「千川さん。ひとつ聞いていいですか?」
「はい!」
「女子寮ですよね?」
「そうです!」
「女の子しかいませんよね?」
「もちろん! 学生のアイドルの子しかいません!」
どんどん血の気が引いていく。
しかも今さ、アイドルしかいないって言わなかった? しかも同年代の学生の。
「俺、家からここまで通える距離なんですけど」
「でも遠いんじゃないですか? 女子寮の方が通いやすいですよ!」
「いや、俺の家は凛の家の隣なんでこいつと通う距離は変わらないです」
まぁ遠いといえば遠いよ。今日もここまで来るのに電車で一時間かけてきたし。凛って大変なんだなって思ったよ。
「そもそも俺、学校がありますし」
「こちらで勝手に調べてもらいました。松井さんの通ってる学校ですが、女子寮から通った方が近いですよね?」
「なんで分かるんですか」
怖い怖い! そこまで調べたんですか千川さん!
そりゃ立地的にはここは強いですよ! 大都会のど真ん中ですしね? とは言えよ。立地的にいいね! よし住もう! とはならない訳よ普通。
「というか一緒に住むアイドルの子達の気持ち考えてくださいよ! 普通に嫌でしょ! 」
「そ、そうにゃ! いくら会社の方針でもそれは横暴だにゃ!」
「お、男の人と同棲……同棲……はぅ」
「うわわっ!? 智絵里ちゃーん!」
「大丈夫です! そのうち慣れます! この世界に常識なんか通用しないんですよ!」
んな無茶苦茶な。
そもそも自社の大事な大事なアイドルを獣みたいな男子高校生と一緒に住まわすなんて行為が普通じゃない。いいのかそんなんで。てか冗談だよね? 流石に冗談だよね?
「プロデューサーさんもなんか言ってよ!」
「そうだよ。Pもなんか言ってよ」
「……申し訳ありません。こちらにも事情がありまして」
「」
縦社会こわい。プロデューサーさんが今までで一番の困ったオーラを出してるやん。
もっと上からの圧力だって言うのかよ。天竜人ォ!
「凛もなんか言えよ! 俺が近くから居なくなったら嫌だよな!?」
「いや、それに関しては別に」
「そこはせめて嫌だって言ってくれよおおおおおおおおおおおお!!!!
「最近あんまり直接話してなかったし」
確かに言われてみればそうだけどさ? 物心付いてから隣の家で長いこと一緒にやってきたジャマイカ。僕は悲しいよ。俺だって凛がアイドルになるって言ったとき、ふーんとしか思わなかったけどさ!
あっ、それだわ。それとおんなじだわ。距離近すぎてなんかあっても特に何とも思わなくなるやつだわ。
「てかそもそもそんなの会社が許しているんですか!? なんか間違いあったらどうするんですか!」
「会社からの許可もなにも会社全体の方針ですし、それだけ急務なんです。間違いがあったその時は……ね♪」
なんでちょっと嬉しそうな顔してるんですか。笑い事じゃないんすよ!
てかありえない! 女子寮ですよ!『女子』寮!
「そもそも風呂とかどうするんですか! トイレも!」
「安心してください。 346プロの女子寮は元々あったホテルを改修したものなので、トイレもお風呂もちゃんとありますよ! まぁ、昨日までは両方とも女性用でしたけど」
それって簡単にいえば急造じゃないんですかね……間違えてアイドルの子が入ってきたりしたらどうするつもりなんですかね、ほんま……いや無いとは思うけど。
「それにです! うちの女子寮はそこらへんのマンションなんかよりも豪華なんですよ! 私も入りたいくらいなんです!」
「でも俺男ですよ」
「……そこらへんは気にしたらダメです」
「そこは一番気にしなきゃダメなとこだろうがよおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
「こちらがこれから松井さんが生活していただく女子寮になりまーす」
「……えっ、なにこれは」
見るだけ! 見るだけですから! なんて言いくるめられて千川さんとプロデューサーさんに連れてこられたのは、女子寮と思わしきとてつもなく立派なホテル。もはやホテル。ただのホテル。
ただ、すぐ目の前には高級なホテルとかにありがちな石に文字が書いてあるアレに『346プロダクション女子寮』としっかり彫られている。
「これが寮ですか?」
「はい、寮です!」
「ホテルとかじゃなく?」
「もちろん!」
「どんだけ金あるんすか()」
「稼がせていただいてますから」
何がとは言わないですけど、ってドス黒い笑みを浮かべてるように見えるのは俺だけでしょうか。プロデューサーさんはずっと申し訳なさそうだし。
「取り敢えず中に入ってみます? 今の時間はほとんどアイドルの子達もいないと思いますよ?」
「はぁ……」
「れっつごーです!」
一人ウキウキな千川さんの後ろをとぼとぼとついて行く俺とプロデューサーさん。俺たちって将来嫁さんの尻に敷かれるのかな。千川さんがパワフルすぎるのかな。
玄関に入ってすぐにある学校の上履き入れみたいな棚に靴をぶち込む。女の子がよく履くヒールなどに大きさをあわせたのか。学校にある棚よりも一回りくらい靴入れが大きい。
何故か人のいないホテルの受付みたいな所を通り過ぎると、そのまま奥に通される。
やっぱり広いっすねぇ……。
「はい! こちらが光くんの部屋になります!」
「いやもうなんかもう名札付いてるゥー!」
「千川さん……いつの間に……」
とてつもなくでかい大浴場や、とてつもなくでかい共用リビングや、とてつもなくでかい食堂などを回った後には最後の目玉。
まるで前から既にありましたよって雰囲気を出しながら『松井光』の文字がドアの隣に貼りついてる。
他の部屋にも付いてるからパッと見だと違和感ないのやめてくれ。俺だけ男なんだよ。
「ささ、どうぞ! 鍵は空いていますから!」
「どうも……?」
促されるままお邪魔します、とドアを引く。お邪魔しますであってるのか。あってるわ。
中は窓から差し込む陽の光だけで照らされている。と、思ったら千川さんがすぐ横にある照明のスイッチを押してくれた。
足元見てなかったけど、ちゃんと土間もあるのか。まぁ今スリッパ履いてるからそのまま上がってもいいんだけど。俺は部屋だと裸足の方がいいからスリッパは脱ぐか。
「風呂もあるんだ」
「はい。大浴場だけではなく、しっかりと個人用のも部屋に用意してありますよ」
バスルームもめちゃくちゃ綺麗だ。ホテルにあるトイレとバスルームが一緒になってるのを想像していただけるといいだろうか。まさにアレ。
元々ホテルだと言ってたし、それの名残りなんだろう。
「キッチンまで。しかもちゃんとしてる」
「今なら冷蔵庫などの家電製品も付いてきますよ!」
「神か?」
家のキッチンに比べると少し狭いが……マンションならこんなもんだろう。マンションじゃなくて寮だけど。
あれ? ここ寮だよな?
「それでこちらがリビング兼寝室ですね」
「やっぱり広いっすね……俺の家の部屋よりも広い」
ベッド、テレビ、備え付けのでっかいクローゼット。それに加え机も置いてある。
うん、ヤバいな。今のところ完璧すぎる。一人暮らしするには完璧すぎる環境では? 実は一人暮らしはずっとしてみたかったし、なんなら高校でたら自分も両親も一人で暮らす気満々だったし。
ご近所さん全員アイドルってのがあまりにもネックすぎるけど。
「……ん? あのギターってもしかして」
「光さんのですよ? お先に持ってきました」
「お先に、とは?」
「後から他の荷物もどんどん届きますよ!」
「?????」
「そんな訳でいかがでしょうか! もちろんWiFiも完備してますし、災害があってもここの耐久性はピカイチですので安心ですよ!」
圧が強い圧が強い! 近い! そして近い!
というかこれもう移動の準備進めてるよね? 先に貴重品のギター持ってきただけじゃねこれ!?
「まずは一週間から! ね? ね!?」
「そんな体験入部みたいな……」
「気に入ったらそのまんま入ってもらっても出てってもらってもいいですから!」
「ま、まぁそれなら……」
「はい」
「えっ」
「言質、取りました♪」
ニコニコ顔の千川さんがすっと顔の横に持ってきたのは、黒くて小さいマイクみたいな穴の空いた機械。ボイスレコーダーとか僕本物見た事がないんだけど。現物?
んーっと、あれ? 録音済み?
「松井光さん。これからの346プロアイドル部門、よろしくお願いしますね!」
これもしかして、終わった?
お願い死んでらぁしちゃった?
デレアニ(アニメ版デレマス)を見たことがある?
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1期2期全部見た!
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どっちかorちょっとだけ見た!
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見てないわからん!
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NO MAKEも知ってる!