ドラゴンボール外伝~Z戦士たちが悟空と出会うまで~   作:究極

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サラくんが奮闘しますがはてさてどうなりますことやら…

物語はまだ序盤の序盤!このペースだと完結まで二、三年かかりそう…

あらすじ
危険を承知でアジトを出発したサラ。
ついにその怪しい男、フィラと対峙して…


賭け

いちかばちか!

サラは両手に砂を握る。止まらない手汗が滲んでもう固まりかけている。

 

勝負は一撃。一撃を外せばまずい。

 

サラの作戦はこうである。

際限まで蠅を目で追い、片手の砂で蠅の視界を奪う、もしくは蠅を撃墜し追跡を妨害。投げたら全速力で左側にそれ岩陰に身を隠す。それで見つからなくてもマジックというやつがおそらく俺の場所を教える。そこで信号弾を使って相手二人の目を攪乱し、逃亡。これが最も穏便にことが済む方法である。そううまくいくとも限らないが。

 

なんにしても戦闘はできるだけ避けたい!

なぜかというとはっきり言って相手の戦力は未知数である。

おそらく偵察に蠅を使うほどなので相手は蠅をたくみに使って攻撃を仕掛けてくるのだろう。

それにあの死体の切断面から見て鋭利な刃物を所持していることがわかる。間合いに入れば命取りか!

 

あれ?結構戦力わかってんな…

 

ともかく面倒くさいのでやっぱり戦闘は避けたい!大事なことなので二回言った!

 

そんなことを考えてるうちに蠅は段々と近づいてくる。これほどまでに蠅が大きく見えたことはないだろう。あのフィラとかいう奴の邪気も相まって恐ろしいほどの威圧感だ。

 

あと数メートル。できるだけ粘れ。ギリギリを追及しなければ、何もかもが破綻するのだ。待って待って待つ。

 

両手の砂をぎゅっと握り直す。

 

もう一度言う!勝負は一撃‼︎

 

……そこだ!!!

サラの左手から砂が放たれた。固体化した砂はうまく軌道に乗って蠅に見事命中した。ヤムチャとのキャッチボールが役に立つとは。

 

ボシュっと放った砂の塊がわれる音がすると塵状になって煙幕のようになって落ちていく。

 

しめた!ここまで計算してなかったが運がいい。この煙幕に乗じて…

「見つけたぞ…」

サラの前に長身の男が立ちはだかった。フィラである。

「な、なに!?」

思わず声が出てしまった。

同時に後ろに退がる。思いっきり間合いだった。斬られてもおかしくはなかった。冷や汗が顔の側面を伝う。

だがタイミングはほとんど完璧。投げた場所から全速力で離れたのに。

どうして追いつかれた?

 

「どうして追いつかれたか、って?…こたえは簡単だ…単純に吾輩が速かったのだ…また状況判断能力も吾輩が優れていた…実力の差が天と地の差もある吾輩とお前では到底互角に対峙することはできんのだよ…わかるか?…」

自慢げにフィラは語った。フィラの目は死人のように冷たい色をしていた。

 

それにしても齢8歳ほどのガキの作戦なんざ簡単に打ち破られてしまうのか。結構頑張って頭ひねって考えたのに。

 

サラは内心ショックだった。

だがピータだったら切り抜けられたかと言えばそうではないだろう。

 

なにより経験の差が大きいぶん実力の差も大きい。

 

それにこいつはご自慢の状況判断能力に加えて相手の心を直接読むことができるらしい。そんなのお手上げだ。

 

「ご丁寧に解説をどうも。それで俺をどうするんだ?おっさん」

弱味を見せちゃいけないとサラは必死に強い口調で言った。だが声はやっぱり震えていた。

 

相手はあんなに無残に人を解体し、殺す畜生である。

自分がまだ子どもであると言えどいつ殺しにかかってくるかわからない。

 

「決まってるだろう?…その小さな頭でもわかるはずだ…吾輩のムーハを殺したのだ…罪は重いぞ…」

 

「こいつは…参ったなあ」

サラはぼやいた。

背中を汗がゆっくり伝っていくのがわかった。

 

やるしかないか。できるだけ戦いたくなかったが。

恐らくその判断力やスピードから見て自分の二倍くらいの実力か。

 

…やりようによってはなんとかなるかな。

 

勝算はほとんどないかもしれない。

だが戦う前から負けるなんて決めつけない。望みは捨てない。

ガンっと思いっきりぶつかって、重い拳を顔面にお見舞いしてやろう。

…引き分けが理想…

 

「皆よ集まれ…今宵はもう一仕事だ…」

ニヤッとフィラは笑った。あの勝ち誇ったような顔。イラっとする。叩きのめしてやりたい。

 

蠅がフィラを挟むようにして集まって二つの黒い渦が形成された。

あれは厄介そうだ。蠅と言えどあんなにフィラがうまく使いこなすのだ。

 

「来い!」

 

「なるほど威勢がいいな…まずは手始めに…そうだな…両足をとれ…両足だ…間違えるな?…」

フィラはそうやって凄んでみせる。

ガキだからといって容赦はしない。自分なりのやり方でじっくり痛ぶってやるという意味の脅しなのだろう。

 

だが攻撃する場所を言ってくれるのはなんともありがたい。蠅のスピードは速いがなんとか避けようはある。

 

注意するのは奴が持ってると思われる刃物だ。

あれほど切れ味のいいもの自分の貧弱な腕などあっさり肩から落とされてしまうだろう。

つまり、奴はどこかで飛びかかってくるに違いない。

 

油断大敵。この言葉に尽きる。

 

だが奴がまったく身構えてないのは何故だろう。

 

そのとき右足に激痛が走った。本能的にすぐに後ろに退がる。傷はわりかし浅いが血は出ている。

フィラはさっきいた位置から微動だにしていない。砂埃もまったく立っておらず、空気も殆ど変化していない。

 

ひょっとすると…この蠅たちがあの「カモ」の男を…

ほとんど死体に外傷がなかったのもそのためか。フィラ本人は手を下さず、蝿たちがやったのだ。

そうなると「足をとれ」というフィラの命令を蠅を小さなものという印象の先行により、足をもつれさせろ等と言った意味で解釈していたが、「足を取る」すなわち「足を切断しろ」という意味でとれる。

まさか蠅の超高速回転があれほどまでの斬れ味を出すとは。そこら辺の伊達な刀より斬れそうである。

 

まったく予想外なことの連続である。

 

お先真っ暗かとサラは目を瞑ったとき、瞼の裏の暗闇に一筋の光が差した。

 

フィラ本人を叩けば蠅は指揮能力が無くなり、分散するのではないか。

 

蠅たちも所詮は虫。

フィラがどううまく調教しても、集まることでやっと力を持つが個々としては無力な存在にすぎない。

 

また先程の「集まれ」という命令から集合するということにもフィラの指示がいることがわかる。

つまり先導するのは蠅ではなくフィラ。フィラという頭なくしてあの蠅軍団は機能しないのではないか。

 

つまりこの仮定が正しければ、ここから脱するにはフィラを叩くことは必須条件となる。見事に今まで作戦を破られてきたが、やることには変わらない。

さっきは感情的になって、てきとうに「拳をお見舞いする」などと抜かしていたが今は違う。

フィラを一時的に、ほんの一瞬でもいいから身動きがとれぬようにしなければこの場から離れることはできない。奴ははただでさえ速いし、あの蠅も脱出の障壁になる。

サラ8歳ここで人生最大の賭けに出る。

 

まあ全ての話は目前までじりじりと迫ってくる忌々しい蠅の渦を避けてからだ。

サラは両足の太腿をパンっと叩いて、前を向いた。目も思いっきり見開く。

足の傷なんてちゃらへっちゃらだ。あとで唾でもつけておくことにしよう。

蠅の渦がかなり距離を詰めてきている。ぎりぎり足にかからないくらいがタイミング。あまり高く飛びすぎず。

ようするに幅跳びの応用だ。

 

行くぞ。

 

「おらあっ!!!」

サラは気合を入れて飛び上がる。蠅たちの上を無事通過し、着地。まずは第一関門突破である。

歩みを緩めず、このまま突き進む!

 

「ほう…」

フィラは静かに感心した。自分には速さは劣るとはいえ、サラが蠅をうまく回避することは見抜いていたようである。

サラが全力疾走して向かってくる。そこで初めてフィラは構えた。

 

左足を踏み出し、右足は爪先を外に向ける。胸の前に左手を右手は後ろにそっと置くようにして構えた。取り入る隙はほとんどない。

 

正面突破を試みるか。やはりまだ青いな。

 

フィラの元に到着したサラは一分の迷いも見せず左ストレートを繰り出した。

フィラはそれを右手で軽く払うと、左手の手刀で素早く腹を突き刺しにかかる。サラはわずかに脇腹を剃る程度に攻撃をうまくかわすと、屈んですぐさま足払いをかける。

フィラは飛び上がりそれをかわすと、サラの後方で固まっていた蠅に指で合図をした。

まずいとサラは殴りかかったが簡単に手首を持たれてくるっと回され地面に伏せられた。

 

殴りとばすことには失敗した。まったく今回はやられ放題である。こてんぱんである。

せめてこいつの指揮を鈍らせるだけでいい。せめて何かひるむようなことがあればなんとか。

 

…仕方ない。ここで使おう。

 

サンキュー、ピータ。

 

腰の拳銃を思いっきり引き抜いて銃口を空に向ける。安全バーを外すと耳に指で栓をして、ぶっ放した。

 

パンっパンっと朱色の光が二つ。空で割れた。

信号弾の光が辺りを朱色に包む。

 

フィラもさすがにびくっと驚いてサラへ向けていた集中が途切れる。蠅も指示が揺らいだことでぴったり空中で止まった。しめた。

これぞ絶好の機!

 

「くらえ!」

 

慌ててフィラは視点を下ろしたがもう遅かった。もう手遅れな範囲までサラの拳は迫っていたのである。

 

「しまっ_____

「光芒拳!!!!」

サラのストレートパンチがフィラの腹に直撃した。

まともに防御もせず、ほぼ不意をつかれたような状態でサラの全力の攻撃をくらったフィラは何メートルか吹っ飛んで転がると、一度立ち上がろうとしたが腹を抱えて腰から崩れ落ちるように蹲った。サラもしっかり直立はできず、ふらふらしながら息遣いを荒くしている。

 

一発がやたらと重い。おそらく全身全霊を込めた一発か。

子どもだからと舐めていたのがいけなかった。だが気力は今ので果てたか。

 

「ぐっ…ガキが…」

腹部を押さえてよろよろと立ち上がる。面を上げたときフィラは目を疑った。




予定だとヤムチャ編は全部で10(+α)章構成であります

ヤムチャ全然出てこねえジャンって感じがあと何話か続くけどそこからは大活躍…してくれるかな…

そのうちアンケートとかも利用して色々やりたいです

まだまだ書き始めて日が浅いので先輩方にはアドバイスとかいただけると嬉しいです

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