奴隷少女と料理人   作:特選からあげ

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寝かし

「はぁ、 はぁ、 ダメだ、こんな はし、走ったのは学生ぶりだからおじさん死にそうだよ、」

 

何が何なのか全く分からない。

とにかく分かることは後ろから、イカつい男たちが信じられないくらい怒り狂った顔で追いかけてきているくらいだ。

 

なぜ私までこの男と逃げているのだ、本当に訳が分からない。

これでは捕まったときに私まで罰を受けかねないのでは無いだろうか。

ここで止まった方が良いのだろうか。

しかしどうせ止まってもまたあの地獄の日々に帰るだけ。

もうどうにでもなれという気持ちで走りだした。

男の手の引くままに着いていくと街の外に出るための門が見えてきた。

 

「さぁ乗って!」

 

男が予め用意していたであろう馬車に私は乗り込み、そのまま男とこの国から逃げ出した。

 

 

 

 

 

 

 

もうあれから2日はこうしているだろうか、馬車に揺られているが、男は特に喋らず黙っている。

その間に食料も与えられたが、何だか見たことのない器具を使い、火をおこし、パンを焼いてその上にチーズまでのせた豪華なものだった。

口に入れるとほんのり香るバターのような風味。そして濃厚で噛むといつまでも伸びてくる極上のチーズ。驚くことにパンの中には、トロットロのまた別の種類と思われるチーズが入っている。

それらを包むサクサクのパンは、外面がサクサクと中はしっとり、まさに理想のパンだ。

 

こんな豪華な食料を奴隷に提供出来るなんて、この男は見た目とは裏腹に裕福なのかなと思った。

こんな食料をもらったのは久しぶりでつい「美味しい。」と声に出してしまった。

 

食事中に声を出してしまった!これは恐ろしい罰が以前にはあった。いや、というよりはそれを口実に私の体を弄んだのか。

私はどうか聞こえていませんようにと祈るように屈んで身構えている。男は静かに

「そうか、それは良かった。本当に良かった。」

と言っただけだった。

 

 

そもそも私は何故今こうしているのだろうか?

この男はどう考えてもちゃんと(奴隷を買うのにちゃんとも変か)私を買ったわけではないのだ。

完全に私を強奪(自分で言いたくは無いが私は商品なのだろう)している。

そう考えるとこの男がとんでもない悪人にも見えてきた。

しかし何故だろう、わざわざあんな危険を犯してまで、そんなに私が欲しかったのか。

なんだかとても危険な気もしてきた。

どういう理由にせよ私の新しい主人ということにはなるのだろうが、隙を見て逃げ出せないだろうか。いや、逃げ出しても私に何が出来る。

どうせまたあの奴隷商人たちに捕まってもとの生活に戻るだけだ。

そんな事を考えていると、さっきまで何のとりとめも無いような事を話していた男が私に初めて質問をしてきた。

「ごめん、名前を聞いてなかったね。お嬢さん、名前を教えてくれるかな?」

私は、新しい主人からの急な質問にびっくりしながらも、怒らせないように素早く丁寧に答えた。

「はい、No3です。」

何故か男は黙り、数秒たってから言った

「いや、本当の名前だよ。そうか、今まではそれが君の名前と言われてたんだね。お父さんかお母さんからもらった名前はないのかい?」

 

やってしまった。と思った。主人の要求どうりの答えが一発で出来なかった。罰を受けたくない一心で私は急いで、

「す、すいません。名前は桜です。遠い東の国の名前ですので発音しにくい部分もあると思います。どうかご主人の言いやすい呼び方で!」

と答えた。

出来るだけ怒らせないよう慎重に。

 

しかしこの男の反応は私の予想だにしないものだった。

この男は少しおかしいのだろうか。そう思った。なぜならそれはその男が、

 

静かに泣いていたからだ。泣きながら

「そうか、桜か。良い名前だ。今まで辛かったね、本当に辛かったね。ごめんね、」 そう言って私に謝ったからだ。

あぁ、名前で言われたのはいつぶりだろうか。

 

 

その後のことはよく覚えていないが、男からたくさんの話を聞いた。

これから行く場所のこと。男が小さな料理店を営んでいること、私をひどい目に合わせる気はないこと。

この男は何を言っているのだろう。私は正直にそう思った。なぜこんな私に気を使い悲しそうな顔で私のことをまるで壊れ物でも扱うように接するのだろう。理解できない。

私にはこの男が理解できないし、、、

 

 

 

怖い

 

 

 

この男の真意が分からないまま、馬車に更に揺られること一日。

男が言った。

「さぁ、着いたよ。ここは世界一の美食の街、エスポール。君のこれから住む街だ。」

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