インフィニット・ストラトス ~とある青年の夢~ 作:filidh
俺が警察のお世話になった次の日の朝。
いつもと同じ訓練をせず、俺は目立たないところでISを展開していた。
これはルール違反を犯しているのだが……それでも早いうちにこのISを使いこなさなければ…
ISを展開し銃を構える。
もし仮にこのISが俺の影響でプラントになっているとしたら…
俺は自身のリボルバーの弾をこめる場所に左手をかざす。
そしてそのまま目をつぶり意識を集中させる……
30分ほどそうやってじっとしていただろうか…
手に何か起きたような感覚がしさらに意識を集中させる。
次の瞬間<―カシャッ!!―>という音がし一気に体の力が抜ける。
これはかなりの疲労感だな…そして銃のほうを見ると先ほどまでなかった銃弾が一発…やはり出来てしまったか…
取り出して確認するがどうみても普通の弾丸じゃない。
見た目は普通なのだが俺の感覚がこれは危険だと告げている……
よし、撃つのはまた後でにしよう。とりあえず…近くの海にでも行って撃とう。
まず今はこの感覚を忘れないように…ひたすらに集中をしよう。
結局俺はその日他の人物が起きてくるまでの間にその訓練をやり続けた。
傍から見ればただ立って銃に手を当てて息切れしてるだけだ……完全におかしい人だな。
結局その日作ることが出来たのは3発。
一応時間は縮めているとは思うが…戦闘中には作れそうに無いな。
完全につかれきった俺はそのまま自身の部屋に戻った。
さて今日は何をしようかと考えながら食堂に向かう。
そういや今日は、一応一夏に誘われてプールに行くんだっけか?
一夏は恐らくまた柳韻さんに与えられた練習をやっているのだろう。
箒も一緒にやりたがっていたが一夏専用のメニューらしく一緒には出来ないらしい。
さて今日の朝食はどうしようか…と考えていると後ろから声がする。
「ソウおはよう。」
「ああ、おはようシャルロット。」
後ろを向かずに声をかける。
昨日は散々だったな、あの後千冬さんに軽く指導された後部屋に戻るとラウラに呼び出され部屋に向かうと落ち込んだシャルロット。
何でも完全に俺に無視されたと思っていた上に昨日手伝ったバイトでもラウラがメイド服なのに対し自分は執事。周りからイケメン扱いでかなり落ち込んだらしい。
苦笑しながら慰めていたら俺が何をやっていたかの話になり銀行強盗の話をしたところさらに心配され……と言った感じで結構遅くまで起きていたのだ。
シャルロットの顔はどんな感じかな?と思い振り向くとかなり普通だった。
「?ソウどうしたの。」
「うん?いやなんでもないよ。とりあえず飯でも食べよう。」
そう言って適当な席で朝食を食べ始めた。
いつもどおり大盛りの料理。
おばさんたちも俺専用に大皿を買ったほうがいいのでは?と検討したらしいが結局この大盛りに落ち着いている。
さて適当に飯を食ったら一夏を迎えに行くか……
そんなことを考えているとシャルロットが話しかけてくる。
「ソウ、もう準備終わってる?」
「あ?ああ。プールだろう?昨日の内に準備は終わってるよ。」
「そっか……ねぇ一緒に回らない?」
「うん?いいぞ。初めからそのつもりだし。」
俺がそう言うとうれしそうにしながら飯を食べ続けるシャルロット。
しかし…俺のせいで彼女として名乗らせられないんだよなぁ…せめて国際的なバッシングさえなければなぁ…と何とかできないか考える…
まぁ…極端な話しシャルロットがそれを気にしないんだったら問題は無いんだろうが…俺が気にしてしまう。
なんというか…俺って結構わがままだな、と考えながら適当に話しながら飯を食べ続けるのだった。
食事を終えた後部屋に戻ると一夏がベットの上で座りながら目を閉じている。
なんというか…かなり集中しているな…試してみるか。
俺は自身に出せる限りの敵意を一夏に向けてみる。
一夏はピクリと反応した後はっとして俺の方を見る。
「………奏か…」
「おい、また暴走しかかってるんじゃないか?」
「い、いや。今のは単にびっくりして言葉が出なかっただけだ。意識もしっかりしてるよ。」
「……ならいいんだけどさ…とりあえず訓練の方はどうなってるんだ?」
「なんというか……先生から今居合いを教えてもらってるんだ…」
「居合い?いや…まああの人なら出来てもおかしくないか…」
そういえば千冬さんも居合いを使うんだっけ?
それなら師匠が使えてもおかしくないか…まぁ使えなくてもおかしくは無いけどな…
しかし一夏はどこか納得していないようだった。
「どうした一夏?なんか納得してないみたいだけど。」
「いや…このままじゃ俺千冬姉と同じ戦い方になりそうでさ…」
「あ~…そういやお前の目標はお前として千冬さんを超えることだもんな…」
「ああ、でもこのままだと…」
まぁ一夏も必要なことだと思っているから文句も言わずに訓練をやっているんだろうが…
でも待てよ?よくよく考えてみれば…
「一夏、お前後で俺にも柳韻さんの居合い見せてくれよ。」
「え?どうしてだ。」
「いや、本当に千冬さんの居合いと同じなのか確かめたくってさ。」
「?どういう意味だ。」
「俺の感覚なんだけどさ、お前って戦う時はなんというか炎ってイメージなんだよ。」
「ああ。」
「でもさ、千冬さんの試合とか見たときの俺のイメージって水なんだよな。って言っても普段は波紋って感じで切るときだけ刃が出るって言うか…ウォーターカッター?って感じ。」
「ウォーターカッターっていうのはともかく水っていうのは納得できるな…」
一夏も半分はわかってくれたらしくうなずく。
それを確認した後俺は話を続ける。
「でさ、柳韻さんもそれは十二分にわかってると思うんだ。だったら何か違うことを考えてるんじゃないか?それの確認をかねて見てみたいとおもってさ。」
「……そうか…ちなみに先生の戦い方のイメージは?」
「……全力を見たことが無いからわからないけど…今のところは刃。鋭くて、でもなんというか温かい感じ?」
「……俺の暴走の時は?」
真面目な顔をして一夏がたずねてくる。
やっぱり今まであまり表に出してなかったが…一番あれを気にしていたのはこいつなんだよな…
あの事件の後ISの訓練、柳韻さんとの訓練、自主練……今のところ一番訓練の密度が濃いのは一夏だろう。
そして皆それを心配している。
だからこそこうやっていろいろと一夏を積極的に遊びに誘っているらしい…
まぁ各自それぞれに動いているんだがな…
「お前の暴走時は……同じ炎だ。ただし自分の体まで焼き焦がすような炎だけどな。」
「……どこまで行っても炎か…」
「まぁ…同じお前だしな。だから今日はプールにでも入って鎮火させて来い。」
「…はぁ…真面目に話してたんだけど?俺。」
「真面目に考えるだけ無駄だ。俺のイメージなんてお前の役にはたたないよ。」
そう言って笑いながら背中を叩く。
一夏のいいたい事はわかる…それに俺は嘘もついた。
確かにあの時俺は一夏を自身をも焦がす炎のように見えた。
…それと同時にアイツがまるで機械のようだと感じてしまった。
だがこれは言う必要は無いだろう…あまりにも俺のイメージでこいつを不安にさせても仕方ない。
そう考えて笑いながら集合場所に向かうのだった。
プールに向かうバスに揺られながら俺は眠っていた。
今朝の訓練、あれは予想以上に体力と精神力を使ったのだ。
さらに言うと一歩間違えば最悪の事態になりかねないという緊張感もあってかなり気を使った。それでもさらに細心の注意を払わなければ…
と考えながらやっていたのだ。かなり疲れていた。
そんな状態で長時間バスに揺られつい眠ってしまったのだ。
しばらく眠っていると肩を叩かれる。
「ソウ着いたよ、起きて。」
「……ああ?……おはよう……他のみんなは?」
「先に行っちゃたよ?早く降りないと。」
そう言ってシャルロットに手を引っ張られる。
さて…現在俺を見ている目線は2つ…誰か解らないが学園からずっとこの調子だ。
……まぁ…だからどうしたって話しなんだが。
とりあえず一夏たちと集合する。
だが……雰囲気はなぜかかなり緊迫している。
何があったんだ?
「おお、どうしたの皆。一夏、何があった。」
「いや…あれを見た瞬間突然皆喧嘩ごしになって…」
「アレ?」
そう言って指差された方向を向くと一枚のポスターがあった。
なになに…『カップルでの入場者は料金割引と浴衣の無料レンタル券をプレゼント』……
これが原因か。
いやまぁ…こいつらは金のことが問題じゃなくて『一夏とカップルで入ること』の方が重要なんだろう。目線で火花が散りそうな雰囲気である。
「……嫁をプールに誘ったのは私だ…」
「あら?一番最初に一夏さんから誘われたのは、わ・た・く・し・でしてよ?」
「それはあんたが一番目立つところに居たからでしょうが…」
「……埒が明かないな…じゃんけんの一発勝負でどうだ?」
そういうと全員凄まじい気迫で構える……アホらしい。
「シャルロット、簪先に行こうぜ。」
「え?皆さんは…」
「一夏に任せた。簪ちゃんの分は俺が払うからさ。」
「え?だ、大丈夫ですよ!!自分の分くらい自分で払います!!」
「ちょ、ちょっと奏!?」
と助けてほしそうな目線で俺を見る一夏。
俺は笑顔で声を返す。
「一夏、がんばれ。」
「お、オイ!!」
「行きますわよ!!」
「来い!!」
「最初は…」
「グー……」
「「「「ジャンケンポン!!」」」」
その声を無視しながら俺は二人をプールに向かった。
後ろからまた「あいこで…」と掛け声が上がっている。
まぁ…どうでもいいか。
「いらっしゃいませ。三名様で?」
「えっと…カップルイベントってどうなってます?」
「はい、お客様の内どちらの方が付き合っておられるので?」
「………女性二人の方が―――」
「奏さん…」
簪から注意がかかる。
まさか簪から注意されることになるとは…
俺はごめんごめんと笑いながら振り向きながら謝る。
シャルロットはやれやれといった感じで笑っており簪は顔を赤くしながら怒っていた。
「もう、駄目ですよ?そんなことしちゃ!!」
「つい…」
「ついじゃないですよ!!」
と簪から叱られる。
店員さんもクスクスと笑っている。
外からセシリアの歓声が聞こえる。セシリアが勝ったのか…
いつまでもここでたむろしても仕方ないか。
「えっと、俺とこっちの方がカップルです。」
「ではこちらの無料券のほうをどうぞ。」
「どうも、じゃあ料金払って先に行くか。」
と言い料金を払って一夏たちを待つ。
建物内に入ってきた一夏たち、セシリアは笑顔で一夏の腕に抱きつきながら一夏をひっぱている。他の三人はうらやましそうにそれを眺めている。
「いらっしゃいませ。5名様で?」
「はい、あの…カップルイベントの方は…」
「はい、お客様の内どちらの方が付き合っておられるので?」
そうセシリアが言うと店員さんが返事をする。
セシリアが顔をぱぁっと明るくした後に声を返す。
「わたくしと――」
「いや、誰も付き合ってませんよ?」
「「「「「………」」」」」
唖然とする店員と四人。
特にセシリアなんて完全に固まっている。
お前…何のために四人がああまでしてジャンケンしたと思ってるんだ?
シャルロットと簪も固まってるし…俺も頭が痛くなる。
「あ、あの…一夏さん?」
「嘘を言っちゃ駄目だろ?こういうのって。」
「い、いえ…確かにそうですが……」
「そ、それもそうね…正直に普通の料金で払いましょう。」
鈴があわてて流れを引き戻す。
確かにこのまま話しても一夏がセシリアの死体蹴りをするだけだ…
その後一夏はセシリアから烈火のごとく怒られたのは言うまでも無いだろう。
一夏はそれでも『嘘をつくのは駄目だろう?そういうことをするとこういうイベントは成り立たないんだしさ。』と笑顔で言い返す。
確かに間違ってない、こういうのはお客さんの善意で成り立ってるようなものだからな。
お前の言ってる事は間違ってない……だが…セシリアの気持ちをもう少し考えてあげよう。
そんなこんなで俺たちはプールについた。
まぁ結局一夏はセシリアに対してしばらく二人だけで一緒に遊ぶことになったらしいが……
確かに当初のカップルの真似事よりはいい目を見ているんだが救われない気がするのはなぜだろうか……
しかしそんなことも関係無しにプール内はかなりにぎわっている。
流石に新しいだけはあってかなり綺麗だ。
それに……アレはジェットコースターか?なんというか…プールというより遊園地だな…ウォータースライダーなんてかなり長いな。
俺が一夏と一緒に辺りを見回しているとこちらにやってきたシャルロットに手を引かれる。
「ソウ!!早く遊ぼうよ!!」
「ちょ!?待て、あわてなくてもプールは逃げん!!」
「ソウが逃げるでしょ。」
「逃げないよ!?」
そういうがシャルロットは俺を引っ張り続ける。
一夏は俺に手を振ってやがる。
なんか海の時と立場が逆転したな。
まぁこういう時ぐらい二人で遊ぶか。
そう考えてシャルロットと二人で遊ぶ。
一緒に騒ぎながら泳いだり、二人でウォータースライダーに乗ったりした後に最終的に流れるプールで流されていた。
シャルロットは浮き輪に乗りながら流され俺は仰向けになって浮かんでいるだけだ。
「あ~……動かなくても流されるって楽で良いわ…」
「ソウ、そんなに疲れて…昨日やっぱり無茶したんじゃないの?」
「いや、今朝の訓練…やりすぎた。」
「?普段からやってるんじゃないの。」
「普段の訓練を1だとしたら5はやった…なんていうか…調子が良すぎてそのままずるずると…」
「……プールのこと忘れてたでしょ。」
「……面目ない。」
実際は覚えたいたのだが訓練の時には完全に頭から抜けていた。
そういう意味ではシャルロットの言ってることは間違ってない。
シャルロットに怒られていると視線を感じる……
こちらに誰か気が付いたな…俺はシャルロットを引っ張り人ごみにまぎれ影に隠れる…
シャルロットは何をしているかわからない顔をしているな。
「どうしたの?ソウ。」
「ちょっと待ってな…いた。」
「誰が?」
「一組のメンバー。」
「……え!?」
そう言ってシャルロットは俺の指差した方向を見る。
そこにはバナナボートらしきものに乗っているのは…のほほんさん、鷹月、谷本、夜竹か……他にも居ると見て間違いないな…のほほんさんにいたっては双眼鏡まで用意してやがる…
恐らく情報源は…思い当たるところが多すぎて判明しそうにねぇ…
下手な話し楯無が簪に変な虫が~みたいな感じでのほほんさんを派遣した可能性だってある…
とりあえずシャルロットに話しかけるか…
「どうする?一応隠れながら遊ぶ方法もあるけど…」
「……ソウはどうしたい?」
「この際もう浴衣着て縁日コーナーに行かない?そっちの方がまだ一組メンバー少なそうだし。それに…」
「それに?」
「泳ぐのはもう結構体験してるからさ、縁日の方が疲れなさそう。」
俺はもう既に福音のときにかなりの時間泳いでいるのだ。
これ以上わざわざ泳ぐのは正直ごめんだ、と言った風に大げさに対応する。
それを見てシャルロットも笑う。
「あはは、それもそうだね。」
「じゃ、着替えた後に集合な。いざとなったら俺の携帯に。」
「うん、わかった。」
そう言ってシャルロットと別れプールを去る。
さて…見る限りこっちの動きはばれてないと思うけど…
と再びのほほんさんの方を見る……あ、簪がつかまってる。
………がんばれ簪、君ならやれる!!
意味もなくそんなことを考えながら俺はプールを後にした。
先に浴衣を借りて縁日広場の方に行ってみると結構人が集まっている。
ある程度見回してみても…IS学園の生徒はいないな…多分。
まぁいざとなったら一夏の周りがアツくて逃げたとでも言えばいいか。
しばらく入り口辺りで待っているとシャルロットがやってきた。
俺を見つけられていないのか俺を探しているようだ。
白い生地に青色の花模様が描かれた浴衣。
山吹色の帯がシャルロットの髪の色の違和感をなくしておりかなり似合っている。
ほぅ…とため息が出そうになるのをこらえながら話しかける。
「お~い、こっちこっち。」
「あ、おまたせ。どう?」
そう言って浴衣を見せびらかすようにくるっと目の前で回ってみせるシャルロット。
すごい楽しそうだな…笑いながら声をかける。
「おお!!すごい似合ってるよ!!」
「本当!?」
「ああ、本当さ。」
「良かった…えへへ。」
そう言ってうれしそうにはにかみながらうれしそうに笑う。
こっちもなんというかくすぐったいな。
さて、そろそろ動くか。シャルロットの手を握り歩き始める。
「じゃあ行くか。」
「う、うん。」
そう言って二人で縁日に向かって歩いていったのである。
恋は炎であると同時に光でなければならない。
~ソロー~
学生時代に本当に一夏見たいなことをした人を見たことがあります。
カップルイベントではなかったんですが……それでも店員さんが唖然としていたのは記憶しています。