やはり俺の殺人観察は間違っている   作:名代

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暗黒系2

週末の土曜日に雪ノ下とメモ帳に記された殺人現場へと向かう事になった。あの手帳に書いてある事が正しければ次の現場はS山と記されている。その山の名前を聞いた事が無い事から中々登る人が居ないのかそれとも誰かの私有地的な山なのだろうか、兎も角メジャーな山で無い事は確かだ。

あの後部活は解散となり学校を後にする。帰りながら携帯で調べる、どうやら普通に道路が通っている事から登山の様に苦労する事は無い様で何ならバスまで走っているまでである。

帰宅して早々テレビをつける。画面にはニュースが表示され第2の事件が取り上げられている。これから第3の事件現場に行くと考えると胸が高鳴ると同時にこのテレビ画面に第3の事件が先に取り上げられないか不安になる。

「あ、お兄ちゃんお帰り。帰ってたんだ」

ドタドタと階段から降りる音が聞こえた後、妹の小町が俺の居るリビングに入ってくる。今年受験なので少しやつれているが特に変わった様子は無い。

「おお小町帰ったぞ」

適当に返事を返しながらテレビ画面に目線を戻す。

「何見てんの?うえ…またそんなの見てんの…いい加減他の趣味に寝覚めたらどう?私は別に構わないけどそんなんじゃ将来のお嫁さんが可哀想だよ」

「うるせえ、ほっとけ」

小町の心配を切り捨て、新聞の記事を幾らか切り取る。日に日にコレクションが増えると言うのは実に心地がいい。

「それにしても犯人まだ捕まって無いみたいだね、そのうち小町も殺されちゃうかもね」

台所で何やらゴソゴソと音が聞こえた後、用が済んだのか俺がくつろいでいるソファーの後ろから小町が顔を出した。

「安心しろ、そうなる前にお兄ちゃんが先に殺されてやろう」

何か良くわかないフォローを彼女にかます。

もしも仮にあの手帳の持ち主が小町を殺したとして、そいつは一体どの様な飾り付けを妹に施すのだろうか。場所は?凶器は?様々な妄想が俺の頭の中で膨らんでいく。

「えー何それ?お兄ちゃんってたまに良く分からない事言うよね、私心配だよ」

お前に心配されたくは無いよ、と突っ込みたくなったがやめておいた。こんなところで喧嘩するのも無駄な気がする。

「もういいでしょ、小町見たい番組があるんだー」

ピッっと妹は俺の横に置かれたテレビのリモコンに手を伸ばすと勝手にチャンネルを回す。画面には先程とは打って変わって明るめのバラエティ番組が流れる。

「はあ」

溜息を吐きながらリビングを後にする。

部屋に着くと、先程切り取った新聞をファイルにまとめていく。これを始めて早一年、最初は漫画が多かった本棚は現在このスクラップ帖で埋め尽くされている。

こうして本棚を埋め種類を充実させていくと同時に、ふと思い出した様に過去のものを取り出し思い出に浸る。

小町も両親もあの事故を気かっけに変わってしまった俺の趣味に最初は抵抗があったらしいが、今では何も言ってくる事はない。見捨てられたのかそれとも俺が犯罪を犯さないと信頼してくれているのだろうか。

思い出したかの様に引き出しを引く。今日は金曜日、明日の準備をするのを忘れていた。しまわれていたカメラやその他小物が作動するかメンテナンスを含め取り出し作動させる。

 

 

 

 

次の日、結局カメラに保存されていた画像を繰り返し見ていたら夜が更けってしまい寝不足の状態で待ち合わせの場所まで体を引きずった。

待ち合わせ場所には、土曜日という事もあってか私服のの雪ノ下が先に到着していた。

「おう、待たせたな」

左手の時計を確認する。時計の針は待ち合わせの時間丁度の時刻を指している。朝から全力疾走してきた甲斐はあった様だ。

「はあ、全くあなたという人は…まあいいわ。それじゃあ行きましょう。手帳が此処にあるとしても、あれが他の誰かに見つからないとは限らないわ」

俺が呼吸を整えているにもかかわらずに彼女は呆れた表情を浮かべ、山を登っていった。登ったと言っても舗装された道路なので只の坂道なのだが、走った後で疲れている俺には些か辛いものがある。

「おい待てよ、少し休憩にしてもいいんじゃないか?」

慌てて彼女を追いかける。

「嫌よ、それにさっき言ったじゃない。まだある保証がない以上はこうして早く見つけないと誰かが通報してしまうもの、もしそうなったら貴方は責任が取れるの?」

あくまで彼女は足を止めるつもりが無いのか、歩く速度を緩めずに淡々と話を続ける。

「いや、責任って…まさか俺に死体を作って来いとでも言うつもりか?」

「あら、貴方にしては珍しく頭が働くのね。でも勘違いしないで頂戴、私は別に作れとは言っていないわ、ただまた新しいものを見つけて来れば良いだけの事よ」

「難易度上がってるじゃねーか」

相変わらずの暴虐て発言。どうやら彼女はプライベートでもこんな感じなのだろう。果たしてこいつの友達ができた時一体そいつはどんな性格なのだろうか?

「一つ目の目印に着いたわ、犯人は此処からこの木々の中に入っていったのよ」

彼女は手帳を取り出すと、その内容に間違いがないか念入りに確認する。

手帳には犯行までの道筋意外にも、現場の候補やターゲットの生活リズムなどもわざとらしく記されていた。多分だが犯人は俺みたいに自分の犯した犯罪を計画段階から再び確認し追想し、時折楽しんでいるのだろう、まるで昔の思い出の様に。

だが、そのおかげでこうして此処にくる事が出来た。まだ死体は確認できないが、先人の行動をなぞるみたいで心が満たされる。正直俺の内心は死体がなくても良いと思っている。出来れば犯人にはこのまま続けて頂いて、その手帳の続きをコピーでも良いので譲って欲しいくらいだ。

「此処で大丈夫か?」

森の中を突き進んでいく彼女を後ろから追いかける。草が伸びているが犯人は本当にこんな道を通ったのだろうかと不安になる。

「大丈夫よ、目印はちゃんと全てチェックできているわ…でも流石の私も少し疲れたわね、少し休憩にしましょう」

倒れている丸太に腰掛けると、再びメモ帳を開いて確認している。そして時折ふふっと笑うのだ。

「どうした?何か書いてあったか?」

不審に思い確認するが、ああ御免なさいねと前置きをし

「もしテレビに発表された3人目がこの人じゃなければ、それは私達の所為になるわね」

確かに、と俺もその考えに同意した。少なくともこの手帳を警察に届けていれば、此処にいるであろう被害者は見つかり手帳の内容を辿り犯人に行き着いた可能性もある。

「そうだな、俺たちはもう共犯みたいなもんだからな。捕まったらどうなるんだろうな」

「さあ、そんなの事は私にも分からないわよ。少なくともタダでは済まないわね、どう捕まってみるかしら?」

「とりあえずビールみたいに俺を警察に行かせようとするな、少なくともお前も共犯だからな」

これで警察に捕まったとしたならたまったもんじゃない、もし捕まるならその時は自分の手を汚した時だけにして欲しいものだ。

「さて、休憩を取れた様だしそろそろ行こうかしら」

俺をいじり倒し満足したのか彼女は手帳を閉じると、腰を上げ再び木々の先に歩き出した。

相変わらずどこかマイペースな彼女に流されつつあるなと思いながら、俺は彼女の後を追った。

 

 

 

「此処よ、見なさい」

やがて目的の場所に着いたのか、大木の前で立ち止まっている彼女に追いつく。

その場所は先程までの森林とは違い、少しだが拓けておりもし此処がゲームだったらいつかイベントが起きそうなそんな場所に女性の遺体が置かれていた。

正確には飾り付けられていたと言った方が正しい。女性の体は全裸で長座で木に寄りかからせられる様に座らされ、ある筈の首から上がなく綺麗な首の断面が見える。そのなくなった首は彼女の開かれたお腹に嵌められ、眼球はくり抜かれて両手の上に乗せられていた。開かれたお腹の中身は後ろの木に巻き付けられ、彼女の眼窩や口、あらゆる穴という穴には泥が詰め込まれていた。

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