逃亡アイドルの辿り着く場所   作:スタプレ

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モチベ上がるなり。

はりきって2日連続投稿です!


3話 夢は誰でも...

「おはようございます十里さん。」

 

「おはよう彩ちゃん。今日も早いね。」

 

「十里さんだけには言われたくないです。」

 

まぁ駅員の朝は早いからね。起きる時間ややる仕事で早朝顔を合わせることはなかなかない。

 

「今日はホームの草むしりか。」

 

「これも自分の出来ることですから!」

 

川を初めて見せた日から何日かまた経った。8月も終わろうとしているのにまだ水に浸かりたいぐらいの暑さだ。

 

あれから自分の出来ることを探すようになった彩ちゃんは掃除をすることから始めた。

綺麗にすることからその才能を発見した彼女は手入れ、模様替えも挑戦している。

 

たまに物を壊しちゃうこともある。そのたびに暗い顔で川に行くのを窓口から見る。

もちろん心配になるが、30分後にスッキリした顔で戻って来るので気にせず業務に集中出来る。(そんな仕事はないが)

 

「でも誰も来ないホームを手入れしなくてもいいのに...」

 

「だからと言って、草ボーボーにしないで下さい。身長を超える草は初めて見ましたよ...」

 

「すいませんでした...」

 

あんだけ鬱になっていたのに正直心の回復は早いとは思わなかった。カウンセリングの勉強してないから分からないけど...

 

「ほんじゃ冷え冷えの水をここに置いとくね。」

 

俺は水が入ったペットボトルを彩ちゃんに渡す。

 

「ありがとうございます!ちょうど飲みたかったんです。」

 

「水分補給はこまめにしてくれよ?」

 

素を見せてくれたから知ったこと。この子ちょっと抜けてるところがあるんだよね。

 

でもそこも可愛いと思う。恐らく日本で知っているのは俺だけではないかな?

 

「ほんじゃ事務室に戻るね。頑張るのはいいけどほどほどにな?」

 

「おばあちゃんじゃないから大丈夫だよぉ。」

 

可愛いふくれっ面で作業を続ける。

 

線路に倒れて助けられたのはどこのどいつだったのやら。

 

「じゃあ昼飯の用意でもするか...」

 

気が早いかな?まだ朝の9時だった...

 

 

 

 

 

「いつもご飯ありがとうございます。」

 

「口にあえばいいんだがな。」

 

「とっても美味しいですよ!今日のうどんも最高でした!」

 

 

「まぁ手打ちだからな。」

 

「え?凄っ!」

 

「暇が多いとこんな特技も出てくるのよ。」

 

と言っても料理も人並みしか出来ないんだけどね。あと食材が神ってるから美味しい。

 

 

それにしても美味い(自画自賛)

 

「私、結婚しちゃおうかな...」

 

「へぇ...誰と?」

 

「十里さんと!」

 

「あぁ俺とか...」

 

ふーん俺と結婚かぁ.........俺と結婚ねぇ............俺と結婚.........はぁ!?

 

「なんで俺となの!?」

 

「ダメ...なんだ...」

「落ち込むな落ち込むな。まだダメとも言ってないよ。理由を聞きたいだけ。」

 

「それは十里さんがステキな人だから...」

 

そいつはどーも。

 

「まだあるだろ。」

 

「ここで暮らしたいから!」

 

それが一番の理由だと思ったよ!

 

ハァ

 

俺はため息を1つついてから続ける。

 

「別に彩ちゃんがそれでいいなら俺はいいよ。」

 

「じゃ、じゃあ!」

 

「夢はいいの?」

 

「......どういう意味?」

 

「君はアイドルになりたいんじゃないのか?今はその為の心と身体の休養だと思っていたよ。」

 

「...」

 

彩ちゃんは顔を暗くして俯いた。目線も合わせてくれない。

 

「確かに今まで味わった苦は軽いものではない。でも階段は一段ずつ上っているよ!だから...」

 

「............ないでしょ?」

 

「え?」

 

突然立ち上がると机をバン!と叩いて俺を睨みつけながら続ける。

 

「あなたには関係ないでしょ!!」

 

「同じ屋根の下で暮らしている仲だろ?そんな言い方は...」

 

「違う!あなたは私の夢は関係ないということだよ!どんだけ辛い思いをしたのか分からないくせに...他の人間とは違うと思っていたのに!!」

 

彼女は哭くといった表現が正しかった。

 

「私と違って夢のないあなたには分からないよね?あなたはダラダラとここで過ごせばいいんだから!所詮あいつらと変わらないんだ!!!」

 

ハァハァと息を肩でしている。

 

「夢がない。ダラダラと過ごしている.........ねぇ......」

 

俺は彩ちゃんに視線を移す。

 

「あ、えっと...そんなこと言うつもりは...」

 

きっと睨むような視線だったんだろう。落ち着きはじめた彩ちゃんが少し動揺する。

 

怒っていないかと聞かれたら嘘ではない。けど感情的になって反論するのはらしくない。

 

「すまなかった。確かに君の苦労は分かってなかったかもしれない。軽率だったよ。申し訳ない。」

 

「い、いえ。私も言い過ぎました。ごめんなさい。」

 

「でもね、君の言ったことは半分合っていて半分違う。」

 

「そ、そうですよね。ダラダラなんて失礼ですよね...」

 

「そっちじゃない。ダラダラしているのは否定出来ないよ。」

 

「えっと...じゃあ?」

 

コップに残った水を飲み干してから言う。

 

「俺にも夢があるんだ。」

 

「夢ってお父さんのことですか?」

 

実は自分の過去は少し前にも彩ちゃんに話した。でも違う。

 

また首を横に振って続ける。

 

「それは『夢』って言うよりも『憧れ』だな。ちょっと来てくれるかな?」

 

「は、はい。」

 

俺はある鍵を持って外に出る。

 

 

 

 

実は十里家は駅舎と住居スペース。そして大きな倉庫がある。

 

その倉庫には線路が繋がっている。線路はもう錆びている。

 

俺は鍵を開けて彩ちゃんを中に招く。

 

「入って、どうぞ。」

 

「うっわ〜凄いよ!」

 

中にはSLこと蒸気機関車とディーゼル列車が置いてある。

 

「これ動くんですか?」

 

「やろうと思えばできるよ。」

 

ここにある車両は全て個人のもの。表上廃車になっているからこの世に存在している事は関係者以外知らない。

 

マニアックな話をすれば、SLはC10形の4号機。ディーゼル列車は国鉄時代急行として活躍したキハ58の2両だ。

 

「じゃあこれのどこが夢なんですか?」

 

「動かすことが出来ないんだ。」

 

「え?」

 

「ないんだ...客車が。」

 

そう。個人のものでも線路がない。明備鉄道も蒸気機関車を走らせたいが、客車を買うお金がない。

 

「見ての通り、走らせるのに精一杯の鉄道なんだ。客車を買う余裕がないんだよ。」

 

「じゃあこれは?」

 

彩ちゃんはキハ58を指差す。

 

「これはコストがかかるんだ。今の気動車を走らせた方が断然いいんだ。」

 

「そ、そうなんですね...」

 

「でもいつか走らせたいんだ!」

 

また勇敢な走りをさせたい!これは俺の夢なんだ。

 

「彩ちゃんの夢とはちょっと違うかもしれない。努力する方向性が違う。お金で解決しちゃうかもしれない。他の大手鉄道会社から笑われるかもしれない。」

 

俺は列車に目線を向けて堂々と宣言する。

 

「でも走らせたい!これは親譲りじゃない。自分の夢なんだ!希望なんだ!」

 

いつの間にか熱く語っていた。そして我に返って彩ちゃんに謝る。

 

「ごめんね熱くなっちゃって。おかしかったよね?」

 

「いえ、素敵です!十里さんもこんな大きい夢を持っていたなんて...」

 

「ははは......大きいだなんて...。」

 

「私、応援してます!」

 

「ありがとう。だから彩ちゃんも頑張ってよ。再スタートがいつになってもいい、進歩が亀のように遅くてもいいから。俺は永遠に彩ちゃんのファンだから!」

 

「はい!十里さんのためにも頑張ります!それにファンと言われたの初めてなので...ちょっと嬉しいです...フフッ」

 

「なんか恥ずかしいな...アハハ」

 

この後彩ちゃんに運転席を見せたり、動かない車内に入ってお互い果てしない夢について語った。

 

全国ツアーしたいとか。ここに立派な旅館建てたいとか。バライティにも出たいとか。もう1台SLが欲しいとか。

 

無理でも語ることなら出来る。そんな時間が楽しかった。

 

気づいたら空はオレンジに染まっていた。こんな時間を忘れたことはいつぶりだったのかな?




さて読んでくれた回数やお気に入りの数を時々チェックしていますが、読んでくれている回数が少ないわりにはお気に入りが結構多いんです。これが普通かどうか分かりませんが、一件でもあるだけで作者は喜びます。

前回期待に応えるとか言いながら、裏切る情報を1つ。

この話を長編にする予定がありません。まだ具体的に決めていませんが、総合でも10話行くか行かないかのところです。
話が短い分濃い内容にするつもりですので、最後まで読んで頂けたら幸いです。
恐らく年末までには完結するかもです。

それでは次回もお楽しみ
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