深紅の槍 黒殻を穿つ 作:リルリルjp
読んでくださってる方ありがとうございます。
今回の後半はだいぶ難産でした。
毎日投稿って結構キツイですね。
今日も彼は早く起きていた。
ぐっと体を伸ばして欠伸をする。
「ほいよ。煮沸はすでに済ましてある」
彼に差し出された水を飲む。久方のベッドでの就寝は私の疲れを癒してくれた。
干し肉を齧る。疲れが取れて頭が回りだす。
生活への余裕ができると、物事を考える余裕ができてきた。魔術的な知識は私にはない。彼に聞いても理解しきれないだろう。ならば今私に考えられることを考えるべきだ。
私の考えられることと言ったら今後の活動範囲だろう。西側には金髪の男と従えられた兵士がいた。彼に従えられた兵士は武力の無い私にとって大きな脅威だ。よって、行くなら東側だろう。
「ランサーさん、主に東方面の探索をお願いします。西の兵隊は囲まれたら危険です。出来るだけ遭遇しないようにしましょう」
「了解。じゃあ俺は出てくる。今日は少し遅くまで探索してくる。なんかあったらその令呪に願え。思いを込めてオレを呼べばすぐに駆けつける」
家の中を探索する。リビングや書斎には何もなかった。キッチンには使いかけの紅茶の葉が瓶に詰められて置いてあった。それにベッドの下にあった部屋の見取り図。屋外の一箇所が示された地図も見つかった。
示された場所を一緒に置いてあったスコップで掘り返す。コツン。という感触とともに、木目地中からがのぞく。上にかかった土を払うと丸い板で蓋のされた甕が見つかった。蓋を開けてみると中からブドウの芳香が放たれた。中身は真っ赤な色合いの赤ワインだった。久方ぶりの味の調えられたものは非常に美味しそうだった。今晩のご飯は非常に楽しみだ。
家の裏には何かを栽培していた跡があった。すでに枯れ果て、鬱蒼とした雑草が生えてしまっていたが、育てていた痕跡はよくわかった。なんとなく悲しくなって、両手を組んで祈る。どうか、この家主死後が安らかでありますように。
特に何があることもなく夜になった。
「南東の方角、歩いて半日程度の距離ににそこそこの規模の町があった。おそらく人も住んでいるだろう」
移動するには覚悟が必要だった。多くの人がいるであろうそこには、恐らく昨日出会った彼のような人も数多くいるだろう。それでも移動はすべきだ。ここにこもっていても進展はない。いずれは食料も尽きてしまう。ぐっとワインを煽る。アルコールで恐怖が薄れて行いく。覚悟を決める。
「町に行きましょう」
早朝から移動を開始する。町には早めに着く必要がある。逃走経路の確認や情報収集など、町に着いたらやることは多くある。私はぐっと唾を飲み込み、町が安全であることを祈った。
ドドドドッ!
銃弾が吹き荒れる。
祈りに反して、町の中は危険だった。
大量の人型機械が徘徊していた。
壁を背に、ゆっくりと向こうを覗き込む。
ズダァンッ!
鼻先を銃弾が通り過ぎて行く。
圧倒的に、この世界は普通じゃなかった。周りの民家は現代よりもよっぽど古い癖に、町の住民は人型機械。
「この世界、相当やべーぞ!」
キィン!
彼が銃弾を弾く。
「弾切れはまだかよ」
ズドンッ!
壁が一枚剥がれた。
このままじゃどう考えてもジリ貧だろう。どこかのタイミングで何かしらの手を打たなくてはならない。
「宝具を使う。力が抜けると思うが気をつけろ」
彼が立ち上がった。
光が集まり、彼の手に槍が現れる。それを振りかぶり、
「
ぐっと身体から力が抜ける。それと同時に、恐ろしいほどの衝撃波が辺りを吹き飛ばす。数多の人型機械が吹き飛ぶ。それでも数台は動き出した。
「クソッ。加減をしすぎたか。逃げるぞマスター」
彼が私を抱える。異常に身体が重く、上手く動かない。
一歩、二歩。一気に彼が加速する。
ズザッ。
砂利で体を擦りむく。一瞬何があったのかわからなかった。その後、身体中に広がる痛みによって状況がわかる。
彼に放された。
痛みをこらえて彼を見る。
ちょうど左下腹部。私を抱えていた場所だ。そこにあり得ないものが生えていた。
彼の槍。いや、それにしては禍々しい。その理由に気づいた。棘だ。数多の棘は臓物を抉るために造られたのだろう。彼の血に染まり、赤黒く輝いている。
「チッ。めんどくせぇ」
町の中に、男が立っていた。