深紅の槍 黒殻を穿つ   作:リルリルjp

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第6話

 

 

 男が立っていた。

 黒のフードをかぶり、身体中に赤黒い文様がいくつも刻まれている。そして何よりも──ー

 

「ランサーさん?」

 

 似ている。それどころの次元じゃない。声も、身体も、声も。まさに同一人物といっても過言じゃない。

 

 

「さっすがくーちゃん。一発で当てるなんて」

 

 男の背後からピンク色の髪の女が出てくる。

 女はまるで恋人のように男に絡みついた。

 

「引っ込んでろ。まだ殺ったわけじゃない」

 

 その声を聞き、彼を見る。

 腹部から槍を引き抜き、血が溢れ出す。それでも彼は立ち上がった。明らかに戦闘は不可能にも関わらず、何もなかったかのように槍を構える。

 ふと、頭の中に彼の声が響く。

 

『マスター、聞こえるか?」

 

 突然の事態に目を見開く。

 

『念話だ。とにかく説明は後だ。傷が深い。隙を見て逃げるぞ』

 

「その顔はオレかぁ? 随分と面白いかっこになってんじゃねえか」

 

 血を地面に吐き出す。

 彼は自分に注目させるために男を煽る。

 

「関係ない。俺は俺だ。他の何者でもない」

 

 まるで興味がなさそうに男は反応する。

 無機質な視線や言動。彼にある温もりは感じられない。まるで感情を削ぎ落としたかのような存在だ。

 

「くーちゃんはね、私が聖杯でつくったの。さいっこうでしょ!」

 

 女が自慢するように出てくる。無邪気な顔の裏には狂気が垣間見える。

 

「メイヴか。またくだらねーことしたなお前」

 

「ふふふ。用済みが何か言ってるわ。くーちゃん、やっちゃって!」

 

「了解した」

 

 男が腕を振るう。

 それだけで離れた位置に落ちていた槍が手元に戻っていった。

 

 緊張が高まる。遂に男が膝を屈める。

 

 

 ズダァンッ! 

 

 

 不意に、音が鳴り響く。

 

 銃弾が女に向かって放たれた。

 

「舌を噛むなよマスター」

 

 彼が私を抱えて走り出す。

 

 人型機械が動き出し、女に群がって行く。

 

 男は女を守るのに忙しいようだ。

 

 ふと、男がこちらを向く。ふと、目があったように感じた。その目は強い飢餓に襲われたようであり、少しだけ寂しそうに感じた。

 

 

 

 ────────────────────

 

 

 荒野を走る。ただ、ひたすらに走る。地理も方角も、何にもわからない。もし追い付かれたら死ぬ。ただ、それだけだ。

 

 彼の速度が落ちる。減速は止まらず、遂に彼が足を踏み外した。咄嗟に自分の頭を抱える。私達は地面を転がった。

 

 彼に駆け寄る。左下腹部の出血が酷い。ここまで走れたのが異常なほどだ。

 

「ランサーさん。死なないで! ねぇ、ランサーさん!」

 

 上の服を脱ぎ傷口に押し付ける。血は止まらない。むしろ出血は酷くなる一方だ。

 

「すまねぇマスター……。オレは、ここまでの様だ……何とか、返してやりたかった、出来そうにねぇ……」

 

「喋らないで! やだ! 死んじゃやだ!」

 

 涙が止まらない。いやだ。彼が死ぬなんて絶対に嫌だ。

 ごぽりと血が溢れる。

 

「やだ、やだ。死なないで! 死んじゃやだ。────死なないでっ! ランサーさんっ!」

 

 不意に肩が熱くなる。躍動するようなナニカを感じる。

 その瞬間、奇跡が起こった。

 彼の血が止まり出す。傷がじわじわと塞がって行く。

 

 ────ーそれでも足りない。傷は彼を少しずつ蝕んでいる。

 ああ、もう無理なのだろうか。

 

「おや。大きな爆発から馬鹿弟子の気配を感じて追跡してみれば。死にかけてるではないか。私はそのような軟弱に育てた覚えはないのだがな」

 

 

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