女子寮生活は難儀です   作:as☆know

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なんで言ってくれんかったの? 的なことは割と多い

 木曜の昼飯は部室でご飯を食べると俺たちの間では決まっている。理由は単純、体育館に近いから。飯食って着替えて体育館に行くとなると、若干遠くてうざいのだ。

 あと、部室で食べる飯ってなんかよくね? あとクーラーバチバチ効くし。まだギリッギリ6月だけどクーラーがもう手放せねぇよ俺は。正直理由の8割はそれ。

 

 木曜の4限が終わるとトイレに駆け込みパパっと体操服に着替え、そのまま昼食を部室まで持って行ってそこで飯を食う。カギは職員室で管理されているが、そこらへんは今西が上手い事やってくれている。

 こいつ、物事の根回しとか先生に対する接し方とか、マジで世渡りが上手すぎるんだよな。先生からの好感度も俺と違ってかなり高いし、気が付いたらこいつの術中の中という話もなくはない。良い奴なんだけどね。何故か胡散臭い奴でもある。

 

 

「今、変なこと考えてたろ」

「別に」

「俺の事胡散臭いとか」

「ないない」

 

 

 今西に目を合わせないようにしてLI〇Eの返信を返しながら、コンビニで買ったおにぎりを片手にかぶりつく。俺はツナマヨが一番好き。

 

 軽音部の部員は少なくもないが、多くもない。大体40人くらいといったところだ。

 これ大分あるあるだと思うんだけど、軽音部って一年が大体毎年10~20人くらい入ってくるけど、大体半分以上が半年以内に退部したりその後も幽霊部員になったりするよな。だから実質真面目に活動しているのは30人くらいだと思う。

 

 まぁ、要するに俺達が勝手に部室を使ってもそうそう怒られることはないって言うことだ。先輩もゆるっゆるだしね。俺と今西は部の中でも結構上位に来るくらい上手い自信もあるし。自信だけで実際は知らんし、自信があれば何しても良いって訳じゃないけど。

 

 

「あー、彼女出来ねぇかな」

「適当に良い女の子見繕えばいいじゃん」

「お前なぁ……自分には可愛い可愛い後輩ちゃんがいるからって」

「後輩は後輩であって彼女候補にはならんだろ」

「先輩とか言われて甘えられたくない?」

「それは少しわかる」

 

 

 可愛い後輩って物凄くロマンあるよな。俺もセンパイセンパイって甘えられてぇよ。加蓮が恋しい。

 あいつあざといわ甘えてくるわであざといわで脳内破壊されそうになるんだよな。多分、あいつは10割からかう気でやってるんだろうけど、男の子は単純だからね。そういうの見たらすぐに信じちゃうんだから。本当にいい加減にしてほしい。可愛いんだから。

 

 

 ガチャン!!!

 

 

「いたっ!!!! ……ぜぇ……ぜぇ……はぁっ」

 

「お、お疲れーい」

「神谷じゃん。俺の事、覚えてる?」

「今西達也だろ……ちゃんと覚えてるよ」

 

 

 呑気なムードの中、防音性能を高めるために倉庫のドアみたいになってるどでかいドアを力いっぱい開けて出てきたのはもふもふさん。後輩じゃない同級生だ。

 

 今は衣替え期間中なので、随分と夏服の生徒も増えてきたもんだが、奈緒ちゃんは勿論というかなんというか、ちゃんと夏服だ。もう梅雨は空けてるけど、先月とか髪の毛ヤバかったんだろうな。雨の日とかたまに質量倍になってるもんな。

 

 

「……あぁ、疲れた」

「このクソ暑い中走ってきたんだな。ココ、クーラー効いてて涼しかろ?」

「元はといえばお前がなーっ!」

「はいはい。まぁまぁ落ち着きなさいや」

「何? お前が呼んだの?」

「うん」

 

 

 そうだけど? さっきLI〇E返したばっかな気がするけど、随分と来るの早かったなー。走って来たのか、随分と息切れしている。あと、ちゃんと昼飯持ってきてるの偉い。

 まぁ落ち着きなさいや、お嬢さん。綺麗なお顔が崩れていらっしゃいますぜ。ガンガンに冷房効かせているからゆっくりしなさいや。

 

 

「はい、奢りな」

「あ、ありがと……」

「はーっ、余計に一本ジュース買ったと思ったらお前そういうこと」

「来なかったら俺が飲むつもりだったし」

 

 

 奈緒にキンキンに冷えたカル〇スの缶を渡してやる。カル〇ス好きかどうかはあんまり知らんけど、大嫌いって人間もそんなに少ないだろ、多分。少なくとも炭酸に比べれば嫌いな人は少なさそうだ。

 

 

「ん~っ、美味い!」

「そりゃよかった」

「んで、なんで神谷呼んだの」

「呼んだというか、気になるなら直接教えるからって言うか」

「そうだった! お前っ、346プロに入ったってマジなのかよ!?」

「マジ」

「なーんであたしに教えなかったんだーっ! 凛は入る時に教えてくれたんだぞー!」

「だって普段お前とそんなにサシで話す機会無いし」

 

 

 お前本当にコロコロ表情変わるから可愛いな。マジで犬とか見てるみたいでわしゃわしゃしたくなる。

 同級生なのによっぽど後輩感あるよな。仲いい奴らがドが付くクールだったり、先輩だろうが関係なく弄って来る小悪魔系だから余計にそう感じる。

 

 って凛はちゃんと連絡したのね。偉いなあいつ。俺は普通に入った時、親と凛くらいにしか連絡しなかったわ。

 あとは部活にも影響出るから顧問と、後は一応事務所所属にはなるから担任には話したのか。そこまで大事にはならなかった覚えがあるけど。

 

 

「何時! なにで入ったんだよ!」

「凛から聞いてないの?」

「ちょっとしか聞いてない! 光の口から聞かせろ!」

「3月だっけ」

「うん。1年の終わりだったべ」

「3月くらいにオーディション半分スカウト半分で346プロ専属のスタジオミュージシャンとして入った」

「なんかよくわからんけど、よし」

「それでいいのか」

「光の口から聞けなかったのがなんか悔しかっただけだしな」

 

 

 それを聞くと満足したのか。奈緒はそんな表情をしてお弁当をぱかっと開けると、卵焼きを一つ口に運んだ。

 

 いい子。これからはちゃんと奈緒にもなんかあったら報告するようにしよう。とりあえず今日の晩飯は写真撮って送ろう。今決めたわ。

 

 

「それにしても、光ってプロになるくらいベース上手かったんだなー。あたし全然知らなかったよ」

「ま、こいつの強い所って滅茶苦茶地味だから。わかんないのも無理ないよ。って言うがそれが普通さ」

「人の強みを地味って言うのやめときん?」

 

 

 いや、わかるぜ? 入った当初に比べて上手くなったとはいえ、今の俺は他のプロみたいにバカげたテクニックも持ち合わせてないし、メッチャ映えるような音が出せるわけでもないけどさ。地味って悲しいじゃん。

 知ってるか? 人類って事実を言われた時が一番悲しくなるんだぜ。つまり俺の強みは地味ということがここに証明された。Q.E.D.

 

 

「で、どうなんだよ光ぅ。やっぱり346って可愛いアイドルが沢山いるだろ? 凛はまだあんまり交流無いって言ってたけど、光はどうなんだよ? やっぱり近くで見れるもんなのか?」

「近くでって……奈緒って6組だろ? 隣のクラスに奏がいるだろ」

「ばっか……! お前、事務所の先輩だろ一応! それも速水奏って言ったら、滅茶苦茶凄いアイドルなんだぞ! あたしなんか話したことも無いわ!」

「そうなん?」

「お前が普通に気に入られてるのが意味わからんレベルくらいには凄い人物だぞ」

 

 

 あーんの年中煽ってくる見た目だけ超絶セクシー未体験女がねぇ……

 俺が知ってる速水奏と、世間が知ってる速水奏って随分違うんだな。俺って相当ラッキーだったのかも。アイドルとしての速水奏を知ってたら、あんまり奏と仲良くなれてなかったかもしれんし。わかんねーけどな。

 

 奈緒のいるクラスは2年6組、俺達の所属している3組とはそもそも校舎が違う。俺と奈緒は親交があるのにあんまり関わりが無いって言うのは、そういうところにもあるんだよな。奏もそうなんだけど。

 

 

「あっそうだ。神谷、良いこと教えてやるよ」

「ん? なに、良いことって」

「こいつな。今346プロの寮に住んでんだよ。で、その寮ってのッがイデデデデデデデッ!!!」

「口を開けば殺す。動いても殺す」

「ギブギブギブ!言わんから! 言わんから!」

「な、なんだ? そんなに寮でなんかやったのか?」

「いや、こいつの戯言だ。耳を貸すな」

 

 

 ゾル〇ィック家の如く足音を消し、今西のクソアホハゲカス野郎の背後に潜り込んで一気に空いている方の腕を十字固めで関節決め込む。

 中学で暇すぎて死にかけた時期に、一瞬だけ関節技を友達のヤンキーに教えてもらっておいて助かった。まさかこんなところで役に立つなんて。

 

 

「あー……腕外れるかと思った」

「そのまま腕外して東京湾に投げつけるのも辞さなかった」

 

 

 こやつ、奈緒に話すとか絶対に許さん。加蓮に話しても許さん。凛にはバレてるからあいつにだけなら許す。だが不用意な接触をしようとすれば消す。あいつに触れさせるにはテメェは不健全だ。

 

 

「で、話を戻そう。死んでも戻すぞ。俺の場合は凛と違って色々と機会があったし、それなりに知り合いは増えたよ。そんなに人数いないけどな」

「嘘つけ、お前今LI〇Eどうなってんだよ」

「確かに。連絡先とか交換とかしたのか?」

「やましいもんでも入ってるのなら、見せなくてもいいけどなー」

 

 

 こんのやろう……さっき十字固めで間接外しかけてやったのに、この期に及んで……後でドッジボールやる時覚えてろよ。元捕手の強肩見せつけてやんだからな。顔面潰しちゃる。

 

 これ、見せなかったら見せなかったでやましいもんが入ってると思われるし、見せたら見せたで……いや? 別に見せてもそこまで支障なくないか?

 メッチャ友達の多い陽キャで200~300人くらい友達いるわーってバケモンエピソードとかは聞かされたことあるけど、俺は全然そんなことないし。別に変なもんは入ってないし、隠すことはないんじゃないか?

 

 

「はい、これ。流石にトーク履歴は勘弁で」

「おー、これが光のLI〇E……五十嵐響子、塩見周子、小早川紗枝、二宮飛鳥、城ケ崎美嘉、速水奏、姫川友紀、木村夏樹、星輝子、白坂小梅、高垣楓……ってえぇっ!?」

「たかっ、高垣楓っておま……はぁっ!? 何、どういうことだよテメェ!!!」

「これは俺も理解できてないから安心しろ」

「お前が理解してるしてないじゃなくて、お前のLI〇Eに高垣楓の名前があるこの事象自体がやべぇんだよ!」

「アイコンお酒なんだ……逆に本物感ある……」

 

 

 マズい。ここに来て名前を間違えないように覚えるために、LI〇Eの登録名を殆どフルネームにしている事が災いしてしまった。いや、楓さんは俺が名前変える前からフルネーム登録だったけど。

 それにしても、こうやって見るとすげぇ画面だよなぁ。ここに凛とかアーニャとかCPメンバーのも入ってるからな。CPは全員揃って346を背負うアイドルになるからな。お前らも後で全員分顔と名前覚えさせるかんな。

 

 

「って言うかお前なら会社で喋ったことくらいあるだろ」

「バカお前……! あの人に容易に近づけると思うなよ! オーラが違うじゃねぇかよオーラが!」

「すんげえ優しかったよ。俺はめっちゃ緊張したけど」

「お前がそんな鋼メンタルじゃないことくらい俺でも知っとるわ!」

「光って、たまーに思い切りが良い時もあるけどな。でもこれはヤバイな。流石にあたしも引くわ」

 

 

 俺の場合は隣にいた人が楓さんを引き寄せたというか、本当に運が良かったとかそういう感じだし……

 確かに初めて話すまではオーラとかえぐかったよ。強打者から威圧感を感じるのと似て非なるような、いや美しっ! っていう感覚。

 

 でも話してみたらテレビの中のまんまの柔らかい話し方で、すげー大人の余裕みたいなのが合って、あと朝から酒を飲もうとしているのを担当のPさんに見抜かれてて、隙あらばダジャレを言ってた。

 

 

「って言うか、今西も346でスタジオミュージシャンしてるのか?」

「え? なんで俺が?」

「さっき光が会社内で喋ったことがあるだろって言ってたから」

「あー、こいつは違うよ。こいつのおじいちゃんが346の偉い人なんだ」

「俺はただ346の機材とか部屋借りてたまに練習してるだけ」

「お前ら、マジでどうなってるんだよ……」

 

 

 俺が346に入るきっかけになったもこいつのせいだしな。俺がどうなってるって言うより、今西がどうかしているんだよ。

 頼むから同類にしないでくれ。今置かれている状況も加味して、俺がとっても悲しくなる。奈緒だけはそっち側にいてくれ。唯一に近いオアシスなんだよ。俺がいじれる少ない人物だし。前川が過労で倒れちまう。





読者層気になるので知りたいアンケ

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