透明な世界で生きる君   作:羽田翔真

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1話   僕という存在

7月1日 

 

外の暑さが部屋にも伝わり、セミの泣く騒がしい音で僕は目覚めた…。最悪な目覚めだった。

体は汗でところどころベタベタするし…何より学校がある。

朝だと認識するだけで嫌になる…。

また、学校か…。

そう心の中でつぶやきながらも、洗面所で顔を洗う。

 

そして、台所に行き、食パンを二枚と、生卵を準備する。食パンは、トースターで焼き、生卵は目玉焼きにする。

朝食を作り終わるまで時間があるので、コーヒーを1杯のみ目覚めの感覚を味わい、できたトーストを皿に載せ、その上から目玉焼きをのせ、ケチャップをかけ、また、トーストで挟むという

ケチャトーストを作った。

 

これは母から教えてもらったものだった。

忘れられない食事の1つでもあった。

けど……もう同じ味は再現できない。

 

もう母はこの世にはいないからだ。

母が亡くなって、それにショックを受けた父は

病気で倒れて結果的には、僕を残していってしまった…。

あの日から、僕は悲しいだとか、楽しいだとか

そんな感情が分からなくなっていった。

 

朝食を食べ終わり、僕は高校へと向かう。

毎日同じ切り返しの生活には飽き飽きし、

変わることなどない日常を1日1日と過ごしていく。

 

学校につき、僕はクラスに入る。

そして、クラスの妙な席配置に疑問を浮かべる。

「そうか、新しい月だから席変わったのか…」。

と思っていたが正直なところ席なんてとどうでも良かった。席替とはただ人とコミュニケーションを取るためのものであって、このクラスに存在を示さない僕にとっては必要のないことだから。

 

僕の新しい席は、一番後ろの窓側の席で前から数えると6番目。

そして隣の人は、このクラスに存在を示さない。

つまり、僕の隣は誰もいないということだ。休んでいるとか、そんなことではなくて、その通りの意味で誰もいない。なのに机はあるが出席簿には登録されていない

僕はそんな光景を不思議に思い、興味ほどではないが少し知りたいと思った。

 

そのことに対して僕は先生に聞いてみた

が案の定、先生も答えてくれなかった。先生の言い方も曖昧で、話をずらしてそうだったから、答えてくれないではなく、答えられなかったのだろうと僕は思う。

先生にもわからないのだろうか、

口止めをされているのか、

それとも本当に知らないからか、

幾つもの理由が頭の中に浮かび悩まされ、結果的には

全くわからなかった。

それは僕の疑問として頭の中を彷徨い続けていた。

 

僕のクラスの人数は36名、男女比は18対17だ。

あとの1人は男女かどうかもわからない。仮のその空席に座る人とカウントしている。

 

クラスにはある程度、輪ができていて、それぞれの派閥みたいなものもあるのだろう。男女くっきりと別れまた、男子の中でもある一部の派閥と、複数のグループがある。

僕はどこの派閥にも入っていない。いや…むしろ入りたくないのだ。変に絡まれて相手の気持ちを考えながら話すのは礼儀はあるが面倒で…印象をつけると次にまた絡まれてしまうと思ったからだ。

 

今日の授業は1時間目は数学、2時間目は国語、3時間目は理科、4時間目は英語と比較的人とか変わらない教科だったので少し気持ちが軽くなる。授業は挙手制で僕は発表はあまりしない。

それこそ注目を一瞬でもあびる可能性があると思うからだった。1〜4時間目もひっそりと過ごし、昼食の時間となった。

これも派閥で分かれるわけだが、無所属の僕は立ち入り禁止の屋上へと足を運ばせる。

 

重い扉を開けると白がない空と輝いた光が僕の目へと映り込む…僕は屋上に1つだけあるベンチに座りその青く手の届く距離ではない物を見上げならがらご飯を食べる。とは言っても朝は朝食で作る時間がないため、売店で毎日買っている。今日、買った焼きそばパンを僕は食べ始める。こんな時間はとても心地が良かった。

 

昼食を食べ終わると、僕の好きな小説を読む。

昼食の時間は20分、それに加えて昼休みが20分の計40分の幸せな時間。誰にも邪魔されることのない1人の空間、ふんわりと流れる風に身を委ねながら次々と紙をめくっていく。そんな自分の好きなことにかける時間はすぐに終わってしまう。授業など、僕にとって興味の無いものやどうでも良いものは長く感じられるのに、好きな事に没頭していると時間の流れがとても短く感じられる。

「最悪だ…」とつぶやくように言葉から出た。

その言葉は空に向かって消えていき、少しの寂しさを僕に与える。

この気持ちも毎日感じている。変わらない…

 

授業には遅れたくないので僕は早歩きで5時間目と6時間目の準備をする。

 

「あっ…しまった」

このとき僕は絶句した。

それは、6時間目が社会だったからだ…。

いつもの社会では先生の話を聞いて流しておけばいいものの、今日に限って討論会だ…。

しかも今日のテーマは人の[感情]についてだった。

この討論会は挙手制ではなく、席の順番に意見を言わなければならない。早いときには全員が意見を出すこともあるから、なおさら安心できない。しかし運のいいことに今日は席替えをして僕は1番後ろの席に位置するようになった。だから僕は少し安心できた。

 

5時間目は体育だったのでそれなり過ごした。

まあ。普通のことなら大体できるし、唯一自分をアピールするならば僕の頭の良さだろう。

これは自分でも自画自賛したいほどだ。1回名前や単語、意味を聞くとすぐ頭に入っていく。テストはほぼ満点に近い点を取り、クラスでは毎回1位を取っている。クラス内で最高点が発表されるが毎回1位だけは匿名となっている。まあ、僕だからだけど……。

 

そんなことを考えていると遂に6時間目…悪魔の時間がついに始まった。

 

しかも討論会なんて滅多にないから、クラスの奴らはほぼ遊びの授業だと思っていとても楽しそうにしている。

何故そんなに楽しいのか…僕には、到底理解できない。

 

「今日は、討論会です。皆さんには日頃感じる感情について考えてもらいます!」と先生が陽気に話しかける。

クラスの人も乗り気だ…

 

そして席順に1つずつ発表をしていく。

実際、入りたくない話題だったが、入らざるを得ない状況なので自分の番が来るまで意見を考えておく。

脳を働かせて出た結果は、他の奴らからしたら無慈悲で残酷なものだろうが僕としては正常な事だった。

 

「感情なんて必要がないでしょ…そんな物。苦しくなり、悲しくなり、死にそうな思いもしなければならないのに…。一瞬の喜びはのちに大きい悲しみを生むもんだろ。」

 

それが僕の出した答えではあったがそんなことを言ってはクラスの奴らからはヤバいやつに思われてしまう。

普通で何もない。無の存在が1番だから、僕はその答えを脳から消した。

 

 

僕は家族を失ってから何かと自分の感情を表さなくなり

人と話すこと、出会うことも恐れるようになった。

刻々と時を刻み、僕の番まであと3人と言うところで

突然授業終了の鐘がなり、悪魔の時間は終了した。

 

クラスの人は満足げに笑みを浮かべながら帰宅準備を始め終わり次第、教室を去っていく…。

 

そして僕一人だけの空間となった。

ふぅ、少しため息をついて働かせた脳を休ませるために小説を読む。

 

「おい、星野!」

突然大声で声をかけられたため、勢いよく跳ね起きる。

「はい…って先生?」

「お前何時までいるんだ!最終下校時刻をすぎるぞ!」

そこには先生こと、田中篤(たなか あつし)が僕をギラリと睨みつけ立っていた。

僕は時計を見るなりその時間に驚き、カバンを担いで走って帰宅する。

 

〙変わんないなぁ、毎日同じことの繰り返し…。

つまらない世の中だよ…。ホントに。」

と飽き飽きしながらも家に帰り気分転換をしようとお風呂のお湯をいれる。お風呂に入ったあとは夜ご飯を食べ、寝る。それだけだ。

 

僕は寝るとき、明日が来ないことを祈る。

このままでいたい。そんな気持ちが僕を安心な睡眠へと向かわせる。

 

 

 

 

 

 

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