インフィニット・ストラトス ~とある青年の夢~   作:filidh

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第八十六話 覚悟………?

簪が何かの覚悟を決めた。

もしかして楯無について何かかしらの覚悟をきめたのだろうか……

しかしだとしたら何故一夏がそこに出てくるんだ?しかも心構えって言ったよな。

具体的にわからないがとりあえず向かってみるか。

俺の頭の中である程度考えがまとまったので周りに話しかける。

 

「えーっと、とりあえず今から一夏の方に向かうってことでいいのかな、簪ちゃん?」

「はい…でも…」

「何か問題でもあるの?」

 

何処か煮え切らない反応を示す簪に首を傾げるシャルロット。

えっと…多分一夏に対して苦手意識っていうか、負い目みたいなのがあるんだろう、

俺がそう思ったと同時に簪がボソボソと話し始める。

 

「私…結構前から織斑くんに対して……避けたり…冷たくしたりしてしまってて…」

「簪、一夏の事が苦手だったの?」

「いえ…嫉妬してたんだと思います」

 

そう言って簪は話し始めた。

 

「初めは…私の事を邪魔して、弐式の開発ができなくなって…嫌いになりました。織斑くんは何も悪くないのに…しばらく経って奏さんが私の手伝いをしてくれて…弐式の開発ができるようになってからも嫌いでした」

「……」

 

吐き出すように、懺悔をするかのように簪は話し続ける。

シャルロットはなにも言わず真剣にその話を聞いていた。

俺も話を聞きながら、周りを警戒した。

簪が自分から何かを話してくれたんだ。

できるだけ聞き続けたいが、ここは通路でいつ人が来てもおかしく無い。

って言っても今のところ近くに人の気配はしない。

 

「…私、初めは織斑くんの事、ちやほやされて調子に乗ってる嫌な奴、って勝手に思って…そんな人に自分のやってることを邪魔されたって……でも、はじめて織斑くんと話した時…勝手な妄想だってすぐ解りました。自分が弱いって認めていて…自分より優秀な姉を前にしても追いかけ続けて居て…ずっと上を見続けて、周りにも明るく接して友達も居て……それにまた、私は嫉妬してました。なんで心が折れてないの?どうしてあんなに遠い目標を目指せるの!?どうして…私みたいに諦めてないのって…」

 

簪は最早目に涙を浮かべて話していた。

しかし嫉妬か…これは俺も気がつかなかった。

せいぜい馬が合わない程度だとおもっていたんだが、結構深かったみたいだな。

 

「…そんな風に考えてしまう自分が嫌で…嫌いになろうって思っても…私が冷たくしても私の事をきにかけてくれて…弐式が完成しそうだって言った時に織斑くん、自分のことみたいに喜んでくれたんですよ?普段あんなに素っ気ない態度の私に……その度にもっと自分が嫌いになって、でも織斑くんのことを認めたくないって思ってる自分が居て…本当に私自身が醜いものに見えて……」

「簪……大丈夫だよ?」

「シャルロットさん…」

「一夏、簪が自分のことを嫌ってる事、とっくに気がついてるし、許してる」

「!?」

「え!?マジ!?」

 

これには俺が驚いた。

あの学年全体から唐変木・オブ・唐変木ズの称号を手に入れたあの織斑一夏が!?

いや、絶対嘘だ。

もしくは誰かが気がついて教えたとかだろ!?絶対!!

俺が人知れず、っていうかあからさまに混乱して居るとシャルロットは呆れながら俺に話しかける。

 

「ソウ…なんでソウがそこまで動揺してるの…」

「いや!?お前…一夏だぞ!?あの一夏がそんなことに気が付くって………いや、だって………おかしいだろ!?本当だとしたら天変地異の前触れか、空から巨大隕石が降ってくるとか、恐怖の大魔王が地底から現れるとかそんなレベルだぞ!?」

「い、幾ら何でもそこまでは…」

「いや!!あいつが気が付いたってことは俺にとっちゃマヤの予言よりも信用できる人類滅亡の前触れだ!!」

「そこまで!?」

 

そういって今度はシャルロットが呆れるようにしながらも驚く。

まぁ、どちらにしても人類滅亡の前触れじゃなかったんだよね、アレら。

しかしこのアホな会話でさっきまでの重い雰囲気は消し飛んだ。

問題はポカァーンとしている簪と話の腰を折った俺に頭を抱えるシャルロットだろう。

俺は驚いた顔をしながら話し始めた。

 

「ま、まぁ。話はそれちゃったけど一夏だったら絶対気にしてないぞ」

「でも!!」

「いや、あいつにとっちゃこの程度の敵意慣れっこなんだわ」

「………どういうことですか」

「一夏の姉さんって言わずと知れたブリュンヒルデ、魔お…千冬さんじゃないか」

「はい…」

「で、その千冬さんの決勝戦での棄権。これも知ってるよね?」

「はい…でもそれが…」

「あの事件の後、千冬さんがしばらく家を空けてる間、あいつにかなりの嫌がらせがきたんだ、知らない人たちからね。ひどいもんだったよ、嫌がらせの電話や手紙ならまだしも壁に落書きから挙句の果てには殺害予告とかも来てたな。その時にさ、一夏結構まいっちゃった時があったんだよ」

 

この時は本当にひどかった。

毎日電話と手紙の嵐。

その大半は千冬さんへの失望云々だったが中には一夏が原因だと決めつけて凄まじい勢いで非難するようなものもあった。

他にも家の前で暴言を吐く人も居たし石も投げ込まれたな。

まぁ、犯罪行為をしたバカはしっかりと捕まったけどな。

 

「そん時に一夏はな、千冬さんに嫉妬してた」

「織斑先生にですか?」

「そう、『俺にもっと力があれば………あいつらになにも言わせないだけ………千冬姉みたいな力が………』って感じで」

「…そのあと織斑君は…どうしたんですか?」

「うーん…そこら辺は直接一夏に聞いてくれ。俺もよくわからないうちに立ち直ってたし。ただあいつなら誰かに嫉妬する気持ちはわかると思うよ?」

「……はい」

「まぁ…とりあえず話の続きは一夏の所に行ってからだね」

 

そう言って簪を促しながら俺はシャルロットと簪と共にアリーナ内に向かった。

 

 

 

 

 

 

アリーナに行くと一夏が鈴と戦っている所だった。

見た感じ………一夏が負けてるな。

ただ鈴も何かに警戒しているな。

なにがあったんだろうか?まぁそこら辺は後で考えることにして近くを見渡してみる。

おっ、残りの三人みっけた。

とりあえず近くに行くとラウラがこちらに気が付く。

 

「奏兄にシャルロットに簪。今から訓練に参加か?」

「いや、僕とシャルロットは付き添いで、簪は一夏に要件がある感じ」

「要件?」

 

そう言って箒が話に入ってくる。

そういや、こいつは簪が一夏に嫉妬してるって知ってるんだろうか?

 

「は、はい………」

「簪……その、もしかしてアレについてか?」

「………はい」

「そうか………」

 

そう言って二人とも苦い顔をしている。

これで確定だな、箒はとりあえず簪の感情に気が付いていたと。

だが一夏が第一の箒が簪の感情を知ってもなにも言わないって………

成長しているのか、それともなにかすでに問題になっていたか…裏があるか。

まぁ出来れば一番最初のやつだといいな、切実に。

一方話が解らないラウラとセシリアは首を傾げている。

 

「奏さん、一体なんの話ですの?」

「あ〜………おっ、そんなことより試合の決着がつきそうだぞ!!」

 

話しづらいから逃げました。

まぁ実際決着がつきそうだしタイミングとしては合ってるわな。

ただし、それにつられて話がそれるかどうかは別問題だ。

実際セシリアとラウラは俺をじと〜っと言った感じで睨んでるしシャルロットと簪は苦笑いしてる。

畜生、一夏だったら簡単に騙されてくれるのに!!

………そっちの方が問題か。

さて、試合の方はというと一夏の方はシールドエネルギーはギリギリ、だが恐らくあと一回、全力で雪片を零落白夜付きで振るうことはできるだろう。

一方鈴はと言うとエネルギーはある程度は残っている、がもらったら最後の一撃必殺の攻撃をかわし続けたんだろう、精神的な疲労感が顔に浮かんでいる。

さて………次の一撃で決まるな。

そう考えていると一夏がゆっくりと構えを変える。

あれは……今朝見たあの……雲母の太刀だったけ?

いや、もっと別の名前だったけ?

まぁ、あの構えをとった。

って、一夏君?あの斬撃は使えないってお師匠さんが言ってなかったけ?

まぁ、実戦で使うわけじゃないからいいか。

一夏の神経が集中しているのが目に見えてわかる………が、時間がかかりすぎだ。

それじゃあ、鈴に攻撃してくださいって言ってるようなもんだぞ?

 

「もらった!!」

「いぃ!?」

 

ドゴォンという音を立てて落ちていく一夏。

シールドエネルギーもちょうど切れてるし…いいとこなしだな。

一夏はなんとか地上すれすれで鈴にキャッチされている。

一夏は地面に激突することなく安堵の息を漏らしていた。

 

「ふぅ…サンキュ、鈴」

「一夏………あんたバカァ?」

 

さすがセカンド幼馴染………っていうか、それは別のネタだ。

しかもこの世界には無いやつ。

まぁ………言いたくなる気持ちはわかるけど。

一夏は一夏で鈴が言いたいことがわかっているのだろう、苦い顔をしている。

 

「ば、馬鹿はないだろう!?」

「いいえ!!バカとしか言いようがないわ!!最後のアレ何よ!?」

「い、いや。あれはだな新必殺っていうか俺の目標っていうか…」

「それで的になって落とされたら意味ないでしょうに…」

 

そう言って大きなため息をつく鈴。

一夏は味方を探すように辺りを見渡す。

箒は頭を抱え、ラウラは腕を組み一夏を睨む。

セシリア、シャルロットは苦笑いしてるし…残念ながら味方はいないようだな一夏。

ガクッと肩を落とす一夏。

さて一夏は帰った来たが訓練はこの後どうなるんだろうか?

出来れば一夏だけ借りられる状況を作りたいんだが………

どうしようかと考えていると箒が口を開く。

 

「セシリア、鈴、ラウラ。済まないが今度は私と付き合ってもらってもいいか?2対2の戦い方で試したいことがあるんだ」

「ええ、いいですわよ。鈴さんとラウラさんはどういたしますか?」

「ふむ…私は構わない」

「もちろん私もね」

 

そう言って四人での戦いが決まったらしい。

一方一夏は首を傾げている。

 

「えっと………俺はどうすればいい?」

「休め。というか朝はお父さ…父との稽古、そのあとで私たちとの稽古しかもほとんど休憩なしだろうが一夏は」

「詰め込みすぎは体に毒ですわよ?少し休憩してくださいな」

「あと簪が嫁に要件があるらしいから丁度いいだろう」

「ということでしばらくやすみなさい!!以上!!」

 

そう言って四人はアリーナの上空へと飛んで行った。

空気を読んでくれたか…………

しかしいの一番に話し始めたのが箒とは。

あいつここ最近成長がすごいな。

ISに関しては一夏には劣るがかなりのペースで成長してるし、精神的な所だと入学当初と比べれば最早別人だ。

まぁ、今だに一夏に関しては素直になれない所が多々あるし意地っ張りだけどな。

としみじみと箒の成長に感動していると一夏がISを解いて近づいて来た。

 

「休め、かぁ………っと。用事ってなんだ?簪」

「えっと…………」

 

覚悟を決めてここに来たはずの簪だったがいざ一夏の前に来ると言い出せないようだった。

ここで俺が手を貸すのはちがうだろうし………

と考えながら横を見てみるとシャルロットは俺が手を出すのではと考えているようだ。

ジト〜っといった効果音がつきそうな目でこちらを見ている。

とりあえずデコピンをしてやろう。

 

「「あ、あの!?あっ、そちらから……」」

 

とハモる二人。

なんだお前らはお見合いでもしてるのか!?

と呆れた顔で二人を見ながらデコピンに涙目で怒るシャルロットを適当に相手をして抑える。

そんなこんなであたふたした二人だが先に簪の方が立ち直ったようだ。

深く息を吸った後真面目な顔で簪にしては大きな声を出す。

 

「お、織斑君!!」

「は、はい!!!」

「っ!?」

 

そしてつられて大声を出す一夏にそれにビビる簪。

………………なに、これ。

漫才でもやる気なのか?

シャルロットのほうは俺が適当に抑えるせいでいじけてしまって、その場でしゃがみこんで「どーせ僕なんて……」とブツブツ言っている。

簪はさらに息を吸った後に一夏に話しかける。

 

「ご、ごめんなさい!!」

「え!?………なにが?」

「へ?………あ」

 

『あ』じゃねぇよ、『あ』じゃ。

簪はさらにテンパり出したし、一夏は一夏でそれを見てオロオロしている。

空中では四人とも聞き耳を立てているしシャルロットは絶賛落ち込み中だ。

一夏は目の前で混乱する簪を見ているせいか落ち着きを取り戻したようだ。

 

「え〜っと…簪。俺の方から話してもいいか?」

「え?あの………」

「多分だけどさっきのごめんなさいって簪が俺のことが嫌いって」

「一夏…そこは簪に言わせてあげてもらえないか?」

「奏…ってお前なにしてるの」

 

と言ってこっちを見た後に顔をしかめる一夏。

ちなみに現在俺はいじけたシャルロットのご機嫌取りのためにシャルロットの頭を撫でている。

シャルロットはそれで結構機嫌がなおっている。

この程度のことで『エヘヘ…』と言いながらご機嫌になるなど…………ちょろいやつよ。

俺は真面目な顔で話すを続ける。

 

「見て解らないか?」

「ああ、全く」

「そんなことより簪の話をしっかりと聞いてやれ。かなりの覚悟でここまできたんだからな」

「あ、ああ……でなにしてるの?」

「…………シャルロットの機嫌取り?」

「…………なんでそんなことになったんですか?奏さん」

「さぁ?」

 

気が抜けたようにする二人。

上空の四人もがっくりしている。

まぁこれで一回仕切り直しになっただろう。

簪は再び一夏に向かう。

 

「すいません…見苦しい所を見せちゃって…」

「い、いや。俺も混乱してたし…で、謝りたい事ってなんなんだ、簪」

「…私、織斑君のこと嫌ってました。」

「………ああ、知ってたよ」

 

さっきまでの雰囲とはうってかわって真剣な雰囲気だ。

マジでか!?と叫びたくなったがここは我慢した。

だがここに弾か数馬が居たら恐らく三人一緒に叫んで居ただろう、確実に。

 

「どうして知ってたんですか?」

「簪が俺を見てくる目が昔見たことがあったからさ…」

「…………誰の目か聞いても大丈夫ですか?」

「ああ、俺の目だよ。一時期の千冬姉を見ている時の俺の目」

 

そう言って一夏は懐かしそうに話し始めた。

さてこっから先はあまり聞くべきじゃ無いだろうし聞こえない距離まで離れるか。

上を見ると4人とも下に降りてISを解いている。

まずあの4人がこっちに来ないようにとめるか…

そして俺はすでに立ち直って、さっきまでの行動を恥ずかしがっているシャルロットの手を引っ張りながら距離を取るのだった。

 

 

 

 

 

 

あまり人を理解できるとは思わない。わかるのは、好きか嫌いかだけだ。

 

                           〜E・M・フォースター〜

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