インフィニット・ストラトス ~とある青年の夢~ 作:filidh
これ以上本編前で長引かせたくないのでまとめちゃいました。
ではどうぞ、ご覧ください。
「一夏!!無事か!?」
「千冬姉!!」
そう言って一夏へと駆け寄る女性。一夏も立ち上がりその女性へと駆け寄る。
彼女こそおそらくこの世界で最強の人間。『織斑 千冬』である。最早断片的にしか無い現実世界の記憶の中でも確かにそれを覚えているし。自身が英雄の再現が出来るからだろうか、見るだけでも相手の恐ろしさが解る。
二人は駆け寄ると千冬さんのほうは心配した顔で一夏を見ている。俺への警戒を忘れずに。……この人こそどっかの国の諜報員じゃないのか?
「一夏!!大丈夫か?怪我は無いか!?」
「大丈夫だよ、千冬姉。俺よりも奏のほうが!!早く病院に連れて行かないと。」
……あ、やべぇ。この後の展開まったく考えていなかった。
俺、病院に連れて行かれても保険証どころか身分証明書も無いし下手すりゃ戸籍も無いんじゃないか?
だとしたらばれたら面倒くさい目にあうな。
「い、いやぁ。俺は大丈夫だよ。」
「大丈夫なわけ無いだろ!?そんな傷だらけで!!」
「深い傷は無いし、唾でも付けてれば治るさ。それよりも早く大会に戻ったほうが良いんじゃない?」
俺は話を逸らそうと千冬さんの大会について話を逸らす事にした。
「そうだ!!千冬姉!!大会は!?」
「………棄権した。」
「!?」
あ、ちょっとやばい方向に話逸らしちゃった?
一夏は下をうつむきながら言葉を吐き出す。
「………ごめん…千冬姉…俺のせいで…」
「お前のせいではないさ一夏。それにお前に頼られる前に既に大会は棄権していたんだ。そんな事よりお前が無事で本当に良かった。」
「………うん…」
優しい顔で一夏を諭すように声をかける千冬さん。だが一夏は自分が迷惑をかけてしまったとかなり落ち込んでいる。仲のいい姉弟だなぁ…と見ていると千冬さんが俺に声をかけた。
「君が私の弟を助けてくれたらしいな。本当にありがとう。」
「い、いやぁ。結局最後は一夏君に助けてもらいましたしおあいこですよ。」
「それでも弟の恩人だ。手当てをしたいので病院に来てもらうぞ。」
「……い、いやぁ…」
顔つきは微笑んでいるようなのに目が笑ってない。おそらく俺が断る事を見越して圧力をかけているのだろう。一夏も一夏で不安そうな顔でこちらを見ている。
……断れない…ええい!!こうなりゃ腹をくくろう!!
「解りました。」
「よろしい。」
「でも千冬姉。どうやって病院まで運ぶんだ?」
「安心しろ。そろそろ来るはずだ。」
「「何が(ですか)?」」
そう言うと同時に車が三台猛スピードでこちらにやって来る。こちらの近くまで来ると十数人の男たちが車から降り廃墟へと足早に向かっていった。
俺と一夏は唖然としながらその光景を見ているとさらに数人こちらへと向かってきた。
千冬さんは何も警戒していないのでおそらく味方なのだろうけど正直付いていけず訳がわからない光景であった。
千冬さんはこちらに来た人と何か話したかと思うとそばに居た男たちが俺を突然担いだ。
「ちょ!?」
「お前たちはこの人たちと先に病院に行け。」
「千冬姉は!?」
「後ですぐに行く。」
「ま、まって!?誰ですか!?この人たち!?」
「ドイツ軍だ」
「「ドイツ軍!?」」
こうして俺たちはドイツ軍人たちに連れられて、病院へと運ばれていった。
病院に担ぎ込まれた俺と一夏はすぐさま医者の手当てを受けた。
一夏のほうはわからんが、俺のほうは縫い傷が計7箇所。特に足の傷は深かったらしい。他も体中傷だらけで手当をされ包帯を巻かれた結果、ほぼ全身包帯巻きになってしまった。
その後安静にするため病室にはこばれると一人部屋でそこで寝ているように言われた。
俺は初め、どうにかして逃げ出そうかとも思ったがごっつい軍人さんが俺を見張ってるし銃も奪われているためそれは無理だった。
では、その後の対応を想定しようとも考えたが、俺がこの後どうなるかもわからないので想定のしようが無かった。
そういや今日帰るつもりで買ったチケットどうしよう……こんなこと気にしても仕方が無いか。
やる事がなくなり先ほどまでの疲労、さらにベットの上で安静にしているというのが重なり。俺は猛烈な眠気に襲われそのまま寝る事にした。やはりかなり体力を使っていたのであろう。入り口辺りでこちらを見続ける視線など気にもならずに俺は眠りに落ちた。
「…~~わ…~~~~というのか!?」
「可~~~~~!?~~~~~~~。」
「あま~~~!!~~~~」
「~~~~!?~~~」
「~~~……私~~~」
周りで声がする……婆さんたちが何かやっているのか?
しかしこっちはありえないほど眠いのだ。少し静かにして欲しい。
「とにかく!!私たちは「もう、婆さん。静かにしてくれよ……」…………」
俺は寝ぼけながら声を出しいつもよりもふかふかのベットから起きる。目を擦りながら周りを見ると…あら?知らない部屋だ。
周りを見ると2人の軍人さんと織斑姉弟がそこに居た。あ~そういや病院に居たんだった。ってことはさっきまでの会話はこの人らか……なんで皆、今はそんなに静かなの?
と横を見ると鬼が、いや鬼のような形相の千冬さんがそこに居た。
「おはよう。だがさっき何か聞こえたような気がしたんだが?『婆さん』とかな?」
「ち、千冬さん?」
アカン…何とか誤解をとかなければ。
「い、いえ!?寝ぼけけただけなんです!!つい家にいるつもりで婆さんに返事をしただけで!?!?」
「………」
く、空気が重い……お願い、一夏さん!!助けて!?そこで俺に向かって拝んだりしないでさぁ!!って言うか少しずつ部屋から出て行かないで!?行かないで一夏さ~~ん!!……あいつ本当に見捨てやがった……
「…………まぁ、良いだろう。具合はどうだ。」
「ハイ。大丈夫です。」
一夏が部屋から出て行ったのを確認すると千冬さんは許してくれた。
あれ?もしかして俺、一夏をここから追い出すために利用された?まぁいいや。
そう考えながらも俺はしっかりとハキハキ返事を返す。やはりこの人は怖い。下手にからかおうものなら、命を懸けなければ。
俺は心の中でそうしっかりと心に決めた。
千冬さんからの脅威から何とか助かり。俺が安堵の息を吐くと近くにいた軍人の男性が声をかけた。
「はじめまして。『風音 奏』君…と言ったね?私の名はランベルトだ。ドイツ軍人の……まぁ偉い人とでも思ってくれて良い。」
「はぁ……」
「君にいくつか質問があるのだが良いかね?」
「………どうぞ。」
「では初めに。あの誘拐犯たちについて君の口から聞かせてもらっても良いかね。」
「はい。じゃあまず~~~~~」
俺がやった事見た事をそのまま口にした。まぁISと戦ったところだけは弄ばれたという風にしたが。
俺が話し終わるとランベルトとか言う人は怪訝な目でこちらを見る。
「ふむぅ…偶然にも織斑一夏の誘拐現場にいたのを認めたとしてもなぜわざわざ救助に?警察に連絡したりしなかったのはなぜ?」
やはりそこを突かれたか。
まあ理由は「自分の目標にしている人ならそうしたから」というものだが言っても信じてもらえまい。どうしようか……まぁ適当に言うか。
「警察に連絡しなかったのは、僕、携帯とか持って無いんですよね。」
「この時代に?」
「家が貧乏なんで。それに近くにいた人が連絡してくれそうだったんでとりあえず追跡しようかと思ったら助けられそうだったんで。」
「ほう?自分の身の危険を顧みずに?」
「主はおっしゃりました『与えよ。そうすれば、自分にも与えられるであろう。』。こんなんでも一応教会で暮してるんで見捨てたら目覚めが悪かったんですよ。」
ちょっと無理があるかなぁ…とも思ったが、事実として俺は自分の身の危険を顧みずに一夏を助けようとした事実は変わらない。
言うならば理由が何であれその事実は変わらないのである。納得できるかどうかは別として。
「じゃあ次に。君は誰だ?」
「……どういう意味ですか?」
「わが国の国籍どころか他国の国籍でも今のところ君の存在は発見されていない。」
「…そうですか……」
やはりか。自身の国籍がどこにも無いことは正直わかっていた。
しかしどう説明したものか……
「ほう、君は自分の国籍が無いことを察していたというのかね?」
「いや、そうなんじゃないかな~とは思っていたんですよ。」
「………それはなぜ?」
「僕、7年より昔の記憶が無いんですよ。一番最初の記憶はフランスの町で一人ぼっちでいた記憶ですね。」
「「!?」」
おお、千冬さんの反応がすごいな。そういや一夏も小学校一年生以前の記憶が無いんだっけ?てことはこれある意味一夏との共通点なのか。
「それで、しばらくその町をうろついたんですが両親とか俺を探す人がいるどころか、いろいろやられましてね……怖くなって逃げ出したんですよ。」
「………」
「その後はストリートチルドレンというか、ホームレスみたいな生活ですよ。いい人だと1週間とか泊めてくれたりもしましたけど基本野宿や廃墟の中で生活ですね。」
「………つづけて。」
「初めの持ち物に金がかなり入ってたんでそれを守るように転々と町を逃げ歩いてました。一箇所にとどまると目をつけられたんですよ。」
「………誰かに助けを求めようとは思わなかったのかね?」
「出会う人が基本こわいひとにみえましたからねぇ…金を持ってるのがばれると奪いに来るんですよ。そうなると当時の僕は『自分以外は全員敵』って思ってたんです。」
俺の話があまりにも想像にしていなかった物なのか、全員聞き入っていた。
この話はノンフィクション7割フィクション3割でお送りしております。
実際金が奪われそうな時も会ったが銃で撃退していたし、結構楽しみながら旅行気分の時も合った。
ただやはり自分以外は全員敵という感情が無かったとは言えない。成長してからが本番と考えていたが成長しきれるかが勝負とも考えていた。
実際アストリットの婆さんに拾われたのはとてつもない幸運だと俺は思っていたしね。
質問がランベルトさんから千冬さんに移った。ランベルトはさっきからうつむいている。
「続きを聞いてもいいか?」
「はい。んで3年前の冬にはいる頃に金が底を着き始めまして、何とかしようと考え教会に忍び込んで、そこに住んでた婆さんに拾ってもらったんですよ。」
「……そのときはなぜ逃げなかったんだ?」
「しばらくすれば婆さんの方が早く死ぬだろうしそうすれば安全に色々と手に入ると当時は思っていたんですよ。」
「・・・・・・今はどう思っているんだ。」
「婆さんの信じる神様は信じていませんが、世の中にはこういう人もいるんだな~って考えてますね。んで婆さんとの約束でなるべく人助けをしようって決めてたんで一夏…君を助けたんです。」
「そうか……」
「「「……………」」」
……く、空気が重い…確かに面白い話じゃないけどさ。俺の身の上話なんて。
本当の事言えないし。『実は僕異世界人で布団で寝てたと思ったらいつの間にか別世界に来てしまってたんです』なんて言えるはずが無い。
っていうか軍人さんがた?なんか泣いてません?扉の前の彼なんかさっきから上を向いたまんまずっと震えてるんですけど。ランベルトさんにいたってはさっきから鼻をすする音しますし。
「・・・ズズッ…すまない。それで君はそのあとどうしたんだい?」
「そのあと行方不明者とかをネットで探したり唯一の手がかりの『風音』って言う文字で色々と調べたりしたんですけど一切自分の情報は見つからなかったんですよ。んで今の婆さんとの生活も気に入ってたんでそれで良いかな~って思ってたんですよ。コレくらいですかね?僕の僕に関してわかる事は。」
「そうか…つらい事を聞いてしまったな……」
「い、いえ…大丈夫ですよ。」
コレでいいのか!?ドイツ軍人!?俺の知ってるドイツ軍人のシュト●ハイムはうろたえてりはしなかったぞ!?…いやあいつはかなりうろたえてたな。って事はコレくらいドイツ軍人としては普通なのかもな。
この世界中のドイツ軍人に謝らなければいけないようなことを考えながら話は進む。
「われわれは初め、君がどこかの国の、いや日本の諜報員だと考えていたんだよ。しかしながら君の話は我々が手に入れた調査資料と矛盾するところは無かった。」
「すごいっすね。短い間にそんなに調べられたんですか?」
「いや?………ああ君は自分がどれだけ寝ていたか解らないのか。」
「へ?」
「かれこれ君は5日間寝ていたんだ。」
「………婆さんは!?」
「安心したまえ、病院に入院している事は伝えてある。」
そうか……俺はひとまず安心しながら話を進めた。
「……この後俺はどうなるんですか?」
「とりあえず調査を進めて問題が無いようなら日本国籍を手に入れる事になっている。そこのブリュンヒルデが一枚噛んでな。」
「はぁ…」
俺は千冬さんの方に目をやると千冬さんは少し目を赤くしていたが気にしないことにした。
「君のお婆様から頼まれてな。お前を日本に連れて行ってやれないかとな。」
「え!?マジですか!?」
「本当だ。こう言っていたぞ『あの子はあまり口にしていませんでしたが本当に何度か日本に行って自分を探したいと言っていました。どうかあの子を日本に連れて行ってもらえませんか?』とな。」
「婆さん……」
「私もお前には感謝している。お前次第だが場合によっては日本で暮す事もできるだろう。もちろんその後、ここドイツで生活する事もできる。お前はどうしたい。」
「………スイマセン千冬さん。よろしくお願いします。俺日本で自分を探してみたいです。」
「そうか……わかった。ただお婆様にはしっかりとお前から話せよ。」
「ハイ解りました。」
こうして俺は念願の日本へと向かう事が決定したのである。
このときドイツ軍人たちは涙を流して感動していた。……もうこいつらがそういう奴らなんだろうと考えよう。
俺は深くため息をつき再びベットで眠る事にした。
未来への切符は…いつも白紙なんだ
~ヴァッシュ・ザ・スタンピード~
ということでコレで本編開始前は終了です。
次からは3~4本番外編を書いた後本編へと進みます。
次から少しペースが落ちますがご了承ください。