インフィニット・ストラトス ~とある青年の夢~ 作:filidh
さて俺がシャルロットとその母親の家に泊めさせてもらってから丁度1年…って訳ではないが一年ほど経った今、俺はドイツに訪れていた。理由はと言うとストリートチルドレンの仲間の一人が
「次のISの世界大会がある町だ。俺たち見たいなのでも働いて生活できるかも?」
と言う言葉を聴き、とりあえず目的があるわけでは無かったので付いてきたのである。実際大都市のような町につくと次回のモンド・グロッソ?とか言う世界大会の開催地に選ばれたらしくとても観光客も多くそれにともなうように仕事も増えていた。
だが俺のような戸籍もわからず年齢もわからない、さらに見た目は子供のような奴が雇ってもらえるわけも無くどうしようもなく国内をうろついていたのである。
「金の面では問題は無いが一般生活ができないのはなぁ……」
誰に言うわけではないがつい口から声が漏れる。
しかしその言葉に耳を傾けるものは居るはずも無く、また目的も無いため仕方なく現在訪れている小さな町をうろついていた。
この世界に来てもう4年ほどの月日が経ち身長も少しずつ伸びている。(むしろこのまま身長が伸びなければどうしようかと……)見た目はまだ子供と言った感じだがもう少し成長できれば青年としてある程度の仕事にはありつけるだろう。そうすれば自分の意思で自分のことを守ることもできるし、何よりあの通帳もあるためもしかしたら元の世界よりもいい生活がおくれるかもしれない。
まぁ全部仮定の話なのでその時にならなければわからないだろう。
ただ問題は時期的にもうすぐ冬だ。昨年はシャルロットの母親のおかげで冬にあまり寒くない地域まで移動できたが今はそんな移動手段は無い。下手をすればまたはじめの年のように森に小屋を作り生活することになりかねない。これはコレで冬を越すだけなら問題は無いのだが、もしなにかかしらの事件に巻き込まれたら助けは期待できないだろう。そう考えるとやはりどこかで職を見つけ何とか冬をすごせるようにしたい。しかしそのためには見た目が……と言ったように考えが堂々巡りしているのである。
はぁ……ため息が出る。もうちょっと見た目が大人びていれば仕事も見つかるのでは?と言ったことを考える11歳児、ただし中身は約30代。
現実世界ではたびたび『子供に戻りてぇ』なんて考えてはいたがこんな展開はノーサンキューである。そんなことを考えながら町を歩き続けるのであった。
そうしてしばらく歩くともう町外れまで来てしまった。いろいろと町の中を歩いてみたがやはり働き手を捜している所はどうしても大人を求めていた、子供ではいけないのである。この際大人を名乗ってみるか?と考えたことは何回もあるがばれた時の危険性と証明のしようが無いのでどうしようもないと言う風に考えは落ち着いている。あ~やっぱり神様なんて存在しないのか?むしろ居たとしたら俺のこと、絶対嫌いだろ?俺もあんたが居たとしたら言いたいことがいくつも有るわ。
…………そうだ、神様を頼ろう。今までなぜ気がつかなかったんだ!?いや頭がおかしくなった訳ではない。正確に言えば神様を頼るのでは無く、『神様の家』つまり教会を頼るのだ。この町を歩いてる時一箇所だけかなり寂れた教会を見つけた。アレだけ寂れていればおそらく誰も住んではいないだろう。ならせめて冬くらいすごさせてもらっても罰は当たらまい。仮に当たったとしても現状この上なく運が悪いのだから仕方が無いだろう。
そう自分に言い訳をしながら俺は現在地から見て町の反対側にある寂れた教会に向かった。
教会につくころにはもう町も暗くなりあたりは静かになっていた。
夜の教会って不気味だなぁ……しかも全体的に荒れ放題だしなんか出て来ても逆に驚かないほどのレベルである。
おそらく昔は小さな、きれいな広場のある教会だったのであろう。しかし今は草は伸び放題で大きいものになると腰のところまであるものもある。さらに建物にはところどころひびが入っておりコケがはえているところもある。ここで中に入って棺桶があったら完全にバンパイアの住処である。ニンニクを持ってくればよかったなどと考えながらとりあえず扉に向かう。
教会の扉は両開きでところどころ腐ってはいるがとりあえず隙間風などは吹かないだろう。力を入れて引っ張ると片方は完全に動かないがもう片方は何とか動きそうだった。何とか力をさらにこめ引っ張ると
ギィィィィィィィ……
とある意味お約束の音が鳴った。中を見るととりあえず荒れた様子は無いがやはりボロボロではあった。しかしそんな中目を引くのは月明かりの入り込む小さな丸いステンドグラスだろう。大きさで言ったらせいぜい直径50cmほどだろうが時間次第で丁度良く祈りを捧げるところに光が入るようになっているのだろう、興味が無いわけでもないし時間を置いてその風景を見てみよう。あと一応十字架の下に棺は無いかと見てみたがあるはずも無く少し安…いやがっかりしたのは秘密だ。さてその風景を見るまで時間がかかることだしとりあえず今日寝るところだけでも華麗に掃除するとしますか。
そうして時間として大体4時間ほど経っただろうか。少しだけ掃除するつもりがまさか一部屋全体をきれいに掃除することになってしまうとは。まぁ他にやることが無くて暇つぶしにやっただけですけどね……
最前列の椅子に座りながら祭壇の前に床を見ると丁度丸く光が当たり床にもきれいな色が映し出される。ステンドグラス自体の絵は良くわからないがおそらく聖母マリア?ではないかな?宗教なんて今だかつて学んだことも無いので知らないが、芸術としてみるのなら個人的にはとても気に入った。
このまま最前列で見るのもいいが、いい機会だ。一応祈りでも捧げてみることにした。と言っても祈りの言葉なんて一節も知らないから頭の中で考えるだけですけどね。そうやって祭壇の前に跪くき両手を頭の前で組む。そして目を瞑り祈り…と言うか願いを捧げた。
(とりあえず仕事が見つかりますようにとあと寝床がこのまま使えますように。さらにできることなら断片的な記憶を元に戻せますように、と言うか元の世界に戻れますように。第一なんで俺がこんな目にあってるんだよ、普通こういうのは事故で死んだ~とか、神秘的な場所に居た~とかが原因だろ?普通。あと仮に召還とか転生したとしても、初めからチート能力もちとか、そばに美少女が居るとかだろ?なんで特にチートみたいな能力もなく実質ホームレス生活せにゃアカンのや!!物語の設定生かしきれて無いでしょ?俺が編集者ならもう一度まとめなおして書き直しなさいって言うレベルだぞ!?あと~~~~~……)
と後半になるにつれただの愚痴とかしてしまったそんな風に愚痴を頭の中で神様とやらにしていると突然鍵がかかって開かなかったドアが開いた。
目を開けそちらを振り返ると一人の老女が立っていた。こちらを見ると少し驚いたようにして俺の顔を見ていた。
……いかん、傍から見たら俺は完全に強盗だ、逃げ出すわけにも行かないし事情を説明して最悪通報だけは勘弁してもらおう。
「あの、すみません!!僕は旅をしている……いえ、家が無いのでいろいろと住めるところを探していたのですが、仕事も寝床も見つからずに仕方なくこの教会で…一晩過ごさせてもらおうとしただけなんです!!誰かが住んでるとはまったく知らず…スイマセンでした!!!」
「………教会の中をきれいにしてくれたのは…坊やなのかい?」
「はい…今日泊めさせてもらうだけでもできるだけ綺麗にしようと……」
「………」
「…あの、すみません。一晩だけで良いんです…この教会に泊めさせてもらえませんか?明日の朝には出て行きますから……お願いします…それがだめなら今すぐ出て行くので通報だけは…」
「………………だめだねぇ…」
「っ!?」
仕方ないこうなったら全力で逃げよう。荷物は広げていないし走ればこの婆さんに負けるとは思えない。通報されるまでの間に走れるだけ走って何とか距離を稼ごう、そうすれば逃げ切れるだろう……
「こんなところで一晩過ごしたら風邪を引いてしまうよ?」
「………はい?」
「『生き甲斐や、神の救いを求めている方々の為に、教会の門はいつも開かれています。』こんなボロボロでもここは教会なんだ。坊やが頼っちゃいけないはずが無いだろう?ただこんなところで夜を過したら風邪を引いてしまう。だから離れにある家のほうに来ないかい?」
「良いん…ですか?」
「むしろ仕事を探しているといったね?寝床だけなら家を使ってくれてもいいよ。その代わりといっちゃなんだけど少しずつでいいからこの教会を綺麗にするのを手伝ってもらえないかね?」
「そんなことでよければ!!ぜひ!!」
「私の名前はアストリット・ヘンゲン……坊やの名前を教えてもらっても良いかい?」
「僕の名前は奏 風音です。本当にありがとうございます。」
「こちらの方がお礼を言いたいぐらいさ…よろしくね?ソウの坊や。」
「ハイ、こちらこそよろしくお願いします。」
こうやって何とかしばらく住めそうな所を見つけることができた…ふと上を見るとステンドグラスの聖母さんが笑っているように見えた。
……もし神様に文句を言う機会ってのがあるとしたら、ついでにお礼も言うことにしよう。
彼は静かにそう心に決めながら、お婆さんの後を付いて教会から出て行くのであった。
求めよ、さらば与えられん。
探せよ、さらば見つからん。
叩けよ、さらば開かれん。
「新約聖書」-マタイによる福音書(マタイ伝)7章7節
はい、ここからさらに年がとびます。
オリジナルの教会のおばあさんですが今後出る予定は今のところほとんどありません。
シーンとしては後2~3回出ればいいほうでは無いでしょうか?
と言うことで今回も読んでいただき真にありがとうございます。