「「『クリエイトウォーター』」」
そう唱えたカズマの手のひらからは水が飛び出し、コップの中を水で満たした。
その隣で私は同じ魔法を唱え、人差し指から水が飛び出し、カズマと同様にコップを水で満たす。
私はドヤ顔でカズマを見ながら、その水を飲み干した。
一方カズマは、悔しそうな表情を浮かべつつ、同じく水を飲み干す。
先程唱えた魔法は初級魔法。
カズマが新たなスキルの1つとして、覚える際に、魔法と聞いて私も一緒に教わったのだ。
そしてカズマが悔しがっている原因は、彼が手のひらから出した水の量を、私が指先1つで真似して見せたからだ。
これはひとえに魔力量の差によるものだ。
私が魔法覚えた際に、試しに先程の魔法を使ったら、辺りが水浸しになり、少し悲惨なことになってしまった。
そんなこんなで、私が少し大人気ないことをしていると、ダクネスが歩いてきた。
「2人ともどうだろうか、この鎧」
そういったダクネスの鎧は、以前より輝いてるように見えた。
どうやらキャベツ狩りの報酬金で新調したようだ。
「とっても綺麗ね!」
「成金みたいだけど」
「なっ成金っ!!」
私の後ろでぼそっと皮肉っぽく呟いたカズマの声が聞こえたみたいで、ダクネスがその言葉に反応していたが、怒ってはいなさそうなので大丈夫だろう。
私はあまり嫌味なことは言ってはいけないよ、と注意しようとカズマのいる方へ振り向くと、当の本人は何かを眺め、ため息ををついていた。
その視線の先に目を向けると、そこには、杖に頬擦りするめぐみんの姿が。
「魔力溢れるマナタイト製の杖のこの色、艶!」
「おい誰かそこの変態をどうにかしてくれよ」
どうやらめぐみんも、キャベツ狩りの報酬金で杖を新調したようだ。
だが確かに、杖に頬擦りする今のめぐみんには近づきたくない。
「なんですってぇ!!」
杖にご執心だっためぐみんまでもが、それを辞めて声がした方を見るほど、先程の声がギルドに響いた。
どうやらアクアが受付の人と揉めているようだ。
なんでも、アクアがキャベツだと思って捕まえた分のほとんどがレタスだったらしく、捕まえた量に見合わない報酬金で駄々を捏ねているみたいだ。
しばらくして、諦めたのかこちらに向かってきた。
「カーズーマーさん、今回の報酬はおいくらかしら?」
「100万ちょい」
「「「「ひゃっ!?」」」」
カズマの報酬金に驚いた4人の声がハモった。
そしてカズマの報酬金について聞いたアクアは、何やらすり寄っていった。
そんな様子を眺めてるとめぐみんに声をかけられた。
「マイさんは、今回の報酬どうだったのですか?もし良かったらその報酬金で杖でも買いに行きましょう!」
「それがね?私キャベツ狩りの時、爆裂魔法に失敗して途中から気を失ってたじゃない?それに加えて、気を失う前に捕まえたキャベツもほとんどがレタスで………結局3万ほど………しか……」
その言葉を聞いためぐみんとダクネスは、苦笑いをしながら無言で私の肩に手をおいたのであった。
「その、マイさんがよければ、私が以前使っていた杖を差し上げますよ?」
「ほ、ほんとに!?」
めぐみんの申し出に飛びつくように、返事した私は少しめぐみんに驚かれてしまった。
だが、魔法に憧れている私としては、杖はかねてより欲しかったので、こんな反応をしてしまうのも仕方ないとしか言いようがない。
□□□□□□□□
翌日。
私達はクエストを受けるために、ギルドに集まっていた。
集まるとすぐに、1人今までと違う格好をした人がいることに気づく。
そうカズマである。
カズマは出会ってからずっと、奇妙な格好をしていたのだが、どうやらキャベツ狩りの報酬金で服を新調したようだ。
「カズマが普通の冒険者のように見えるのです」
めぐみんが言った言葉が、ここの場にいるみんなの総意であった。
カズマ曰く、初級魔法も覚えたので、片手剣と合わせて、魔法戦士のように戦うらしい。
カズマも色々と考えているんだなぁと思っていると、今度はみんなの視線が私に集まる。
「剣に杖って、なんかまとまりがねぇな」
その言葉にみんなが頷いている。
どうやら、私の装備に言いたいことがあるみたいだ。
今の私は、剣を腰に差し、杖を手に持っている状態だ。
「いやぁ、めぐみんに杖をもらったんだけど、今まで装備してた剣を手放すこともできなくって…。それに腰に剣がないと、もう落ち着かない…みたいな?」
みんなが、フーンといったような顔をしていたので、とりあえずは納得してもらえたみたいだ。
カズマと私のちょっとした新装備披露を終え、私達は今日受けるクエスト選びを始めた。
クエストを選ぶに当たり皆がそれぞれに受けたいクエスト内容を口にする。
ダクネス曰く、一撃が重くて強いモンスターの討伐クエスト。
めぐみん曰く、大量のモンスターの討伐クエスト。
アクア曰く、高額報酬のクエスト。
三者三様に、希望を述べるが、その希望を満たすのは、全て高難易度クエストだろう。
そんなクエストを自ら望むあたり、さすがこのパーティと言えるのではないか。
私はというと、とりあえずみんなと楽しくできるクエストと答えておいた。
そんなことを言うと、私だけ意識が低いなと思われたのか、カズマにジト目で見られてしまった。
その目が私以外の3人にも向けられていた気もしたが、おそらく気のせいだろう。
その後カズマが少し考え、提案した。
「じゃあ、ジャイアントトードの討伐クエストなんてどうだ?」
カ、カエル!?
「なんでも、繁殖期に入ったらしく、街の近くまで…」
「カエルはだめ!」
「カエルはやめましょ!」
「カエルはいや!」
カズマの提案に、ダクネス以外の3人が揃って却下する。
全員カエル被捕食経験者だ。
3人の慌てぶりを疑問に思うダクネス。
そんなダクネスに向けてカズマが説明する。
「あぁ、こいつらみんな以前カエルに食べられて粘液まみれ…」
「ね、粘液…まみれっっ!!!」
「お前今興奮しただろ?」
「してない。」
カズマとダクネスが何やら喋っていたが、カエルに食べられた時の記憶がフラッシュバックしている最中だったので、話を聞く余裕などなかった。
カエル被捕食経験者の3人が、過去の経験の記憶から抜け出したところで、話し合いでは、決まらないと思った私達は、掲示板に張り出されているクエストを見ることにした。
掲示板に着くやいなやダクネスが、ある1つの依頼書を手に取る。
「おいカズマ、これなんかどうだ?ブラックファングの討伐!」
「却下だ、却下」
そう言い放ったカズマは、掲示板を見渡した。
「おい、なんだよこれ。高難易度のクエストしか残ってねぇーじゃねぇか」
確かに見るからにクエストの数が少なく、残っているのはどれもこれも高難易度クエスト。
そのため、クエスト選びが難航していると、私達の様子に気づいた受付のお姉さんがやってきて、現在の状況を説明してくれた。
「申し訳ありません、現在、魔王軍の幹部らしきものが、街の近くに住み着きまして………」
お姉さんが説明するには、どうやらその魔王軍の幹部らしきもののせいで、弱いモンスターは怯えて身を潜めてるらしい。
だから軒並み高難易度クエストなのか。
現状としては、こんな駆け出しの街に魔王軍の幹部クラスを討伐できる冒険者はいないので、王都からの騎士団派遣を待つしかないようだ。
それを聞いた私達は、王都からの騎士団が到着するまでは、クエストを受けるのをやめることにし、その間は自由行動となった。
そんな訳で、何して過ごそうかと考えているとめぐみんに声をかけられた。
「マイさん、もしやることがないのでしたら、この期間を利用して、私と魔法の訓練でもしませんか?」
そんな提案は、私にとって願ったり叶ったりなものなので、即快諾した。
「それでは早速明日からはじめましょう!」
次の日から、私とめぐみんの日課が始まった。
□□□□□□□□
現在は昼過ぎ。
私とカズマ、そしてめぐみんは、今、アクセルから少し離れた小道を歩いている。
めぐみんに誘われた、魔法の訓練を行うためである。
どうしてカズマがいるのかと言うと、ギルドで手持ち無沙汰にしていた、カズマを見つけためぐみんが、声をかけたそうだ。
私達以外のアクアはバイト、ダクネスは実家に帰って筋トレをするみたいで、ダクネスからは、別れ際に筋トレのメニューを教えてもらった。
「このメニューに耐えれれば、立派な前衛になれるぞ」
と、サムズアップされたので、笑顔でサムズアップをし返した。
キャベツ狩りの時に、ダクネスの真似をして前衛に出たことを覚えていたらしい。
あの時はかっこよさを求めるあまり、危険を顧みない行動に出ただけだったのだが、せっかくダクネスに教わったメニューなので、しっかりこなそうとも思う。
しかし、当のメニューは、聞いてるそばから筋肉痛を起こしそうなレベルのもので、正直やり遂げれるか怪しい。
あんなメニューをこなすダクネスは、どんな身体しているのだろうか…。
ふとそんなことを考えつつ、歩いていると、前を歩いていた2人が何やら話していた。
「なぁ今更なんだが、魔法の訓練なら2人でしてくればいいだろ?」
ついてきたはいいものの、こんなにアクセルから離れたところまで、来るとは思っていなかったのか、不満な様子でカズマが文句を言う。
「そしたら、魔法で2人とも動けなくなった時に、誰が運んでくれるんです?」
さも当然のようにそう答えためぐみんに、カズマはゲッとした様子になる。
正直私も、爆裂魔法を放った後に、自分で歩けはするものの、めぐみんを背負って来た道を帰る自信はないので、カズマがいてくれないと困る。
「じゃあもう、この辺でパパっと撃って、さっさと帰ろうぜ」
「ダメなのです。もう少し離れて撃たないと、また守衛さんに怒られてしまうのです」
そう言えば以前、ウェイトレスをしている時に、地震のような地響きがしたことがあったが、あれはめぐみんの爆裂魔法によるものだったのか。
めぐみんの話を聞き、1人後ろで納得している私に対し、カズマはめぐみんにただ、呆れた目を向けていたが、カズマも守衛さんに迷惑をかけるのが嫌だったのか、諦めて歩き続けた。
しばらく歩くと、あるものを見つけた。
「あれは廃城でしょうか」
そこには、既に誰も住んでいないような廃れた、お城があった。
少し薄気味悪い。
「あれにしましょう!ここなら誰にも迷惑をかけませんし!」
「大丈夫だよね?あの中に誰かいたりしないよね?」
「まぁこんな所にある城なんて、もう誰も使ってないんじゃないか?」
カズマの言葉を聞き、それでも本当に大丈夫かなと、疑っていた私に関係なく、めぐみんは爆裂魔法の準備をしていた。
空気が変わる感覚。
そして聞こえてくる、爆裂魔法の詠唱…詠唱…。
あれ?なんだか以前教わったのと違わない?
私がそんな疑問を思っているのなど、知りもしないめぐみんは、詠唱を終え、廃城に向けて爆裂魔法を撃ち放った。
「『エクスプロージョン』っっっっ!!!!」
爆裂魔法を放っためぐみんは、その場に倒れ込んだ。
「さぁマイさん、私に続くのです!」
「う、うん!」
そんなめぐみんの言葉に反応して、私はめぐみんに貰った杖を構え、詠唱を始める…のはよかったのだが、先程聞いためぐみんの詠唱を思い出し、また途中で詠唱を忘れてしまった。
どうしても先程の詠唱が気になり、詠唱の途中だったにも関わらず、先程の詠唱は何だったのか聞くためにめぐみんに声をかけようとした瞬間、手元で何か暴れ出すような感覚があり、次の瞬間には───
ボンッとなっていた…。
目を開けると、そこには私を覗き込む顔が1つ。
「なぁマイさん、あんた爆裂魔法使うのやめといた方がいいんじゃないのか?」
私の顔を覗き込んでいたカズマが、私が目を覚ましたと同時にそんなことを言ってきた。
どうやら、爆裂魔法に失敗した私は少し気を失っていたらしく、そんな私を木陰の下まで運んでくれたようだ。
私は周りを見渡すためにとりあえず上体を起こす。
すると木の隙間から、あの廃城が見えたので、あれから移動はしてないみたいだ。
「おや?気がついたのですか?」
それは、私と一緒に木陰の下で横になっていためぐみんの言葉だ。
「今回はどうして失敗してしまったのですか?詠唱を教えてからしばらく経つので、もう覚えたと思っていたのですが」
「ねぇめぐみん、どうしてさっきはいつもと違う詠唱をしていたの?その事が気になって、詠唱に集中できなくて………」
「そんなことを気にしていたのですか。私ぐらいの爆裂魔法使いになると、詠唱内容なんてただのおまけみたいなものです。なので、私好みにアレンジを加えただけです」
なんて無茶苦茶な。
もしかするとめぐみんはあまり、師と考えない方がいいのではないだろうか………。
「マイさんも起きたことだし、いい加減そろそろ帰るぞ」
私とめぐみんの話を、黙って聞いていたカズマだったが、早く帰りたいみたいだ。
「待って!次こそ成功させるから!」
そんなカズマの言葉に異を唱え、杖を手に持ち、廃城が見える位置まで移動する。
後ろからカズマがとめようと、声をかけてきているが、無視して、詠唱に集中する。
爆裂魔法。
今まで何度か撃とうと試みるも、悉く失敗してきた。
せっかくこんな遠くまで来たので、今回こそはちゃんと放ちたい。
そんな願いを込めて、初めて詠唱を全て言い終えた私は、あの魔法を唱える。
「『エクスプロージョン』っっ!!!」
私が放った爆裂魔法は、めぐみんの威力には遠く及ばないが、廃城に直撃した。
そして私は、めぐみんがこの魔法に拘る理由が少しわかった気がしたのであった。
□□□□□□□□
それから私達3人は毎日、廃城まで足を運び、爆裂魔法を打ち込んだ。
時には早朝からでかけ、時にはお弁当を持っていき、そして雨の日でさえ、構わず爆裂魔法を放ちに行った。
私は日に日に爆裂魔法の精度を上げていき、そして日に日に身体の動きがぎこちなくなっていった。
ある日カズマに、どうしてそんな動きをしているのかと聞かれ、私は「筋肉痛で…。」と答えた。
カズマはそんな私の回答を聞き、爆裂魔法を撃つと筋肉痛になるのか?みたいなことを呟きながら、それ以上は聞かなかった。
そして、しばらくの間、私とめぐみんの爆裂魔法を身近で観察していたカズマは、どんどん爆裂魔法に詳しくなっていった。
カズマの爆裂魔法への理解度に感心しためぐみんが、カズマに爆裂魔法の習得を奨めるぐらいだ。
爆裂魔法持ちが3人もいるパーティが出来たら最強じゃないだろうか、と思った私も、カズマに習得を奨めておいた。
そんなカズマは、私達の爆裂魔法を採点してくれる。
めぐみんは大抵90点を超え、そんなめぐみんに対し私の最高は50点といったところだ。
そんなこんなで、毎日楽しく爆裂魔法を放っていた私達だったが…
ついにその日が来た。
「マイさん、あなたの爆裂魔法で決めちゃってください!」
「ええ!わかったわ!」
そんなめぐみんの言葉を聞き、いつも以上に魔力を注ぎ、詠唱をする。
そして過去最大の威力が出そうな爆裂魔法の準備ができると、
「『エクスプロージョン』っっっ!!!」
それを私は、いつも通り廃城に向けて放ち、それを受けた廃城は…
完全に崩壊した。
□□□□□□□□
私達パーティは、久しぶりにギルドに集まった。
集まったかと思うと、早速アクアが泣いていた。
「回復魔法だけはいいじゃないーー。私の存在意義を奪わないでー!」
どうやら、カズマがアクアの取り柄でもある、回復魔法を教わろうとしたのが原因らしい。
「あのアクア、私も回復魔法教えて欲しいんだけど…」
回復魔法だなんて、ざ・魔法みたいなものは、是非とも覚えたい。
だが、私の言葉を聞いたアクアは、さらに泣いてしまった。
「うぁーーん!マイまで私をいじめるぅぅーー!」
「マイさんは、たまに天然なところがありますからね。悪意の無い言葉は、一番心に刺さるものですよ」
「そうだな、私もそういった類の言葉責めは苦手だ」
めぐみんとダクネスの言うことを聞き、少し反省する。
確かに泣いているアクアに言うことじゃなかったかもしれない。
………あれっ?
今アクアが一瞬泣いていないように見えたが……恐らく気のせいだろう。
「緊急!緊急!───」
受付のお姉さんの声がギルドに響いたのは、そのすぐ後だった。
□□□□□□□□
デュラハン。
アンデットで、首を切り落とされ無念の死を遂げた、騎士の成れの果ての姿である。
受付のお姉さんの指示を聞き、すぐに準備を整え、正門に向かった私達が見たのは、そんなデュラハンであった。
「なんだよあいつ、めちゃめちゃ強そう…じゃないか…?」
そんな自信なさげな声を上げたのはカズマ。
なぜそんな自信なさ気な声だったか、それはデュラハンの姿を見れば分かる。
そのデュラハンは、同じく首無しの馬に跨り、威風堂々とした風格があるのだが…、いかんせんその装備がボロボロなのだ。
ここに来る前に、激戦を終えてきたようにボロボロであった。
「私はつい先日、この付近の城に越してきた魔王軍の幹部のものだが………ま、毎日、毎日!俺の城に、ば、爆裂魔法を撃ち込み、せっかくの拠点を破壊した、お、お、大馬鹿者は誰だぁ!!!」
魔王軍の幹部が、ボロボロだったのは、私達のせいみたいだ…。
魔王軍の幹部の発言を聞いた冒険者達は、爆裂魔法という言葉で、視線を爆裂娘に向ける。
すぐに下手人がバレたようだ。
その視線に気づいためぐみんは、気まづかったのか、その視線から逃げるようにそっぽを向く…そっぽを向いためぐみんと目が合う。
その瞬間、周りの冒険者の視線が私に集まるのを感じた。
謀ったな!めぐみん!と思いつつ、私も共犯であり、なんならトドメをさした本人だったのを思い出し、気まづくなった私も誰がに擦り付けようと、顔を上げ、その視線の先にいたのは…ダクネスだった。
「な!?私は何も…でも、このたくさんの人に見られるのも…いい!」
私達を庇ってか、そんな目立つことを言って注目を集めてくれた。
ダクネスがみんなの注目を集めてくれている中、先程まで震えていためぐみんが、意を決したように震えをとめ、前へ歩き出し、デュラハンと相対した。
「ねぇカズマ、今のボロボロなデュラハンなら、もしかしたら倒せるんじゃない?」
私はめぐみんと相対する、ボロボロなデュラハンを見て、ふと思ったことをカズマに告げる。
「いやいや、ここは駆け出しの街だぞ?デュラハンみたいな強力なアンデット…おいアクア、お前ならあいつを…ってアクアはどこいった?」
「アクアならめぐみんに呼ばれてあっちに」
カズマが何か思いついた時には、既にアクアはその場におらず、そのアクアの後を追って、ダクネスまでもが走り出していた。
ダクネスがめぐみん達に追いつくと同時に、デュラハンから禍々しい気配を感じ、次の瞬間には、デュラハンが放った呪いがダクネスに直撃していた。
「ダクネス!」
そう叫んだカズマも、めぐみん達の方へ走り出し、私もそれについて行き、ダクネスへ駆け寄る。
「ダクネス大丈夫!?」
一見すると、特に何も異変はない。
「それは死の宣告。そいつは1週間後に死ぬだろう」
「それを解いて欲しくば、私にお前の言うことを聞けと言うのか!屈しない、私は決して屈しないぞ!」
「ふぁ!?」
デュラハンがダクネスに、死の宣告をした理由は、どうやらそれを脅しにダクネスにいかがわしいことをしようとしていたためであった。
そのことをダクネスに看破されたデュラハンは、冒険者達から冷たい視線を向けられる。
「その呪いを解いて欲しいのなら、城跡まで来て、私のところまで辿り着くのだな!」
デュラハンは、冒険者達の冷たい視線に耐えかねたのか、そう言い残して去っていった。
残される私達。
死の宣告をうけたダクネスは、突然の余命宣告にどこか気を落としている。
そんなダクネスの姿をみた、めぐみんはおもむろに歩き出す。
「ちょっとデュラハンに爆裂魔法を撃ち込んで、ダクネスの呪いを解きに行ってきます」
「私もついて行くよ!一緒に城を破壊した仲でしょ?」
「俺も毎日ついていきながら、魔王軍の幹部が住んでいることに気づかなかった責任があるからな」
ダクネスの呪いを解くために、3人の有志が集まった。
「ダクネス、お前の呪いを絶対に…」
「『セイクリッド・ブレイクスペル』ー!!」
意を決したカズマの言葉を遮ったのは、アクアの放った魔法だった。
その魔法を受けたダクネスは、淡い光に包まれ、微かに感じられていた邪悪なオーラが完全に消え去った。
ダクネスにかけられた呪いが解呪されたことに気づいた冒険者達は、魔王軍の幹部の襲撃をなんの被害もなく、やり過ごせたということで歓喜に包まれていた。
「どう?どう?すごいでしょ?たまには私もアークプリーストとして役にたつでしょ?」
解呪した張本人であるアクアは、ドヤ顔でカズマに話しかける。
当のカズマは、せっかく有志でデュラハン討伐に向かおうとしていたところで出鼻をくじかれ、どこかバツの悪そうな顔をしていた。
私も出鼻をくじかれた1人だが、そんなことよりも…
「アクア!さっきの魔法は何!?私にも教えて!!」
アクアの放った魔法に興味を惹かれていたのであった。