It's not a joke to cry!   作:急須

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Studio

Stop twins!(止まれ!双子!)

No way! Hey! tagger, I'm here!(嫌だね!鬼さんこちら!)

In the sound of clapping.(手の鳴る方へ)

 

あの双子は…!

バラバラと未加工の金属片が散らばる工房を、持ち前の脚力で駆け抜ける。

弟の方は楽しくてやっているのだろうが兄の方は弟の戯れに付き合ってやってる感が半端じゃない。

そこまで乗り気じゃないならいっそやらないでくれ!

そして俺に迷惑をかけないでくれ…!

 

It looks fun.(楽しそうだね)

It's all your fault!!(お前のおかげでな!!)

 

軽く走って追いついてきたスパーダがニコニコ笑って走り去る双子を見る。

そもそもこんなことになったのはこいつが閻魔刀であの双子を工房に招き入れるからだ!

子供は好奇心旺盛だからこんな人間界で言うファンタジー満載の場所は都合のいい遊び場にしかならない。

危ないものはしまってあるし目新しいであろうものは沢山あるが、ここはテーマパークじゃないんだ。

 

ドタバタ走る双子は外のない真っ暗な窓にまず驚き、二階への階段を駆け上がる。

上は書斎と寝室、完成品などしかないが数多くの蔵書に珍しくバージルの嬉しそうな声が上がった。

 

この家のような形をした空間は窓こそあるが玄関など外に出るような場所はない。

浮いているかのように安定感のない空間に一般的な家があれば子供達は大はしゃぎだ。

 

「シードおじさん!シードおじさん!」

Yeah, yeah.(はいはい)好きなだけ読んでいい。辞書は辞書で本棚がある。見てわかるかい?」

「分かる!ありがとうシードおじさん!」

「シードおじさん!すげぇ!armoury! armoury! (武器庫!武器庫だ!)全部おじさんが作ったのか!?」

Of course.(もちろん)どれも悪魔が宿った魔具さ」

 

使い手がいない完成品達もあれば、使用者が亡くなり巡り巡って戻ってきたやつもある。

人間に扱えないような酷いものや、誰でも扱える殺傷武器まで選り取り見取りだ。

二人とも食いつくところは違ったが、楽しそうにはしゃいでいるところを見るとなぜ止めようと思ったのかわからなくなってくる。

 

「ほら、テーマパークじゃないか」

「あんたは反省しろ」

 

後ろからひょっこり現れたスパーダのムカつく顔面を叩き、眺めて回るダンテを見る。

ダンテやバージルが大人になったらこの中から好きなものを一つあげるつもりだ。

彼らの喜ぶ顔が眼に浮かぶ。

 

俺が武器庫から動かないと見るや、スパーダはバージルのいる書斎に行ってしまった。

ひとりでいると危ないほど本をうず高く積み上げられた場所ではないが、手の届かないところに沢山重い本がある。

大人が一人いた方が安心だろう。

俺も届かないようなところにもある本はそれ専用に作った魔具で取っているのだが、確かスパーダにも取り方を教えた覚えがあるし、一緒にいてくれた方が良いだろう。

これだけの魔具をどう扱うかハッキリ分かっているのは俺だけだし、あの書斎のものは殆どスパーダから譲り受けたもので随分詳しかった。

適材適所というものだ。

 

「持ってみても良い?」

「どれが持ちたい」

「リベリオンと閻魔刀!」

「ああ。レプリカか。いいぞ。本物よりかなり軽いがな」

 

特に大きなケースに飾ってある二つのレプリカを出してやると、嬉しそうに持った。

スパーダから本物を一つずつ試しに持たされた時はがっくり膝をついていたけれどなんとか振り上げていた覚えがある。

しかしレプリカは材質が全く違う見た目だけのもので、スカスカだ。

両方を同時に渡しても大きさに負けるだけで普通に受け取った。

 

閻魔刀は俺が作った時に、リベリオンはスパーダが手に入れてから比較的間もない頃に作ったものだ。

色合いや姿形をしっかり記憶しないと修繕時に困る。

細かな装飾やちょっとした厚さの違いで振り回す時に違和感が生まれるものだ。

 

「なんでいっぱい空きケースが用意されてるの?」

「一番頑丈なケースが本物用、あとのケースは材質やデザインを変更した時にまたレプリカを作る。その時に使うケースだ」

「閻魔刀とリベリオンだけ?」

「その二振りは長い付き合いだからな。人間界、魔界合わせてとんでもない数の命が居るが、完璧に直せるのは俺だけだ」

「すっげー!」

 

閻魔刀は特に持ち手である(かしら)から(はばき)、鞘を修繕する時、必ずデザインが少しずつ変わる。

サイズや長さは変えられないが、大幅に直す必要があるときは使っている材料自体をより強固なものに変えなければならないのだ。

 

なんせあのスパーダ、振り回すことだけは得意で一応手入れも欠かさないのだが戦い方がかなり大仰だ。

普通に鞘で殴るし刀身ぶん投げるしで壁を削る勢いでぶっ刺したりもする。

切れないのに鞘で兜割を成してしまった時はなんであの鞘切れるんだろうと作った自分でさえ首を傾げた。

もしかして刀身に合わせて刃でも仕込んだ?と、全く記憶にない工程を捏造しかけた。

もちろんそんなことはなかったけど。

 

リベリオンに関しては俺が手を加えることはほとんどない。

元々製作者じゃないし、こんなにも美しい芸術品に手を加えるのは作者を侮辱する行為に他ならないのである。

故にデザインを変更する予定はないが、一応ケースだけは置いてある。

 

「こんなに武器があるのに、シードおじさんは戦わないよなぁ」

「別に振り回せないわけじゃないが…俺にはちょっと心が足りない」

「心?」

「"人を愛する心""誰かを大切に思う気持ち"ってヤツさ」

 

ケースに入らず、壁に立てかけてあるものや銃の類も沢山保管されている。

どれも扱うに十分な魔力もある。

次元を切り裂く規格外な質のおかげでスパーダとはまた違った強さが俺にはあると自負している。

だが、俺には愛する心がまだわからない。

大切に思えるのに、どうしてもまだそれ以上近寄る一歩が踏み出せない。

心を持たずに生まれたからなのだろうか。

 

「スパーダの強さは心にある。あいつの信念と愛する気持ちってのは眩しいほどに綺麗だ。武器がその迷いのなさに、その心の重さに惹かれて嬉しそうに踊ってる姿が俺は大好きだ」

「強いだけじゃダメなの?」

「力だけじゃダメなんだ。愛するからこそ踏み出せる一歩がある。踏み込める勇気がある。応えてくれる何かがある。最初言われた時は俺も意味がわからなかった」

 

武器に感情なんてない。

ただ振るえば振るっただけ驚異と力になって自らの敵を襲う。

しかしそれではただの暴力だ。

暴力はなんの解決にもならず、なんの言い訳にもならない。

力は振るう意味も分からないままでは、迷いが生じる。

ただ襲うだけなら悪魔だけで十分だ。

人間が出る幕でもやることでもない。

 

逆に心だけを持っていれば、いつか自分が守りたいものを得た時に後悔するだろう。

もっと力があれば。

もっと強さがあれば。

もっと、もっと。

そうやって力に溺れていく。

心を失っていく人間が悪魔になる。

 

「二つを持って漸く、力の意味を知る。そして意味を知った時人間は悪魔を超える力を持つんだ」

「俺もそうなれる?」

「なれるさ。なんせいい手本がいる」

 

俺は武器が好きだ。

殺傷与奪を握る美しき暴力。

持つものによって姿を変える気まぐれな形。

しかし、持つべきものが持った時にそれらは美しく輝く。

どこまでも尊くどこまでも真っ直ぐに暴力とは違う何かを生み出す。

 

心を、愛を知らない俺は武器をあまり使わない。

スパーダを見ていると自分にはないものが山のように見えてきて、劣等感に苛まれそうになる。

こんなにも好きな武器を俺は輝かせてあげられない。

だからせめて、その刹那の時を万全な状態で居られるように、武器職人になった。

形はなんだっていい。

銃だって構いやしない。

 

あの時、スパーダが切り開いてくれた俺という存在はその輝きに助けられたから。

スパーダに手を差し伸べられた時の光景は目に焼き付いている。

確かにあの時、俺は初めて純粋な自分の気持ちを持った。

"すごい"なんて単純な感情だが、俺にとってはあり得ないような、天変地異でも起きたかのような心地だったのだ。

 

「さて、そろそろ外はお昼時だ。母さんが家で待ってるんじゃないか」

「えー!帰らなきゃならねぇの!?」

「じゃあ母さんのご飯、いらないんだな」

「いる!腹減った!」

「よし、バージルとスパーダを迎えにいくぞ」

 

武器庫をでて向かいの書斎に入ろうとすると、ちょうど二人が出てくるところだった。

スパーダのことだからすっかり忘れているんじゃないかと思ったが、しっかり時間は見ていたようだ。

ダンテがすぐにバージルにべったりくっついて腹が減った!と騒ぐ。

双子のくせに年の離れた兄と弟の図だ。

 

バージルは鬱陶しい、とダンテに言いながらも跳ね除けたりはしない。

なにやら大事そうに何冊かの本を持っている。

書斎にあった本だ。

ジト目でスパーダを見てもそっと顔をそらされた。

彼の手にも何冊か握られている。

 

「俺、本を持ってっていい、なんて言ってねぇんだけど」

「ごめんなさい…」

「バージルはいいんだ。好きなだけ貸そう。知識を得ることは子供にとって重要なことだ。なんなら何冊かあげたっていいぐらいさ。問題は君だ、スパーダ」

 

元々、バージルが好きそうな物を見繕うつもりで用意していた本もある。

ダンテだって望むならいくらでも持って行ってやるつもりだ。

知識とはあればあるだけ有利になる一種のステータスだ。

 

子供のすることを止めるのは、知的好奇心を満たそうとする子供に不満を溜め込ませる。

なんでもやらせていいわけではないが、手に持っている本は人間界で買った歴史書だ。

いちいち目くじらをたてるほど酷いものじゃない。

だがスパーダ、テメェはゆるさねぇ。

 

「いや、君がまさかこういう類の物を大事に持っているとは思わなくて。つい気になって手に取ってしまった」

「語弊がある言い方をするんじゃない。もう使わないからかなり奥にしまい込んだはずだ。君、意図的に探しただろう」

 

スパーダが手に持っているのは俺の日記である。

自我を保つために書くように言われて始めた日記はいつしか習慣となり、数百冊にも及ぶ大長編だ。

埋まってしまった日記は全て本棚の奥にまとめてある。

よくもまあ見つけたものである。

 

「人の日記を見るのは最低の行いだってママに教わらなかったのか?」

「一緒にいなかった時の話とかすごい気になるじゃないか」

「だからって堂々と掻っ払う馬鹿がいるか!」

「私がいる!」

「開き直るな!」

 

これは没収です!

スパーダが持っていた古い日記を取り上げ、エヴァが待つスパーダ家の庭へ次元の狭間を切り開く。

開いた次元にそのまま尻を蹴り上げて放り込んでやった。

ダンテとバージルは転移とは違う狭間に興味津々だったが、もうそろそろエヴァに怒られるぞ、と脅すと直ぐに向こう側に飛び込んだ。

 

「ご飯、食べていかないのかい?」

「少し作りたいものがあるから遠慮するよ。あと君は本当に色々と反省しろ」

「エヴァに叱られてくるよ。じゃあまたね」

「ばいばい、シードおじさん」

「また遊ぼう!」

See you.(またな)

 

閉じていく次元の向こう側に手を振り、どっと溢れてきた疲れに肩を回す。

双子の相手だけでも体力が必要なのにでかい子供も付いてくると労力が倍以上になる。

手に持った日記を片付けるべく書斎に戻ると、一応綺麗に戻されていた。

順番はどうでもいいし、奥にある日記の中に放り込もうと日記がある棚の前に行くと何気ない違和感を覚える。

 

ひー、ふー、みー、よー、いつ、むー…あれ?

 

「何冊か欠番がある…」

 

一応年代ごとに分けていた日記が何年か分欠けている。

今手に持っているものを戻してもかなりの部分が空白のままだ。

この状況で考えられることは一つしかない。

 

あの魔剣士!

俺に返したのはブラフか!!

 

「スパーダ!!」

 

先ほど閉じたばかりの次元を今度はアイツの頭上に直接開いた。

 

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