深紅の槍 黒殻を穿つ   作:リルリルjp

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諸事情により次の話まで少しだけ空きます。今月中には完結させるつもりではいるので気長に待っていただけると幸いです。


第11話

 荒野をかける。私達は急襲側のメンツに加えられた。メンバーは私とランサーさん。カルナ、ラーマ、ナイチンゲール。それに加えてエミヤさんなど藤丸くんの連れてきたサーヴァント少数。このメンバーで一気に突破するつもりだ。

 

「早速ケルトの軍勢のお出ましだ。3分後に接敵する。準備しろ!」

 

「了解! ここで時間はかけられない。エミヤ宝具を使って一掃して」

 

「了解した。下がっていたまえ。『偽・螺旋剣(カラドボルクⅡ)』」

 

 剣が放たれ爆散する。見た限りでは全滅だろう。やはり藤丸くんの判断は速いし的確だ。一瞬で盤面を整理して指示を出せるのは一重に経験の差なのだろう。私には真似できない。彼の為に。未来の為に。私にできることを探さなくてはならない。肩の赤い紋様。あまり使いたくはない。それでも戦うと決めた以上覚悟だけはしておかないといけない。

 

 

 

 おおよそ昼過ぎごろだろうか。一条の炎が迫ってくる。カルナが弾く。

 ここまでの道中、私は彼は表情が動かない人だと思っていた。しかしそのポーカーフェイスが崩れる。

 

「カルナ、お願いできる?」

 

「承知した。あのアルジュナが相手だ。全力を持って戦わせてもらう。下がっていていろマスター」

 好戦的な笑み。それが向かう先には1人の男。褐色の肌に真っ白な衣服。弓を片手に持った高身長のサーヴァント。

 

「久方ぶりだなカルナッ! 何千年も待ち続けたぞ! 俺はお前との正しき決着を望む! 必ず! この場でだ! いかなる天魔さえ邪魔立てはさせん‼︎────いくぞ!」

 

 2人の間で赤と蒼の炎がぶつかる。大規模な爆発。男の顔が恐ろしい程に歪んだ。

 

 男は狂気に染まったように戦っている。それでも動きに隙はない。弓と槍。明らかに間合いが違う武器。詰められれば槍が圧倒的に有利にも関わらず未だ決着がつかないのは男の技量が確かな物だからだろう。

 カルナが詰めればアルジュナが飛び退く。

 突き出された槍を避け、手元に矢が放たれる。横薙ぎで弾き、そのまま腹をとらえる。

 それをも利用して男は間合いを無理やり開けた。

 

「ハハハハハ! やはりだ! お前との勝負は心が踊る。あの時の勝敗、今ここで証明してみせる!」

 

 再び繰り返される応酬。何度も炎が地を這い迎撃されるたびに火の粉が飛び散る。武の極地とも呼べるその戦いは益々激しさを増し辺りへの被害が大きくなっていく。

 

 それでも長くは続かないだろう。こちらの攻撃は向こうの体を傷つけるのに対し、向こうの攻撃はどうしても鎧に阻まれてしまう。通った攻撃でさえ次々と癒されてしまう以上こちらが圧倒的に有利だと言える。それでも油断はできない。2人の魔力が急激に高まる。

 

梵天よ地を覆え(ブラフマーストラ)!」

炎神の咆哮(アグニ・ガーンディーヴァ)!」

 

「「オオオオオオォォォォォォォ────‼︎」」

 

 2人が気迫を込める。ぶつかり合う2色の炎。初めは拮抗していた。それでも少しずつ押している。今回はこちらが優勢なようだ。

 

 その瞬間だった。

 

「『抉り穿つ鏖殺の槍(ゲイ・ボルグ)』」

 

 カルナの炎が弱まった。勢いを増した蒼炎に飲まれる。炎が爆発し、辺り一帯が煙に包まれた。

 

「何故だカルナ! 何故手を緩め……」

 

 煙が晴れると胸から槍が突き出たカルナが現れた。流石のアルジュナも困惑している。だが私はその槍に見覚えがあった。

 

「ランサーさん!」

「あいよ!」

 

 彼の槍と男の拳が激突する。

 黒衣の男。やはり彼の不意打ちだったのだろう。男が腕を振るうと槍が戻っていく。

 

「何故だ! 何故邪魔をした!」

「邪魔だ? 一騎討ちなんぞ俺は認めてない。それにこれは戦争だ。卑怯も何もない」

 

 男がこちらを見る。感情の一切が込められていない瞳に鳥肌が立つ。

 

「そんでお前らが反逆軍か。数が多いな。チッ、面倒だ。まとめてやらせてもらう。蠢動せよ。────ー死棘の魔槍(ゲイ・ボルグ)

 

 男が槍に力を込める。禍々しく躍動する魔力。威力は確かな物だろう。────────放たれれば、だが。

 

突き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルグ)!」

 

 槍の投擲。男が無理やり槍で弾く。溜められた力が散った。

 

「オレがいるのを忘れてねぇか?」

 

 ランサーさんが逸らさせる。その隙に宝具が放たれた。

「焼き尽くせ……『日輪よ、死に随え(ヴァサヴィ・シャクティ)』……」

「チィ、後ろか……ッ!」

 男の半身が焼け爛れる。しかしあの威力。その功労者もただでは済まなかった。全身から血が滴り、心臓も抉られた。助かる術は見当たらない。

 

「すまないアルジュナ……。此度の決着……持ち越し……」

 

 カルナが消滅する。それを男はつまらないものを見るように眺めている。

 

「施しの英雄は死んだ。残すはお前らだ。来るならこい。────ワシントンで戦ってやる」

 

 男は去った。残されたのはアルジュナ1人だ。

 

「あぁカルナ。俺はどうすればいい。決着を望んでいたのに! あぁどうすればいいんだ!」

「簡単な話でしょう。いい加減目を覚ましなさい。貴方は妄執に取り憑かれています」

「妄執だと! 貴方に私の何がわかる!」

「最後の一瞬、カルナは英雄としての本懐を遂げました。それに比べて貴方はどうですか。いつまでも過去に縛られて。ここで本懐を思い出しなさい」

 

「私は……俺はッ!」

 

 アルジュナが弓を構える。彼とてこのまま引き下がれないのだろう。それだけ彼とカルナの間は複雑だ。

 

「おいマスター、ここは任せて先に行くぞ。オレたちはアイツを倒さなきゃならねぇ。こんなところで躓いている余裕なんかねぇんだ。負傷している今仕留めるのが1番だろ」

 

「それは……」

 私たちだけで先行するか、それともみんなと同行するか。どちらもメリット、デメリットはあるはずだ。それでも彼がやると言ったのだ。私はその決断を信じよう。

 

「ここは任せました! 私達は先行します。ランサーさん!」

 

 

 

「お前らに構ってる暇はねーんだよ!」

 

 夕焼けの中を駆る。この段階でケルトの兵士に構っている暇はない。このまま走れば夜中には着くだろう。その戦闘がどうなるにしろ私にとってのこの戦いは終わるわけだ。

 

 城が見えてくる。大量の兵士やモンスターに囲まれたそこは、まさしく魔王城と呼ぶにふさわしい。

 

「突入するぞマスター」

「了解です」

 

 

 私達がこの戦いに終止符を打とう。


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