至高の御方転生記 〜現地人になった御方達〜   作:ハチミツりんご

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文字数ばかり嵩んで読みにくいったらありゃしない。だけど途中で切るのもなんとなくむず痒い。そんな竜王国編です。

それはそうとゼロ君。いつになったらうちのナザリックに来てくれるのかね。この間やっとデイバーノックが来たから後は君だけなんだよ、被った限定アウラちゃん上げるからこっちおいで


ぶくぶく茶釜in竜王国

 

 

荘厳な城内。絢爛たる装飾の数々。現世の者たちにとっては雲の上の世界であり、一国を統べる王が住み、かの王を護るべく堅牢な兵や信頼のおける側近達が目を光らせている場所。それが、一般における王城というものだろう。

 

 

 

 

「______よくぞまいった!!勇者たちよ!!」

 

 

 

 

しかし、この城に限って言えば些かそれとは異なっているだろう。何故か?理由は簡単、余裕なんて無いからだ。

 

 

 

確かに荘厳。確かに絢爛。

 

 

この場所は城下町やほかの都市に比べてば装飾にも凝っているし、臣下たちも存在する。王の身の回りの世話を担当する侍女達もだ。一般の家なんぞ比べ物にならない場所であることには変わりない。

 

だがしかし。この場に、別の国の王城______リ・エスティーゼ王国やバハルス帝国、ローブル聖王国の城を見た者がいたのなら、口を揃えてこう言うだろう。『地味だ』、と。

 

 

 

 

「此度の活躍、我も聞き及んでおる!幾度となく我が国を救ってくれているそなたらには、感謝してもしきれぬ!」

 

 

 

それもそのハズだ。この国には、もう必要以上に王城を着飾るような余裕は無い。この王座の間を彩っていた装飾品の数々なんぞ、とうの昔に売り払って民への補填や法国からの支援要請の為の金にあててしまった。王として、最低限の威厳を示す程度にとどめられ、国費の殆どは目下の脅威の排除のために使われている。

 

 

 

そんな滅びゆく寸前の国______【竜王国】の主にして、かの真なる竜王『七彩の竜王(ブライトネス・ドラゴンロード)』を曾祖父に持つ竜族のセミ・クォーター。タレントによって竜王の使用する始原の魔法を使えるが、本人は竜族の様な戦闘能力は皆無のため《真にして偽りの竜王》と呼ばれる唯一無二の女王。

 

 

 

 

 

それこそが、今現在王座の間でたどたどしい口調で目の前の英雄達をいたわっている女性______【ドラウディロン・オーリウクルス】、その人である。

 

 

 

 

 

 

 

「貴君らには足りぬかもしれぬが、我に叶えられる願いならば何でも聞こう!遠慮はいらぬぞ!」

 

 

 

 

本来の彼女の肉体は背も高く、胸も大きい大人の女性的なもの。しかしこの死にかけの国、そして民を繋ぎ止めるため、万人受けして外交もやりやすい幼い子供の姿をあえてとっているのだ。国民の殆どは幼女形態を本来だと思っており、彼女の真の姿を知るものは国内外含めて極わずか。それも竜王国には関係の無い他国の上層部、及び信頼厚く口の固い側近、そして彼女の友人くらいなものであり、真実を知ることはそうそう無い。

 

 

というわけで彼女は年齢に似合わない、幼い子供のような話し方で眼前に跪いている十数人の人間達に感謝の言葉を述べている。この十数名の戦士達は、誰もが一線級の冒険者。……というか、全員がこの竜王国冒険者ギルドの最高峰、アダマンタイト級に位置するもの達である。

 

 

 

 

「______いえ、陛下。我らはこの国の民、貴方様の憂いを払うべく戦うのは当然の事。そのお美しい声にて激励されるだけで望外の褒美と存じます」

 

 

 

その中で、跪いている者たちの中でも前に出ている2人……そのうちの男性の方が、胸に手を当てながらそう述べる。

 

整った容姿に、丁寧な言葉遣い。身を固める装備はどれも一級品のマジックアイテムであり、背には彼の異名の由来となった一振りの剣が収まっていた。

 

 

かの人物こそ、この竜王国で長きに渡りビーストマンたちを押さえ込んでいるアダマンタイト級冒険者チーム、『クリスタルティア』のリーダーたる聖騎士。実力もさることながら、戦い方や言動に至るまで粗暴な冒険者とは思えない佇まい。竜王国の民達から勇者とも呼ばれる傑物、その名を【セラブレイト】。光輝剣と呼ばれる剣術の使い手であり、《閃烈》の異名を持つ竜王国屈指の剣士だ。

 

 

 

 

 

「______あぁ陛下、今日もお美しい……!」

 

 

 

ちなみにこの男、聖騎士の癖してドがつく幼女愛好家(ロリコン)であり、日々ねっちょりとした視線でドラウディロンを見つめるむっつり野郎である。当然ドラウディロン、及び側近の宰相はそれを知っているのだが、本人は気が付かれているとは微塵も思っておらず、隠し通せていると確信している。

 

 

 

ぬぇっとりと悦楽したようなセラブレイトからの視線を受けたドラウディロンは背筋に悪寒が走る。

 

が、この男は変態ではあるが竜王国には無くてはならない人間。民衆からの支持も厚いし、こちらから頼まなくとも自ら率先してビーストマンたちの討伐に赴いてくれる便利な男だ。子供っぽいはにかんだような笑みを向けてやれば、「ンヴッ…!」と悶絶したように頬を緩め、それを悟られないように必死に表情を固めて声を押し殺す。何故こんなのに才能を与えたもうたのか。神の考えは全く持って読めないな、なんて思うドラウディロンであった。

 

 

 

そんな中でドラウディロンは、セラブレイト達のチーム《クリスタルティア》の隣に座しているもう片方のチーム………9()()()という、冒険者としてもワーカーとしてもかなりの人数になる彼ら彼女らの方を見やる。

 

 

「そなたらはどうじゃ?何か望みはあるか?」

 

 

 

その声には、隣に立つ宰相しか気が付かない程度の極わずかな緊張が混ざっていた。当然だ、この9人組はまさしく竜王国の救世主、と言っても過言では無い。クリスタルティアもアダマンタイトに相応しい実力者達だが、リーダーがアレなので多少なりとも適当に扱って大丈夫だ。絶対にやりたくはないが、最終手段としてドラウディロンがセラブレイトに抱かれれば、たとえ報酬が無くとも死ぬまで彼は戦ってくれるだろう。

 

 

 

しかし、この9人組においてはそれが通じない。何故か?それはそのはず、セラブレイトが特殊なだけであり、そうそう幼女愛好家(ロリコン)なんて人種がいるはずが______

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はいっ!!!!ドラウちゃんとお茶したいです!!!」

 

 

 

 

 

______なんて現実逃避してる場合ではなかった。

 

 

 

高々と手を挙げて、満面の笑みを見せるのは、9人組のリーダーたる女性の一歩後ろにいた細身の男性。未だ歳若く、青年なりたて、と言ったところだろうか。服装はウルミと呼ばれる軽く加工しやすい金属を使った軽装の衣服鎧。その上から急所のみをカバーするように補強したものなのだが、そこにはミスリルとオリハルコンを混ぜた硬度の高い合金が使われている。

 

さらに彼の者の背にあるのは、見事な意匠を凝らした光り輝く大弓。その細い身体で扱えるのか、と初見の者なら心配になるだろうが、ドラウディロンは知っている。この男、見た目に反してかなりの剛力の持ち主であり、並の兵士10人がかりで引くようなその大弓をまるで遊具であるかのように容易く使いこなしてみせる実力者であると。

 

 

くすみのない綺麗な金色の髪に、輝く笑顔とその大弓。そして彼の戦闘スタイルと特殊能力(スキル)から、誰が呼んだか【()()()()()】。

 

 

 

「ドラウちゃん!!!美味しい焼き菓子手に入ったからお茶しましょう!!出来れば!!俺の!!お膝の!!!上で!!!」

 

 

 

 

それこそ、今一国の女王に向かって膝の上で菓子を食えと言っているド変態にしてセラブレイトと並ぶドロリコンにして、アダマンタイト級冒険者!!

 

 

《爆撃の太陽弓》【ペロロティーノ】その人であるッ______!!

 

 

 

 

 

「貴様、ペロロティーノ!!!畏れ多くも陛下に向けてそのような言動!!!あまつさえ陛下に、ひ、膝に乗ってお菓子だと!?なんと羨ま______んヴぅん!!無礼千万な!!!恥を知れ!!」

 

 

「え?セラっちゃんもお茶会来る?ドラウちゃんに着て欲しい新作衣装も完成したし一緒にどうよ?」

 

 

 

一国の女王に向けてのあまりにラフな言動にセラブレイトが怒りの声をあげる。が、どこから取りだしたのかペロロティーノの掲げた衣装______騎士服のようだがへそや腿の辺りなどに妙に露出が多く防御力に不安しかないもの______を見た瞬間、ピタッと動きを止める。そしてごほんっ!とわざとらしい咳払いを一つ。

 

 

 

「……まっ、まぁ貴様に陛下を任せるなんぞ気が気ではないからな!護衛として、ホーリーロードたるこの私がいるに越したことはないだろう!陛下もココ最近お疲れのようだし、気分転換は必要だ、うむ!」

 

 

 

チラチラとドラウディロンを横目に見ながらわざとらしくそう言うセラブレイト。疲れてんのはテメーらのせいだよ、と言いたいドラウディロンであったが、無邪気で天真爛漫な女王としては不適なので我慢して押し殺す。なお、宰相は隣から彼女の事を出荷される家畜を見るような目で眺めていた。

 

 

 

なんて陳腐な問答だろう、と死んだ魚のような目で卑屈そうに目を逸らす女王。自分に出来ることならなんでもやると言った手前、大して金もかからないこの願いを聞き入れないわけにはいけないのだ。そうしたら聖なる幼女愛好家(ロリコン)の方はなんだかんだ理由をつけて光り輝く幼女愛好家(ロリコン)のお茶会にくるのは目に見えている。

 

つまりどう足掻いてもこの変態二人の相手をしなければならないのだ。正直断ってもセラブレイトの方がなんやかんや理屈をつけてお茶会を開こうとするだろう。セラブレイトは中々踏み出そうとはしないが踏み出すと面倒くさく、ペロロティーノの方は嬉嬉として踏み出してくる面倒くさい男。互いが互いの欠点を補い合いドラウディロンの胃にクリティカルヒットを与えてくるクソコンビなのだ。正直泣きたい気持ちでいっぱいだった。

 

 

 

チラリ、と隣にいる宰相に視線を投げる。すると達観したような顔で小さくサムズアップしてきやがった。行けってことか、あれを着ろってことかクソ野郎め、と心の中でこの無能を罵る女王だったが、どうしても行きたくない。コイツらのお茶会に行くくらいならバハルス帝国の嫌味ったらしい皇帝のボウズからチクチクと遠回しに口撃される茶会に出席した方が幾分かマシだ。無論そっちも嫌だが。

 

 

 

 

「陛下、いかがで御座いましょうか!?」

 

「大丈夫、ちゃんとドラウちゃんの好きなのリサーチして揃えてるから!!!」

 

 

 

ズズイッと一歩前へ出てくる変態共。相手がアダマンタイト級の実力者故か、はたまた単純にこの変態共に本能が危険信号を出したのか。無意識に後ろに一歩後ずさりたくなるが、どうにかこうにかギリギリのところで踏みとどまった。

 

 

 

どうしよう、本来ならば見た目は一級品な上に自分を守れるような実力者2人から言い寄られるなんてそれ何処の英雄譚のヒロイン?とでも言いたくなるような状況。しかしコイツらは自分の本来の姿ではなくこの幼女形態に欲情するやばい奴らだ、トキメキも何も無い。あるのはただただ測り得ない恐怖心と理解し難い性的趣向に対する困惑のみ。

 

今すぐにでも逃げ出したいが、これで逃げるような素振りを見せてこの2チームのどちらかが竜王国から去るような事があれば一大事なんてものではない。滅びかけのこの国が未だに国としての体裁を保てているのも多額の金を払って借り受けている法国の特殊部隊と、このアダマンタイト級の冒険者の尽力あってこそ。万が一、いや億が一にもそうなってしまう選択肢は取るべきではない。

 

 

 

「(______仕方ない。これだけは最終手段だったが…………)」

 

 

 

 

使うしかない。この状況を脱する為に、竜王国女王、ドラウディロン・オーリウクルスは悪魔に魂を捧げよう。愛する民達に心の中で懺悔しながら、ドラウディロンはちらりと視線を送った。その先は隣に立つ相棒、王国宰相……では無く。

 

 

 

「………ん?」

 

 

その視線を受け取ったのは、2つのチームのうち、ペロロティーノが属する方のリーダー。9人という大所帯チームを円滑に回している見事な経営手腕の持ち主であり、自身も最前線にて仲間を守る凄腕のタンク。更に、太陽とも称される顔だけ好青年ことペロロティーノの実姉である。

 

 

そんな彼女はドラウディロンからの視線に気がつくと、至極面倒くさそうに顔を歪めた後、大きくため息。頭をガシガシと掻いてから、仕方ないと言わんばかりの緩慢な動きで立ち上がった。

 

 

 

 

「______という訳で法国の知り合いから伝手で入手した極上素材を使った渾身の騎士姫メイド服であってサイズはドラウちゃんのジャスト&フィットで………んぐげっ!?」

 

「なるほどその衣服を用いれば民達へ安心感を示すとともに前線で戦う兵士達への鼓舞になると共に陛下のアダマンタイトすら石ころに見間違う程の圧倒的美しさがかのアーラ=アラフの後光にも匹敵する素ン晴らしいものに………べごろがっ!?」

 

 

 

そしてそのままエロスを追求した騎士姫メイド服の自慢を披露している愚弟と、その愚弟以上に気持ち悪いことを口走っている同僚という変態的な会話に勤しむロリコンビの背後に移動。後頭部をその両手でそれぞれ鷲掴みにした。

 

 

そして____________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふんぬらばっ!!!!!!!!」

 

 

 

 

盛大に床に叩き付けた。

 

 

 

バゴォォォンッ!!!!とおおよそ女性が叩きつけたとは思えない破裂音が城内へと鳴り響く。ちなみに床は大理石であり、全力で人をぶつけたからといって砕けるようなヤワな物は使用していない。それでも砕けるのは、一重に彼女の剛腕ゆえだろう。アダマンタイトの中のアダマンタイト、と評される前衛職たる彼女の腕力は、この竜王国の民をかき集めても足りないだろう領域にまで達していた。

 

 

 

「………ったくゴミ共が。ただの報告の場で盛ってんじゃないわよ埋められたいの?」

 

「いや既に埋まってますぜ姉御……」

 

「ゼロ、なんか言った?」

 

「滅相も無い!!」

 

 

 

汚物を見る目で首から上が見事に大理石に埋まった実弟と竜王国最強の聖騎士を見やる彼女。とても人に向けるもの______ましてや肉親に向けるような代物ではなかった故に思わず背後にいた大男が呟いた。が、彼女が睨みを利かせるとすぐさま姿勢を正す。あの男は確か後暗い噂があるものの、アダマンタイトに相応しい実力の『修行僧(モンク)』であったと記憶している。それがまるで飼い慣らされた仔犬のようではないか。なんとも恐ろしい女である。

 

 

 

 

「______と、言う訳で。申し訳ありません陛下、この者たちは連日のビーストマン達との戦闘でとても疲れているようで………御無礼をお許しください」

 

「う、うむ!そなたらには無理を強いておるのだ、疲れて当然!何を謝ることがあろうか!」

 

「流石は陛下、その深い温情痛み入ります。では恐れ入りますが、報告の方を手短にお伝え致します。まず、ビーストマン達に乗っ取られていた南東部の砦を奪還致しました。それに伴い、砦内に生き食糧として捕らえられていた市民達数百名程の救出に成功。大小様々な怪我はあれど持ち合わせのポーション、及びクリスタルティアのビエル女史の尽力により被害は最小限に止められました。また別件につきましては______」

 

 

 

 

つらつらと口から流れ出るように彼女から報告が言い渡される。その内容はどれも成功の報ばかり。オリハンコン級チームが複数で取り掛かっても不可能であろう依頼を同時に複数こなすその手腕、やはり竜王国歴代最強のアダマンタイトと呼ばれるだけの実力者だとつくづく思う。

 

 

 

「______以上が依頼結果となります。細部につきましては後日、冒険者組合を通して書類を送らせて頂きます」

 

「うむ、御苦労であった。そなたらにはこれからも苦労をかけると思うが………宜しく頼む。もはや竜王国の存続はそなたらの双肩にかかっているといっても過言では無いのだ。民達の安寧の為にも、その腕を振るって欲しい」

 

「本来ならば国の政などに関わるのは御法度ですが、私共もこの竜王国の民。祖国を失うのは心が痛みます故、全力で事に当らせて頂く所存です」

 

 

 

 

胸に手を当て臣下の礼をとる彼女の後ろで、彼女の仲間の7人、そしてクリスタルティアの4人も同様の礼をとる。その様は騎士物語の一場面の如く、幼い女王を懸命に支える英雄達とも言うべき様相だった。

 

………頭から地面に突き刺さっている二名から目を逸らせば、の話だが。

 

 

 

「それでは陛下、我々はこれで失礼致します。……ゼロ、この愚弟引っこ抜いといて」

 

「おう。こっちの聖騎士様はどうすんだ?」

 

「リーダーなら俺達が運んどくから、お気になさらず」

 

 

 

軽く礼をした彼女は地面に刺さった実弟を指差しながら、仲間の一人に頼んで運ばせる。ゼロと呼ばれた褐色肌のハゲ頭は、その鍛え上げられた肉体に違わぬ剛力の持ち主。難なく気絶して目を回しているペロロティーノを引っこ抜くと、肩に俵のように担いで運んで行く。

 

 

その後ろを他の仲間がついて行き、リーダーである彼女も最後尾について歩く。その様子を見てほっと息をつくドラウディロンであったが、「あ、そうだ!」と呟いて急に彼女が立ち止まる。

 

 

 

 

「………陛下ぁ、そういえば先程の報告で『凶牙』と戦闘になったってご報告したじゃないですかぁ?」

 

「う、うむ…………そうじゃったな……」

 

 

 

 

急にもじもじと身体をくねらせながら猫なで声で話し掛けてくる様子を見て、やっぱり来たかと辟易する。

 

 

 

「その戦闘でどうにか討ち取ることはできたんですけど、うちのマルムヴィストの細剣が砕けてしまいましてぇ………そうよねマルムヴィスト?」

 

「エッ、た、確かに砕けちまいましたけど……?でもあれは予備の______」

 

「黙ってろマルムヴィスト、姉御の怒りが飛んでくるぞ」

 

「はい!!そりゃもう物の見事に砕け散りました!!!」

 

 

 

何やらボソボソと話していたが、突如として背筋を直し大声で肯定する赤髪の優男。確かに腰に提げられた細剣のうち、一つが鞘のみとなっている。砕けたのは違いないのだろう。

 

 

 

「そ、うか。災難であったな」

 

「でしょお?でも今の城下町は、どこの鍛冶屋も兵士さん達の武器の製作や手入れで大忙しですしぃ………同等の武具を作る為には帝国や王国に遠出するしかありませんが、帰ってくるのに最低ふた月は掛かりますしぃ………」

 

「それは困るな……お主達の誰か一人でも欠ければ戦線が危うくなる。情けないが、それほど我が国は切羽詰まっておるのだ」

 

「はい、私達もそれは理解しておりますぅ。あぁ、でもマルムヴィストの武器が無いなんて……どうしたらいいのでしょうかぁ……?」

 

 

 

そう言い終えると、チラッチラっとこれみよがしにドラウディロンの方を盗み見る。これだ、こういうことをしてくるからこの女に頼りたくは無いのだ。宰相以外で数少ない素を晒せる相手ではあるが、それとこれとは話が別。なんとか視線を逸らして有耶無耶のまま話を終わらせようと画策する。

 

 

 

「………サキュロント、ちょっとこい」

 

「え、俺!?な、なんすか姉御………」

 

 

 

そんな竜王国女王を見たからか、彼女は仲間のうちの一人、鋭い目付きをした猛禽類を思わせる軽戦士のような風貌の男を手招きする。おずおずと言った様子で彼女に近づいた男に、静かに耳打ち。目を丸くしながら断わろうとしたが、リーダーたる彼女の圧に押されてか渋々耳に手を当てる。

 

 

瞬間、ドラウディロンの中に魔法的な繋がりが繋がる感覚が走る。次いで脳内に男の声が響いてくる。間違いなく『伝言(メッセージ)』の魔法だ。

 

 

 

『えーっと………すんません女王様。

 

『超絶ブラック環境下で働かせてんだから特別手当寄越せ?』

 

………だそうで……』

 

『ぶ、ぶら……?ぬぬ………しかし、宝物庫にそなたらが扱うようなものは無いのじゃ。細剣なんぞ今の我が国には………』

 

『今のスレイン法国からなら武具の買い付けくらい出来るでしょ?半分は出すから、最低限ミスリル以上で炎属性付与された細剣買い付けといて。友達の好で頼むわね?ね?』

 

 

 

 

耳元で鳴り響くとんでもない要求。一国の女王に対する態度とは到底思えないが、彼女らがいないと困るのは事実。それになんだかんだ半分出すとは言ってるし、この女が無理難題を要求してこないのは理解している。苦労はするだろうが、買い付け自体は問題無く出来るだろう。

 

 

 

 

「………はぁ………。我の名を使いスレイン法国と交渉しよう。なるべく早く武具を買い付けられるよう努力する」

 

「わぁ〜!さすがは陛下、お優しいぃ〜!!私、より一層の忠誠を捧げますぅ!それでは!」

 

 

 

 

両手を胸の前で組み、わざとらしく感動して見せたようにする彼女。そのまま軽く手を挙げてドラウディロンに別れを告げると、仲間を引き連れて王座の間から退出していく。その怒濤の勢いと手際の良さは、既に慣れたと思っていたドラウディロンすらもあっけに取られてしまうほど迅速かつ手馴れたものだった。

 

 

 

 

「ったく、あやつは………」

 

「よろしいので、陛下?」

 

 

片手で頭を抑えながら忌々しげにため息をつく女王に向けて、宰相が確認を取る。幾らなんでも一冒険者が、あの法国から武具を買い付けろなどという半脅しを女王にするなぞ許されるべき行為では無い。彼女らが戦わなくなるのは大損害ではあるので裏で手を回し、その考えを改めさせようか、という提案を暗に女王へと投げたのだ。

 

 

 

「いや、よい。ただでさえ破格の依頼料で請け負ってくれておるのだ。あやつらが万全に戦えるようにサポートするのが、国主としての最低限の責務であろう。それに以前の法国なら取り付く島も無かったろうが、今現在のあの国ならば応じるはず……そう悩む事でもあるまい」

 

 

 

少し前の法国ならば武具の買取なんぞ以ての外、下手に刺激したら現在高値を払ってビーストマン討伐に助力してくれている六色聖典の派遣すら取り消しになるであろうほどに竜王国を、ひいては竜の血を継ぐドラウディロンを見下していた。

 

しかし、ココ最近法国内部でも色々あったらしく、以前よりも態度が軟化している。勿論高値は取られるだろうが、武具の買い取りくらい申しても大丈夫だという確信がドラウディロンの中にあった。神々の遺産は無理でも、法国内で生産される質のいい武器や防具は今の竜王国にとっては金銀財宝よりも価値のある代物だ。

 

 

 

 

「それに______」

 

「?それに?」

 

 

「………つ、次の会合はスザク殿とであろう?かの御仁ならばこの話を無下にもせぬだろうし、話を弾ませる為の要因になるやもしれぬし……………」

 

 

 

もごもごと言い淀む主の様子を見ながら、あぁと宰相は手を打った。

 

 

スザク。本名【スザク・ディ・クランプ】。法国の中堅貴族の生まれで行政部に所属する40代半ばの男性であり、法国改革の第一人者とも呼べる人物。最高責任者でないにもかかわらず、十三人目として法国最高執行機関への参加が認められた麒麟児。様々なアイデアを用いて法国に、更には人類種族の平和に裏方として多大な貢献をしてきた天才であり、頭の硬い法国上層部をたった一人で論破してみせた執念の男、とも呼ばれている。

 

 

 

「……しかし彼、大量の森妖精の奴隷を私的に雇ってるって噂がありますけど大丈夫なんです?」

 

「バカを言えぇい!!スザク殿ほどの人徳者が変な理由でそんなことするわけなかろう!!タチの悪い噂か、真実であっても森妖精との関係改善の為の一手じゃ!!」

 

「だーめだこの陛下………おぉ神よ、うちのポンコツ陛下を捧げますので、竜王国を救たまえ……」

 

「おいこら貴様宰相、不敬罪でしょっぴいてやろうか?」

 

 

 

わざとらしく宰相が祈ってみせる、ドラウディロンがそれに眉をひくつかせながら噛み付く。その後も軽口を叩きあいながら、法国との交渉、ついでに今後必要となる物資に関する報告なども2人でこなしていく。なんだかんだ、お互いが腹を割ってこの国の為に話し合える良い上司と有能な部下。未だ民達が安心して寝れる国とは言えないが、少しずつ。牛歩ではあるが、着実に平和へと近付いていく足音を揃って感じる彼女らなのであった。

 

 

 

 

 

 

 

★★☆

 

 

 

 

 

 

「っあ〜………つっかれたぁ〜………ゼロ〜、飲み物〜〜」

 

 

 

 

ぼふん、とベッドに身体を沈みこませ、気力無く部屋の隅にある魔道具を指さす。名を呼ばれた大男は、自分達のリーダーの情けない姿から目を逸らしつつ、ため息をついて渋々その魔道具を開く。

 

中から一気に吹きそよいでくるのは心地よい冷風。仄かな明かりの中で並び立つ幾つものグラスのうち片手で2つを手に取ると、1つを寝具でだらけているリーダーの女性へと手渡した。

 

 

 

 

「ったく、これが竜王国の守護女神様たぁねぇ………おらよ」

 

「ういういあざ〜」

 

 

軽い口調で返事しつつそのグラスを受け取ると、身体を起こして中の液体を一気にあおる。良く冷えたエールが喉を通り抜け、心地よい苦味が舌を刺激する。

 

 

「っあぁ〜!!これよこれ!!ひと仕事終えたあとの酒はさいっこー!!」

 

「酒場の呑んだくれかよ。ほんっとにカゼーミの姉御は変わってるよなぁ、見てくれだけなら貴族の令嬢の癖して中身はその辺の親父なんてやつ、どこ探してもいやしねぇよ」

 

 

アル中親父のような声を上げてテーブルにグラスを置くリーダーを見ながら、呆れたように大男………【ゼロ】は頭を搔く。

 

 

 

目の前のリーダーは、嫋やかな桃色の長髪を1つに編み、可愛らしい髪留めで留められている冒険者らしからぬ髪型をしている。

更には大きく丸い、人懐っこさを垣間見させる桃金色の双眸。キメの細かい白磁の肌。ふっくらとした唇。まず間違いなく街を歩いていれば老若男女違わず振り返る程の傾国の美女。

 

元々王国で裏稼業をしていたゼロから見れば、あの黄金姫にすら匹敵するだろうと断言出来るほどであった。……いや、スタイルを加味してみれば間違いなく男に好かれるのはリーダーの方だ。出るところは出ていて、引っ込むところは引っ込んでいる。王国で彼女みたいなのがいたのなら、貴族連中に妾として連れていかれるか、裏組織に攫われて最高級娼婦として教育されるか、と言った所か。

 

 

 

______そんな恵まれた美貌を持ちながら竜王国最高位冒険者に登り詰め、国内最高峰の宿屋で呑んだくれているダメ女。しかして竜王国……いや、人類屈指の護り手。竜王国の守護女神と称され、9人という大所帯チームを束ねるチームリーダー。

 

 

彼女の名は、【カゼーミ・チャーグマー】。《不動の盾女神》と称される、ペロロティーノ・チャーグマーの実姉である。

 

 

 

 

「……てかさゼロ、エドとか他の男共はどこいったのさ?姿見えないけど」

 

「エドストレームなら組合から頼まれて報告書書いてんぜ。ペロロティーノ達は買い物だ、この数日でポーションやらなんやらバカ消費しちまったからな」

 

 

 

キョロキョロと周りを見渡し、姿の見えないチームメンバーたちの所在を問う。チームでチャーグマーを除くと唯一の女性メンバーである三日月刀(シミター)使いのエドストレームは、組合へと手渡す報告書を作成中との事。左右の手で同時に文字を書ける彼女なら単純計算、チャーグマーやゼロの半分の時間で終わる為だ。

 

そしてペロロティーノを含む残った6名の男メンバーは、金が入ったので消耗品の買い出しも含めて出掛けている。

 

……と、そこまで聞いてチャーグマーが「ん?」と首を傾げる。

 

 

 

「………え、デバッちゃんまで着いてったの!?あの魔法以外眼中に無い無気力ゾンビが!?」

 

「ゾンビじゃなくて死者の大魔法使い(エルダーリッチ)だろう。ペロロティーノが誘ったら渋々ついてったぜ。まっ、サキュロントの野郎もいるし、バレるこたァねぇだろ」

 

 

 

ゼロがそう言って酒を呷ると、それもそっかと呟きながらチャーグマーは【レィー・ドゥ・クール】の魔道具からそそくさと2本目を取り出して同様に呑む。

 

 

デバッちゃんこと【デイバーノック】は、人類社会に身を潜めて魔道の探究を望むアンデッドだ。当然身分を隠して登録してはいるものの、アダマンタイト級冒険者がアンデッドだったなんてバレればただごとでは済まない。普段は本人も魔法以外に興味は無く、外出することはほぼ無い。ただしココ最近は、誰かに誘われて外に出ることが増えたように感じる。

 

 

 

「……まっ、うちのチーム半分以上怪しい奴だけどね」

 

「引き込んどいて自分で言うかぁ?散々ボコされた上に、こんな仕事させられるこっちはいい迷惑だったぜ」

 

「悪さしてたアンタらが悪いんでしょ?そもそもこの国に搾り取る余地なんて無いだろうに、なーんで来たのよ」

 

「しゃーねぇだろ。王国には居れねぇし、帝国は警備が厳し過ぎる。法国は論外、聖王国はこっからじゃ遠い。都市国家連合って手もあったが、向こうの冒険者や警備は面倒だ。安全に入国出来たのがここしかなかったんだよ」

 

 

 

 

出来ることならこっちに来たくはなかった、そう愚痴るゼロ。彼は元々王国内で幅を利かせていた巨大裏組織、《八本指》の警備部門長であった。その当時、《六腕》として名を馳せた実力者達で冒険者達の包囲網を脱出、サキュロントの幻覚魔法で姿を隠しながら竜王国へと逃げ仰せてきた犯罪者なのである。

 

彼に加えてサキュロント、先程のエドストレームにデイバーノック。更にはチームメンバーのマルムヴィスト、ペシュリアンも同様の六腕だった人物達だ。チャーグマーのチームは元々彼女と弟のペロロティーノ、そして昔馴染みのもう一人の3人チーム。そこに紆余曲折を経て彼らが加わったのである。

 

 

 

「だいたいよぉ姉御、なんで俺らなんかを………ん?」

 

 

 

ゼロがチャーグマーに何かを尋ねようとした時、不意に部屋にノック音が響く。2人がそちらに目をやると、部屋の扉を押し開けて1人の女性が入ってきた。

 

銀髪を後ろで束ねた、褐色肌の女性。黒を基調としたアラビア風の蠱惑的な衣装に身を包んだ彼女は、先程話に出てきたチームメンバーのエドストレームだ。

 

 

 

「カゼーミ、ちょっといいかい?剥ぎ取ったビーストマンって全部で何匹………って、あれ?ゼロとカゼーミだけ?他は?」

 

「買い出しだって〜。エドも飲む?」

 

「あ、飲む飲む。果実酒とってくれるかい」

 

「お前報告書良いのか?」

 

「果実酒なんかじゃ酔わないし大丈夫よ」

 

 

 

何かを聞きに来た様子のエドストレームだったが、だらけた様子のチャーグマーから酒を勧められると嬉嬉として席に着く。ゼロが首を傾げて尋ねるものの、酒を飲み慣れた彼女にとっては度数の低い果実酒は水と変わらないらしい。勢い良く1つ目を飲み干すと、そそくさと2本目に手を伸ばす。

 

 

 

「にしてもさぁ、ここの組合金なさ過ぎじゃないかい?今回の依頼、王国なら3倍はふんだくれるよ?」

 

「危険度も王国の冒険者組合の比じゃないからなぁ。向こうにゃ蘇生魔法の使い手がいるからまだ死んでも可能性あるが、こっちはクリスタルティアんとこの女神官が第4位階で最高だろ?」

 

「第3位階つかえるのすら数える程だしね。まぁ竜王国じゃいつもの事よ」

 

 

 

冒険者組合に提出する報告書やチームの支出書を眺めながらボヤくエドストレーム。竜王国の依頼料はかなり安く、危険度も高い。王国や帝国ならばもっと稼げる筈なのだが、竜王国で冒険者を続けるような奴らは国の為、女王の為、という考えの持ち主が多い。高位になればなるほど竜王国から出ていこうとはせず、安い依頼料でも戦ってくれる愛国者(ロリコン)共で溢れているのだ。

 

 

 

「うちのチームも例に漏れずドラウディロン様万歳!な奴がいるからねぇ」

 

「まぁでも、生まれた国だし周りにはお世話になったし、やれるだけはやるわよ。国が滅びるくらいヤバくなったらあの愚弟を埋めて脱出するから安心して、エド」

 

「さっすがカゼーミ、一生ついてくわー」

 

 

いえーい、と軽く笑いながら乾杯する女性陣。そんな彼女らの会話の中でサラッと埋められる予定が立ったチームメンバーに合掌しつつ、干し肉をアテにしながら辛口の酒を進めていく。

 

 

 

「………あっ、帰ってきたよ」

 

 

 

そして暫くの間、一人で飲み進めるゼロと女子会さながらの雰囲気で酒を飲むチャーグマーとエドストレーム。すると突如エドストレームの耳に複数の足音が飛び込んで来る。聞きなれた音、買い出しに出ていたメンバーだろう。

 

 

 

 

「______帰ったぞ」

「姉御、色々補充しましたぜ」

「「ただいま……………」」

「……何時まで凹んでいるのだお前らは」

 

 

 

ガチャりとドアが開き、ゾロゾロと男達が部屋へと入ってくる。全身鎧を着込んで多量の荷物を抱えた男を筆頭に、猛禽類のような目をした男が手に抱えた紙袋をテーブルに置く。

その背後では、どんよりと暗い雰囲気をした2人の優男と、仮面で顔を隠しゆったりとしたローブに身を包んだ魔法詠唱者の姿があった。

 

 

 

「おうペシュリアン、買えたか?」

 

「問題無い。ただ、また値上がりしていた。このペースで買っていたら装備の更新や新しいマジックアイテムどころでは無いな」

 

「食料品とかもだいぶ高値になってたぜ。このしなびたリンゴ1つで王国の2倍以上取られちまう」

 

 

 

全身鎧のペシュリアンが肩を竦めると、同意するようにリンゴを手に取ってため息をつく猛禽類のような顔つきのサキュロント。絶えることのないビーストマンの侵攻で田畑が荒らされる上に、滅多に他国の行商人などがやってこない竜王国。ポーションなど冒険者御用達のアイテムは勿論、食料品など生きていく上で不可欠なものまで年々値上がりを続けているのだ。

 

 

「めんどくさいわね………って、デバッちゃん。その魔導書どうしたのよ、しかも5冊くらいあるし」

 

「……あぁ、これは______」

 

「聞いてくれよあねさぁん!!!」

 

 

 

 

ゼロ達が値上がりに辟易している中、チャーグマーは何冊も本を手に抱えたデイバーノックに目をつけた。彼が魔導書を求めているのは知っているが、この竜王国にそれだけの魔導書があったなんて驚きだ。そう思ったチャーグマーに説明しようとデイバーノックが口を開こうとした時、そこに割って入る男がいた。

 

 

 

「どうした愚弟じゃない方のクズ、ナンパに失敗したか」

 

「当たりが強いッ!!」

 

 

 

テーブルに突っ伏してわっ、と涙を流す赤い髪の優男。腰に細剣を携え豪奢な服に身を包んだ彼はマルムヴィスト。回避と一撃の鋭さに重きを置いた、ヒットアンドアウェイを得意とする暗殺系の軽戦士だ。

 

 

 

「……で?実際何があった。そっちの愚弟もだ」

 

「簡単だ。マルムヴィストとペロロティーノが声をかけようとした女や童女が、纏めてデイバーノックの方に行って失敗したんだ」

 

「いやー、姉御やゼロ達にも見せてやりたかったよ。2人のあの見事な孤立っぷりとデイバーノックのモテモテっぷり」

 

 

 

マルムヴィストやペロロティーノに代わり、ペシュリアンが事情を説明する。滅多に表に出てこないデイバーノックの方に興味が向いたせいで、二人のナンパは盛大に失敗した様である。サキュロントがけけけっ、と笑っている辺り相当滑稽だったのだろう。

 

 

 

 

「待った!!!」

 

 

 

と、そんなところに待ったをかける男が一人。マルムヴィストと共にナンパに失敗した男、ペロロティーノである。

 

 

 

「あの子たちは気まぐれだから!!今日はあの子達の気分がデバッちゃんなだけであってナンパに失敗した訳じゃないから!!根っこからモテないマルちゃんと一緒にしないで!!そもそもナンパじゃないし!!」

 

「はァァァァァん!?チビロリにしか欲情しねぇ変態シャイニング野郎が何言ってやがんだ!?冗談は性癖だけにしてくれないかねぇ!?」

 

「そういうんじゃねぇしぃぃぃい!!!あの子らは天使だからお触り厳禁ですしぃぃぃい!??俺はマルちゃんと違って紳士なもんでぇ!!」

 

 

 

自分はあくまで天使を愛でているだけであって下心満載のマルムヴィストとは断固として違うと意見するペロロティーノ。それに対抗して詰め寄るマルムヴィスト。同じ穴の狢だろうに、本人達にとっては明確に区別したい様子。それを見ていたデイバーノックが、小さくため息をついた。

 

 

 

 

「………下らん。アンデッドの俺からすればどちらも大差ない」

 

「安心しろデイバーノック。俺らから見ても大差ねぇよ」

 

 

 

ゼロの言葉にエドストレームやカゼーミ、ペシュリアン、サキュロントが同意するように頷く。無論男連中は女に興味が無い訳では無いので、かろうじてマルムヴィストの気持ちは分かる。しかし『YESロリータ!!NOタッチ!!』を掲げるペロロティーノの気持ちは分からないし分かりたくもないのだろう。まぁ、白昼堂々ナンパして失敗して騒ぐ2人の見た目は確かに大差ない。どちらも情けないものであった。

 

 

 

「あーあ、姉ちゃんが邪魔しなければ、今頃ドラウちゃんとキャッキャウフフのお茶会だったのになー!」

 

「黙れ愚弟、そして死ね」

 

 

 

寝具に寝転びながら文句を垂れるペロロティーノに、今日一番の本気トーンでそう言い放つ。聞いてる六腕の面々が寒気を覚えるほどのものだが、流石は弟。言われ慣れてるのかそれとも血筋による耐性か、揺らぐ様子は全くない。2度にわたって姉弟になったもの達だからこそ、なのだろうか。

 

 

 

「っとに、あの2人は変わんねぇな」

 

「出会った頃からだからな、致し方なかろう」

 

「………ん?あれ、そういやフラットの奴はどこに行ったんだい?」

 

 

 

出会った頃から変わらず姉弟で喧嘩をしている二人を見てサキュロントが苦笑。竜王国に来て悪事を働いていた彼らを当時の3人が『滅ッ』した時にも、敵前であるにも関わらず大声で喧嘩していた。もはや変われないのだろう、という意味を込めつつペシュリアンが腕を組んで頷く。

 

 

そんな二人を見ていると、エドストレームがふと一人足りない事に気がつく。キョロキョロと周りを見渡して姿を探していた時だった。

 

 

 

「______よっと。帰ったぜ〜」

 

 

 

トンっ、と軽い音と共に窓から一人の男が現れる。短めの黒髪に盗賊風の衣装に身を包み、黒色の外套を羽織った男。古ぼけた帽子を被るその見た目は、風来坊や旅ガラスといった根無し草を彷彿とさせる。しかしれっきとした竜王国に居を構える住民であり、チームの目となり耳となる索敵役。遠く離れた場所に落ちたコインを、音だけを頼りに枚数や種類を当ててみせるその道の達人。

 

 

平凡な容姿をしたこの男こそ、最後の一人。チャーグマー姉弟の昔馴染みであり、ずっとチームを組んでいる【フラット・フット】である。

 

 

 

 

「おっ、帰ったかフラット。お前がそっちから来るってことは……」

 

「さっすがゼロ、察しがいいな。また依頼だよ、竜王国将軍直々のな」

 

「げっ、またかい?いくら何でも立て続けにあり過ぎだろうに………」

 

 

 

チームの索敵役であり、依頼を請け負うことの多いフラット。彼がドアから入らずに窓から現れるということは、依頼を手渡されたということと同義である。あまりの依頼量にエドストレームが辟易とした声を上げるが、何だかんだ彼女も聞く体制に入る。

 

 

 

「まぁ、この間の程じゃねぇさ。一つ目は、ビーストマンどもが不審な動きを見せてるから南東の砦付近を探索してくれって。これは俺とペロさん、あとサキュロント辺りがいれば問題ないだろ」

 

「げっ、俺かぁ………」

 

「幻覚魔法のスペシャリストだろ?こういうとこで頼むよサキュロント、頼りにしてんぜ?」

 

「………おっ、おう!まぁもしもの時は俺の幻術師(イリュージョニスト)としての腕の見せ所だ!!頼ってくれていいぜ!」

 

 

 

依頼内容のうちの一つは、良く舞い込んでくるビーストマン関連の依頼。今回は探索なのでフラットは勿論のこと、武技とマジックアイテムの組み合わせによって長時間の空中飛行、及び遠視を可能とするペロロティーノ。そして魔法探知役であり有事の際に逃走を手助け出来る幻覚魔法の使い手、サキュロントで対応するとの事。戦闘関連でなければ、9人全員で行くことも稀だ。

 

 

 

「んで、2つ目は帝国からの来賓の警護らしい。これは詳しい事が決まってから追って連絡するらしいんだが…………」

 

 

 

2つ目は先程と違い警護の依頼。しかも帝国の上流階級の警護となれば、竜王国随一の盾役であるチャーグマーのいる自分達に舞い込んでもおかしくない内容。それ故、防御のスペシャリストであるチャーグマーに話を聞こうとしたのだが………。

 

 

 

 

 

 

 

 

「______つーか姉ちゃんなんなのさ!!!なんでそんなファンタジーエロゲの正統派ヒロインみたいな顔になってんの!?おかしくない!?元はトドみたいな感じだった癖に!!」

 

「はァァァァァァァ?????てめぇこそ何処の三流ラノベ主人公さんですかぁ??太陽の化身ってなんですかァ??太陽神アポロですか???サンシャインフォースですか??ていうかこちとら努力して保っとんじゃ!!食っちゃ寝でその見た目の貴様と同一視すんなボゲ!!!」

 

「誰が食っちゃ寝だよ!!!あーあーあーあー言ってやろー!!モモンガさんにー言ってやろー!!姉貴のくっそ小っ恥ずかしい詩集の事とか言ってやろー!!」

 

「殺す」

 

 

 

 

 

「………ゼロ、止めてきてくんない?」

 

「無理に決まってんだろ、修行僧(モンク)の俺にゃ姉御とペロロティーノは止めらんねぇよ」

 

 

 

ギャースギャースと騒ぎまくりながら取っ組み合いの喧嘩を続けるダメ姉弟。フラットが1番力の強いゼロに止めるよう依頼するが、あの二人は揃ってゼロよりレベルの高い戦士職。戦闘時ならまだしも、平時の筋力は向こうの方が上である。

 

 

「エド?」

「私、《舞踊(ダンス)》付与した遠隔操作が持ち味だし」

 

「……マルムヴィスト?」

「俺は速度特化なもんで無理無理」

 

「…………ペシュリアン?」

「すまん、俺は技巧派だ」

 

「サキュロント、お前なら!」

「魔法剣士にどうやって止めろと?」

 

「デイバーノックゥ!!」

「魔法詠唱者に何を求めてるのだお主は」

 

 

 

その他のメンバーにも打診するが尽く断られるフラット。というかそもそも六腕ではゼロが一番力が強い。それを知って依頼し、断られたのだ。その他の5人にどうこうできるわけも無い。

 

 

「ほら、早く止めてこい。変態志向(ロリコン)仲間だろ」

 

「ちげぇから!!俺は胸がないお姉さんが好きなのであって幼女愛好者(ペロロティーノ)じゃねぇから!!」

 

「どっちでもいいから早く止めなよ、うるさいったらありゃしない」

 

「えぇ〜………まーたおれかよぉ………あーあ、何処にいるんだよギルド長〜………はやくこのポジション変わってくれよ、俺の役じゃねぇよ絶対………」

 

 

 

 

悲痛そうにかつての友を呼ぶフラット・フット。それを見た現地の友人達の笑い声と、前世からの友人達の怒号が、今日も竜王国に響き渡る______。






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次はどれが読みたいか、参考までに。

  • Ⅲ年B組ー!サトル先生ー!
  • ぷにっと萌えのリーたん育成計画
  • ヘロヘロさんin漆黒聖典+クレマン
  • 大事前 あぁ大自然 大自然
  • 「二グンちゃんの顔型ゴーレムゥ!!」
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