インフィニット・ストラトス ~とある青年の夢~ 作:filidh
俺と一夏はとりあえず寮に向かった。
寮に向かう最中にもすれ違う女子生徒はこちらを見てくるし何かひそひそ話していた。
だが俺はもう既に開き直りこちらを見ながらすれ違う相手には軽く手を上げ『やぁ』と声をかける程度には既にできるようになっていた。
「奏…お前慣れるの早くないか?」
「もう一夏も開き直っちゃいなよ。そうしないとストレスたまるよ。」
「…もう既に部屋の相手のことを考えるとストレスでどうにかなりそうだよ……」
そういや一夏の最大の心配はそれか……
「あ~そっか……相手のほうが認めてくれないかもしれないか…」
「それなんだよなぁ……はぁ…」
「まぁ、追い出されたとしたら僕の部屋に来いよ。先生にばれない限りは泊まらせてあげる。」
「………今日から泊まって良いか?」
「流石に一度部屋に行ったほうが良いんじゃない?」
完全に一夏はネガティブになっていた。
そりゃどんなイケメンでも知らない男と生活しろって言われて、喜ぶ女性がいるとは想像しにくい。
まぁ正直相手は誰か少しは予想付くけどね。でも『俺』は知ってるから予想できるけど『僕』はまだその情報知らないし、どう伝えようか……
考えているうちに俺は自分の部屋に付いた。一夏は気落ちしたまんまだ。……仕方ない、ちょっと元気つけておくか。
「お、一夏。僕ここが部屋だから何時でも来なよ。あとガンバ。」
「……おう。」
「あとこれは僕の勝手な予想だけど良いかい?」
「どうした?」
「千冬さんがお前をわけのわからない相手と一緒にすると思うかい?それにあの……シノノさんだっけ?知り合いなんでしょ。」
「篠ノ之(シノノノ)だ。あいつは俺の幼馴染だよ。」
「じゃあ彼女なんじゃない?千冬さんも知り合いとなら一緒にしてもいいと考えそうだし。」
「そっか……そう言われたら、なんかそんな気がしてきた。」
「全部僕の予想だから本当かどうかはわからないけどね。」
「いや、でも少しは希望はでてきたよ。サンキュ、奏。」
そう言って一夏は自分の部屋にへと向かっていった。
俺はそうだな……トレーニングの前にノートをまとめなおそう。
そう考え荷物を広げずとりあえず筆記用具と新しいノート、更に既に大量に消費されているノートを取り出した。
まとめ始めてから3分と経たない内に部屋のドアが叩かれた。
おそらく一夏だろうと思い鍵を開けるとすごい勢いで部屋に入ってきた。
「お、おい、一夏。どうした!?」
「た…助けてくれ奏!!殺される。」
「……警察署へどうぞ?」
「冗談言ってる場合じゃないんだよ!?」
「落ち着け、僕にも解る説明を頼む。」
「あ、ああ。実は~~」
と話を聞き要約したら『ルームメイトの幼馴染にラッキースケベした後に挑発しちゃった♪』といった感じだった。
弾がここにいたらおそらく『また一夏か!!』と声を上げていただろう。
女性関係のトラブルは一夏の専売特許だったしな。
さてこれに関してはどう収めたものか……このまま一夏を放り出すのも目覚めが悪いなぁ…
よしある程度作戦は立てたしこれでいこう。
「まぁ篠ノ之さんも今は怒ってるだろうから、しばらく僕の部屋に居ろよ。」
「ああ、すまない。」
「10分位したら一緒に行ってやるから謝りに行こう。」
「ああ、悪いな奏。ありがとう。」
「気にしなくていいさ。そんな事よりノートをまとめるの手伝ってくれ。教科書が5冊もあるから用語を探すだけでも大変で仕方ないんだ。」
「………後でノート見せてくれない?」
「…後で何か奢れよ。」
「OK。じゃあまず何から調べればいい。」
「ええっと、まずは~~」
こうして復習をしながら俺たちは時間を潰していた。
「……おい、一夏。」
「どうした?」
「君の幼馴染は修羅か何かなのか?」
一夏の部屋の前に立ちながら俺は唖然とする。
ボコボコにゆがんだ入り口。そして人力で覗き穴まで作られていた。
一夏は少し口を引きつらせながら話し始めた。
「あいつ、剣道やっててな、木刀でやったんだ。」
「木刀!?……よく生きてたね。」
「まぁ手加減してくれたのかもな。あいつ中学生時代全国大会で優勝もしてるんだ。俺なんかがかわせるわけが無いさ。」
「いや…お前がそういうならそうなんだろうけどさぁ……」
俺は再び扉を見る。『剣道やってたら女性でも綺麗にドアに穴を開けられます』なんて普通無理だろ。
何だ?剣道じゃなくて『ケンドー』なのか!?『テニヌ』みたいな感じで『テニス』とは別物ですみたいな。
そう思いながらも俺は恐る恐る扉に近づきノックをする。
「篠ノ之さ~ん…同じクラスの風音奏で~っす…」
「………何の用だ。」
「一夏を連れて謝りに来ました。入ってもいいですか?」
「……ドアは開いてる。」
「おじゃましまーす……。」
と中に入る俺、盾にしようとする一夏。入るとやはり部屋の中も悲惨だった。いたるところで物は壊されあげく床に木刀が突き刺さっていた。
箒はベットの上に体育座りをしながら小さくなりこちらをにらんでいた。
「……す、すげぇ…」
「ほ、箒?ごめん。大丈夫か…」
「………」
反応は無い……まあ彼女が怒る理由もわかるが正直これはやりすぎだ。
さて、どうしたものか……一夏の幼馴染だしなぁ、一肌脱ぐか。
「悪い一夏。一旦僕の部屋に行っててくれないか?」
「え?どうして?」
「ちょっと篠ノ之さんとサシで話したくてさ。頼む。」
「………わかった、でも箒の事をあまり…」
「安心しろって、別に説教するわけじゃないんだから。な、信じてくれ。」
「…おう。箒、本当にごめん。」
そう言って一夏は部屋を出た、あいつは素直だから部屋の前で聞き耳なんて立てないだろう。
「さてっと。一応自己紹介しようかな。同じクラスの風音奏だ、好きに呼んでくれ。」
「……篠ノ之箒だ。呼び方は箒でいい。」
「そっか。じゃあ箒さん、ちょっと木刀見せてもらってもいい?」
「……いいぞ。」
「ありがとう。これ、結構重いね……」
「……鍛錬にも使うからな。」
「ふ~ん、こんな感じ?」
「……ぜんぜん違う。」
俺がそういいながら離れて木刀を振るう。対して箒は俺が何を言いたいのかわからずただにらみながら返事をしていた。
「あはは、僕は剣の才能は無いんだろうな。」
「………」
「でもこれくらいはいけるかな?」
「……?」
そう言って俺は木刀を自分の頭めがけて振りながら頭を打ち付けた。箒もびっくりしながら俺に駆け寄る。
俺は床に座り込み木刀を置き頭を抑えた
「何をしているんだ!?一体!?」
「イッテェ!!マジでイテェ!!うわ、ちょっと血が出てる。」
「ちょっと待ってろ、救急箱がある!!」
箒はあわてながらも救急箱を取り出して手当てをしようとしてくれた。
「ありがとう、使わせてもらうわ。あ、手当ては自分でやるよ。」
「そ、そうか。でも突然何をやるんだ!!」
「うん?……実験?」
「あんな事の何が実験だ!!」
「僕みたいなへなちょこの木刀で人を怪我させられるか。」
「!!」
「いや~木だからってこれ、本当に危ないわ。ちょっとなめてた。」
「……」
箒は俺の言葉に何か思うことでもあるのか俯きながら話を聞く。
俺は自分に手当てをしながらかまわず話を続ける。
「僕みたいなへなちょこですら殴れば血が出るんだ。全国大会優勝者の太刀筋なら下手すら大怪我じゃすまないんじゃないか?」
「ッ……そんな事はわかってはいるんだ!!」
「ああ、別に責めてるわけじゃないんだ。多分さっきの出来事は我慢できなかったのと突然の事で混乱しただけだと思うし。」
「………」
「まぁ一夏はあんな奴だけどさ、デリカシーがあるとは言いがたい上に、話を聞いて無いのかと思うような時もある。極めつけに女心がわからないどころか、お前わかってやってるだろ?って言いたくなるような行動をして女性を怒らせてるときもあるくらいだ。」
俺は頭に包帯を巻きながら話を続ける。
箒はいまだに俯いたままだ。
「……でも……あいつは…」
「いい奴なんだよな。そこは多分箒さんのほうが知ってるでしょ?」
「……ああ。」
「だからさ、今回の事も確実に悪気が会ったわけじゃないんだ。」
「……それもわかっている。」
「うん、だからさ。今度こういうことが無いとは言い切れないじゃないか、あいつ。……ごめん、多分確実にあるわ。あいつの事だし。中学時代もそうだったし。」
「……そうなのか?」
「うん、僕の知る限りでも両手足の指じゃ足りないほどある。」
「そ、そうなのか。」
「でもさ、今度から注意するときは口と最悪手だけにしてやってやれないか?ビンタとかチョップとか。」
「………善処する。」
「よし。治療完了。あ、それと箒さんのライバルは多いから気をつけてね。」
「……なんのだ?」
「一夏争奪戦。」
「そんな!?一夏に…ブッ!!」
一夏争奪戦という言葉に驚いて顔を上げた箒はおもいっきり噴出した。
目の前には頭どころか顔まで包帯で巻かれた上にどっからだしたかサングラスまでかけている奏がいた。まるで月光仮面である。
さっきまで真面目に諭すようにこちらに話しかけながらこんな事をやっていたのかと箒は思ったに違いない。
俺としては何時までもこんな暗い雰囲気で話すつもりは元々無い。
「あいつ何だかんだでフラグ立てるからな……詳しい話聞きたい?」
「ちょ、ちょっと…待ってくれ。笑いすぎてお腹が……」
箒はつぼにはまったのか笑って腹を押さえている。
うん、いい顔になった。やっぱり女の子は暗い顔より笑顔に限る。
「うん。OKOK。」
「な、なにがいいんだ!!」
ヒーヒーいいながら腹を押さえる箒を尻目に俺は包帯を解いていきながら話を続けた。
「いや一夏争奪戦だけどさ、あいつ基本的にそんなの興味ないって言いながら目を奪われるのは笑ってる女性だからさ。」
「そ、そうなのか?」
いきなりの一夏攻略情報に箒は顔をまじめにして聞き始める。
「そうそう、あいつ自分では気が付いて無いんだけどいろいろと近くで見ていた結果、笑顔でいる女性の方がかわいいって言うんだ。」
「他には何かあるのか?」
「他にはかぁ……まあ好みのタイプは基本的に千冬さんだ。結構シスコンだからな、あいつ。後は…」
「後は?」
「出来るだけ素直にストレートに言葉を伝えること。あいつの言葉の歪曲ぶりは本当に恐ろしいからな。」
「す、素直にか……」
「ま、っていっても僕から見た一夏だしね、これも。積極的にアタックすれば何とかなるさ。ただしやさしくね。」
「……本当か?」
「これは本当。個人的には応援しているよ、箒さんのこと。」
「………ありがとう。」
少しは素直になってるな、よしよし。もう一夏を呼びに行っても大丈夫だな。一応箒に確認を取ってからにするか。
「じゃあもう一夏を呼んでも大丈夫かな?今、多分かなり心配してると思うぞ?箒さんのこと。」
「そうか……後私の事は呼び捨てでいい。」
「お、本当?じゃあ僕の事も呼び捨てでお願い。呼ぶほうはソウでもカザネでもどっちでもいいけどさ。」
「そうか、では奏と呼ばせてもらおう。」
うんうん。かなり明るくなった。じゃあ仕上げといこう。
俺は扉を開け顔だけ室内に入れて箒に声をかける。
「後、最後に箒にアドバイス。」
「なんだ?」
「さっきの爆笑してた時の笑った顔、すごくかわいかったからあれを一夏に見せればあいつもイチコロさ!!」
「な!?」
「じゃ、お休み~。」
何かを箒に言われる前に俺はドアを閉め自身の部屋に向かった。
さて部屋に戻ったら一夏を自分の部屋に向かわせよう。
その時に必ず謝る事と一言『かわいい』といわせる事にしよう。
きっとお互いにとっていい時間になると思うしさ。
そういたずらをするような顔をしながら彼は自身の部屋へ向かっていった。
愛されることは幸福ではない。愛することこそ幸福だ。
~ヘルマン・ヘッセ~
ということで箒さんとすこしなかよくなる話でした。
個人的には箒さんは自分の感情が抑えられない子と把握していたので、誰かが諭してあげれば言葉が理解できない子ではないと考えています。
箒さんもISのせいで家族と離れ離れになっていた上、普通では無い生活をおくっていた為そういうこと経験する機会もしっかり教えてくれる人がいなかったのでは?と考えこの小説内ではその考えを元に書かせてもらっています。
では今回も読んでいただきありがとうございました。