女子寮生活は難儀です   作:as☆know

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忘れ物した時のアテはちゃんと作っとけ

「ヤバイヤバイヤバイ! 挟まれてるって! これエグイって!」

「はい、崖外俺の独壇場死にゃあ! おrrrrァ! あっやべメテオしくっt」

「そこ隙オッルァ! あっやべ」

「もろたで工藤! ちぇいやー!」

「ああああああっ!!! 戻れん無理無理!!!!!」

「馬鹿が! フハハハハ!!!」

 

 

 皆様、これが男子高校生の日常でございます。火曜日三時間目の2時限目終わりの放課の時間は、10分間決まってスマ〇ラをするという決まりが、我がクラスにはあるのです。

 学校にいる間で、この時間が一番楽しいまであるよね。たまに廊下を通る先生にバレそうになる以外はマジで完璧。あの時の隠ぺい工作の鋭さは、もはや金を取れるレベルにあると思うね。アレは早い。早すぎる。あの速度はイかれてるね。プロの仕事人の領域だから。

 隠す速度、隠す場所、言い訳の汎用性、裏での口実合わせ。全てに隙が無い。これが世間では無敵と言うのだよ。

 

 4人でまとめて大乱闘する様はまさに地獄絵図。タイマンではそこまで凶悪とは言い切れない、高火力おじさんや、永遠のTier1さんや、無限爆弾ポイポイおじさんなんかが無双しています。軽量キャラに人権などない。ピンクの風船などただの的です。無慈悲。

 

 

「松井ー。お友達来てるぞー」

 

「わり! 今、手ぇ離せないからちょっと待ってもらってくれー! これ終わったら行くー!」

「隙見せたな! あっカウンtああああっ!」

「馬鹿が! 俺がそう簡単に隙を見せるかよボケ!」

 

 

 今西からなんか言われているが、今はヤバイ。それどころじゃない。もう頂上決戦。タイマンでの一発勝負。

 タイマンまで何とか持っていければな! 高火力おじさん如き、なんとでもなるんだよ! 外に出せば絶望的復帰力で死あるのみだからな。勝ったな、ガハハ! たまに事故るから死ぬけど。

 

 

「回避読みそっちィ!」

「はぁああああっ!」

「はい雑魚乙~」

「クソッタレにもほどがある。3択外した」

 

 

 そんな余裕ぶっこ抜いてたら横B食らって、右回避をしたらそっちに大剣が真上から振ってきて一発で死んだ。なんちゅう火力してんねん。

 ダウン取られた後、その場回避か回避の左右で死が確定するの、本当に高火力おじさんと対面していて嫌な所。嫌と言うか、もうやっててヒヤヒヤする。心臓潰れちゃうわよ。

 

 

 

「惜しかったね」

「いやー、運ゲー」

「ダウンに持ち込んだ俺の勝ち……ん?」

「あ、初めまして」

「……うぇぇっ!? 渋谷凛!?」

「凛じゃん。なんで?」

「順番逆じゃない?」

 

 

 いつの間にいたんだい君は。急に後ろから頭ポンポンされてびっくりしちゃった。人の後ろに知らん間に立たない方が良いよ。頭ポンポンと合わさって二回びっくりしちゃうからね。

 

 後ろに立っていたのは渋谷凛さん。マジで校内では接点なかったんだけど、一応うちのクラスの後輩にあたるんだよね。

 さっき今西が言ってた客って言うのは凛の事だったのか。勝手に入れやがって。別に、このクラスに勝手に入ってこようが、全然いいことなんだろうけど。待っててくれたら行ったのに。なんか悪いね。こんなところに入れちゃって。

 

 

「いや、本物かわっ……お嬢さん。どうしてこんな辺境に」

「今すぐおもてなし致します故、どうぞこちらの席に……茶ぁっ! 鶴〇の麦茶じゃなくて伊〇衛門持ってこぉおい!」

「任せろ! 今すぐ買ってくる!」

「いや……そんなことしなくても……」

「ほっとけ」

 

 

 お前ら目に見えて目の色変わるやん。そんなに凛がいるだけでビックリするかね。確かに、うちのクラスには凛くらいに美人だったり、ずば抜けて可愛い女子がいるわけでは無いが。あっちの女子の反応見てみろ。後で死ぬぞ。お前ら。

 凛もかなり困惑しているし。お前ら、彼女とか出来たことないんか。俺も無かったわ。泣いた。

 

 

「んで、どしたの。珍しい」

「ピック、貸してほしいんだけどさ」

「なんで?」

「音楽の授業でギターやるって聞いたから」

「理解した。ちょっと待ってろ」

 

 

 恐らく、凛が言いたいのは、音楽室においてあるようなピックや指で引くよりも、普段から使っている俺のピックを使って弾きたいって言うことだろう。

 その気持ちものすごーくわかるぞ。弾くからにはちゃんと弾きたいんだな。こういうところはなんか似てるな。そこまで本気じゃないけど、こういうところは気にしたりするし。

 

 そんなわけで、ベースの入ったケースのポケットから、ピックの入った小さなケースを取り出す。カポッとそれを開けると、中には10個近くのピックが入っている。そこから2つほど、普段凛がよく使うピックを取り出す。

 俺は結構硬めのピックが好きなんだけど、凛はやや柔らかいのが好みなんだよな。俺も曲や用途によって使い分けるから、割とこれ! って決まったピックを使うわけじゃないし、そういう意味では持ってるピックに幅があるから、こういう時には助かるよね。

 

 ピックって、音楽をやってない人からしたら意外かもしれないんだけど、実はガチガチの消耗品なんだよね。ベースとか特に。結局、ベースの弦をピックで弾いたりすると、どんどんピックが削れていくんだよね。

 俺はおにぎり型のピックを使ってるから、三面が削れるまでケチったりは出来るけど、それでも限度はあるからな。ピックが安くてよかった。

 

 

「ね、光」

「ん?」

「ネクタイぐちゃついてる」

「マジ?」

 

 

 そういえば、さっきちょっと動いたもんな。そん時にぐちゃぐちゃになったのか。

 普段からネクタイとか全然気にしてなかったから、気が付くどころか気に留めても無かった。そもそもネクタイとか気にしなくね?

 結び方すら適当にやってるわ。いっちばん簡単な方法でやってるんだもん。なんか他の人のネクタイとちょっと違うんだよな。

 ピンでパチンのタイプでも良かったんだけど、ネクタイとか結べて損はないだろなんてちょっとイキってたのが間違いだった。結局、手は抜くからなぁ。

 

 

「こっち来て」

「あい」

 

 

 手招きする凛に言われるがまま、凛の前に立つと、そのまま凛が俺の首元に手を伸ばし、慣れた手つきでネクタイを外す。少し背伸びをして首からぐるっと手を回してネクタイをクビにかけようとするので、少し合わせて屈んでみる。そうすると、凛は慣れた手つきで、もう一度、俺のネクタイを結び始めた。

 さっき屈んだ時、凛の髪からめっちゃいい匂いしたな。何回も似たようなシチュは有ったけど、やっぱりなんか慣れないもんだね。

 

 なんかあれだな。昭和の夫婦って、こういうことしてるイメージあるよな。最近はそういうこととか無いんだろうけど。時代は変わるんだなぁ。昔とか知らんけど。

 

 

「屈んだ方が良い?」

「大丈夫」

 

 

 それにしても、女の子って本当に器用な子が多いよな。凛も特別器用ってイメージは無かったけど、こうやって人のネクタイをいとも簡単に手際よく結んでいるのを見ると、やっぱり女の子って俺ら男子とは違うんだなぁって感じるね。

 

 

「出来たよ」

「速い」

「光に比べれば」

 

 

 自信満々と言った感じでございますね、貴方ね。

 チキショー! ネクタイ一本結ぶ速度で俺は凛にマウントを取られるのか……全然、別に気にはしないが。

 そんなわけで、ポケットからピック2つを取り出して、凛に差し出す。

 

 

「一応、2つ渡しとくよ」

「ありがと。また返しに来れば良い?」

「ここ、回り道だろ。とりあえず持っとき。返しても返さなくても良いから」

 

 

 このクラスは、凛たちのいる1年生の校舎の階からだと音楽室と直通の位置にはなく、どう考えても回り道になっちまうからな。めんどくさいったらありゃしない。

 しかも、この時期暑いからな。出来る限り動きたくねぇ。歩く距離は減らしたい。

 

 

「それは嫌だ。じゃあ、今日また仕事終わったらそっち行くから」

「あー、そうだな。そんなら、そん時で良いね」

「ん。ありがと」

「良いって事よ」

 

 

 そういえば、今日も普通に凛は事務所に行くもんな。じゃあ、その帰りに寮によってくれればいいわけだわ。どうせ、しばらく部屋にはいるだろうし。丁度良いね。

 

 

「あ、先輩たち。いつも光がお世話になってます」

「「「「いえいえ、心配なく」」」」

「ハモんな」

「ふふっ、良い人達だね」

「悪い奴ではないよ」

 

 

 お前ら全員キャラ変した? ってくらいマジで立ち振る舞いが違うんだが。もう鍛えられた自衛隊くらいに揃っていたんだが。

 すげぇな。女に飢えた男って、ちゃんとした美少女を目の前にするとここまでなるのか。珍しいもん見た。

 あと、ここまで外向きの凛も久々に見た気がする。本当に丸くなったな。昔とは比べ物になんねーや。

 

 

「じゃあ、行ってくるね」

「行ってら。こっから音楽室の行き方わかる?」

「方向音痴じゃないし。わかるよ」

「ならばよし。じゃ」

「ん。またね」

 

 

 そんなわけで、ひらひらと軽く手を振って教室を出る凛を見送る。

 いやー、珍しいこともあるもんだ。珍しいどころか、初めてだもんな。うちのクラスに凛が来るって。

 

 そりゃあ、普通に考えれば機会なんてそうそうないもんな。

 凛の性格上、忘れ物とかは少ないだろうし。あったとしても、同学年に加蓮って言う別クラスの友達がいる時点で、そもそもアテはある。一個上の学年にも奈緒がいるし、わざわざ俺に物を借りるなんてそうそうないもんな。

 今回みたいな、俺しか持ってないようなもんが対象の場合なら、また別だろうけど。

 

 

「おい」

「なんだ」

「説明したまえ。ありゃ彼女か。彼女なのか。お前、彼女がいないって嘘なのか」

「彼女ちゃうよ」

「彼女じゃない女の子があんなことするわけないでしょうに!」

「でもやってるじゃん」

「じゃあ彼女じゃん!」

「お前らの選択肢は二択しかないのか」

 

 

 この後、男子にも女子にも、俺と凛がどういう関係なのか死ぬほど詰められた。何度説明しても、話が通じなかった。意味わからん。

 

 どうやら、俺が思っていた以上に、渋谷凛という存在は世間から見て有名になっているらしい。ニュージェネレーションズも大きくなって行っているんだな。なんか嬉しいや。本当に残って良かったね。




本当にお久しぶりです
モチベを戻すために無理やり這い上がってきました頑張ります(他力本願時)

読者層気になるので知りたいアンケ

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