深紅の槍 黒殻を穿つ   作:リルリルjp

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第1話

 

 

 ふと、目が醒める。

 夢だったのではないかと期待し、辺りを見回す。しかし、辺りは変わらず荒野だった。しかし、何か違和感を感じる。再び周りを見渡し、やっと違和感の正体に気がついた。

「ここ、最初にいた場所じゃない?」

 口に出してみるとしっくりきた。確かに私の持っていた肥料はないし、あの大量の兵士もいない。武器や死体どころか血痕もない辺り、私が眠っていた間に運ばれていたことは確実だ。

「よう、起きたかい」

 何処からか、声が聞こえた。

 辺りを見渡す。しかし誰もいない。空耳だったのだろうか。

「今回のマスターは念話も知らないのかよ。今まで何を学んできたんだ?」

 今度はより鮮明に声が聞こえた。

「どこなの? どこにいるの? あなたは誰? ねえ、なんで私はこんなところにいるの? どうしたら元の世界に帰れるの? この後どうなっちゃうの? この後どうすればいいの?」

「オイオイ、落ち着けっての」

 光が集まり、人型をなさす。真っ青な髪に青の全身タイツ。真っ赤な目。深紅の槍。

「よっ。ランサー『クー・フーリン』。アンタに呼ばれて参上した。ま、宜しく頼む」

 不思議な光景だった。

「マスターって何? ここはどこで、さっきの兵隊はなんだったの? なんで私を襲ってきたの? あと」

「だから落ち着けっての。名乗られたら名乗り返すのが礼儀だろ」

「えっと……桜花、双葉桜花(ふたばおうか)です。それで、その」

「慌てんなって、一つづつ質問に答えてやる」

 彼は指を立てた。

「まず、ここがどこかはオレも知らん。次に、マスターってのはそのままの意味だ。で、さっきの兵隊はケルトの雰囲気があったな。オレがランサーなことから恐らくさっきの金髪、ライダーの宝具かなんかだろ。お前を襲った理由はほれ、それだ」

 そう言って私の右肩を指差した。着ていた半袖の袖には何も付いていない。

「服じゃなくって、その下だ」

 袖をめくってみる。そこには、真っ赤な花に似た紋様が浮かんでいた。

「なっ、なんですかこれは!」

「それは令呪っつー、オレらサーヴァント、要は使い魔だな。そいつらへの絶対命令権だ。あんたは恐らく、聖杯戦争に巻き込まれたんだろ」

「待ってください。聖杯戦争ってなんですか?」

「アァ? 聖杯戦争もしらねぇんかよ。アンタなんで魔力なんか持ってんだよ?」

「魔力? フィクションじゃないんですか?」

 私がそう尋ねると、彼は明らかに不服そうに、それでいて面倒臭そうに説明をしてくれた。

 要点をまとめると、

 ・7人の魔術師とそれに使えるサーヴァントが聖杯、と呼ばれる万能の願望器を求め合う事。

 ・7騎のサーヴァントはそれぞれの死因から弱点を知られぬように割り振られたクラスで名前を呼び合うこと。

 ・それぞれのサーヴァントにはそれぞれの逸話から『宝具』と呼ばれる何か特殊能力を持っていること。

 ・サーヴァントは何かしらの形で歴史に名を残したすごい人たちな事。

 そして何より

「殺しあうんですか?」

「ああ、アンタには酷な話だが、まぁ諦めろ。戦争ったらそういうもんだ」

 ぐっ、と手を握り、唇を噛む。頭の整理がつかない。何より、殺し合いと言ったものが、現実として私に降りかかってきたことを整理しきれない。

「まっ、今そんな考えてもしゃーない。それよかこれからに備えたほうがいいぞ。せめて川ぐらいは見つけておかねえとな」

 はっ、とする。そうだ、私達は荒野にいるのだ。周りを見ても川はない。戦争云々の前に、餓死や衰弱死で死んでしまう。

「そうですね。先ずは川を見つけたら町や森を探しましょう」

 

 

 あれからだいたい半日だろうか。私達は漸く川を見つけることができた。幸いにも、ここにくる途中で薪を拾えた。

 薪を重ね、たまたま持っていたライターで火をつける。結局町どころか、森すらも見つからなかった。今日の食料はない。

「あの、ランサーさん。食料は見つかりませんでしたが、明日は器を作りましょう。幸いここら辺の土は粘土質です。それにもしかしたら、明日は鳥が空を飛んでいるかもしれません」

「しゃーなしだな。アンタは少なくとも、水分や栄養が必要だ。まっ今日は早く寝て、明日早くから行動を始めよう」

 私が砂を焚き火にかけると、炎はさっと消え、夜の静寂が辺りに広がった。

 静かになってようやく、本当の現実感を感じた。ふと、ランサーさんの方を見る。彼はすでに寝ていた。こんな場所で寝て、彼は体を傷めないのだろうか。聖杯戦争は、殺し合いだと彼は言った。もし、私が戦うことになったとして、果たして私は彼に殺せと指令を出せるのだろうか。そもそもだ、私は彼に戦わせ続けることはできるのだろうか。ふと、涙が溢れる。私には覚悟ができていない。こんな私を見たら、彼は不安になるだろう。だから、私は歯を食いしばって、音を立てないように涙を流し続けた。

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