奴隷少女と料理人   作:特選からあげ

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下処理

私は主人の話を聞いて、ただ呆然とした。

一応、全ての辻褄は私の頭の中で合ったのだが、家族の話やこの人の話、その全てをすぐに処理することは出来ない。

私は我慢できず、質問をした。

「あの、父の書いた直筆の紙と言うのは見せてもらえますか?」

 

私からの問いに、主人はそう言われるのが分かっていたのだろう。

予め自分の膝の上に置いていた紙を私に見せた。

「これだよ。やっとこれを君に見せることが出来る。」

私はペコリと頭を下げるとその紙をすぐに見た。

そこに書かれていた内容はこうだ。

『桜へ

桜がこうしてこの紙を見ていると言うことは彼がうまくやってくれたんだね。

桜、お前を守ってやることが出来なくてすまない。お父さんはもう帰れそうにない。

お前はとても優しい子だからきっとたくさん悲しむだろう。

でもいつまでもそうしてちゃいけないよ。桜のその優しさをどこかで待っている人がたくさんいる。

困っている人や悲しんでいる人がいたら、無条件で手をさしのべられるとても優しい私の愛する桜よ。

どうか憎しみや汚い感情のない世界で生きておくれ。

最後になるが、お前の料理は人を笑顔にさせる特別な力がある。

もし将来に困ったら、料理人なんてのはどうだろうか?お父さんの後をついでくれるのなら大歓迎だよ。 じゃあ幸せにね、愛する娘よ』

 

手紙を読む間、涙が止まらなかった。

ごめんね、お父さん。

私そんな綺麗な娘のままじゃいられなかったよ。

汚いものや憎しみもいっぱい知っちゃった。

ごめんね、お父さん。ありがとう。

 

私はそして、いつぶりだろうか?声の限り叫んで泣いた。涙は永遠に出るのではないだろうかと言うほど、止めどなく流れた。

主人はただそんな私を同じように涙を流しながら見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長い間、泣き叫びようやく涙が枯れた頃に、私は主人に言った。

「あの、ありがとうございました。」

主人はそれを聞くと小さく首を横に振り

「礼を言われる筋合いなんてないよ。僕は遅すぎた。もっと早く君を助けられた筈なのに。」

 

それは決してこの人に責任のあることではない。

感謝の気持ちこそあれど、責める気などない。

私を今はこうして、救い出してくれているのだから。

 

「では最後の話し合いをしよう。桜に聞くよ、君はこれからどうしたい?」

主人が、私に問いかけた。

 

こんな事を聞かれる時が来ようとは。

私は私の意思で何かをすることなどもう無いのだと思っていた。

私のこれからを私が決めて良いなんて。

じゃ、じゃあこんなこと言っても良いってことなのだろうか?

心の奥底に沈めていたこの気持ち。

私の願いを口にしても良いのだろうか?

何度叫ぼうとも決して叶うことが無かったこの願いも今なら。

私はまた流れ出してきた涙なんて気にも止めず、ゆっくりと間違えないようにその言葉を口にした。

 

「私は帰りたい。私は家族のいる家に帰りたい!!」

 

主人はニコりと笑うと

「その言葉を待っていたよ。約束しよう、この命に変えても必ず君を家に返すさ!!」

そう言うと主人もまた涙を流した。

 

私はもう一度感謝の気持ちを伝えた。

「あの、ありがとうございます、よろしくお願いしますディーンさん」

 

 

ディーンさんは私のその言葉を聞くと目を丸くして驚いた後、飛びっきりの笑顔で返事をした。

 

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