深紅の槍 黒殻を穿つ   作:リルリルjp

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読んでくださってる方ありがとうございます。
今回の後半はだいぶ難産でした。
毎日投稿って結構キツイですね。


第5話

 

 

 今日も彼は早く起きていた。

 ぐっと体を伸ばして欠伸をする。

「ほいよ。煮沸はすでに済ましてある」

 彼に差し出された水を飲む。久方のベッドでの就寝は私の疲れを癒してくれた。

 

 干し肉を齧る。疲れが取れて頭が回りだす。

 生活への余裕ができると、物事を考える余裕ができてきた。魔術的な知識は私にはない。彼に聞いても理解しきれないだろう。ならば今私に考えられることを考えるべきだ。

 私の考えられることと言ったら今後の活動範囲だろう。西側には金髪の男と従えられた兵士がいた。彼に従えられた兵士は武力の無い私にとって大きな脅威だ。よって、行くなら東側だろう。

 

「ランサーさん、主に東方面の探索をお願いします。西の兵隊は囲まれたら危険です。出来るだけ遭遇しないようにしましょう」

「了解。じゃあ俺は出てくる。今日は少し遅くまで探索してくる。なんかあったらその令呪に願え。思いを込めてオレを呼べばすぐに駆けつける」

 

 

 家の中を探索する。リビングや書斎には何もなかった。キッチンには使いかけの紅茶の葉が瓶に詰められて置いてあった。それにベッドの下にあった部屋の見取り図。屋外の一箇所が示された地図も見つかった。

 示された場所を一緒に置いてあったスコップで掘り返す。コツン。という感触とともに、木目地中からがのぞく。上にかかった土を払うと丸い板で蓋のされた甕が見つかった。蓋を開けてみると中からブドウの芳香が放たれた。中身は真っ赤な色合いの赤ワインだった。久方ぶりの味の調えられたものは非常に美味しそうだった。今晩のご飯は非常に楽しみだ。

 

 家の裏には何かを栽培していた跡があった。すでに枯れ果て、鬱蒼とした雑草が生えてしまっていたが、育てていた痕跡はよくわかった。なんとなく悲しくなって、両手を組んで祈る。どうか、この家主死後が安らかでありますように。

 

 

 特に何があることもなく夜になった。

 

「南東の方角、歩いて半日程度の距離ににそこそこの規模の町があった。おそらく人も住んでいるだろう」

 

 移動するには覚悟が必要だった。多くの人がいるであろうそこには、恐らく昨日出会った彼のような人も数多くいるだろう。それでも移動はすべきだ。ここにこもっていても進展はない。いずれは食料も尽きてしまう。ぐっとワインを煽る。アルコールで恐怖が薄れて行いく。覚悟を決める。

 

「町に行きましょう」

 

 

 

 

 

 早朝から移動を開始する。町には早めに着く必要がある。逃走経路の確認や情報収集など、町に着いたらやることは多くある。私はぐっと唾を飲み込み、町が安全であることを祈った。

 

 

 

 ドドドドッ! 

 

 銃弾が吹き荒れる。

 祈りに反して、町の中は危険だった。

 大量の人型機械が徘徊していた。

 壁を背に、ゆっくりと向こうを覗き込む。

 

 ズダァンッ! 

 

 鼻先を銃弾が通り過ぎて行く。

 

 圧倒的に、この世界は普通じゃなかった。周りの民家は現代よりもよっぽど古い癖に、町の住民は人型機械。

 

 

「この世界、相当やべーぞ!」

 

 キィン! 

 

 彼が銃弾を弾く。

 

「弾切れはまだかよ」

 

 ズドンッ! 

 

 壁が一枚剥がれた。

 このままじゃどう考えてもジリ貧だろう。どこかのタイミングで何かしらの手を打たなくてはならない。

 

「宝具を使う。力が抜けると思うが気をつけろ」

 

 彼が立ち上がった。

 光が集まり、彼の手に槍が現れる。それを振りかぶり、

 

突き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク)!」

 

 ぐっと身体から力が抜ける。それと同時に、恐ろしいほどの衝撃波が辺りを吹き飛ばす。数多の人型機械が吹き飛ぶ。それでも数台は動き出した。

 

「クソッ。加減をしすぎたか。逃げるぞマスター」

 

 彼が私を抱える。異常に身体が重く、上手く動かない。

 

 一歩、二歩。一気に彼が加速する。

 

 ズザッ。

 

 砂利で体を擦りむく。一瞬何があったのかわからなかった。その後、身体中に広がる痛みによって状況がわかる。

 

 彼に放された。

 

 痛みをこらえて彼を見る。

 ちょうど左下腹部。私を抱えていた場所だ。そこにあり得ないものが生えていた。

 彼の槍。いや、それにしては禍々しい。その理由に気づいた。棘だ。数多の棘は臓物を抉るために造られたのだろう。彼の血に染まり、赤黒く輝いている。

 

「チッ。めんどくせぇ」

 

 町の中に、男が立っていた。

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