インフィニット・ストラトス ~とある青年の夢~   作:filidh

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第十三話 父親の記憶

試合が終わった後の更衣室、今頃一夏とセシリアが戦っているのだろう。

俺は制服に着替えながら考えた。先ほどまでおっさんに謝られながら説教されると言うなんともいえない行為をされていて着替える時間が無かったのだ。

試合が終了しアリーナの控え室に戻るとそこには鬼の様な、いや鬼の千冬さんが居た。

千冬さんから指導(物理)を三回受けた後説教をされたのである、途中一夏の試合が開始されなければ恐らく未だに説教をされていたのではないだろうか……多分間違い無い。

鬼が居なくなった後続いてはおっさんの番だった。

『すまん!!』と言いながらの拳骨、これは殴ったことへの謝罪だろうか、それとも殴りながらISについて謝ったのだろうか。間違いなく後者だろう。

その後おっさんはISをしっかり仕上げられなかった事への謝罪7割、俺が自身を大切にしなかったことの説教3割で話し始めた。

最後におっさんは『今回は俺が無茶させちまったところもあるからあまり強くはいえないが次にこんなことしたらただじゃおかねぇからな。あと赤銅はしっかりと仕上げるから安心しろ。あと今回の事は本当にすまなかった。』と言いながら研究所に帰っていった。

しかし今回の事について、これはどう考えても俺が悪い。

言うなればISの不調を感じた時点で試合を棄権していればよかったのだ、そうすれば千冬さんに説教される事もおっさんにあそこまで言われる事は無かったのだ。

おっさんは自身のせいもあると言っていたがまったく関係が無い。

これは俺のわがままだったのである。セシリアからあの時逃げればセシリアの悩みを解決できない、俺はそれがいやだったのだ。

千冬さんも俺が無茶をした理由が俺のわがままだと解っていたからあそこまで怒ったのだろう。

着替えが終わりもっとうまいやり方は無かったのだろうか…そう考えていると更衣室のドアがノックされた。

 

「一夏か?」

「いえ……わたくしですわ。」

「ムラサメさん?」

「……いったい誰ですの!?セシリア・オルコットですわよ!?」

 

と言いながらセシリアはドアを開けて入ってきた、着替え中ならどうするつもりだったのだろうか?

まぁ気にせずに話を進めよう。

 

「二試合目も終わりましたか?お疲れ様です。結果は?」

「……わたくしの負けですわ…試合上は一応勝ちですが、ただの初心者にあそこまで追い詰められるなんて……」

 

と悔しそうにするセシリア。

あ~やっぱりそこは負けちまったか、一夏。でも追い詰められたって事は原作以上に相手のシールドエネルギーを削ったんだろう。

一応いい方向にはいけたのかな?そう考えているとセシリアは話続けた。

 

「一夏さんに聞きましたわ、あなたが今までもそういう風にしてきたことも。そして今回もわたくしの事を気にかけながら戦っていた事も。」

 

一夏の野郎、ばらしやがったな!?……あいつにおごりをさせる時ただじゃ済まさんぞ!!いつもの二倍は食ってやる。

そう一夏の財布を破産させる事を俺は静かに心に決めた。セシリアはそんな事はまったく知らずそのまま話す。

 

「なぜあなたはそこまで人を気にかけますの?それにあれほどあなたの事を馬鹿にしていたわたくしの事を!?」

「う~ん…だってオル…セシリアさんも気にかけてくれたじゃですか?僕の事。」

「……何の事ですの?」

「ほら、僕が初日に射撃場で練習していた時、あの時セシリアさん言ってたじゃない。『せっかくあなたのことだけは見逃してあげようと考えていましたのに』って。それって巻き込まれたようになってた僕のことを気にかけてくれてたんじゃないんですか?」

「……それは…でもわたくしはそれ以外にもいろいろとあなたに失礼な事を…」

「出合って1週間程度で何も失礼な事をしない人間が居るのなら教えてもらいたいくらいですよ。それにせっかくクラスメイトになったんですもん、仲良くしないと損でしょ。」

「………ふぅ、降参ですわ。それがあなたなんですね。」

「そう、これが僕の生き方ラブ() アンド() ピース(平和)さ。」

 

お互いに笑い会うとセシリアはふと真面目な顔になった。

 

「奏さん……一つだけ意見を聞かせてもらえませんか…」

「どうぞ。」

「これは私の父の話なのですが…」

 

そう言ってセシリアは自身の身の上話をしてきた。

簡単に言うと自身の父はとても男らしいとは言えず、いつも母に媚を売っているような印象しかなかった。この父親のせいで男に対しての偏見を持ち、両親の死後擦り寄ってきた連中のせいで気の張った生き方をしなければならなかったらしい。

身の上を話し終えた後セシリアは話を続けた。

 

「男の人に対する偏見と気を張り続けるのは一夏さんと奏さんのおかげで消えましたわ、そういう風な男性も居るとわかりました。でも…」

「自分の父親についてはまだわからないから似たように思える僕の意見が聞きたいって事?」

「……そのとおりですわ。」

「う~ん…僕は君のご両親には会った事が無いから断言は出来ないけどそれでもいい?」

「!!何かわかりましたの!?」

「い、いや、解ったってほどの事じゃないんだ。ただ君のお父さんみたいに僕が行動するとしたら、多分よっぽど君のお母さんの事が好きだったんじゃないの?」

「……どういうことですか?」

「いや、君のお母さんがいくら立派だって言っても足を引っ張ろうと難癖つける奴はいくらでも居るじゃないか。」

「………確かに居るでしょうね…」

「でも横にどうしようもない男が居れば攻められるのは基本的にその人だ。多分いろいろ他の大人たちにも言われてたんじゃないの?」

「……ええ、言われておりましたわ。」

 

セシリア自身の記憶にもある。大人たちが影で自身の母親の事を『あの女は男の趣味が悪い』と言っていたり、『あの男こそオルコット家をあらわしているな』『あんな男を婿入りさせるとはオルコット家は頭がおかしいのでは?』などと馬鹿にされていた。

奏はそのまま話を続ける。

 

「多分だけど君のお父さんはお母さんが悪く言われるのが嫌だったんじゃないの?自身ではどうやっても君のお母さんより優秀ではいられない、いわれの無い悪意から守る力は無い。ならいっそうの事役立たずを演じていれば非難や馬鹿にされるのは自分だけになるんじゃないか、ってね。」

「そんな!?……」

「でも君のお母さんだって優秀な人なんだろ?なら本当に役立たずな人を、噂になるようなところに出したりすると思う?そうしたら馬鹿にされるのは自分の家なのに。」

「………」

「だとしたら多分、きみのお母さんもお父さんに頼っていたんじゃないかな、自身を守るためにどこまでも誰からにも馬鹿にされることを選んだ男性の事をさ。結構苦しいんだよ、ずっと馬鹿にされ続けるって。僕もそんなことになるくらいなら説得して誤解や悪口を消そうとするし、それを我慢し続けるのは今の僕には無理だ。」

「………そうなのでしょうか…」

「いや、あくまで可能性の話だよ。本当にそうだったのかは、わからない。でも僕はそう感じたって話さ。」

「……ありがとうございますわ。話を聞いてくださって。」

「いえいえ~困ったときはお互い様ってことで。」

「あと…この話は人に言わないでもらってもよろしいでしょうか?」

「何の話でしたっけ?僕これから織斑先生に提出しなくちゃいけない反省文で頭が一杯で何にも覚えていませんね。」

 

そうとぼけた風に言うとセシリアはくすくすと笑い出した。

さてこの調子なら一夏の所に言っても大丈夫そうだな。

 

「さて、じゃあ一夏の方にも顔を出すとしますか。セシリアさんはどうします。」

「!?え…あ、わたくしのことは呼び捨てで結構ですわよ、奏さん。」

 

………今の反応、一夏の所に行くと言った瞬間の顔、そして露骨な話題の変更…間違いないな。

あいつどこまで撃墜数を稼ぐつもりなんだ!?

試しに俺は真面目な顔でボソっと言葉を発する。

 

「………ほれたな。」

「!?え!?ち、違いますわ!?わたくしは…でも嫌いって訳でもなくて!!ただですわね、一夏さんのことが!?」

「………僕は既に一夏を振り向かせるために箒に少しだけ協力している。」

「!?なんですって……」

 

盛大にあわてた後俺の言葉を聞いてシシリアも真面目な顔をした。

これもう白状してますよね。まぁ話を続けよう。

 

「セシリア、お前が一夏のことをどうとも思っていないなら僕はそれでもいい。だが仮に一夏に対してしっかりと好意があるのなら協力するのもやぶさかではない…」

「……何を要求しますの?」

「いや、要求は一切無い。ただ本当に一夏のことが好きかどうか宣言してくれれば良い。」

「……いいでしょう、確かにわたくしは一夏さんのことが…す、好きですわ。」

「認めるんだな?」

「認めますわ。」

「何を認めるんだ?」

 

と声をかけながら一夏が更衣室に入ってきた。

とたんにセシリアは顔を真っ赤にさせた。

俺は気にせず話しかける。

 

「おう、一夏お疲れ。どこから聞いてた?」

「いや、セシリアの認めますってとこだけ。」

「ああ、うん。ただ僕と仲直りしてただけだよ、お前の方はどうなんだ。」

「おう、試合の後に少しだけ話してお互いに謝りあったさ。な、セシリア。」

「は、はぃ!?」

 

完全に不意打ち過ぎて感情がパンクしかけてるしてるなこれ。

多分恥ずかしいのを我慢して俺に言ったことと、突然の一夏の襲来に聞かれていたのではと言う恥ずかしさと少しばかりの期待。そして、まったく聞かれていなかったと言う落ちが一挙に頭の中に入ってきて一杯一杯なのだろう。

目がぐるぐる回っているようにも感じる。よし、さらにいじろう。

 

「そういや一夏、お前セシリアになんて謝ったんだ?正確に話せよ。」

「いや、セシリアが男の事を馬鹿にしてたのは今までろくな男が居なかったからだって言ってからさ、『じゃあ俺がしっかりとした男であり続けるから、それを近くで見続けてくれ』そうすればしっかりとした男も居るってわかるし。あとお前との話でセシリアが無理してるって感じたからさ『これからは周りの人を頼ってもいいんだぜ?俺も何かあれば必ずセシリアを助ける、約束する』って約束を…奏?どうした?」

「…………」

 

こいつ…やはりすごいな……いろんな意味で尊敬する。

たぶんこいつとしては『俺みたいな奴でもそういう風にしていられるんだ、他にもいい男は一杯いるさ。』的な台詞と『周りを頼ってもいいんだぜ』って感じの台詞を言ったつもりなんだろう。

だが、今までろくな男に会っていないで一人でがんばってきたという彼女からしてみれば、他の男からのその発言はほぼ告白みたいなものじゃ……

横目でセシリアを見るとその台詞を思い出したのか完全にパンクして意識が朦朧としてる。南無。

とりあえずセシリアを更衣室から出そう、このままここにおいても問題はなさそうだけど。

 

「セシリアさーん…大丈夫ですか~。」

「……はひ…」

「おい、奏。セシリアはどうしたんだ?」

 

お前のせいだよ!?

と言おうと思ったがその前に一夏が動いた。

 

「まさかセシリア!?病気か!?顔が赤く見えるが熱は無いよな?」

「え!?ちょ、いいいい一夏さん!?」

 

といいながらセシリアのおでこに手を当てて真面目な顔を近づける一夏、先ほどよりもさらに顔が赤くなるセシリア…もうどうにでもなれ。

 

「え!?い、ちょ……だ、大丈夫ですわ!!!失礼します!!!!」

 

といいながらセシリアは更衣室から逃げていった……よし、俺は何も見なかったことにしよう。

 

「……なんだったんだ?セシリアの奴。」

「一夏、お前はいつか絶対に大物になる。」

「何言ってるんだ?奏も?」

 

もしくは腹を刺されてNice boatだ。

まぁこの話はもういいや、あまりかかわるとこっちが危ない。

 

「まぁいいや、で一夏、試合はどうだった。」

「もう少しのところでエネルギー切れ。何とか互角には戦えていたんだけどさ…奏は?」

「機体不良でノーゲーム。おまけに千冬さんの説教に反省文。」

「……やっぱり無茶してたのか、セシリアが疑問にしてたぞ?」

「そうか?何にも言われなかったけど。」

「なんか思うところでも有ったんじゃないか?」

「そうなんだろうか?」

 

一夏は少し笑いながらそう言ってきた、何か知ってるな?まぁ詳しく説明したらまたセシリアに怒られそうだし良いか。

 

「まぁ次は負けないようにがんばろうぜ奏。」

「僕は逃げる。敵討ちは一夏に任せた。」

「自分でやれよ。でも鍛錬は続けるんだろ?」

「一応はねぇ~僕IS動かすの苦手だし。訓練あるのみだね。」

「そうだな、俺もがんばらなきゃ…千冬姉の名前を潰すわけにはいかない…」

「……そっか…」

 

他愛も無い話をしながらその後俺たちは着替えを終え、自身の寮に戻っていった。

 

 

 

 

努力する人は希望を語り、怠ける人は不満を語る

                                    ~井上靖~




はい、ということで今回はこれで終了です。
セシパパは友人との微妙なキャラをどこまでかっこよく出来るかの話に出てきたのをそのまま書きましたww
今回も読んでいただきありがとうございました~
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