女子寮生活は難儀です   作:as☆know

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同棲は全ての始まり

 部屋が汚い。本日、俺の部屋に入ってきてから彼女の第一声はそれでした。

 折角外で晩飯一緒に済ませてきたのにごめんね。部屋がこんなんで。

 

 言っておくが、ゴミ屋敷というわけではない。確かに、ここ最近部屋に女性が部屋に来るという機会が激変したこともあり、客観的に見ても部屋がぐちゃぐちゃになっているのはあった。後は暑かったからね。動きたくなかった。

 外で買ってきた空のペットボトルが10本くらいそこらへんに転がっているのがとってもわかりやすい汚さと言えるかもしれない。掃除機も一週間くらいかけてはいない気がする。いや、ちょっとだらけちゃってね……

 

 

「ほら、はたき。クイックルワイパーやる前に、先に埃落として」

「はい」

「もう夜だけど、軽くやるから。こんな所で寝て体調壊されても困るし。エアコンにも埃はつまるから」

 

 

 お前は俺のオカンか、ってついつい言い返したくはなるが、全面的に掃除をしていないこちらが悪い。こうなってしまっては言われるがままだ。いつもは下ろしている髪を高めの位置でまとめ上げ、ポニーテールの完成。制服姿でポニテなんてとってもレア。というか、生涯でも2回くらいしか見た記憶がない。

 お掃除モードに入った凛ちゃんは、多分こうなったらもう止められないんだろう。そのモードに入ったところ見たことないから知らないけどね。なんか性格的に中途半端な仕事はしなさそうじゃん?

 

 

「ポニテなんて珍しい」

「似合わないのはわかってるから」

「似合ってるよ。眼福眼福」

 

 

 割と本気で褒めたつもりなんだけど、顔色一つ変えずにスルーされてしまった。どうやら、お褒めの言葉よりも目の前の汚れらしい。悲しいね。

 

 この部屋にいる期間は俺の方が長いはずなんだけど、彼女は手際よく部屋の隅から隅までぱっぱとはたきで駆け回り、クイックルワイパーで全ての汚れを回収した挙句、ベッドメイクに部屋の整頓までされてしまった。そのタイム、わずか20分と少し。

 その間、俺は担当されていたPC周りの掃除しかできませんでした。ほら……意外と本体回りって埃がたまりやすいし……中に入って詰まったりでもしたら壊れちゃうから丁寧にね……? ここら辺は、凛とかじゃわからないから……嘘です。手際が単純に悪かっただけです。

 

 

「終わり」

「…………手際良いのねぇ」

「パソコン周りに時間かけすぎなだけ」

「手厳しい」

 

 

 そんでもって、自分で整えたベッドにそのままポスンと横たわる。俺には丁度良いサイズのベッドだけど、凛が横たわると少し大きく感じる。俺が寝ている所を客観的に見たわけじゃないからわかんないけど。

 それと、スカートが若干捲れて怪しいことになってる。

 

 

「飯食った後に寝転ぶと良くないらしいぞ」

「十分動いたでしょ。誰かさんが部屋を片付けないおかげで」

「スカート危ないぞ」

「見えないようなやつ、履いてるから」

 

 

 思わず頭を抱えてしまった。いや、パンツが見たかったわけではない。

 本当か? もしかしたら、たとえ相手が凛だったとしても女の子のパンツは見たかったのかもしれない。だがその野望は、抱くことすら困難なものだった。男のロマンは、彼女が制服を着ていた瞬間から砕かれていたのだ。

 

 

「そんなにショック?」

「男のロマンが砕かれた」

「今から脱いだ方が良いなら脱ぐけど」

「風情がねぇだろ!」

 

 

 もっとこう……違うじゃん! そう言うのじゃなくて、違うじゃん!!!(語彙力)

 なんか上手く言い表せないけど、そういう後から脱ぐのではだめなのだ。多分、俺が求めているのはラッキースケベ。男性が代々継いできた由緒正しい書物。ToL〇VEるのあの神、結城〇トのようなラッキースケベを体感したいのだ!

 だから今の発言も刺さるのは滅茶苦茶刺さるし、多分相手が凛じゃなかったら脱いでって言いそうだけど、今はそう言うのじゃないんだ。って言うかそういうこと言うな! 男の子なんだぞ!

 

 

「あとそういうこと言っちゃダメ! 絶対にダメ! 男は狼なんだから!」

「別に。光以外には言わないし」

「だとしてもダメなの! 俺が襲うかも知れないでしょ!」

「私は良……今はダメかも……用意がない」

 

 

 さっきまで何ともない顔してたのに、急に不機嫌な顔にならないの。いつ何時であってもダメなもんはダメ。ちゃんとそう言うのは大事な相手としなさい。ちゃんと俺にもそういう欲は人並みにしっかりとガッツリと備わってるんだからね! 本当にダメだよ! 俺だって普通に我慢できなかったらどうしようもないからね!

 

 

「ま、でも状況が状況だよね」

「何が?」

「男の一人部屋。不用意に薄着でベッドに横たわる幼馴染。時間は19時も真ん中」

 

 

 確かに。状況はかなり不味いかもしれん。どっちの視点で不味いって? 凛視点に決まってんだろ。俺からしても不味い状況ではあるけども。ダブルミーニングだね。

 

 

「どう思う?」

「理性舐めんな。俺は襲わない。何故なら今日の俺はまだ風呂に入ってないから」

「私はそっちの方が好みだよ」

「ポロッと性癖暴露するな。知ってるけども」

 

 

 昔から匂い嗅ぐの好きだったもんね。実家がお花屋さんってのが関係しているのかは知らないが、小さい時から鼻が効く印象があった。中学の時に食った昼飯バッチリ充てられた時は流石に驚いたもんね。

 

 

「私も、光が巨乳好きってのは知ってるよ」

「否定するのは諦めるからさ。どこで知ったか教えてくれない?」

「昔、パソコンでそういうの見てたでしょ。ブックマークの端の方に残ってた」

「ちなみに、何故昔だと断定できるんだね」

「今はスマホで見てるじゃん」

 

 

 短時間で私に二度も頭を抱えさせるとはやるではないか。しかも二発目はめちゃくちゃ喰らったぞ。あとで絶対にどこに残ってたか見つけ出して消してやるからな。人にPC使わせる機会が殆ど無いとしても消すからな。これは俺の黒歴史だ。

 

 凄い隠してたって訳じゃないんです。ただ、こういうのって恥ずかしいじゃないですか。異性ともなれば余計にね。

 自分の性癖とかオカズとかを語れるようになったのなんて高校入ってからですよ。羞恥心がなくなって共感に変わったのそこらへん。これ、同性での話だからね! 異性はまだ無理よ! 凛でも多分まだ厳しい!

 

 

「私、最近筋肉付いて体重ちょっと増えたけど、光ならできると思うよ」

「なんか聞いたらダメな気がするから聞かないでおくね」

「座った状態で向き合ってとか、立ったまま私を抱きかかえてそのまま」

「おーっと悪かった。聞かないって言うのは喋ってくれってことじゃないんだ」

「別にアブノーマルでもないから良いと思うよ」

「励ましてくれてどうもありがとう」

 

 

 しかもお前、後からちゃんと調べたな? あー、思い出してきた。思い出してきたぞ色々と。でも不思議とムラムラはしてこないな。何でだろうな。絶対に状況が状況なのが原因だろうな。良かった良かった。

 自分の性癖を淡々と陳列されると、とっても恥ずかしいことが身にしみてわかりましたよ。それも異性にされたらとびきり恥ずかしいってね。年下なのも関係しているのかな? どちらにせよ致命傷だね。

 

 

「ごめんって。からかったりして」

「どっちが年上でどっちが年下かわかんねぇよ」

「別に細かい話でしょ。私たち、一つしか変わらないんだし」

「上下関係ってのはその一つが命取りになるんだ。くそくらえだそんなもん」

「光が私に優しいのはわかったから」

 

 

 上下関係なんてマジでクソだ。これさえなければ、俺は中学高校と野球一筋だったかもしれない。それはそれで346にも入れてないし、プロ野球選手にもなれるとは思えないから、人生の分岐点として間違っては無かったのかもしれないけど。

 

 たかが一年や二年早く生まれただけで、その分遅く生まれた人間を奴隷のようにこき使う。なんて制度なんだ。

 これが五年とか変わってればわかるよ? 体格差も違うし、人生経験も違うからね。でもたった一年や二年じゃん。変わりはするけど、長い人生の中で見れば誤差も良い所よ。そんなところで謎の過剰な上下関係に挟まれて生きていくなんて俺は耐えられないね!

 

 

「……そう言えば、凛が今日ここに来たタテマエがあるだろ」

「露骨に話題変えるね」

「悪いか」

「良いけど」

 

 

 そう。今日ここに凛が来たのはちゃんとした理由があったのです。え、今までは何の理由もなく来ている時があった? 勿論、そうですけど今日はたまたまあったんです。たまたまなんだけどね。

 

 実は本日この日から、多田李衣菜ちゃんが寮にお世話になることになったらしいんですよね。まぁ、ただそれだけの理由だったら凛もそこまで気にはかけないんだろうけど、お世話になるところが前川の部屋ともなれば話はまた別だ。

 

 どうしてそうなったかの経緯は少ししか聞いていない。

 最近、二人でユニットデビューをする方向になり、そんな中で圧倒的方向性の違いから色々と苦労をしていることだったりって言うのが主だとは思うんだけど。

 どうして急に寮で同居しだす流れになったのかはよく知らない。なんでも、莉嘉の提案にPも乗ったとか凛は言ってたけど。何がどうなったら同居生活になるんだろうか。合宿みたいなノリなのだろうか。

 

 

「建前って言われても、ちょっと気にかかるのは本心だしね」

「お前、そんなに二人と繋がり合ったっけ」

「同じCPのメンバーでしょ」

「いや、タイプ的には前川とも多田ともそんなに被らないから……」

 

 

 昔は孤高の一匹狼だった、あの渋谷凛の口から二人が大丈夫か少し気になるなんて言葉が出てきた時は少し驚きもしたが、これも彼女の成長とか言うやつなのかもしれない。大人になったんだね、凛ちゃん。おじさん、とっても嬉しいよ……年齢全然離れてねぇけど。

 

 

「あんまり心配はしてないけど、ここには光もいるし。だったらどんな感じか様子はちょっと見ておきたいなって。卯月も未央も気にかけてたから」

「あー、あの二人だとこっちに来ることあんまりないしな」

「誰かさんが部屋をほったらかしにしてたり、誰かさんが私に色目使わせたせいで、折角早く来たのにすれ違いになったかもしれないけど」

「後者は俺何もしてねぇけどな」

 

 

 勝手に俺のベッドに寝っ転がって、気が付いたら俺の事に色目を向けていたんだ。本当にアレは色目を向けていたのか? よくわかんねぇや。なにしろ女性経験が皆無なものでして。

 

 そう、本来早めにここに来たはずだったんですよね。速めに予定が済んだから一緒にご飯食べに行って、速めに寮に行って、二人の様子だけ見て帰るかって言うそういう話だったんですよ。全ては俺の部屋の汚さ故に予定総崩れになってしまったんですけど。

 

 

「今からでも様子見に行く?」

「うん。そのつもりだったし」

「行くか」

 

 

 なんか喉乾いちまったよ。先に凛に行かせて、俺はちょっと冷たい麦茶を一旦キメてから行こう。そうじゃないととてもじゃないが持たない。色々と緊張状態にあり過ぎた。

 

 ほらほら、冷蔵庫を開けるとそこにはキンキンに冷えた麦茶が……くぅ~っ! 効く! やっぱ夏はこれに限りますなぁ。

 ほな、先に行かせた凛ちゃんを追いかけて……って玄関で待ってくれてるじゃないの。ええ子やねぇ。将来は良いお嫁さんになるよ。

 

 

「飲む?」

「いらない」

「間接キス気にしてるの?」

「やっぱ飲む」

「そこで転換するのやめない?」

 

「やっぱり荷物が多すぎるにゃ! 一週間分だけで良いって言ったでしょ!」

「だから減らしたんだって! 何回も言ってるじゃんか!」

「荷物が多いから言ってるのー! 運ぶのだって大変でしょー!」

 

「あ」

「あっ」

 

 

 扉を開けたら見知った人たちが滅茶苦茶口喧嘩してました。それも見ていて心配になるタイプの喧嘩じゃなくて、またやってるわーくらいで収まるタイプの組み合わせと温度感で。

 

 

「……ようこそ! 346プロダクション女子寮へ!」

「ねぇ。ここって恋愛を伴う同棲って認められてるの?」

「女子寮に男がいる時点でここは治外法権にゃ」

「恋愛を伴う同棲っていうのは、事実と異なる虚偽のアレだ。撤回しろ」

「同棲はしてないから」

「多分、ツッコむべきはそこじゃないにゃ」

 

 

 訂正ありがとう、前川君。先の不敬はこれにて不問にしてやろう。

 いや、間違ったことは何一つ言ってないんだけどね。ここ、女子寮だから。寮前の看板みたいな石の所は学生寮って変わってたけど、普通に体裁は女子寮と何らかわってないから。なんなら、さっき自分でようこそ、346プロダクション女子寮へって俺の口から言ってたからね。なんてイレギュラー。

 

 

「それにしても、すげー量だな。段ボール2つか?」

「……これと、まだあと4つくらいあるにゃ」

「4つぅ!?」

「そんなに驚くこと? 光だって、こっちに来た時はこれより持って来たでしょ?」

 

 

 そんなに長くこっちにいるつもりなのかお前。どれくらいの期間か、細かいことまでは全然把握してないけど。段ボール6箱って相当な量だろ。着替えとか生活用品以外に何を持ってきたら一体そうなるんだ。流石に今回は前川側に付いちゃうぞ!

 

 

「俺が持ってきた時は段ボール5箱分だし、俺の場合は一週間じゃなくて、不透明とはいえガッツリ引っ越しだから別だねぇ」

「やっぱり荷物多すぎるにゃー!」

「仕方ないでしょー!」

「やっぱ、見に来てよかったかも」

 

 

 残りの段ボール4箱は、俺達も手伝い何とか短時間で前川の部屋に運び出すことに成功した。重さ自体はそんなになくて良かったね。一個だけべらぼうに重かったけど、電子機器とかでも入れてたのかもしれない。スピーカーとかだとしたら聴くタイミングあるんかな。

 

 ともかく前途多難というには十分すぎるスタートダッシュだ。やっぱりこの二人はこうでなくっちゃね! 知らんけど。





読者層気になるので知りたいアンケ

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