深紅の槍 黒殻を穿つ 作:リルリルjp
「とりあえず、エジソンのところに行こう」
藤丸立花は考えていた。李書文の言っていた「何かが憑いている」という言葉に引っかかりを覚える。と言うのも、エジソンを誰かが乗っ取っているようには見えなかったからだ。にも関わらずそのような発言。不思議に思わずにはいられない。それに考えれば考えるほど不思議な点が思い浮かぶ。なぜ、発明家が、政治を引っ張っていけるのだろう。それに目的も何処か引っかかる。愛国心が強いでは片付けられないような気がしてならない。
「もう一度エジソンに会いに行こうと思うんだけどどう思う?」
「明らかに彼は患者です。早急に処置を取らなくてはなりません」
ナイチンゲールは相変わらずで、
「アハハハ……。でもそうだね。李書文の言っていたことも不思議だし」
ロマ二も賛成なようだ。
なら次の指針はエジソンとの再会と対話だ。
───────────────────────
「エジソンの城までは一緒に来て、そのあと乗り込むときは別行動にしてほしい」
藤丸くんが突然言った。
「確かにそうしたほうがいいかもしれない。彼はだいぶ直情的になっていたからな」
アーチャーの彼も賛成のようだ。
「あの、城に乗り込むんでしょう? 戦力は1人でも多いに越したことはないと思いますが」
不思議に思って首を傾げる。
「クーフーリンってケルト陣営のサーヴァントにもいるんでしょ? だからランサーがいると『ケルトの仲間だー。ケルトに与したんだー』って言って話を聞いてくれそうにないんだよね」
驚かずにはいられない。敵味方の区別もつかないなんて。エジソンは本格的に追い詰められているのかもしれない。
「おっと」
緑の彼が何かを見つける。
「お喋りはここまでだ。あそこにケルトの軍隊がいる。なぁマスター、あいつら捕縛できないか? いい作戦がある」
彼には何やら作戦があるようだ。
私達は軍隊に急襲した。
緑の彼が発案した作戦。ケルトの軍隊を捕虜として連行する。
それは途中まではうまくいっていた。しかし人型機械が出てきたあたりで雲行きが怪しくなった。結果、敵地の真ん中で私達は見つかってしまったのだ。
走る走る、ただ走る。森の中、後ろを人型機械達が追いかけてくる。驚いたことにあれは人が操縦しているらしい。邪魔だからと殺せはしない。だから少しやりづらい。
銃弾が散らばりあたりの木々に穴を開ける。
ここで迎え撃つしか────!
右にマシュちゃんが出て盾を構える。
ゴオォォォゥ。
焔と共に恐ろしいほどの熱気が私たちを襲った。
「エジソンに請われてな。悪いが邪魔をさせてもらう」
焔の方向を見る。男が立っていた。白髪で長身。わかりづらいが非常に細い。そして何より目立つのは黄金の鎧の神々しさ。
「通してカルナ!エジソンは多分何かに取り憑かれている。一発殴って目を醒させないと!」
「オレとて奴が何かに取り憑かれているのには気付いている。だがそれはオレが退くほどの理由にはならない」
「あーもー! 英雄ってやつはみんな頑固なんだから!」
赤髪の少女が唸る。
「ランサーさん。彼を抑えてください」
彼と男の槍がぶつかる。
機械人形はこの戦いについて来られないようで離れていく。
「行って、藤丸くん。どうせ何処かで別行動をするなら今ここで分かれましょう」
走り出す藤丸くんの後ろ姿を一瞬だけ確認して戦いに目を向ける。
彼と男の戦いは特徴的だ。男の槍は殆ど彼には当たらない。当たったとしても擦り傷程度だ。逆に彼の槍は男にあたる。それでも当たった側から傷は治ってしまい効果があるようには見えない。このままじゃジリ貧だ。それに同盟の可能性がある以上、こちらは致命傷を避けなくてはならない。
今はただ、藤丸くんが決着をつけてくれることを祈るしかない。
────────────────────────
「マシュと婦長、スカサハはエジソンを、エミヤとロビン、エリザベートはエレナを相手して」
藤丸六花は考える。思考を止めてはいけない。どうにかエジソンに勝ち、こちらの意見を認めて貰わなくちゃいけない。
魔術師相手はエミヤが有利。婦長は確実にエジソンと戦おうとする。なら他の誰かをサポートに回す。エジソンの雷による全体攻撃は厄介だ。マシュの盾やスカサハのルーンによって防がなきゃいけない。油断はしてられない。それにこっちも圧倒的に有利なわけじゃない。サーヴァントの戦いにおいて数的有利はひっくり返されることもある。宝具がどのタイミングに出されるか。連携ミスはないか。場合によっては令呪も使わなくちゃいけない。しっかりと見極め、指示を出さなくてはいけない。
エジソンの魔力が高まる。
「宝具が来る!マシュは宝具で受け止めて!婦長、いつでも行けるように準備を!」
「負けるわけには行かんのだ!いくぞ我が宝具!
光が瞬き、宝具が発動する。
「うぅぅっ! あぁぁぁ!」
マシュが耐える。剥がされる神秘に対抗するように魔力を放出していく。
「婦長!」
宝具は諸刃の剣だ。大技である以上どうしたって隙が生まれる。光が途切れ、エジソンの体から力が抜ける。この一瞬で決める!
走り出した婦長に反応が遅れている。とっさにカウンターが放たれた。
「治療しますっ!」
腰の入っていないテレフォンパンチ。それをよけた婦長の拳がエジソンの顔に突き刺さる。巨体が吹っ飛び天井にぶつかった。
「エミヤ!」
エジソンが吹っ飛んだときエレナは動揺した。それを見逃すわけにはいかない。
「
距離を詰めて防具を叩き込む。魔術師である以上これで勝ちは決まった。あとは対話をするだけだ。
────────────────────────
城の天井が壊れる。
「どうやら向こうの決着がついたようだ。よってこの一撃を持ってこの戦いに終止符を打つこととする」
「気を付けろマスター。とんでもない一撃が飛んでくるぞ」
ランサーさんが数多のルーンを刻む。
「いくぞ。
男の眼から光線が解き放たれた。
「ウォォォォ!」
彼が吠える。強大な熱量が伴ったそれをルーンの結界で受け止める。地面が融解し、草木が消滅する。彼の一撃はまさに必殺の一撃と言っても過言ではない。
「ほう、耐えたか。ならばこの戦いはオレの負けだ。エジソン達が待っている。オレは先に行かせてもらう。お前達のことは報告しておく」
男が消える。
十秒にも満たないその一撃だが、威力は十分。人型機械やケルトの軍隊は一瞬にして灰塵と化すだろう。
「向こうも話がいるだろ。少し休んでこうぜマスター」
ランサーさんが座り込む。
「アイツあんなもん打ち込みやがって。こっちの身にもなれってんだ」
「ルーンは本職じゃねーんだよ」
彼がぼやいている。見れば手の平に火傷を少しした程度。それもそのうちに治せるレベルだ。何となくだが、彼となら誰にも負けないような気がした。