深紅の槍 黒殻を穿つ 作:リルリルjp
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朝になって、川の水で顔を洗う。彼は既に、行動を始めていた。焚き火に火をつけ、何かの肉を焼いているようだ。
「よ、おはようさん。川にカモがいるなんてラッキーだったな。これで今日はとりあえずのところ過ごせるぜ」
ほらよ。と、渡された肉を見つめる。一晩が立ちだいぶ落ち着いた。すると私には再び、生きたいという欲求が芽生えてきた。そう、絶対に帰るのだ。
まだ、誰かを殺す覚悟や殺させる覚悟はできていない。しかし、生きる覚悟はできた。
「いただきます」と呟き、焼いただけの肉にかぶりつく。1日ぶりの食事は味ひとつないのに美味しかった。
食事を終えると、土器を作る。土器さえあれば、煮沸して川の水が飲めるようになる。
幸い粘土は川の近くにはいっぱいあったし、私には知識があった。
曾祖母が花屋を始めた時はまだ植木鉢は高価であまり使われてなく、鍛冶屋の曾祖父が片手間に作った土器で代用していたそうだ。だからか、祖母がよく土器の作り方を教えてくれた。
私が土器を作っている間に、ランサーさんが周りを探索して帰ってきた。
「よくできてんねぇ。俺の時代のとは少し違うな」
「昔よく作りましたから。それより、探索の結果はどうでしたか?」
「北に行くと森、南と東は荒野。西は俺らがきた方角だ」
荒野にいても食べるものが手に入るかと言ったら別だ。それにいつまでも肉類のみを食べているわけにもいかない。
「では川沿いに北へ向かいましょう」
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森に来るまで誰にも会わなかった。
ふぅ、と息を吐き、体を木に預ける。ここまで歩き疲れた反動か、ひどく心地いい。つい、うとうととしていると、
「逃げるぞマスター!」
ランサーさんは慌てた様子で私を腹の横にを抱え、後ろに飛び下がった。
ザクッ。
私のいた場所に矢が突き刺さる。
「チッ、なんで獣人が森にいやがる?」
バックステップで再び下がる。
「囲まれると面倒だ。引くぞ! マスター!」
私は頷くことしかできなかった。
「怪我はないかマスター」
「いえ、ありません」
一瞬だった。彼が私を抱えたのも、弓から矢が放たれたのも。
「それにしても、なんであんな獣人があそこにいたんだ? なあマスター、アンタの生きていた時代にはあんな生物がゴロゴロといたんか?」
「いませんでした。いたら私達人類は滅んでいます」
「だろうな」と言って彼は黙り込んでしまった。
「あの、いつまでもこんなところにいるわけにもきませんし、移動しましょう。もう一度川でも探して、再びそこで寝泊りをしましょう」
「まっ、考えてもワカンねぇだろうしな。とりあえずそうするか」
再び私達は歩き出した。正解のわからない旅路は、ひどく私の体力を削った。
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「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
「少し休むぞ。アンタがその調子だとこのまま歩くのは危険だ。急いで何かが変わるわけでもない。気楽にいこうや」
その場に座り込む。
今朝に食べた鴨肉、それとともに飲んだ水。その二つのみでここまで過ごしたのだ。もはや私の体力は限界だろう。それに慣れない環境。死への恐怖。ストレスもある。
しかしそれは彼も一緒なはずだ。ならば私がこれ以上の足手まといになるわけにもいかない。
気がつくと、夜になっていた。どうやら眠ってしまったようだ。
ふと、彼を探す。しかし、一向に見当たらない。彼は何処かに行ってしまったようだ。
私を見限ったのだろうか。そう思うと、申し訳ない。私には専門的なことがわからない。ならば、彼はより自分が勝ち残れるように優れたマスターのもとに行ったのだろう。
まぁ、仕方がない。むしろよくここまでついてきてくれたものだ。私の運命はここまでなんだろう。
達観した気持ちで空を見る。都会とは違い、空には星が綺麗に瞬いていた。でもそんな綺麗な星空も、1人で見るのはひどく味気なくって。昨晩より断然気温が高いはずなのにひどく寒く感じる。
ああ、やっぱり1人は寂しいな。
頬を雫が伝う。
水分は貴重なはずなのに止まってくれない。
私は後先を考えず、声を上げて泣き出した。
9時にもう1話投稿します。