深紅の槍 黒殻を穿つ 作:リルリルjp
台風被害に見舞われた方々の幸福を願います。
「エジソンだ。よろしく頼む」
城に入ると大きなライオンに握手を求められた。真っ白な立髪に立派な筋肉。今まで会ってきた人の中でも1番普通じゃない。
「離れなさいエジソン。怖がってるじゃない」
ライオンの背後から少女が出てくる。
「キャスター、エレナ・ブラヴァツキーよ。気軽にエレナと呼んでくれても良くってよ」
「えと、双葉桜花です。よろしくお願いします」
紫色の髪に紺の帽子を被った少女。見た目の年齢とは違った聡明さ。やはりサーヴァントは特異な存在だと実感する。
「貴方のことは藤丸くんから聞いてるわ。大変だったでしょう。歓迎するわ」
「さて、顔合わせが終わったことだし明日からの作戦会議をしようか」
通信機からの声によって空気が変わる。いつまでもこのままでもこのままではいられない。
「では考えるぞ皆の衆。さぁ意見を出したまえ」
「はい!先生、はい!」
元気よく少女が手をあげる。
「エリザベートは何か思いついたの?」
「攻め込んで殴るのよ、それしかないわ!」
「超却下‼︎である」
「え──ー!」
その後も会議は進まない。あれだこれだと意見は出るがどうにも微妙だ。
「改めて現状を把握しておこう。ケルトは北米大陸の半分を支配している」
そう言って地図を広げる。
「最終的に彼らは南北の二ルートから侵入してくるであろう。我々はそうなるように布石を敷いてきた」
攻めるとなると二つのルートのどちらかが手薄になってしまう。それでは不足の事態に対応ができない。
「この時代の存続には領土が関係していると思われる。領土がこれ以上侵食されるのは危険だ」
「ならば後ほど機械化歩兵を更に前線に補充しておこう。さて、ではどうするべきか」
「向こうの戦力は女王メイヴ、クーフーリン。それにベオウルフとアルジュナもいるわね」
「おまけにケルトの兵士達やモンスターもいやがる。オレ1人じゃ難しい。頑張ってもフルボッコですよー?」
現状が不利なのは変わらない。それにこのままじゃ不利になる一方だ。ここで決着をつけなきゃいけない。
「暗殺に失敗した以上、戦力を二分。片側を拮抗させた上でもう片方が正面突破しかあるまい。幸いここには強力なサーヴァントも多いことだ。不可能ではあるまい」
「その通りだアーチャー。いつまでもチンタラしてらんねーんだ。いくしかねぇだろ」
引くも駄目。守るも駄目。結局攻めるしか選択肢はないのだ。
「私も賛成です。備える時間も必要である以上いつまでも話し合ってはいられません」
ライオンを見つめる。彼とて他に方法がないことには気付いていたのだろう。
「それしかないようだな。では続いてメンバーだが……」
「それなら子ジカに任せるわ。アンタなら間違いないでしょ」
なるほど確かに。今までさまざまなサーヴァントと交流してきたのだ。そのあたりの経験は豊富だろう。
「俺なんかにできるかなぁ……」
「大丈夫です先輩。私も手伝うので一緒に頑張りましょう!」
そうして会議は解散となった。
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食事を終え部屋に戻り椅子に座る。机に置かれたランプに火を灯す。なんとなく炎を見つめていると安心感を感じてくるのは不思議だ。
「明日から最終決戦だ。早く休め。体力が持たんぞ」
この戦いも終盤。明日の戦いを最後に私達の今後が決まるのだ。生きるか死ぬか。結果はそれだけ。明日で全ては決まるのだ。
「ねぇランサーさん。私ね、貴方に会えてよかった」
彼を見つめる。少し慌てたような表情に場違いにも可愛らしいと思ってしまった。
「突然どうしたマスター」
「今しかないと思って。明日どうなろうと落ち着いて話ができるのはここで最後でしょ?」
「そりゃ、そうだが……」
パチリ、と火花が爆ぜる。
真っ暗な中、ゆらゆらと炎が踊っている。
なんとなく、この静けさが好きだと思った。
「ねぇランサーさん。私ね、寂しかったんだと思う」
彼は何も言わない。ただ耳だけ傾けている。
「私の家族、10年も前に死んじゃって。それ以来友達とも疎遠になっちゃってさ。元の世界じゃひとりぼっちなんだ」
家にいると寂しさがこみ上げてくる。おかえりもただいまも言えなくなって、ただ孤独の中に生きる。世界が色落ちた様に無価値に思えて。どんどん記憶も薄れていつかみんなのことも忘れてしまう。
「だからかな。この世界に来て、久しぶりにこんなに話して。久しぶりにこんな近くに人を感じた。辛いこともあったけど、凄い楽しかった」
ただ一緒にいるだけで。それだけで世界に暖かみを感じる。こんな時間を感じられるだけですごく嬉しい。生きていると実感できる。
でもそれは永遠には続かない。
この戦いも終わる。もし勝ったとしても私は元の世界に。彼ももとの場所に戻ってしまう。それは酷く悲しくって寂しくて。いけないのに続いて欲しいと願ってしまう。
ふと、肩を見る。1箇所かけた紋様。彼との繋がり。その証明。この一画欠けたことに気づいたあの瞬間。私は恐怖したのを覚えている。
「私ね、怖いんだ」
孤独を耐えることには慣れたけど、失うことは全く慣れない。いつまでも私を蝕んでいく。
「ならどうする。逃げるか?オレは飽くまでサーヴァント。アンタの選択に従うぜ」
それは甘い言葉だった。彼から出たとは思えない発言。魅力的で、蠱惑的で、まるで私を溶かすような提案。
それでも選んではいけないことだけはわかった。このまま選んでしまったら、一生彼に縋ってしまう。
「戦う。戦います。これは私のわがままですから。私の為に誰かが失う必要はありません」
「アンタがそれを選んだ以上オレからはとやかくは言わない。とにかく今は休んで明日に備えろ」
彼はドアノブに手をかける。
「頑張りましょうね」
「おう」
そう言って部屋から出て行ってしまった。
もう涙はこぼせない。私が決断した以上、いつまでももしもの話を考えても仕方がないのだ。泣いても笑っても明日で最後。次の夜明けは彼と笑っていられるように。私も精一杯頑張るしかないのだ。
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「盗み聞きとは感心しねぇな」
ドアを開けると紅茶を片手にアーチャーが立っていた。
「何、君のマスターは随分と消耗していたようでな。マスターに念のためにと派遣されたのだ」
「いらねえよ。既に寝させた。お前らは明日のことだけを考えときゃ充分だ」
「随分と信頼しているのだな。あのマスターを」
「覚悟示されたんだ。答えねぇ訳にはいかねぇだろ。それよりスカサハはどこだ?」
「西の塔にいる。手合わせをするなら城外に行きたまえ。マスターには私の方から言っておこう」
「やけに気が効くじゃねぇか明日雨とか降らすなよ?」
「君の周りだけ剣の雨を降らせてもいいが?人の気遣いだ。有り難く受け取っておけ。ではな。私も忙しいのだ」
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歩きながらクーフーリンは考えていた。
もう1人の自分やこの世界に呼ばれた理由。何故野良でなかったのか。何故彼女はこの時代に呼ばれたのか。
思えば出会いからしておかしかった。呼ばれたと思えば槍の降る中。遠くに見えるケルトの兵士。マスターといえば気絶していて。ステータスや魔力供給量も低い。目が覚めた後もだ。マスターが魔術師でないと言って落胆した。猛者達を前にロクに戦えず敗北するのは目に見えていた。
不思議な女だと思った。
日々の生活。適応力は高いのか、普段の生活にも文句も言わず、それにオレが見ている前では決して涙は流そうとはしなかった。
戦闘を繰り返すたびに変わっていくような気がした。覚悟ができ、恐怖を受け止めるようになった。戦闘は嫌うのに、決して投げ出さない。
マスターの願いはおそらく孤独の解消。どう足掻いてもこの世界が修復されたらオレは帰還することになる。それではただいいように使われて終わりだ。それは何となく腹が立つ。
「馬鹿弟子ではないか。こんな夜更けに何のようだ?」
「少し虫の居所が悪い。付き合ってもらうぞ」
「フッ。その荒々しさ、ようやくクランの猛犬らしくなったではないか」
夜が明ける。朝焼けと共に並んだ人影。数多な時代から集まった戦士達。皆が思い思いに話しているが、その想いは一つだ。
「編成は言った通りだ。いくぞ、出陣だ!」