この寮には沢山のアイドルがいる。当たり前だ。ここは元々346プロ所属アイドルが利用している女子寮だったのだから。そうアイドルだ。全員揃って美女美少女揃いだ。ここの顔面偏差値はどうかしている。ハーバード大学も真っ青だ。
なんだったら俺は今でもここが女子寮だと思っているね。だってここには男が俺しかいないんだし。
「ヒカル、次ウチがマヨネーズな」
「はいはい」
レタスとプチトマトのサラダにマヨネーズをかけ、そのままGirls&Monstersというブランドの服一色に染まったちょっと生意気なピンクのケモ耳付きフードを被ったちびっこに横流しでマヨネーズを手渡す。
このケモ耳ちっさいピンクの女の子は早坂美玲。若干紫がかった髪をベースに赤のメッシュも入れている。あと、左目に眼帯を付けている。初めて会った時は付けてなかった気がするんだけどな。
やっぱりというか、なんというか14歳であるが。こんなにちんまいが、年齢だけで言えば飛鳥や蘭子と変わらないというから驚きだ。他の面ではあまりにも納得しすぎる年齢だけど。最近の若い子はおしゃれが進んでるんだなー。
今日はサラダはマヨネーズな気分。昨日は和風ドレッシングだったし、日によってサラダのドレッシングってなんか変えたくなるよな。俺だけかもしれんが。
「光さん……ご飯沢山食べるんだね……」
「Много.白いごはん、たくさんです」
「男の子はダイエットとか無くて羨ましいにゃ」
「食えば食っただけエネルギーになるからな」
今日のご飯はハンバーグ。無論、俺はご飯大盛だ。男子だからね。周りの女子とかみんな大盛にしてないけど、俺だけ白米こんもりだからね。
響子ちゃんが『ご飯大盛ですよね! 今日は煮込みハンバーグですよっ!』ってニッコニコで言うんだもん。別に大盛じゃなくてもいいよ、なんて口が裂けても言えなかった。
あまりにもお母さんすぎる。いっぱい食べる君が好きってか。俺がたくさんご飯食べれる男子高校生で良かったね。
「やっぱ女の子はそういうの気にするんだ」
「当たり前でしょー。みく達はアイドルだにゃ」
「私は……あんまり食べないから……」
「ウチは普通に食べるけど動くしな」
「アーニャも、ご飯、一杯食べます!」
「こういう女の子もいるから苦労するんだにゃ」
「前川も苦労してんだな……」
「お願いだから憐みの視線で見ないで」
男子でも女子でもいるよな、食っても太らないんですって体質の奴。俺もそんなに馬鹿みたいに体重が増えるわけではないけど、食えば食っただけ人並みには増えるからな。わかるぞその気持ち。
「ふひっ……しめじ……煮込みハンバーグのお供……」
「お供かはわかんないけど、相性は抜群だよな」
「キノコは、いろんな料理に合うからね……」
そんなキノコ愛好家のとてつもないどんよりオーラを醸し出しているのは、銀色っぽい長いボサボサの白髪にふにゃふにゃアホ毛が印象的な、これまたちんまい子。名を、星輝子ちゃんという。
この子は凄い。ド直球に言うと、普段はこの子ハチャメチャに陰キャだ。存在感が皆無。気が付いたら横にいてキノコの栽培セットを抱えてたりする。もう一人の子と合わせてとってもホラー。
けれど、この子が真価を発揮するのはライブの時だ。音楽の趣味の話に偶々なった時から、少しずつ様子が変わって行った。まず大前提として好きな音楽グループがバンドになっており、しかもあげられる名前は俺の守備範囲外に近いラウド系、もしくはヘヴィメタルと呼ばれるようなジャンルのバンドが殆どときた。
しかもその知識はとっても豊富。昔の超有名バンドから、最近の若干無名の新星まで網羅している。
『ヒィィィヤッハァァァァァァァッ!!!!!!!!』
『…………歌うっっっっっっっま』
動画で見た彼女は、歌に入るまではよく見る星輝子ちゃんって感じなのに、瞳孔がガン開きして灰色に染まったかと思えば、とんでもないハイトーンボイスをブチかます。
それもただ出るだけの高音じゃない。厚みのある、低音もしっかりと入った本当に突き抜けるような高音だ。正直すっげぇ羨ましい。
その後も高音を中心に中低音域も難なく歌い上げ、ステージ上で飛び回り観客を煽る姿はまさにミ〇ジ。もしくはヒ〇トだ。マジでそれを髣髴とさせる暴れっぷりとカリスマ性だ。
歌の上手さっていう点でなら、若干タイプが違うとはいえ夏樹さんに匹敵するレベル。ここってマジですげえ人ばっかりなんだな。
こんなにちんまい子のどこにそんな力があるんだ。15歳でこの完成度なんだから、成長してしっかりと完成したらいったいどんな歌手になるのかマジで楽しみ過ぎる。もうシンプルにファン。
「そうだ……光さん、今日頼んでた映画が届いたんだけど……みんなで見ない……?」
「あー、夜は寝れなくなるから勘弁だな。明日なら大丈夫だよ。前川も見てくれるって言うし」
「うぇ゛え゛っ!?」
「本当……? やった……!」
「なんでみくも見ることになってんのー!」
「いや、面白いかなって」
たかが映画でなぜこんなに前川が嫌がるか気になるだろう? それはこれまた小さい女の子、白坂小梅ちゃんの趣味にある。
右目どころか顔の右側がしっかりと隠れている金髪片目隠れなのに、長さ自体はショートカット。そして13歳という年齢にもかかわらず、耳にはバチバチのピアス。
性格は今のところ接している感じ、かなり大人しめだけど所々で特異性が垣間見えるなといった印象。そしてその特異性は、趣味に大きく出ている。
ズバリ、この子の趣味はホラー映画を全般とした、アングラなホラー系統の物。そしてスプラッタ系統の映画も得意ときた。
正直、俺はホラーはともかくスプラッタはそこまで得意じゃない。演出だとわかってても、やっぱり人間として心の底から感じる嫌悪感は拭えないからね。男の子でも怖いもんは怖いんじゃ。
と、言うわけで前川を巻き添えにした。スプラッタ系統なら前川とは言えトラウマになりかねんから俺一人で付き合うけど、ホラー系統なら問題ない。
根っからの芸人気質で、ホラー映画に付き合ってきた前例のある前川なら大丈夫だ。俺も一人で見るのは怖いから付き合ってもらうぞ。マジで。
あと、霊感があるみたい。俺にはしっかりと視覚出来ないが、あの子と呼んでいる友達がいるみたいで、よくナチュラルに会話したりして周りの女の子をビビらせている。直接危害を加える訳じゃないんだから、そんなにビビらなくていいのに。
「本日の晩餐は禁断の果実か!」
「蘭子! 今日は少し、遅かったですね」
「うむ、しばし我の力を来るべき時に解き放てるようにな」
「蘭子ってハンバーグ好きなの?」
「Совершенно верно.蘭子、ハンバーグ大好き、なんですよ?」
はえー、それは良いことを聞いた。いや、そんなに役立つ情報じゃないけど、こういう人と人との付き合いでは細かい情報の把握が大事になってきたりするからな。
その人の好きなものや食べ物を知ってるだけで、意外と役に立つものだったりするんだで?
「あぁ、そういや蘭子。明日、小梅ちゃんと映画見るんだけどさ。前川も来るんだけど、どう?」
「もうみくが一緒に見るのは既定路線なんだにゃ……」
「う、うむ。そのような残虐な賛歌は我のプリファレンスに反する。我は悠久の時に向けて、今暫く力を蓄える必要が有るのでな」
「おー、そっか」
よくわからんけど、多分色々あって見るのはやめとくって事なんかな。反するって言ってるし。これを完璧に翻訳する飛鳥ってすげーよな。俺じゃあ無理だわ。適切な言語に変換なんて出来る気がしねぇ。
というか、この焦りよう。もしかして、蘭子ってホラー苦手だったりする?
いや、おかしい話ではない。そもそも14歳の女の子でホラーが得意な女性なんて絶滅危惧種だろうし。俺のすぐ近くにいる霊感持ち幼女がおかしいだけで。
「飛鳥もホラー苦手だったりするのかな」
「得意じゃないんじゃないか? そーいうイメージないし」
「飛鳥ちゃんも、多分、得意じゃないかも……」
中二病の人ってそういうのに強いイメージあるけど、意外と弱いんだな。まぁ、目の前にいる眼帯ちびっこもホラーとか絶対に無理そうだし、もしかしたらそういう傾向があるのかもしれないね。
「って言うか、話が180度変わるけど、美玲それ暑くないの?」
「これか?」
「そう、そのパーカー。頭蒸れないのかなって」
「全然大丈夫。てゆーか、ウチ夏でもパーカー着るし」
「暑くね?」
「パーカーって長袖だけじゃないしな。夏には夏用の服がちゃんとあるんだよ」
はえー、流石おしゃれ。一つのブランドにしっかりとこだわってるだけある。
そういうの良いよな。俺ってば服に無頓着だからさ、全然美玲みたいなおしゃれできないんだよ。いや、美玲のが全年代に受ける服装かどうかは置いておいての話だけどね。
時期はもうすぐ夏に差し掛かる。平日昼間は30度に引っかかる日も増えてきて、周りの女性たちの露出も増えてきた。唯さんとか周子さんとか平気で肩とか腹丸出しの服着るから勘弁してほしい。そして、室内にいる時に俺がパンツ以外の衣服を着用しなくなる。
夏場とかマジで服を着る理由が分からん。あんなもん暑いだけだろ。すっぽんぽんが最適解って100年前からじいちゃんが言ってたんだから。
「美玲っておしゃれだなー」
「今度、ウチがヒカルの服コーディネートしてやろうか?」
「やめとく」
「うがーっ! なんでそんなにすぐ断るんだよ!」
「俺の知り合いで服を選んでくる奴は、大体衣服の趣味が偏ってるんだよ」
凛も割とそういう傾向あるしな。ピンク好きの美玲に衣服をコーディネートさせたら全身真っピンクの超捏ファンキーぱっと見ヤンキーが誕生してしまう。それは流石に不味い。
「俺は夏場は裸で良いんだよ」
「えっ、ヒカルって露出狂なのか……?」
「ちゃうわい」
「光クンは部屋の中で服を着ないだけにゃ。変態にゃ」
「自室なんだから良いだろ別に!」
自室でくらい自由でいさせろよ。パンツ履いてるだけマシなんだから。
いや、幾らここが女子寮とは言えここだけは譲れん。俺は自室では服を着ないって決めてるんだ。すっぱの状態でベースやギターを弾くと、ボディのひんやりした感じがこれまたいいんだ。これぞ特権。
「Новаторский! これが、クールビズ、ですね!」
「ほら! アーニャちゃんに変な知識を植え付けた!」
「違う。俺は何もしていない」
なんでかの方向で絶対に俺がダメージ食らうようになるのやめん? 俺の身が持たないよ。確かにクールビズかもしれないけどね?
そもそも衣服を着用なんかしなければ、風を肌で感じられるし、何より涼しい。アーニャちゃんが言ってることは何一つ間違っていない。じゃあこれがクールビズじゃん(開き直り)
「真のクールビズ開拓したかもしれんわ。これで明日の映画も乗り越えられること間違いなし」
「明日の映画に付き合うからその腐り切った謎の結論を今すぐ新聞紙に包んでゴミ捨て場に捨ててくるにゃ」
読者層気になるので知りたいアンケ
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