仮面絶唱シンフォギアX:Zi-O 平成ライダーユニバース 作:ジュンチェ
アルカ・ノイズとのカーチェイスは凄まじいものだった。対向車線や渋滞、歩道など気にしないといわないばかりのユキナの運転は追跡者と共に建造物や人的被害も振り向けば戦場跡といった具合で凄惨そのもの。しかし、構ってはいられない…形振りかまっていては間違いなく自分どころか護衛対象も炭素分解待った無しだ。
「本部、応答してください! 錬金術師からの攻撃を受けています!! 応援を……」
ドリフトをかけながらも無線で応援を頼む… その間も突撃してくるアルカ・ノイズの攻撃を避け続けているのは流石と言わざらえないだろう。しかし、このままではジリ貧なのは確実。
「降ろしてください! 錬金術師の狙いは私達です!」
「黙ってなさい、舌を噛むぞ!!」
呑気なことを言う護衛対象、それが可能なら苦労はしない。ナビに指定されたポイントに意地でもたどり着かねば……
「ぬぅぅぅぅ!!!!」
市街地を駆け抜け、あと少し… 近くの港にさえ入れば… ドリフトしながらアスファルトを砕く攻撃をスレスレで避け、エンジンに悲鳴をあげさせながら目的地へつっ走る!
……あとちょっとで
『よっと。』
積まれたコンテナが見えたその時、ドシャァ!!と衝撃が走り車体がスピン。一瞬、車体が『何か』が蹴ったような気がしたが確かめるより早く車はコンテナに叩きつけられ大きくめり込んで大破してしまう。巨大なバッドで全身を殴られた衝撃で一気に意識を失いかけるが、飛び出したエアバッグのおかげと今までの経験のおかげで何とか倒れずにはいる響。
「み、未来……」
「私は平気…それよりも…!」
「…!」
未来も辛くも無事だった…しかし、それは前から車がコンテナにめり込んだからであり即ち運転席は更に悲惨なこと。エアバッグを真っ赤に濡らして動かないユキナの姿がそこにある… 車体の前部が潰れて歪んでおりこれが衝撃の凄まじさを物語っていた。
「ユキナさん!」
ドアを蹴っとばして開け、未来と共に外に出る響。一目でわかる命へ達する寸前の大怪我…呼び掛けにも反応がなく白い肌をダラダラと流れる血は止まらない。一刻もはやく治療しなくては命に関わる…
『おいおい、安全運転はドライバーの基本だろ?? 全く小さい子どもとかだったらどうするんだ?』
そんな彼女たちの前に現れる紅い『怪人』。ノイズではない、機械的なボディに煙突のような角…顔面を覆うコブラのようなバイザー…明らかな意思を持つ異形がふざけた様子でこちらへ歩いてくる。
『よ! シンフォギア装者諸君。 俺の名前はブラッドスターク… 以後、お見知り置きを。』
「錬金術師…?」
『…そう見えるか? まあ良いさ。』
『ブラッドスターク』と名乗る謎の存在。直感的に判るのはその力はシンフォギアや他の聖遺物と違うまるで異質なもので、彼は『敵』であるということ。車がスピンした原因も間違いなくコイツだろう。
身構える響だが、抗う手段が無いのはお見通しでヘラヘラとしながら怪人は距離感を詰めていく…
『…俺はお前たちにちょいと聞きたいことがあってな。
この地球の唯一神であるシェム・ハをお前たちは倒し…そのあと世界をどう思う? バラルの呪詛は消え、意識は繋がり、奇蹟を起こした…それで?
人間は何か変わったか?
少しは賢くなったか?
相互理解なんて出来たか?
………何一つ変わっちゃいないよなぁ? 相も変わらず誰かを妬み、疑い、呪わずにはいられない。』
「そんなこと……!!!」
『じゃ、その胸に引っ提げたものはなんだ?…その爆弾は新しい呪いそのものだろ?』
「!」
ブラッドスタークが指差す先……響の胸にしまってあるのはシンフォギアの代わりだが、それは誰かを護る撃槍でも破邪の鏡でもない。この黒い塊は世界を成す人々が戦乙女に課した枷であり『呪い』。もうその人智を越えた奇蹟が自分たちの預り知らぬ場所で起こることがないように、自分たちに向けられることがないようにと恐れがつけさせた火薬の塊。ボタンひとつで簡単に人間の首など吹き飛ばす万一への保険。
未来も含めて、全員にかせられた世界を救った代償である。
『なぁ……お前たちが世界を救った意味は本当にあったのか? 平凡な日常なんて来なかっただろ?』
…違う、と心は叫びたかった。 それでも、人間は前に進んでいると胸を張りたかった。
でも、全てはブラッドスタークの言うとおりだった。バラルの呪詛が消えても尚、人は歩み寄れず…奇蹟すら怖れ、あまつさえ首輪をつけたのである。何も反論出来ることがなかった…
「…でも、……それでもッ!」
『でも、なんだ? まだ信じ続けるか? いつかは…またいつかはと何度続ける? お前の起こした奇蹟は無意味……いや、新しい災厄を招くだろう。立花 響、お前は世界を救ったんじゃない、地獄の中へ放り込んだんだ。』
「!」
「響、きいちゃ駄目!」
未来の悲鳴が遮ろうとするが、魔の声は揺れる心に着実に手を伸ばし、爪を立てようとしていた。振り払おうとしても既に蛇に締め上げられるように苦しくて動けない……
…ならばと、蛇は頭から哀れな少女を丸のみせんと最後の一押しをかけ
『なぁ、教えてくれよ……ん?』
「その娘から離れなさい!」
その時、ババババ…!!!と凄まじい銃撃がブラッドスタークを襲い、青いロボットのような人影が突き飛ばした。赤いメカメカしい複眼に銀色に輝く角…それが『仮面ライダーG3』と呼ばれていると知るのは暫く後のことだが、この機械の戦士は右腕にブレードタイプの武器デストロイヤーを展開すると、高速振動する刃で顔面を斬りつけた。
『…ぐっ。邪魔がはいったか。仕方ないまた会おうぜ…チャオ♪』
「! …待て!?」
手痛いダメージ…というわけではなさそうだが、傷口を押さえ撤退するブラッドスターク。 追おうとしたG3…しかし、未来の悲鳴と喪失状態の響に気がつき踵を返す。
「響、しっかりして!」
「私だ…私のせいで……」
「立花響! しっかりなさい!! 私よ!」
駆け寄るG3はマスクのスイッチに指先をかけると、装着が解除されて素顔が露になる… そう、それは響と未来がよく見知った顔であり、いつ以来顔ぶりの再会……
「マリア……さん…?」
髪は結っているが間違いない…アガートラームの装者であり、かつて共に世界を救った仲間である。
☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆
……S.O.N.G.本部
かつて、世界を護る切っ先だったこの場所はある意味では響や装者たちのもうひとつの帰る場所だった。過去形なのは最早、その場所には見知った顔は誰ひとりとしておらず、代わりに国連から派遣されたエージェントたちが就いている。 無論、彼等は熱や情に振り回されることはなく厳正に装者たちを監視・拘束するためだ。かつて、世界の危機を救うため装者と奔走したこの潜水艦がこんな役回りになるとはなんと皮肉なことか…
「さて、困ったことをしてくれましたね。 始末書…では済まないですよ?」
今、風鳴弦十郎が座した司令の席にいるのは細身で中年…サングラスをかけた男。名前は『北條 透』…年齢は先代司令とそこまで変わらないだろうがスーツ姿に覇気はない。ただ、独特の冷たい雰囲気が響や未来は苦手だった。
「あの……ユキナさんは…」
「集中治療室です。 意識が戻ったとしても植物状態……善くて身体に麻痺が残るか。何にせよ、もう普通の日常生活すら難しいでしょう。」
「…っ」
ユキナは重傷で最早、復帰どころか回復不能なダメージを負った。集中治療室で今も尚、施術は続いており余談は許されない…。北條は淡々と告げるが、当事者の響に言葉は重くのし掛かる。
……自分のせいだ。 自分が勝手に動いたから彼女は…
「然るべき処分は後程。 説教なんて無駄な時間もかけるのも惜しい。 マリアさん、貴女は彼女たちの監視を任せます。」
「良いんですか? 私も厳密には…」
「人手が足りないんですよ。 ただでさえ忙しいのに、下らないことに割く人員は存在しませんから。」
「了解しました…。」
北條に任されたマリアに連れられ、司令室を後にしようとする響と未来…… が、『ああ、待ってください』と北條が呼び止める。
「改めて忠告しておきますよ、立花響さん。 貴女の手にもうガングニールは無い……
……もう貴女に救える者は、何もありません。 それをゆめゆめ忘れないようお願いしますよ。」
「……!」
未来とマリアはすぐさまくってかかろうとしたが、響が手を引いて制す。そして、小さく『わかっています……』と呟いて去っていく。
その小さくなった背中は世界を救った戦乙女とは、もう誰も信じはしないだろう
ブラッドスターク『立花響、お前が歌わないのは勝手だ……だが、その代わりに誰が歌うことになると思う? ……万丈だ。』
万丈「それでは歌います、賢者の筋肉…」
戦兎「おいバカやめろ。」