インフィニット・ストラトス ~とある青年の夢~   作:filidh

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第三十三話 戦いのヒント

千冬さんのかけ声と同時に中に向うセシリアと鈴。

気合は十分って言ったところか。

 

「手加減はしませんわ!」

「さっきのは本気じゃなかったしね!」

 

なんというか…やられキャラみたいな台詞だな。

そんな台詞を言ったからと言って強さが変るわけでは無いんだ別にいいだろうけど。

その後一歩遅れて山田先生が飛び立つ。

 

「い、行きます!」

 

そのかけ声を言うまではいつもどおりの先生だったが、宙に浮いた瞬間その顔つきは真剣そのものだった。

 

「さて、今の間に……そうだな。ちょうどいい、デュノア。山田先生が使っているISの解説をしてみせろ。」

「あっ、はい。山田先生の使用されているISは――」

 

とデュノアが説明をしていたが俺はそれを聞くどころではなかった。

現在試合の状況は山田先生が二人に押されているように見える。

セシリアはビットで山田先生を狙い、鈴は衝撃砲で攻めている。

完全に手数で封殺するつもりだろう。

一方、山田先生はいまだにハンドガンのみで当たるか当たらないかのギリギリのところを単発的に撃ち、一方的に攻められているように見える。

だが実際は二人が優位に見えているが山田先生はほぼダメージを受けていない。

逆にセシリアと鈴が攻撃でエネルギーを消費している方が多いのではないかと思うほどだ。

さらに山田先生は本気で攻めていない。

どこか押されながら戦っているようにして攻撃をし、相手の油断と動きの誘導をしているようだった。

山田先生の今行なっている戦い方。

それはある意味俺でも出来る別の戦い方であった。

俺の現在の戦い方はヴァッシュならどう戦うか、と言ったイメージを元に戦っていた。

もちろんこの戦い方でも十分に戦えているとは思う。

だが俺がよくても機体が駄目なのだ。

俺の今の戦い方では、俺に機体がついてこれず無茶をすればすぐに壊れる。

そう考えると今の俺から見てあの動きは参考になるどころか戦闘を持続させるという意味では理想であった。

そして山田先生は少しずつギアを上げていっている。

対して二人は動きが単調な上に誘導されている。

しかも誘導されている事には気がついておらず攻め落とす事しか考えていない。

山田先生がすばやく二発の弾丸を撃つ。

二人は攻めながらその弾丸をかわす、が互いに同じ方向に逃げるように誘導されていた。

そしてそのまま誘導されるがまま、互いにすごい勢いでぶつかる。

 

「な!?」

「ちょ!?」

 

互いに互いの事など気にしていなかったのだろう。

完全に不意をつかれた上に対応がまったく出来ていない。

これは決まったな。

山田先生がその隙を逃すはずがなくグレネード弾を二人めがけて撃ち込む。

二人がそれに気がついたときには既に遅し。

真ん前から被弾しその衝撃で地面に墜落する。

 

「くっ、うう……。まさかこのわたくしが……。」

「あ、アンタねえ……何面白いように回避先読まれてんのよ……。」

「り、鈴さんこそ! 無駄にばかすかと衝撃砲を撃つからいけないのですわ!」

「こっちの台詞よ! なんですぐにビットを出すのよ! しかもエネルギー切れるの早いし!」

「「ぐぐぐぐっ……!」」

 

と言い争う二人。

まぁ勝負ありだな。

千冬さんはそれを無視してこちらに話をする。

 

「さて今目の前で何が起こっていたか……風音お前が説明しろ。」

「はい。まず二人が負けた理由ですが、この試合で二人の連携がまったく取れていない所と、山田先生の実力を二人とも見誤っていたというところが大きな敗因でしょう。」

 

と俺が話し始めると山田先生も降りてきた。

表情を見ると全然余裕そうだ。

下手な話もう一度この説明をした後、それをふまえてセシリアと鈴が突っ込んでももう一度軽く撃墜させるくらいは出来そうだな…

そう頭に思い浮かべながら話を続ける。

 

「一つ目ですが連携が取れていないというところは突然の事態だから仕方ないかもしれません、ですがお互いに連絡を取りながら戦うくらいは出来るでしょう。しかし二人はどちらが山田先生を墜すかで争っているようにも見えました。」

 

そういうと二人とも覚えがあるようで明後日へ目を背けている。

恐らく一夏にいいところを見せるつもりだったのだろう。

 

「二つ目に山田先生の試合前に見れた銃の腕から、少なくとも山田先生は遠距離戦が強い、もしくは慣れていることがわかります。それなのにわざわざ相手の距離で二人は戦っていました。そりゃISに乗っている時間から技術まですべて負けている相手に相手の得意分野で戦えば勝てるはずがありません。」

 

そういうと千冬さんは俺の答えに一応満足したようにうなずいた。

その時ラウラの視線に気がつく、ただ千冬さんと口を利くのも駄目か……

 

「そのとおりだ。いいか、ISでの戦いだけでなく戦いにおいて数は確かに多い方が有利だ。だがそこで思考を止めるようなら数の差など意味は無い。その油断をつかれてそこにいる二人のように足の引っ張り合いをして終わりだ。」

 

といわれてますます悔しそうにする二人。

まぁ今回は勝てなくても仕方ないだろう。恐らく千冬さんも天狗の鼻を折るつもりだったんだろう。

 

「さらに言わせてもらうと、これで諸君にもIS学園教員の実力は理解できただろう。以後は敬意を持って接するように。」

 

と言って千冬さんは手を叩く。

あ~…普段クラスメイトからなめられている山田先生の事を問題だと思ってたのね、千冬さん。

それでこういう場面を見せました……ってことね。

結果は十分得られたでしょう。ここにいる全員目が点になってます。

 

「では続いて全員での訓練を開始する。まずは専用機持ちの6人前に出ろ。」

 

そういわれてまずはそのまま前にいるセシリアと鈴、その横に一夏としゃ…デュノア、最後に俺とラウラの順に横一列に並んだ。

 

「では9人と10人の班に分かれろ。」

 

そういうと案の定、男三人(仮)の所に人が集まる。むしろ囲まれた。

なんというか…肉食獣に囲まれた草食動物の気分…

君たちあんまりそういう風にやってると千冬さんが本気で怒るぞ?

千冬さんのほうを見ると頭に手を当て声を上げた。

 

「この馬鹿どもが・・・・出席番号順に分かれろ!!」

 

この声を聞いてようやく俺たちは包囲網から開放された。

 

 

 

 

 

 

 

「さて、ISも持ってきたし始めようか。」

 

俺は練習用の打鉄を担いで持ってきてから話す。

俺の班で名前がわかるのは四十院に箒、岸里に田嶋、あとは夜竹か。

残りの5人は2組の方々で名前はわからない。

さてどういう風にやればいいんだ?と思い周りを見るとそれぞれやり方が違った。

まずはセシリアは理論を口にして動かし方を意識させてるな…

鈴のほうはいきなり挑戦させてるな…

シャル…ルくんはなんというか意識的なコツを説明している。

一夏の方は……それどころじゃないな、うん。

そしてお隣のラウラさんは…なんというかやり方だけ言って後は放置。メンバーが困ってらっしゃる。

さてじゃあこっちはこっちでやらせてもらうか。

 

「え~っとまずISを動かす事になるけど、この中で箒以外に訓練してるって人いる?」

 

と言うと訓練をしているものはいないようだった。

ではその事を前提にやらせてもらおう。

 

「じゃあまず箒、お手本としてそこを一周してきて。」

「ああ、わかった。」

「えっとまず箒の手本を見ながらコツを説明させてもらう。」

 

そう言って箒はISに乗り歩き始めた。

さてその間にコツだけは説明しておこう。

 

「まずISに乗ったときのコツだけど適性がA~Bの人は多分かなり反応速度がいいと思うんだ。その事をふまえて動いた方がいい。基本的に動かす時に意識しなくても自然と動く事ができる。だから機械に乗って動いているイメージより自身の手足と同じような感覚でいけるらしい。」

 

そうラウラたちのチームにも聞こえるほどの大きな声で話す。

向こうも気がついたようでこちらの話を聞いている。

 

「次にCの人と、いないと思うけどDの人はいる?」

「Dって…そんな人いるの?」

 

とくすくす笑う2組の生徒。

まぁある意味冗談にも聞こえない事も無いか。

俺はそれを気にすることなく話を続ける。

 

「あ~…残念ながらここに僕一人いるからさ。」

「え…あ、ごめんなさい!!」

「いいよいいよ、気にして無いから。えーっと話を戻すけどCの人は恐らく体は軽くなったけど反応が少し遅いんだ、それに細かいところになると意識しないとしっかりと動かせない。なんというか違和感みたいなものを感じると思うんだ。」

 

2組の子があわてて謝ってきたが気にしないように笑いかけながら話を進める。

 

「だから皆乗ったときに一度、手や腕を動かしてみて欲しい。」

「歩行訓練なのに?」

「そう。何でもいいんだ、グーチョキパーをやってみるとか好きに動かして自身で反応の感覚を掴んでから意識して足を動かしてみて欲しい。歩いている間も違和感を意識しながら動いてくれ。そうすれば段々違和感がなくなってくると思う。A~Bの人もちょっとやってから歩いた方が歩きやすいと思うよ。ということで動くイメージをしてから動いてみよう。」

「「「「「「はい!!」」」」」」」

 

って向こうのラウラ班のほうまで返事してるよ。

しかしラウラはこちらを一切気にしてないようだった。

さてラウラのチームも歩行訓練開始してるみたいだし後は個人的にアドバイスを言いながら動くとしよう。

 

 

 

 

時間が経過し授業終了間際の時間になったとき千冬さんが声を上げた。

 

「では午前の実習はここまでだ。午後は今日使った訓練機の整備を行う。各人、格納庫で班別に集合すること。専用機持ちと風音は訓練機と自機の両方を見るように。」

 

という言葉で全員解散する。

うちの班は時間的余裕があったため既に格納庫内にISを運び終わっている。

一方一夏の班は時間ギリギリまでやったせいかまだISを格納庫に入れていない。

一夏は女に甘いから多分自分で運ぶと言うだろう。

さてじゃあ、一夏を手伝ってる最中に先にデュノアを着替えさせよう。

そう考え一夏とデュノアに話しかける。

 

「一夏、手伝うか?」

「奏、サンキュウ、頼むわ。」

「え~っと……デュノア。先に行って着替えててくれ。俺一夏を手伝ってから行くからさ。」

「えっ、あ、ソ…風音くん、ありがとう。」

「あ、そうだ。シャルル、昼飯一緒に食おうぜ!!」

「え、織斑君…うん。いいよ。」

 

そこはありがとうじゃなくてわかったでいいだろうが…変なこと言い続けるとばれるぞ?

………いや、既に学園にはばれているのか?

そこら辺は考えないとな……俺はそう考えながら一夏の方へ手伝いに向おうとした。

しかし途中で千冬さんに呼び止められる。

 

「おい、風音。話がある。来い。」

「…了解しました。織斑先生。すまん一夏。手伝えそうに無い。」

「ああ、じゃあ昼食で。」

「了解。」

 

こちらを見る一夏を尻目に俺は千冬さんの後を追った。

その時ラウラがまたこっちをにらんでいることに俺は気づいていた。

 

 

 

 

 

アリーナ脇の狭い一室。

そこに俺と千冬さんがいた。

ここは入学試験時に千冬さんに弱音を吐き出したところだな……

一応ISのレーダーだけ起動させ話を聞くことにした。

 

「さて呼ばれた理由はわかるな。」

「……先生、出来心だったんです…」

「ふざけなくてもいい、ラウラについてだ。」

 

まぁそれしか理由は無いよな。

俺は真面目な顔をして話し始める。

 

「織斑先生を教官と呼んでいたということはドイツの?」

「ああ、私の教えていた部隊の一人だ。あと普通に話せ。正直お前に先生と言われると気持ち悪い。」

 

ひでぇ。

いや、ほんとにひどい。

俺じゃなかったら泣いているくらいだろう。

まぁ気にせずにいつもどおりに話そう。

 

「では、千冬さん。ボーデヴィッヒに何をしたんですか?」

「…お前から見てあいつはどう見える。」

「千冬さんを尊敬、いえむしろ信仰しているって感じですかね。考えの中心に千冬さんがいて関係の無いものには興味が無い…今のところかんな感じですかね。」

「……そうか…奏。お前ならどうするか聴いていいか?」

「……なんでしょう。」

「一人落ちこぼれで自身の価値を信用できない子供が居たとしよう。」

「僕みたいなのですか?」

「真面目に聞け。まぁお前みたいに何か目標があるならいい、自身に一本芯があるなら気にもならないだろう。それすらも無く自身に非があるわけでも無いのに、落ちこぼれの烙印を上から押され、それのせいですべてに対して無気力になっている子供が居たらお前ならどうする。」

「愛を語ります。」

「……真面目に言っているんだな。」

「当たり前です。誰がどんなにその子の事を落ちこぼれと言おうが僕だけは味方であり続けます。」

 

真面目な顔でそういうと千冬さんはふっと笑って話し始めた。

 

「私はその子を鍛え上げた。誰からも落ちこぼれなど言わせないほどに。その結果その子は部隊最強になった。」

「いい話じゃないですか。」

「問題はな、その子はその後私のことを神のように崇める様になった。その上今までの経緯からか人を信じず、それまでの生き方から他者を寄せ付けないようになった。」

「……」

「悪いが風音、私から話せるのはこの程度だ。これ以上は契約違反になってしまう。」

 

なるほど、千冬さんは一夏とラウラを重ねてしまってたんだろう。

姉の千冬さんと比べ何も出来ないと自身を蔑んでいた一夏。

役立たずと上から言われて落ちこぼれといわれたラウラ。

確かに似ているといえば似ているだろう。

千冬さんはそこを気にかけていたのかもしれん。

そして千冬さんの言う契約違反。

これは恐らくドイツ軍、いやドイツ政府とおこなった取引だろう。

つまりドイツにとってあまり大きな声で言えないようなことをした結果、ラウラは無気力になった…と。

後はラウラ本人、もしくは別のところから聞こう。

 

「ありがとうございます、千冬さん。とりあえずこっちでも何とかしてみます。」

「……私からは正直ほとんど何も出来ん。援護はできそうに無い。」

 

今のラウラにとって千冬さんからの命令は絶対だ。

それを利用しても任務として関わったりする事はあっても自身からこちらに関わる事は無いだろう。

それは俺も千冬さんも望むところじゃない。

 

「まぁ、大体わかります。」

「そうか…すまんが頼む。」

「まぁ同じクラスになったのも何かの縁ですし、仲良くしますよ、織斑先生。」

 

そう言って俺と千冬さんは部屋を出て分かれた。

さてやる事がまた増えてきたぞ…

そう考えながらラウラとデュノアのことをどうするか考えながら一夏と合流するべく急ぐのであった。

 

 

 

 

 

平凡な人生こそ真の人生だ。 虚飾や特異から遠く離れたとことにのみ真実があるからだ。

                                   ~フェーデラー~




とりあえずラウラに関しては奏が表立って動く事になりました。
さてこれがどういう結果になるのでしょう?
ということで次の話でまたwww
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