女子寮生活は難儀です   作:as☆know

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試験勉強は計画を立てる所から勝負

 こういうクソ暑い時期は、クーラーの聞いた施設が天国に感じる。どこに行くにも、とにかく暑いから一旦どっか入らね? ってなるのが、我ら日本人の日常になりつつあるよね。

 

 

「なーお、ポテトあーんってやってよ」

「自分のがあるだろ。いいけど、ホラ」

「ん~! なんか、メイドカフェみたい」

「あのなぁ……」

「キャバクラでもそう言うのありそうだよな」

「ドが付く偏見でしょ。知らないけど」

 

 

 対面で繰り広げられるイチャイチャを横目に、俺はスマホに目を通す。加蓮、毎回奈緒に甘えてんな。甘やかす奈緒も奈緒だけど。

 

 学生のたまり場とも名高い、マク〇ナルド集まった、我ら四人組。渋谷凛、神谷奈緒、北条加蓮、松井光の中学からの付き合い四人組。

 学校終わりの帰り際に、四人で集まってのんびりおしゃべりでもするんですか? なんておもいましょうが、そんなわけではございません。

 

 

「こうやって集まるのも、一年ぶり? 二年ぶり?」

「前にもあったっけ」

「確か、最後に集まったのが、あたしらが中二の時じゃないか?」

「あーあー、あったわ多分」

「忘れてるでしょ」

 

 

 まぁ、忘れてはいるな。二年前の事とか、そうそう覚えてはいないだろ。少なくとも、俺はもう忘れてたわ。

 確かあの時も集まった理由は……

 

 

「そうだ。今日テス勉じゃないん?」

「そうだけど?」

「そこのコロネさん、めっちゃお前のポテト貪ってるが」

「これはいつも通りだろ」

「今日はいつも通りではいけないのでは???」

「ま、加蓮は余裕なんでしょ。奈緒も頭いいし」

 

 

 それはそう。と言うか、このメンバーだとずば抜けて学力低いのって俺だし。

 

 凛は理解力も高いし、要領もいい。ちゃんと計画を決めてしっかりとテンポよく行けるタイプ。

 奈緒は凛ほど器用じゃないが、努力することが出来るタイプ。凛と同じで計画を立てて、しっかりとそれに沿ってやる真面目ちゃん。

 加蓮はちゃんとテスト勉強の予定は立てるが、ちょくちょくサボるタイプ。その代わり、要領は良いのでなんやかんやで成績は悪くない。

 僕は計画も立てないわ勉強もしないわで散々。毎回、必要最低限の勉強しかしないので赤点回避に必死になってる。必死になるほど、勉強はしていないけど。

 

 そんなわけで、今日はテスト勉強会的なやつinマ〇ク! 関西の人が見たらマ〇ドだろって怒られるかもしれない。

 こんな学生のたまり場みたいな騒がしい場所に集まるよりも、静かな学校に残って4人で勉強した方が効率良いんじゃないのかとは思うが、主催者の加蓮曰く、そう言う問題ではないらしい。どういう問題だよ。俺も勉強する気はないけど。

 

 

「所がどっこい、そうじゃないんだよねー」

「所がどっこいも何もないが」

「数学今回マジで鬼じゃない?」

「俺に言うなよ。俺は二年なんだから」

「まぁ難しいけど、許容範囲じゃない?」

「アタシは厳しいのー」

「じゃあ勉強しなよ」

「そうだけどさー」

 

 

 わかるぞー、その気持ち。

 ヤバいってわかってるならやれよと言われ、やるしかないって言う事実は理解しているんだけど、頭が理解しないんだよな。拒否する。拒絶反応。人間としての防衛本能。違うな。

 

 

「そのためのこの二人じゃない? ね、センパイ!」

「奈緒に教えてもらえ。俺はわからん」

「来たのは良いけど、あたしも覚えてないんだよなー……」

「じゃあ集まった意味ないじゃん」

「4人で集まれたし、そうでもないって」

 

 

 加蓮は多分、4人で久々に集まりたかったんだろうなー。後はポテトを食いたかったんだろう。こいつ、こういうジャンクフードめっちゃ好物だし。

 普通に考えれば、一年前くらいの内容くらい覚えていそうなもんだけど不思議だよな。もうミリ単位で覚えてないんだもん。俺が異常かと思ったが、奈緒もあんまり覚えてなさそうだから安心した。安心するな。

 

 

「てか、お前は自力で何とかなるだろ」

「私も完璧超人じゃないんだから……最初は簡単だったけど、普通に厳しいよ。やっと高校って感じ」

「ま、最初のテストなんて中学の復習だしなー」

「なんか最初から厳しかった記憶あるんだけど」

「それは光が勉強しなさすぎなだけでしょ」

「加蓮は大丈夫だったのかよ」

「勿論」

「クソッタレ」

 

 

 畜生! 加蓮もどちらかと言うとこっち側の人類だと思っていたのに! そういえばというか、ちゃんとこいつ要領は良いんだった!

 本当に、何事も最初の方って芯の部分とか本性が見えないよな。ちゃんと長い事疑いの目は向けなきゃダメって誰かが言ってた気がする。

 

 

「とはいえ、今回はあたしもヤバいんだよなー。光は?」

「もう任せてくださいよ。当然、死」

「じゃあ誰が教えるのさー!」

「私は無理だから」

「株式会社『今期は終わった』代表取締役松井光と申します」

「その会社、今すぐ退社した方が良いぞ」

 

 

 もう俺の今の目の前の視界にはダ〇ソのアレが出てるから。YOU DIEDの赤文字が刻まれてっから。死にゲーだから。テストは一回勝負だから死んだら終わるけど。

 

 うーむ。完全に立ち往生してしまった。

 こういう勉強会って、基本的に三人集まれば文殊の知恵みたいな理論の元、人数寄せ集めりゃ誰かはどっかわかるだろの精神に基づいているからな。

 

 だが我々はちょっと違う。なんてったって、それぞれ二人ずつ学年が違うんだから。そもそも内容も違う。実質二人で勉強しているようなもんだ。それこそ、誰か飛びぬけて頭が良い奴とか呼んでこないとどうにもならない。

 頭のいい奴……頭のいい奴かー……

 

 

「心当たりがあるかもしれん。最近培ったこのコネクションならば」

「光って友達いたっけ」

「馬鹿こけ。普通におるわい」

「ふーん……最近培ったコネクション、ね」

「光……お前もしかして……」

「まぁ応じることは無いっしょ。ダメもとダメもと」

 

 

 流石にこんな急に呼んでくるほど暇な奴らじゃないからな。俺が今頭に浮かんだ、頭のいい人物。

 美波さんとかも思いついたけど、流石に大学生にもなって高校の内容は覚えていないだろう。美波さんも相当頭は良いという勝手なイメージはあるけど、失礼な話、イメージはあくまでイメージだしな。

 

 そう言うわけもあって、少なくともターゲットは俺たちと同じ高校生。そして、一年生では俺達が勉強を教えてもらえないので、高校二年生から三年生へとターゲットは絞られる。

 となると、俺の知り合いでこの条件を満たす人はかなり絞られるわけなんだけど、まぁ来ないだろ。大丈夫大丈夫。あの人たちも人気だから。そんな余裕ないって。語尾に(笑)が付くレベルで無いから。俺レベルになると、もう語尾にwまで付けちゃうんだからwww

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「珍しくキミかLI〇Eが来たなんて思ったら、まっさか勉強とはね~。ちゃんと学生さんしてるんだ~♪」

「そういう時にだけ連絡寄越すの、なんか癪に障るのだけどね」

「と言うわけで、なんか召喚に成功しました。こちら、ギムレットか岐阜天丼と、偶々暇だったアイドル二人でございます」

「いちおーギフテッドの志希ちゃんでーす♪」

「速水奏。この馬鹿よりかは成績は良いから、少しは役に立てると思うわ。よろしくね?」

 

 

 

 えー、こちら、なんか知らんが海外ではとんでもねぇ天才だったと評判の一ノ瀬志希ちゃんと、うちの学校では文武両道と話題だったらしい速水奏さんです。ちゃんと理系と文系、両分野に分かれてるね。二人ともどっちも出来るだろうけど。

 

「は、初めまして。北条加蓮です」

「ふふっ、そんなに緊張しないで良いのに。奈緒や光と同じ、ただの高校二年生よ?」

「お前ッ! なんつー人たち呼んで来たんだよ!」

「仕方ねぇだろ! うちのクラスの賢い男子とはLI〇E交換してねーんだから! 賢い高校生でヒットするのがこいつと志希ちゃんさんくらいしか候補がいなかったんだよぉ!」

 

 

 ってそうじゃなーい! なんで二人とも来れるねーん!

 呼んでおいて何だけど、だって来るとは思わないじゃん。アポ無しでいきなり連絡したそのタイミングで丁度空いているなんて、そんな都合のいい話があるとは思わないじゃん。いや、あったんだけど。

 

 連絡をしたのは、わずか数十分前。既読すら付かんだろうと思ったら、もう奏に関しては速攻。あの志希ちゃんさんに関してもまさかの二分後に『いいよー』って返信が来る始末。

 そしたらもう話が早い早い。誘っておいた俺がこの二人が外で揃うのは不味くね? ってチキると、奏が『事務所のカフェなら空いてるじゃない』と。

 確かに、346事務所には学生が集まるにはもってこいのカフェテリアがある。部外者が入って良いのかは知らんが、奏が良いというなら大丈夫なんだろう。

 

 

「初めて芸能事務所なんか来たし、こんなカフェまであるんだ……」

「志希ちゃんさんは全員初見だっけ。奏は加蓮だけ知らないのか」

「ま、志希ちゃんそーゆーのあんまり気にしないから大丈夫大丈夫♪」

「貴方の周り、可愛い女の子しかいないのね」

「恵まれてるよな」

 

 

 いや本当、アイドルがいる事務所にいるって手前、可愛い美少女や美しい大人の女性に囲まれるのは必須なんですけど、なんだかんだ日常でも加蓮や奈緒みたいな可愛い子と親交があるんですよね。

 マジで環境には恵まれてる。なんで彼女出来ねぇんだろ。この二人を今更彼女にとは出来ないし、しようとも思わないけどさ。大事な友達だからね。

 

 

「……っていう建前は置いといてですよ。奏、今回のテスト範囲の問題解ける?」

「どの教科?」

「全部」

「まぁ、解けなくは無いけれど……理数系に関しては、志希の方が得意だからそっちに聞きなさい」

「へぇ、あんた文系なんだ」

「どちらかと言えばね。というよりも、志希が理系科目に関して異常に強いと言って方が良いのかしら」

「志希ちゃんさんすげぇ」

「そーでしょ!」

 

 

 こらっ、年上の人にそんな口の利き方しないの! 元から年上相手だろうと容赦しない節はあるけど、ちゃんと敬語使えてたでしょ!

 

 志希ちゃんさん、普段の変人のイメージが先行しがちだけど、よくよく考えなくても謎の薬を自作してたりしてる時点で、理系の知識がずば抜けているのは間違いないんだよな。

 あと英語に関しては、この人帰国子女だもんな。強い弱い以前の問題だ。チートすぎる。逆に参考にならんかもしれん。日本の英語のテストって、外国人の方が困惑するらしいし。

 文系科目はどうなんだろ。国語とか苦手そうだけど。見る観点違いすぎて素っ頓狂な回答しそう。

 

 奏がどちらかと言うと文系ってのも納得だなぁ。なんか、読書とか普通にしそうだし。

 理系に関しても、志希ちゃんさんっていう数学化学お化けがいるだけで、苦手では全然ないんだろうな。そもそも、苦手だったら成績学年トップクラスなんかにはならないし。文武両道と言っても限度があるだろ。チートか?

 

 

「そんなわけで、最強の教師役二人です。志希ちゃんさんが飽きる前にさっさと始めちゃおう」

「今の志希ちゃんは科学者モードだからね♪」

「ほら、今ならノリノリ」

「なんでお前はそんなにこんなにすげぇアイドルの扱いが上手いんだ……」

「慣れって本当に怖いよな」

 

 

 慣れって正義だよ。どうにもならないような状況も、何度か繰り返して慣れてしまえばもうそれは日常だからね。車買い替えるかぁくらいのノリでデスゲームってよく言うし。よくは言わんけど。

 

 科学者モードの志希ちゃんさんってワードを聞くだけで死ぬほど怖い。すげー意味わからん薬作りそうで怖くね? 俺は怖いよ。意味わからん薬飲まされて、指先一つも動かせなくなって、そうなったかと思えば超回復したからな。未だに副作用的なものは無いけど、逆にこえーよ。なんなんだあの薬。

 

 

「っしゃー! じゃあ頼むぞ。俺は無理だ」

「ダメよ。折角時間を作ってあげたのに、3人だけなんて格好付かないじゃない」

「わーお、意外だねぇ。奏ちゃんご執心?」

「そういうわけでは無いけど、せっかくだから。ねぇ?」

 

 

 こいつ……俺が勉強大っ嫌いなこと、知ってやがるな……そういう顔をしている。勉強が嫌いな旨を言った覚えはないが、多分今のやり取りから察したんだろう。

 なんで女の子ってそういうことを察するのすげぇ得意なの? 読唇術じゃんそれはもう。

 

 

「いやだー! 俺は最低限だけで赤点回避するんだー!」

「たまには平均点取って、お母さんとか喜ばせてあげなさい」

「母親はテストの点数なんかもう気にしない」

「させるのよ」

「奏ちゃんお母さんみたいだねぇ」

「うわー。年上の駄々をこねる姿、見てて悲しくなるなぁ」

「あぁ言うところがあるからモテないんだろうな」

 

 

 やめろよ! そういう正論言うの! この世に完璧な男なんてそうそういないんだから! 速水も〇みちくらいなんだから!

 

 うちの母親はもう成績に関しては諦めてるんだよ。いや、元々全然気にしてなかったんだよな。相対的にお父ちゃんの方が、よっぽど気にしていた気がする。

 僕の両親、めちゃくちゃ放任主義なのかもしれないな。今こうやって、ある程度の環境があれば一人で過ごすことのできる生活力手に入れられたから、良しとしよう。

 

 

「勉強できなくてもいいから彼女欲しいな」

「頭が良くなれば彼女は出来るわよ」

「なんで?」

「大手企業に就職してお金を稼げば、幾らでも女なんて寄ってくるじゃない」

「許さないけど」

「急に現実的な悲しい話するじゃん。玉の輿って怖いんだな……」

「まー、どの国でもそーゆーのは一緒だからね~」

 

 

 結局最後は金なのか、そうなのか。悲しいなぁ。勉強して大金持ちになって女も金もぜーんぶ手に入れてやるぞー!

 ってなるかーい! って話である。そういう所で勉強で来てたらね、もうとっくの昔に俺は名門高校に入学しているのよ。こちとら勉強だけからは逃げ続けた男だからな。保健体育以外は敵だ。

 

 

「赤点回避する程度でお願いします」

「ちなみに公式は覚えて?」

「ないですけど」

「にゃはー♪ ほんとに赤点回避が丁度良いノルマになりそうだね~」

「こんな豪華メンバー揃えてるんだから、せめて平均ぐらい取れよお前」

「俺は奈緒と違って頭わりぃんだよ~」

「あたしだって特別頭が良いわけじゃないしな」

 

 

 本当に赤点回避って丁度いいノルマよ? 良いノルマだと思うからさ、めちゃくちゃ真剣な表情でノートと教科書取り出すのやめない? 奏さん?

 あなた本当に綺麗な顔してるね。眼鏡もとっても似合ってるね。でも勉強は嫌なの。勉強だけは本当に嫌いなんです。やめてください! 活字も数字も見たくない! やめっ、やめてぇーっ!

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「別に見送りなんか要らないのに」

「都会で迷ったらお母ちゃん探せないから」

「あたしたちはお前の娘じゃねぇ」

 

 

 不満げな顔をしながらお腹をコツンと小突かれる。

 折角、普段来ない場所だから迷ったら大変だってことで、駅まで送ってやったというのに何という言い草と態度だ。その癖して手を振って改札入ってくのがおもろいんだけど。

 やっぱり、なんだかんだ良い奴らである。流石、我らが凛ちゃんのお友だち。

 

 勉強会は無事に終了。加蓮も奈緒も凛も三人揃ってキッチリ頭いい組のご指導を食らい、物凄い勢いで問題を解いていた。

 奏はなんとなく教えるの上手そうだなって思っていたけど、志希ちゃんさんも教えるのすんごい上手だったんだよな。先天的なガチ天才タイプって言語化とか苦手にしているもんだと勝手に思ってた。やっぱ実際と創作では中々違うんだね。

 

 

「あら、お見送りは済んだのかしら」

「志希ちゃんさんとお前らも俺に見送られる側だろ」

「あたしの事はちゃんと年上扱いしてくれるんだねぇ」

 

 

 そんでもって、何故かまだここにいる残ったアイドル組。君たち三人とも揃って寮住まいでは無いんだから。一緒に電車乗るはずなんだから。もっと言うなら、三人揃って電車通勤で電車通学なはずでしょ。志希ちゃんさんは知らないけど、今日は奏とここに来ていたから普段の移動は電車なはずだ。ここ、都内だしね。電車は神。

 

 

「三人は帰らないんすか」

「あら。さっさと帰れなんて酷いわね」

「いや、そういうわけじゃないんだけど。二人は帰ったし。今日、オフだったし拘束するのは悪いなって」

「ま、言っちゃえばオフに職場に来たって感じだしね~」

 

 

 帰れって言うわけじゃなくて、ここに残る意味がないって言うだけだから。いや、本当に。

 わざわざ来ていただいて勉強を教えてくれた人に、さっさと帰れなんて言うのは親しき中にも礼儀ありってやつだ。言うほど親しいかは知らないけど。

 

 

「そうね。確かに、言われてみればかなりの重労働だったのかも」

「ダメだよ。その後から俺になんか責任感とかそう言うの感じさせようとするムーブは。本当に負っちゃうんだから」

 

 

 以外とそういう所、ちゃんと気にする性格なんだからこっちは。あんまり責任感のっけて押しつぶしたら戻らなくなっちゃうんだから。伸縮性ゼロ人間だぞ。

 

 

「それじゃあ、デートくらいは一緒にしてもらってもいいかしら」

「ちょっ……!」

「あー! それサンセーイ!」

 

 

 おいやめろお前。とんでもない爆弾を急にポケットからスッと出すな。そういう面白そうな題材出しちゃったら、横にいる志希ちゃんさんが飛びついちゃうでしょ!

 多分だけど、お前最初っからそれ狙ってたな? 俺を弄ぶついでに、凛の事も弄ってやるって寸法だろ。顔でわかる。

 

 

「あら? 三人ならデートにならないじゃない」

「まーまー。海外では一夫多妻制も認められてるからにゃあ~」

「そういう問題じゃないです! 浮気はダメ! こいつにはちゃんといるから!」

「いないけどね」

「黙ってて」

「ごめん」

 

 

 今、凛ちゃんすっごい怖い顔してた。そんなマジ切れしてる顔見せないで。あんまり見たことないんだから怖くてちびっちゃうよ僕。

 

 海外では一夫多妻制が認められている国があるのかもしれないけど、ここは日本国であって、一夫多妻制は導入されていないんですよね。じゃなければゲス不倫なんて言葉は流行らなかっただろうし、伝説の野生の勘発言も出ないんだよね。

 

 

「それに、勉強以外でもあるでしょう? 私と志希には」

「え? なんかあっ…………ありました。あります。ご飯奢ります」

「……あんた、何したの」

「ごめん。絶対に言えん。死んじゃう」

「私は気にしていないんだけれど、ね?」

 

 

 さっきとは違う意味で、また怖い表情で振り向いてくる凛さんから申し訳ないと思いながら視線をずらす。

 なんかというのは多分水着の事だ。奏だけなら何のことかさっぱりだったが、志希ちゃんさんも含まれてるともう割とすぐに見当が付いた。確かにアレはこっちに対して脅し文句になる。なんて世の中だ。

 

 気にしてないとか嘘つけ。それを後ろ盾にしている時点で絶対に気にしていないわけがない。気にしていないとしても、水着を見せた時と全く同じポージングをしてきている時点で、確実に奢らせに来ている。

 金銭面で余裕がないわけないから、確実に俺と凛で遊んでる。なんて女だ。将来は良いお嫁さんになりそうな頭の回転力。

 

 

「そっか! キミ、水着の事まだ気にしてたんだ! 別に良いって言ってるのにー」

「あ゛」

「あら」

「…………ふーん」

 

 

 なーんでポロッと言っちゃうのかなー! 志希ちゃんさんだからかー! しっかたねぇなァー!!!

 泣きそう。辛い。奏も『あら。言っちゃったの』みたいに納めないでほしい。ちゃんと手綱は握っていて欲しかった。それ担当みたいなところあるでしょ貴方……

 

 

「水着? ねぇ、水着ってどういうこと」

「ごめん」

「ごめんじゃなくて、どういう事って聞いているんだけど。光? 私、怒ってないよ」

「怒ってない人は怒ってないって言わないっす姐さん」

「年下なんだけど」

 

 

 真っすぐ僕に向かって正対して、絶対に逃がさないという意思をひしひしと感じる距離感で見つめられる。両手も知らない間にがっしりと掴まれているので、本当に目の逸らしどころがない。

 とっても素敵な笑顔のはずなのに、とっても怖いです。アイドルスマイルがそれだったらぽたくは泣いちゃう。

 

 結局、飯は仲良く4人で行きましたし、凛ちゃんには滅茶苦茶詰められました。

 すんごく怖かった。あの時にニュージェネ総出で居なかったのは幸か不幸かだったんだね。今詰められるくらいならあの時いて欲しかったよ。

 でも、あの時ニュージェネで揃ってたら本田もあの場にいることになるのか。それは不味いわ。あれって詰みイベだったんだね。涙を流さざるを得ないね。

読者層気になるので知りたいアンケ

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