季節は巡り、心も巡る   作:深き森のペンギン

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第1話 別れと出会い

今日は8月11日。

僕、新垣拓海の12歳の誕生日だ。

その日の午後9時過ぎに、僕の部屋のドアが勢いよく開かれた。

ドアを開けたのは、隣に住む、一つ上の幼馴染みの日菜だった。

 

「日菜、どうしたの?こんな時間に」

「いいから、屋根上ろう!」

「日菜が何したいか大体わかったよ。星見るんでしょ?」

「うん、さっすがたっくん!」

 

僕達はベランダから屋根に上った。

そして、二人で屋根に寝そべった。

 

雲一つない夜空には、夏の大三角が輝いている。

それを眺めながら、日菜は満面の笑みで言った。

 

「たっくん、お誕生日おめでとう!これから、もし何かがあってあたし達が離ればなれになっても、二人で同じ星を見ようね。約束だよ?」

「ああ、約束する。この先どんなことがあっても、同じ星を見れば僕達は通じあえる」

 

それから、僕達は星空を眺めながら少し言葉を交わした。

僕の12歳の誕生日は、これまでの短い人生の中でも、もっとも思い出に残るものとなった。

 

そして翌日ー

 

両親を交通事故で失った。

一人遺された僕は、近くに住んでいる祖父母に引き取られることとなった。

その日から、僕はあまり笑わなくなった。

その心の中にあるのは、後悔と哀しみだった。

両親を失った哀しみと、

日菜にお別れを言えなかった、後悔。

 

残り少ない小学校生活だが、祖父母の家が小学校の校区から外れていて、そのまま通うのは少し難しいので転校する事となった。

 

今日は、その転校先の学校で新学期が始まる。

 

「今日から転入生が来ることになりました。新垣君!入ってきて!」

「は、はい」

「自己紹介してもらえるかな?」

 

僕は、自己紹介をする事となった。

 

「新垣拓海です。よろしくお願いします」

 

普通なら、もう少し趣味や好物を聞かれるとは思うが、担任はどうやら僕の事情を察してくれていてこれ以上聞かれることはなかった。

 

席に案内されてその席に座ると、隣の席の女子に話しかけられた。

 

「私、山吹沙綾。よろしくね、新垣君」

「うん。よろしく」

 

休み時間、クラスメイトからの質問責めがあったが、その次の休み時間からそれは無くなった。

どうやら、山吹さんが気を回してくれたようだ。

ありがたい。

 

僕としてはまだ人と話す気力が無く、話しかけられるのが恐怖でしか無かったことを、察してくれていたらしい。

 

それからの学校生活は、いつも一人で本を読んでいた。

おかげで、知識はかなりついたと思う。

 

小学校を卒業し、中学校に入学した。

入学したのは、近所にある花咲川学園だ。

勉強は、生まれてこの方100点しか取った事がないのでぶっちゃけ余裕で合格した。

 

入学式に教室に着くと、見覚えのある人物が居た。

 

「新垣君も同じクラスだったんだ。また一年間宜しくね?」

「ああ、こちらこそ。山吹さん」

 

どうやら、山吹さんも同じクラスだったらしい。

知り合いが居ないよりはマシだ。

それから、入学式が始まった。

 

この入学式、僕にはある大きな仕事があった。

それは、新入生代表を務めることだ。

 

入試で見事に全教科満点を取ったので、強制的にそうなった。

 

何事もなく大役を全うしたので、少しホッとした。

 

入学式が終わって数日後の事だった。

自宅の近所の商店街にて、思わぬ出会いがあった。

 

僕はばあちゃんからのおつかいで、商店街で買い物をする事となった。

買ってくるものは、商店街のパン屋でチョココロネを購入する事。

それと残りのお金で僕の分も買うこと、だった。

 

僕はパン屋のドアを開けると、店員の元気な声が聞こえてきた。

だが、その声には聞き覚えがあった。

というか、さっきも聞いた声だ。

 

「いらっしゃいませー、って新垣君!?」

「山吹さん、さっきぶりだね」

「ちょっと待ってて、新垣君」

「どうしたの?」

「いいから待ってて!」

 

そう言って、山吹さんは奥に戻っていった。

それから少しして戻ってきた。

よく見ると、ヘアアクセが変わっていた。

 

「どう、かな?」

「うん、似合ってるよ」

「本当に?」

「本当に」

「ありがと、新垣君」

 

山吹さんは、少し小さな声でそう言うと下を向いて微笑んだ。

 

「山吹さん、会計お願い」

「480円になります」

「500円で」

「はい、おつりです。それと、割引のクーポンサービスしとくよ!」

「ありがとう。いいの?もらっても」

「いいよいいよ。いつも来てくれてるみたいだし」

「なんで知ってるの?」

「お母さんがよく沙綾のクラスメイトのかっこいい子が来てるってよく言ってたから」

 

かっこいい子でなんで僕なんだ?

まあいいや。

これについては考えてもわかんない気がする。

 

さてと、帰ってばあちゃんとチョココロネ食べよ。

 

「それじゃあまた明日ね、山吹さん」

「バイバイ!新垣君」

 

それから、家でばあちゃんとチョココロネを食べた。

 

翌日。

 

「おはよう、新垣君!」

「山吹さん、おはよう」

 

僕に満面の笑みで挨拶してきた山吹さんの頭には、昨日店で見せてくれたヘアアクセが付いていた。

気に入ったのだろうか。

まあ、僕には関係ない話だけどね。

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