も多いらしいし。俺、全然知らんかったから、自由気ままな狐っぽい美人と、とてつもなく中二病なイケメン系僕っこだと思ってたよ。変わりはないんだろうけどね。実際出てるかどうかも、俺はテレビとか未だに殆ど見ないから知らんけど。
「用意するのはこれ、アコースティックギター!」
「光、ほんまにスタジオミュージシャンやったんやなぁ」
「ボクはよく聞いてるけどね」
そっか、周子さんは俺がアコギとかベース弾いてる所あんまり知らないんだよな。そういうところを見せたことも見られたこともなかったし。特別見せる意味もないしなぁ。
っていうか、俺がスタジオミュージシャンだったか半信半疑だったみたいなこと言ってるけど、今まで周子さんの中でそういう理解をされてるとしたら、俺は何故か女子寮にいる自称スタジオミュージシャンとか言う立ち位置になってたのか。
やべーだろそれ。いや、事実俺がここにいるのがヤバいんだけど。
飛鳥とは何故か夜の公園で良くエンカウントするからな。大体夜にギターを持って公園に行くと、3割くらいの確率で飛鳥かアーニャちゃんにエンカウントするんだよね。ポケモンか? 夜にしか出ないレア系のやつか?
「光は弾くのも上手いが歌も上手でね。中々夜に聞くと良いものだよ」
「へー! 歌も上手いんやったら、本当にアイドルになればええのに」
「そういうキャラじゃないんで。それに、346プロって男性アイドルいないじゃないすか」
「光が第一号で!」
「俺より顔の良くて歌が上手くて踊れる人にその座は譲りますよ」
多分、そういう人間は腐るほどいるしね。世の中には一つあればやべえって才をいくつも持っている天才って人間がいるんだよ。
大体そういう人間は蓋を開けると、何かが欠落してる代わりに才能が突出してるか、努力する才能が一番凄くて、それを基盤に才能が磨かれていくかの二択なんだけどね。
「っていうわけで、ここで今日の企画説明~」
「おー!」
「俺がここで普通に流すくらいで一回、割とフルパワーでもう一回歌います。お二人にはそれぞれ自分の部屋でどれくらい音が聞こえるか確認していただきます! 後ついでにベースも通るか試します! 以上!」
「至極単純だね」
「単純明快圧倒的シンプルそれが一番」
「それには同意するよ」
「回りくどいのはシューコちゃんもごめん被るからね~」
二人が今日空いているって言うのはもう調査済みだけどね。心配なのは今の時間帯が夜に差し掛かりそうな時間帯ってあたりだけど、幸いにもこの環境下において騒音被害になりえるのは両隣の部屋だけであり、今回はその二人に調査を協力していただいているので問題なし。
つまりこの計画は完璧! 至極簡単! 圧倒的イージー!
「っていうわけで5分後にまた俺の部屋に集合していただくっていう形で、どうかよろしくお願いします」
「りょーかい」
「わかったよ。それじゃあ、また」
そんなわけでパタンパタンと二人そろって退室していくのを確認して、パパっとアコギのチューニングをする。
これをすることでこの先俺の人生がどうなるかとかはマジで全くないんだけど、普通に気になることだしね。近所迷惑撲滅にもなるし。
「……よっしゃ。あー、アーっ。ンンッ」
喉を鳴らして声のかかり方を確認する。俺はちょっと変わった歌い方を意識してるから、割とこういうのも意識するタイプ。まぁただのエッジボイスなんだけどね。
男のエッジボイスってかっこよくね? 俺は好きなんだよね。俺ももっと高音強かったらなって思うことも多々ある。
「いきまーす」
ピックをくるくると回してアコギに当てる。なんか聞かれると思うと緊張するな。無駄に。
「どうでした?」
「結論、フルパワーだと若干聞こえたね」
「ベースの方も問題なかったよ。確かに耳を済ませれば何か鳴っていると感じることが出来なくもない、という程度だね」
「若干で済むんだ」
「まー、黙ってたけど、ここの防音性ってかなりいいからねー」
なんでそれを先に言わなかったんですか周子さん。絶対に無駄な行為だったじゃないっすか今の。
そんなわけで普通に歌唱とフルパワー歌唱、無事に終えました。無事に終えたと言っても、フルパワーで歌うことが普段あまりない+とにかく大声を張り上げようと無茶な歌い方をしたので、若干喉死んだわ。
何だったんだ本当。あんな歌い方二度としないわ。しようと思う機会すらないわ、絶対。
「あれだけ叫ぶように歌わないと貫通しないってことは、要するに普通に歌う分には問題ないということだしね」
「実際普通に歌ってたのは聞こえました?」
「壁に耳引っ付ければなんとか聞こえる程度かな」
「そんなに防音性能高いんすか」
この寮ってマジでなんか欠点あるのか。多少狭いってくらいか? でも狭さの点でも食堂やら風呂やらなんやらがバチボコに寮内にあるし、全然問題ないんだよな。本当に欠点ないじゃん。嘘だろ。流石346プロ!(ゴマすり)
マジでここまで欠点がないと俺が男って事だけが欠点になるんだよな。今から息子切り落としたら女性になれたりしねーかな。嫌でもそれだけは絶対に嫌だな。うん絶対に嫌だ。
この世で自分の息子をそぎ落としたいと思っている男性は、性別上男性なだけで中身は美しい女性の方だからね。こんな不純な理由でぶった切ろうとした僕の負けです。なにが?(賢者タイム)
「あぁ、こちらも問題全くなかった……いや、一点だけ問題があるな」
「なに?」
「深夜に広場に行った時のボクの楽しみが一つ減る」
知らんわと言いそうになった。っていうかお前そんなもん楽しみにしてたのかよ。隣の部屋にいるだろ元凶が。元凶? 元凶か(納得)
「いや、そういう気分の時は多分、俺も外に出るから……」
「ギタリストというのは、そういう生き物なのかい?」
「俺はギタリストというほど弾けないからあれだけど、夜空の下でアコギ弾くって男のロマンじゃない?」
「シューコちゃん達に男のロマンを説かれてもわかんないけどね。ま、気持ちはわからんでもないけど」
それじゃあ男のロマンじゃなくて、ただのロマンでは? そもそも、男のロマンって本当に男限定なのか?
そもそも男のロマンって先を見据えずにただロマンを追い求めるからロマンなのでは? あれ、ロマンって何なんだ(哲学)
「あと、うちの寮って夏樹ちゃんいるじゃん?」
「確か同じ一階でしたよね」
「そーそー」
他で俺が知ってるアイドルで寮住みの人だと、いつだかに凛に教えてもらった金髪の超かわいい人こと大槻唯さんだとか、志希ちゃんさんとくっつくと碌なことにならないフレデリカさんとか、アイドルというよりも芸人なんじゃないかと俺の中で今話題の輿水幸子ちゃんとかも寮住まいなんだよな。本当にこの寮どうなってんだよ。
実際に今例に挙げた人たちは、大槻唯さん以外、寮内で一回は見かけたことはある。話しかけようだとか、サインを貰おうだとかは思わなかったけど。
そもそも、俺は基本的にアイドルと接触したくないから風呂とか飯も自分の部屋で済ませてるしな。大浴場とか男性スペースあるのかな。
「夏樹ちゃんも普通に自分の部屋でギター弾いてるらしいんやけど、そういうの全然聞こえないからさ」
「ほう。つまり、最初っからこんなことしなくてもギターの音程度なら貫通しないと知ってたと」
「そゆことー。シューコちゃんの方が寮生活長いからね!」
「なんで周子さんも無駄足になるのに言わなかったんすか……」
「発想が単純でおもろいなーって思ったんよ」
こんの京の狐娘先輩が……! いや、まぁ別に俺に実害的な被害は出てないから良いんだけどさ。待て、喉痛いわ。いや待て待て、俺が喉痛くなったところで特に被害はなかったわ。
少し考えれば、あの音楽の虫の夏樹さんが自室でギターを弾かないはずがないんだよな。エレキをアンプに繋がないでも弾けるっちゃあ弾けるけど、夏樹さん確か普通にアコギ持ってたしな。
俺の考えが浅かった。無念なり。
「飛鳥は知ってたの?」
「勿論。寮内でボイストレーニング等をする子もいるし、音楽を聴くのが趣味の子だっているからね」
お前も黙ってたんかい。冷静になって考えてみれば、そういう前例とか腐るほど有りそうではあるけども、飛鳥もわかってて黙ってたんかい。飛鳥ってクールぶってるけど、なんだかんだ茶目っ気あるよな。こんの悪戯っ子共が。
色々と合った(色々あったとは言っていない)が、今俺は問題なく部屋でアコギを弾き散らかしている。
アコギって割と音が出るので、マジでこの音量で音漏れしてないとしたら本当に防音性高いんだな。楽器だから割と音が出るも何もないんだけどね。
「G……G……Dsus4……んでEm7ね」
鼻歌で歌詞のメロディをなぞりながら、画面に映るコードをアコギで奏でていく。
外だと中々こうやって新しい曲を練習しようってよりも、元々できる曲を気持ちよく歌おうって感じになるから、中々新しい曲を覚えることが出来なかったんよな。
本当に入寮してからは新しい曲なんて練習してなかったから、下手したら二か月ぶりくらいになるのだろうか。奏のあれはヘッドホンアンプを使ったベースの練習だったから、完全ソロで成立する弾き語りの練習は正真正銘それくらい空いている。
コンコンッ
「……凛か?」
いつもよりも少し控えめなノックが二回。ドアからしてくる。
俺の部屋にお客さんが来る場合、10回中10回は渋谷凛でたまに違う人が飛んでくるから、恐らくドアの向こうに立っているのは渋谷凛だろう。ゲシュタルト崩壊しそう。
「はい、なんでしょう」
「Добрый вечер……こんばんは、光……?」
ドアの前にいたのは、なんか若干おずおずしながらこちらを見上げてくる顔面超絶完成形最終兵器、アナスタシア。
予想外の来客すぎて心臓飛び出るかと思ったが、一体どういうことなのコ〇ンくん。
「どしたの、珍しい?」
「я слышала……アスカから、聞きました。光、部屋でギター弾いてるって。アーニャ、光の歌、聞きたいです!」
あー、なるほどね。な──るほどね、あんにゃろう。アーニャ見かけたついでに、なんてことない情報ふき込みやがったな。
「……そんなに俺の歌が良いの?」
「光の歌、アーニャ、大好きです!」
あーら可愛い。今すぐにでもこの可愛い生物を撫でまわしてあげたい。俺の歌なんかで良ければ好きなだけ聞かせてあげたい。
だけど、だけどだ。今までは飛鳥とか周子さんとか、そのなんていうの? 純粋無垢というよりかは、なんというかどちらかというと大人っぽい人だから俺の部屋に上げてたわけであって、純粋無垢なアーニャを部屋に上げるとあれやそれやと変な噂が立ちかねないわけであって、アーニャにも迷惑がというかなんというか。
「やっぱり、迷惑、でしたか?」
「練習しながらでもいいなら好きなだけ聞いてくれ。ちょっと散らかっててもいいなら」
「да! 光の歌、いっぱい、聞かせてください!」
結局、アーニャちゃんは俺の部屋に上がりこんで満足いくまで静かに、かつウッキウキの表情で歌(練習中)を聞いて頂いた。喜んでもらえて何よりだね。
ただ問題はそのあと。1時間ほどしたあたりで、なんかやけに静かだなーと思って振り返ってみたら、アーニャが知らん間にぐっすりとベッドに横たわって寝ていた。
寝てしまったアーニャに関しては、元凶と言える飛鳥にしっかりと責任を取ってもらう形で、申し訳なかったが一旦起きてもらったうえで飛鳥同行の元、アーニャの部屋にしっかりお帰り頂いた。
またこれが定期になったら、俺もうなんかもう。多分明日槍かなんかが振ってきて死ぬわ(未来予知)
読者層気になるので知りたいアンケ
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男! 未成年
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女! 未成年
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どっちでもないorわからん! 未成年
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男! 成人
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女! 成人
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どっちでもないorわからん! 成人