奴隷少女と料理人   作:特選からあげ

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戦況が有利に傾いているということもあって、油断していた。

護衛の兵士も殆どいない状態での移動。

たったの数kmだと思い、 疲弊していることも重なっての油断。

後悔したときにはもう遅い、僕は敵軍のろうやの中へと拘束された。

 

そこから毎日、自分達の情報を言えと拷問される日々が続いた。

仲間も何人か同じ目に合っているようだ。

辛い日々だったが、終戦は近い。

それを希望に僕たちは何とか生き延びようと必死で毎日を生きた。

 

 

 

そんなある日だった。

僕の牢に見覚えのある男が現れた。

東の国独特の顔立ちに、深い皺。敵軍の兵士にこんな表現はおかしいが、人の良さそうな男だった。

男は僕の牢に入ると、地べたにドシリと座り口を開いた。

「君には出来ればこんな目に遭って欲しくなかったよ。同じ料理人として良い腕と誇りを持っている君とは、戦争が終わった後にゆっくりと話したかった。」

そんな事を言うと、男は僕を牢から出してどこかへ連れて行くようだった。

君を含むここの捕虜達には、今日からサポート役として働いてもらう。

 

そこからの展開は早かった。

僕はこの男と共に調理師として、監視つきで料理を延々と作らされることになった。

その他の仲間たちも医者としてや作業員として働かされることとなった。

拷問の日々よりは遥かにマシだ。

 

後々知ったのだが、どうやらそれらはこの男による計らいだったらしい。

僕達捕虜から情報を得られないと判断し、僕達を処刑しようとしたらしい。

しかしまだ使い道はあると上に掛け合い、自分が責任を取ることを条件に、こうして仕事を分け与えたらしい。

 

やることは野菜の皮剥きや洗い物が多かった。

さすがに僕に料理を作らせる気はないし敵国の料理を口にする気もまた無いのだろう。

 

男もまた、普段は調理を担当しているらしい。

僕はこの男から様々な話を聞いた。

こちらから何かを話すことは殆ど無かったが、それでも意に止めず、男は楽しそうに毎日話をした。

家族の話と料理の話が多かったなぁ。

僕以外の捕虜となった人たちにも、男は人間として接した。

捕虜ではなく一人の人間として扱ってくれた。

それが戦場ではどんなにおかしい行動か。

それがどんなに僕達にとって嬉しかったか。ありがたかったか。

 

しかしそんな日々すらも長くは続かなかった。

元々、捕虜を働せて生かすことを良しと思わない人間は大勢いたのだろう。

戦況の悪い状況に苛立ちもあったのだろう。

僕達の処刑が決まった。

それを告げられたのは夕飯を作った後牢に帰った時。

処刑の決行はその僅か10時間後だった。

 

 

その夜、牢のあちこちでは、すすり泣く声や嗚咽、叫び声が聞こえた。

僕も静かに息を殺し、震えながら泣いていた。

こんな簡単にあっさりと死ぬのか。

まだまだやりたいことはあるのに。

こんなところで。

思い出すのは父と母の顔。

大好きな料理のこと。

戦争から帰ったらまた再開すると思っていた自分の店のこと。

たくさんの友人たち。

嫌だ。

嫌だ嫌だ嫌だ

死にたくない。

 

 

 

そんな暗い暗い僕達の牢に、一筋の光が射した。

それはよく見覚えのある男だった。

 

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