深紅の槍 黒殻を穿つ 作:リルリルjp
「はじめまして。藤丸立花です」
すっ、と手を差し出される。
「えっと……双葉桜花です。その……よろしくお願いします」
手を握り返す。
芯の強い男の子だと思った。言葉には力があり、瞳の奥には強い意思が垣間見える。
「よろしくね双葉さん。双葉さん……。ふたば……。日本人⁈なんで⁈」
「ふ、ふ、藤丸くん。お、おちつくんだ。と、とりあえず話を……」
何処からか声が聞こえてくる。これも念話の一種なのだろうか。藤丸くんの手元から伸びた光が空中にウィンドウとなり表示されている。そこにはなんとなく締まりのない顔をした男が映っていた。
「まてまてロマ二。まずは君が落ち着きたまえ。それで、双葉くんだったかな? 私はレオナルド・ダ・ヴィンチだ。気軽にダヴィンチちゃんとでも呼んでくれたまえ」
「は、はい。よろしくお願いします」
男に変わって見覚えのある顔が表示された。見た目はかの有名なモナ・リザ。にも関わらず、名前はあの天才画家。まさか私の今まで習った事は間違いだったのだろうか。
「驚いているところ悪いけど、話を進めさせてもらうよ。まず最初に、きみは今自分の状況を何処まで把握できているんだい?」
「その、気づいたらここにいて。令呪が刻まれたマスター同士で戦っているぐらいしか……」
「そうか、原因はわからないが、理由はわかった。なら最初から説明していこう。ただ、これから話す内容はって厳しいかもしれないが全て現実だ。覚悟して聞いてほしい」
彼女の顔が先程までの温かみのある笑みから一転し強張った。
「世界は崩壊した」
世界が崩壊? 初めは意味がわからなかった。予想外の一言。まさに声が出ない。内容を理解するにつれ、手にはじんわりと汗が滲み、足下から崩れていく感覚が襲ってきた。倒れそうになる私を、後ろから来たランサーさんが支えてくれる。
「予想はしていたとはいえ、驚きだな」
彼も驚いているのか額に汗が伝っている。る。
「おや、きみは知識がないのかい?」
「ああ、オレには聖杯戦争の知識しか与えられていない」
「ならきみも話を聞きたまえ。そもそもだ。完全に滅んでいたら私達は存在していないはずだろう? 完全には滅んでいないってことさ。それで私達は滅びかけたこの世界を救うためにこうやって活動しているのさ」
「大体わかった。それで? その救う方法はなんだ?」
「あらゆる時代に散らばった聖杯を集めるために旅しているのさ。今までに4箇所は回収しているよ。それで、だ。聖杯はそれぞれ何かしらの形で歴史を改変しようとして使用されている。この時代では──ー」
「メイヴだな。あいつ、オレを聖杯で作ったと言っていた」
「その通りさ! それに彼女はきみの反転体を作り出している。それが結構厄介でねぇ」
「その……。すみません。私はあまり理解できませんでした」
「最初となんも変わっちゃいねぇさ。要はオレが町で会った2人を仕留める。マスターは元の時代に帰る。たったそれだけさ」
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「はああぁぁぁ!」
藤丸くんと盾を持った女の子(マシュと言うらしい)がスカサハさんに鍛えられている。モンスター相手の実戦のみでだいぶスパルタだが、彼らは必死に食らいついているようだ。なんと言うか、ここまで連続してモンスターに会うと異世界に来たのではないかとでも思ってしまう。
「む、そこに居るもの、出て来い!」
唐突にスカサハさんが声を上げる。
虚空に向かって目を向けると、光が集まり人型を成す。
「む、よくぞ気づいたな」
「ふっ、それだけの殺気を漏らしておいて気づかぬ筈があるまい」
「すまんな。どうにも貴様を見ていると血が滾る。ランサー『李書文』。いざ、立会いを所望する」
「立ち会っても良いが、私はカルデアについている。故にマシュと戦い、勝利してみよ。であればこのスカサハが直々に相手をしてやろう。だが敗北した場合は疾く立ち去るがいい」
「なるほど、ではマシュとやら、立会い願おう」
2人のの戦いを見る。
前回出会ったときの様な殺気が辺りを飛び交い、どうにも足がすくみそうになる。
「下がっていたまえ。君には少し辛いだろう」
赤い外套を着たサーヴァントが私の前に出て殺気を遮ってくれる。それでも、だ。ぐっと足に力を込める。
「大丈夫です」
震えながら答える。
「しかしだな」
「やめとけアーチャー。俺のマスターはそんなにヤワじゃない」
これからは本当の戦争なのだ。もう殺気程度にビビってはいられない。
そうこうしているうちに立ち会いは終わった。どうやら彼は再び何処かへ行ってしまうらしい。別れ際に、こちらに近づいてくる。
「ふむ。ランサー。お主のマスターはだいぶ成長した様だな。今のお主ならば楽しめそうだ」
「やんねーよ。オレにはオレの敵がいる。そんだけだ」
「ほう。何とももったいない。しかし、あれもこれもと言って出し惜しみしてしまったら本末転倒。仕方なし。ではな」
本当に、嵐の様な人だ。