駅で彼女と別れ家へと戻る。
結局彼女は俺が指摘するまで手を離す事はなく、自然にそうしていた様だった。
家に着き台所で作業している小町を横目にテレビをつける。内容は日常の一部と化すくらいに放送されている猟奇的殺人の特集だった。
よくもまあ同じ内容を何回も繰り返せるなと思いながらも、つけっぱなしにされたテレビを眺める。こうしてあれから何度もニュースを眺めているが水口ナナミの情報は放送されない。
彼女は今尚あの人里離れた寂しい森林の中で飾られ続けているのだろう。
ニュースは犯人捜索の状況から遺族の内容へと切り替わり、インタビューだろうか家の玄関で泣き崩れる遺族と共に被害者の顔写真が表示される。怨恨なり殺害された人に殺される理由が無ければ被害者には大体の共通点がある事が多い。大体は大人しそうな人や抵抗しない小柄の子供などをよく見るが、水口ナナミを含めて被害者に共通するものはそう言ったものでは無く、俺の直感で言わせともらうと雰囲気だろうかどの被害者にも共通して髪型や服装が今日の雪ノ下に類似していた。
まさか考えすぎではないかと思ったが、こう言った時の不安と言うのは案外当たり易い物でテーブルに放置していた俺の携帯が振動する。
「助けて」
携帯に届いたメールに表示されたのはその言葉ただ一つだった。主語が無いのでそこは想像になるがどうやら彼女に危機が迫っている様だ。
間違いか悪戯だと面倒なので、どうしたとメールを送る。しかし食事を取りながら一時間ほど待っても彼女から返事が返ってくる事なく、その日俺の携帯が鳴る事は無かった。
起床時刻になり目覚ましが部屋に鳴り響き目が覚める。
昨日の夜のメールの後、流石に夢見が悪いので彼女の家に電話した。彼女の家の電話番号を知らないので仕方無しに電話番号を平塚先生から聞き出す、幸い何処かで飲んでいたのか高いテンションでよく分からない愚痴を一方的にに喋られた後、気分が良かったのか何の問答もなく彼女の実家の番号を喋ってくれた。
個人情報の管理がずさんだなと思いながらメモした彼女の自宅へ連絡する。雪ノ下は普段一人暮らしだが、水口ナナミの格好を真似るために一度実家にへと帰っていると言っていたので荷物もそこにある可能性が高い。
「はい雪ノ下です」
電話に出たのは大学生だろうか…そう言えば姉が居ると前言っていた事を思い出す。大人にしては若い声で喋るので多分雪ノ下姉が受話器をとり俺の相手をしてくれた。
電話の料金を気にしながら雪ノ下の安否を確認したが、どうやら彼女はまだ帰ってきて居ないらしい。それに彼女が誰かの家に外泊する事はそうそう無いらしく姉も心配していたのが電話越しの声に不安が混ざる。
「ところで君は雪乃ちゃんの彼氏かな?」
話をしているうちに気になったのだろうか、下衆な事を聞いてくる。年頃なのかどうも男女といる事でこう言った事を聞いてくる輩が多くて困る。
「違います」
「そんなに照れなくても良いのに、突然家に来て私の服を貸してくれなんて言うからビックリしたけど、それはこう言う事だったんだね」
キッパリと否定するが、姉は疑い深いのか俺の話を信じようとはしなかった。
「はあ…そう言えば彼女の私物に手帳がありませんでした?」
彼女が居ない以上あの手帳は俺の物にしても良いだろう、もし彼女がこの先帰る事が無ければ俺の指紋も付いたあの手帳は警察に届けられる事になるので厄介な事になる。間違えなくあの遺体は発見され、誘拐の容疑は俺にも掛かるだろう。そうなってしまえば家族に迷惑をかける。
「ちょっと待っててね、今見てくるから」
音声が保留の待機音へと切り替わり受話器から何処かで聞いた懐かしいメロディが流れる。
「お待たせ、ちょうど机の上に確かにあの子が使わなそうな手帳があったけどこれの事かな?」
雪ノ下姉が言った特徴は正に探していた手帳そのものだった。手帳を開いて見ていた所を犯人に見られて襲われた様では無い様だ。だとしたら犯人は単純に雪ノ下を好みで襲った事になる、であればまだ生きている可能性が少しだがありそうだ。犯人が手帳を無くしてからまだ日が浅い、肢体で芸術作品を作る以上死後硬直が始まる都合があるので鮮度は重要だ。犯人は自身の安全が確認出来るまでは手を出さないだろう。
「あ、多分それです」
「へぇ、この手帳君のなんだ、随分と渋い趣味してるんだね…えっと…」
「比企谷です、中身は読まないで下さいね。恥ずかしい内容が書いてあるので」
「あそうそう、うん?ヒキ…ヒキガヤ?…。あぁ…比企谷君ね…」
改めて名前を名乗ると何かに引っ掛かったのかしばらく無言が続くが、何処かで府に落ちたのかさっきまでの明る良い印象に戻った。
「でも恥ずかしい内容かそう言われると逆に気になるな…あ!そうか交換日記だな‼︎やっぱり付き合ってるじゃんこのこの」
「だから違いますってば、それでその手帳を申し訳ないんですけど速達で今から言う住所に送ってもらえませんか?送料はこっち持ちで構いませんので」
「それは面倒だから私は持ってきてあげるよ、比企谷君とはお話をしてみたいしね。それに明日は学校に行くでしょ、私もそこに用があるからその時に渡すよ」
はあ、何だか面倒な展開になってきた様だと内心思ったが、届くまでの手間が省けたのでよしとする事にした。
「じゃあまた明日ね比企谷君、雪乃ちゃん多分今借りている部屋に帰っただけだと思うから心配しなくてもいいよ」
雪ノ下姉はそう言い残し電話を切った。彼女なりに気を使ってくれたのか今雪ノ下はマンションにいる事になっているらしい。
それは明日来れば分かるとして明日あの雪ノ下姉と会うのか…
受話器を下ろし俺はそのまま眠りに着く。もしあのまま雪ノ下が殺されるとしたらどの様に飾り付けられるのだろうか?想像に想像を重ねて面白くなったところで意識が微睡む。仮にそれが現実となったとしても犯人の記した新しい手帳はどうやって見れば良いのだろうか?
玄関で靴を履き替え学校に向かう。あれから雪ノ下からのメールの返信は無いが果たして彼女は無事なのだろうか。
学校に向かい授業を受け放課後になる。結局雪ノ下姉は現れる事は無かったが最後の国語の終わりに平塚先生から呼び出しをくらう。
特に何かした覚えは無いので一体何があるのかと思ったが、呼び出された部屋が職員室ではなく来賓室という事で大体の察しがついた。
「やあ、君が比企谷君だね。へえ〜」
部屋に入って早々雪ノ下姉は見定める様に俺を頭から爪先まで見ると、何か納得した様によしと頷きこっちに来る様に促した。
「比企谷来たか、まあ座れ。私に用は無いが陽乃がお前に用があるみたいでな、こうして呼んだわけだ」
部屋にはテーブルを挟んで二人が対面に椅子が設置されており、雪ノ下姉の言う通りに座るにはどちらかの隣に行かなくてはならない。
「比企谷君は私の隣に座りなよ」
アタフタしているとそれを見兼ねたのか、雪ノ下姉が自分のの隣に座る様に促す。出来れば立ったまま済ませたかったがそうは行かなかないらしい。
諦めて彼女の隣に座ると、距離を詰められる。
「はいコレ、君が言っていた交換日記だよ、安心して中身は見ていないから。それで君は雪乃ちゃんとどこまで行ったのかな〜?」
雪ノ下姉が手提のバックから手帳を出して渡される。流石に此処で開くわけには行かないので外観で判断しないといけないが、癖の強いデザインだったのもあってか一目でそれだと気付く。
「何?比企谷お前雪ノ下と付き合っていたのか⁉︎」
雪ノ下姉の言葉を聞いて勘違いしたのか平塚先生が乗り出した。