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都会は9月に入っても猛暑猛暑とうるさく言っている。事実暑いから仕方ないのだろう。残っている暑さなんてケタ違いだから残暑なんて簡単に言えない。
一方の田舎代表葡萄川は9月に入ったら秋という感じがする。虫の音は聞こえるし、夜になれば少し肌寒い。
今日はよく晴れて星がキレイに見える。月もセットだ。
そして今日の葡萄川駅の乗降客数安定のゼロ。間もなく終電がやってくるが、期待なんてしない方がいい。もう貝塚駅に変えていいすか?
悲劇の歌姫は自室でカラオケだ。終電が行ったら風呂に入れと促すか。
「二桜行きの最終来たか。」
ディーゼルカーがホームに滑って、すぐ出発する。気のせいか?停車時間が長かった気がする。
「よし、行ったか。彩ちゃん!風呂入りなよ〜!」
「は〜い。」
歌声が聞こえるなら、大声を出せばあっちにも声が届く。
さて一応ホームの見回りをするか。
「ホントにここで合ってるのか?」
「大丈夫だよ!星が呼んでいる!」
「見た感じ何もないよ。」
うん?なんで女の子達の会話が聞こえるのかな?疲れたかな?
「あそこに人がいるから聞いてみようよ。」
どうやら幻聴ではないらしい。そして女の子が5人もいる。これも幻覚ではないらしい。
5人もいるなんて、俺が就任してから過去最高の乗降客数じゃないのか?
「すみません!星近ヶ丘に行きたいんですけど。」
特徴的な髪の女の子が聞いてくる。
「駅を出て、道路を渡って、橋を超えてまっすぐ行けば着くよ。」
「ありがとうございます!よし行こう!」
「ちょっ待てよカスミー!」
女の子達は走って行ってしまった。
ナチュラルに教えたけど今から行くの?この辺りに宿すらないんだけど...
「ちょっと待って君達!」
ダメだ。もういない...
「十里さん出ました...ってまだ閉めないんですか?」
「あぁ...星近ヶ丘に行った女の子5人組が来るまで待たないといけない。」
「嘘...もう列車ないですよ?」
「あの様子だと車もないだろ。多分乗れる年齢じゃないと思うけど...ここで泊めるしかない。」
「大変ですね。」
「これも仕事さ。先に寝ててよ。」
「まだ私眠くないので話し相手になってくれませんか?」
「いいよ。こっちも助かるよ。」
雑談をしてからそんなに時間は経っていない。5人組の女の子が駅に戻ってくる。
最初は笑顔いっぱいの彼女達も時刻表の前にたった瞬間絶望した顔に変わった。
そりゃそうだ。もうどっちの列車もないから。君達の乗った列車がこの駅の最終だからね。
俺は窓口を出て彼女たちに近づく。
「どうすんのこれ!?明日まで列車ないけど!」
「近くにホテルないかな?」
「野宿でいいよ。」
(いやダメだろ。)
思わず内心突っ込んでしまった...
「あの〜君たち。」
「すみません!この近くにホテルはありませんか?」
ツインテールの子が聞いてくる。
「ないですね。ホテルどころか民家も...」
「嘘だろ...」
すげー真っ青じゃん。何にも知らずにここに来るとはいい度胸だ。
「良かったら泊まっていく?」
「...え?」
男の人の家に泊まるの...という顔をしている。確かに年頃の女の子が知らない男の家に泊まるのには抵抗がある。
「駅の施設だよ。合宿所の名残で空き部屋があるからそこで泊まればいい。布団もあるけどちょっと埃っぽいかも。」
「いいんですか?」
「いいも何もここしか泊まれる場所はないよ。野宿がいいなら別だけど。」
「ありがとうございます!じゃあお言葉に甘えて...」
栗色のポニーテールの子が代表して頭を下げた。
「じゃあここから入って。風呂もすぐに入れるから。」
よく考えたら女の子計6人ってハーレムじゃないか。もちろん野蛮なことはしないさ。仮にもここ職場だしね。
「...野宿。」
黒髪の子が呟く。ここまで野宿したいやつは君だけだよ...
うちの風呂は元合宿所なだけあって、5人入っても狭くない。ただ掃除がめんどくさい。
あの子達が出てきたらお茶でも出してあげるか。
あれ...
「彩ちゃん?どこ行ったの?」
そういえば事務室経由で上がらせたけど、さっきまで話し相手だった彩ちゃんが行方不明に。
「.........そこで何してんの?」
ピンクの髪の毛は目立つ。彩ちゃんは机の下に隠れていた。
「私の後輩......」
「え?誰が?」
「あの5人組。私の学校の後輩だよ。」
「てことは東京から来たの?すげぇな...それでなぜ隠れている?」
「顔見知りなの。バレたらきっと......」
あ、そういうことね。
「今のうちに部屋行きなよ。あの子達には離れた部屋を使ってもらうから。」
「ありがとうございます。それじゃおやすみなさい〜。」
「おやすみ〜。」
同じ学校ということは住んでいる場所も多分近い。その地域とここは何か繋がっているのか?
「えーっと、右から沙綾ちゃん、有咲ちゃん、香澄ちゃん、りみちゃん、たえちゃんか。」
「ホントにありがとうございます。お風呂まで用意してくれて...」
有咲ちゃんがキチンと頭を下げる。きっとしっかりしているんだろうなぁ。
「まぁ君達みたいな人もたまに来るからね。ところでなんでわざわざ星近ヶ丘に?」
「それはキラキラドキドキを感じたからです!」
香澄ちゃんがぐいっと顔を寄せる。近い近い...
「キラキラ、ドキドキ?」
「香澄は小さい頃ホシノコドウを感じたそうです。」
沙綾ちゃんが解説してくれる。
「その場所がここ星近ヶ丘なんです!ポピパのみんなと行きたいと思って来ちゃいました!」
「ポピパって、君達のグループ名なの?」
「私達Poppin’Partyという名前でバンドをしているんです。」
たえちゃんがドヤ顔で言う。彩ちゃんが顔見知りなのはただの先輩後輩の関係じゃなく、バンド関係で繋がっていたのか。
「もしかして誰か妹と一緒に迷ってなかった?」
「それ私です!でもなんで知っているんですか?」
「あの時親御さんと一緒に探しに来た少年覚えてる?」
恐らく幼いからそこまで覚えていないだろう。その時のことを俺は説明した。
「すごい〜じゃあ感動の再会なんだね〜」
りみちゃんがおっとりして言う。まぁ再会の形が微妙なんだけど。
「すみません。泊めて貰ってなんですが、1つ相談いいですか?」
突然有咲ちゃんが真面目な顔になった。
「パステルパレットってご存知ですか?」
「......ネットで聞いた事あるね。」
もう何を言うか分かる。
「そのボーカル担当の丸山彩さんが行方不明なんです。」
「行方不明?」
予感は的中した。
「低確率なのは分かります。何か知ってることありますか?」
「すまんな。客は覚える方だが、そんな子は見たことない。」
チクリと胸が痛む。騙すのも嫌だけど、ここでボロを出して彩ちゃんとの約束を破るわけにはいかない!
「そうですよね。すみませんいきなり。」
「気にしないで。それにしてもアイドルの子が行方不明なんてニュースは聞いてないけど...」
「事務所が口止めしているんです。私達も先輩に直接聞くだけで、ネットでは言わないでねと。」
まぁそのネットでも行方不明疑惑なんて浮上してないからなぁ...
「有咲、十里さんが困ってるからこの話は終わり。」
「そうだよ〜私眠くなっちゃった。」
沙綾ちゃんと香澄ちゃんが話を打ち切った。このタイミングがちょうどいい。
「部屋に案内するよ。」
「枕投げしようよ!」
「あんまり暴れないでねたえちゃん。」
ポピパ5人を部屋に通してから風呂に入った。
なんか女の子6人入った湯船に浸かることに変な抵抗を覚えたから今日はシャワーだけにした。
「お世話になりました!」
「気をつけてな。今度来る時はちゃんと調べてから来いよ。」
「は〜い!」
「返事がいいな。」
こうして始発列車を見えなくなるまで見送った。
「ただいま〜」
「おかえり。」
ちょうど朝の散歩に行ってた彩ちゃんが帰ってきた。
「あの子達は帰ったの?」
「たった今帰ったよ。そういえば彩ちゃんのこと聞かれたよ。」
「私がいること言ったんですか?」
「いや、ちゃんと誤魔化したよ。そもそもこんな所にいないという前提で聞いてきたからな。」
「ありがとうございます。何から何まで...」
「気にするな。それより朝ごはん食べようぜ。腹が減って仕方ない。」
「はい!」
ふわふわ笑う彼女は輝く朝日に似合う。その笑顔に別の心配が出てきた。
(この子は自立出来るのだろうか。)
でも畑中さんとか他の人に会っても挙動不審じゃないし、歌の練習も始めているから無駄な心配なのかもしれない。
しかし無駄な心配だと思う一番の理由が、次の日に察したのはまた別の話。
実はまだこの作品の第1話からまだ1ヶ月経っていないと...
1ヶ月ペースで投稿と言ったクセに1ヶ月ちょっとで終わらせていいのか?
まぁいっか(股尾前科)
どうでもいい話を1つ。
最近小説を書く時は一旦別のテキストで書いて、丸々コピって投稿しています。今回も同じ作業でやろうとしたら誤って文全部消しました。
なぜかバックアップしてたので同じ作業を繰り返す必要は無くなったのですが、あれ永遠に戻って来なかったら萎えで何週間も放置するところだった...
さて次回もお楽しみに、残りもお付き合いお願いします。