インフィニット・ストラトス ~とある青年の夢~   作:filidh

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第三十八話 守るために

シャルロットが泣き止むまで撫でていたらいつの間にかシャルロットは眠ってしまっていた。

顔も泣いたせいでぐちゃぐちゃになった顔で寝息を立てている。

まったく泣き止んだら眠ってるとは……よほど疲れていたんだろうな。

こんな状態で一夏の部屋に背負っていくわけにもいかず、仕方なく俺は自身の普段使っていないベットにシャルロットを眠らせて部屋を出た。

シャルロットのことを守るためにまず一番最初にやらなければいけないことがある。

そう考えて俺は一夏の部屋に向った。

一夏の部屋の前に着きドアを叩く。

眠ってないと良いんだが…そう考える暇もなくすぐさまドアが開いた。

 

「奏か、どうした?っていうかシャルルがそっちに向かってなかったけ?」

「一夏、それについてだが話がある。」

「うん?なんだ。」

「部屋で話をしても良いか。」

「ああ、解った。」

 

そう言って一夏は俺を部屋に入れた。

恐らく俺の真面目な雰囲気を感じ取ってくれたのだろうすぐに話を聞いてきた。

 

「話ってシャルルについてか。」

「ああ、同時にお前に協力してもらいたい事でもある。」

「どういうことだ?」

「…これを聞いたらお前もこの問題に巻き込まれる、知らなかったってことには出来ない。そして理由を説明してからの協力ってのは無理だ。先に協力できるか出来ないか答えてくれ。」

「……理由を聞いたら、必ず協力しろってことか?」

「そのとおりだ。もちろん断ってくれてもかまわない。正直こんなばかげた条件で協力できないといわれても仕方ないと思っているからな。」

「…奏、お前に俺どれだけ助けられてると思う?」

「覚えてない。」

「とりあえず確実に俺がお前を助けた数よりは多い。だから気にせずに頼ってくれよ。俺はお前のことを親友だと思ってるんだぞ。」

「……そうか、解った。」

 

こういうとき本当にこいつは頼りになるよ。

俺は少し笑いながら一夏に説明を始める。

 

「まずはシャルルと僕は昔からの知り合いだ。」

「え?そうだったのか。」

「ああ、昔あいつの母親と一緒に短い間だが生活していた事もある。」

「そうだったのか……あれ?でもシャルルはデュノア社のところの…」

「そこら辺の詳しい話はシャルルから聞いてくれ。問題は今あいつはデュノア社に捨て駒にされている。」

「どういう意味だ?」

 

俺が捨て駒という言葉で一夏が顔をしかめる。

 

「あいつは今かなり危険な橋を無理やり渡されていてな、ばれたら退学どころか下手をしたら刑務所送りだ。」

「……本気で言ってるのか?」

「ああ、だがあいつは言ったとおり捨て駒で自身の意思も関係なしにここに送り込まれた。」

「でも男性操縦者ならどこだって守ってくれるんじゃ…」

「男ならな……一夏、あいつの本名はシャルロット・デュノア、女だ。」

 

俺が頭をかきながらそう言うと一夏は首をかしげる。

 

「………え?ごめん、今なんていった。」

「シャルルは偽名であいつは女だ。」

「………はぁぁぁぁぁああああああああああああ!?」

 

一夏が今朝の俺の代わりに叫ぶ。

俺も今朝同じように叫びたかったよ。

一夏は混乱しながら俺に尋ねる。

 

「いや、何で!?って本当に!!」

「ああ、残念ながら本当だ。」

「いや……いや…え?もしかして今までの全部嘘?」

「嘘だったらどれだけいいか……」

 

そう言って俺は頭を抱える。

 

「いや…奏がそこまでなるって事は本当なんだろうけどさ…今どこにいるの?シャル…ロットは。」

「俺の部屋で泣きつかれて寝てる。」

「そ、そうか…なぁもしかして協力して欲しい事って…」

「そうだ、お前にはどうやってもいずればれる未来しか見えなくてな、そこら辺を協力して欲しい。」

「いやいや、いくら俺たちで隠せても学園側が…」

「学園側は解りながらあえて入学させていている事はわかってるし、既に生徒会には一ヶ月の猶予をもらっている。」

「奏……流石に仕事早すぎじゃないか?」

「まぁこれはほとんど偶然だ。だがこっから先は偶然に期待できそうになくてな、俺が全力でいろいろ探ってりしている間あいつの事を守ってやって欲しい、頼む。」

「……解った。でも具体的に何をやれば良いんだ?」

 

具体的にか……どういえばいいのだろうか。

思いついたままに口に出す。

 

「常に俺かお前のどちらかがシャルロットの近くにいてできるだけばれないようにアシストする。今日の俺みたいにな。」

「ああ、だから今日お前何かとシャルルの近くにいたのか…解った、ほかにはどうする。」

「後は寮内の生活でお前とどうしても一緒の時間が増える。あいつも女だからそこら辺を気にしてやってくれ。」

「え、…後はお前の部屋で暮すんじゃないの?」

「勝手に部屋をかえるなんて出来るか。それがばれたらそのままアウトだろうが。」

「………つまりお前が頼みたい事って。」

「簡単に言えば『シャルロットという女の子と一緒にばれないように生活してね』ことだ。」

 

そういうと一夏ため息をつきながらは肩を落とす。

まぁやっと男同士気にせずに部屋で生活できると思ったらこの仕打ちだ。

流石にこたえたのだろう。

 

「すまないな。でもこればっかりはどうしようもないんだ。たまになら俺の部屋に泊めさせてやってもかまわないとは思うがばれた時が怖くてな。」

「そうだ!!千冬姉を味方にすれば!!」

「そのための情報が必要なんだ、いま千冬さんにこれを教えたら千冬さんの迷惑になる。」

「そ、そうか…どれくらいの情報が必要なんだ?」

「具体的に言えばシャルロットの危険性がなくなれば問題なく進められるとは思うが……正直裏がまったく見えない。どれくらい時間がかかるかも不明だ……」

 

そう言って俺は頭を抱える。

一夏に頼んだが正直一ヶ月もの間隠し通すのはほぼ不可能だ。

運よく隠しぬけたとしてもしっかりと対策をしなければそのままアウトだ。

出来るだけ早く解決しなければならないな。

 

「……わかった。俺も努力するからできるだけ早めに頼む。」

「すまないな一夏。ある意味僕のわがままみたいなもんなのにさ。」

「いや、シャルルは俺の友達でもあるんだ、だったら助けるのは当たり前だろ。」

「そうか……ありがとう、今日のところはこれくらいで良いだろう。あと今日くらいはシャルロットはこっちで面倒見る。」

「解った。じゃあお休み。」

「お休み一夏。」

 

そう大きく言ってみたもののどうやって解決したらいいのか。

今回ばかりは敵が大きすぎて見えないな……弱気にならないようにしてもどうしても不安が心に残る。

頭の中で今後どうするか考えながら一夏の部屋のドアを開けようとすると一夏に呼び止められる。

 

「奏!!……」

「どうした?」

「……がんばれよ。俺には応援しかできそうに無いけど…」

「ありがとよ、おかげで負ける気がしないわ、親友。」

 

そう言って手を振りながら部屋を出る。

さて、一夏まで巻き込んだんだ、弱気になるのも、もう手段を選ぶ余裕も無いな。

覚悟を決めろ、俺の今の目的はシャルロットを救うことだ。

そう考え俺は自身の財布の中にある一番古い名刺を引っ張り出した。

 

 

 

 

自身の部屋に戻り電話をかける準備をする。

一応シャルロットのほうを見ると寝かしつけたままの姿勢で静かに寝息を立てていた。

恐らく今までかなり緊張していて、それが先ほど泣いたおかげで緊張の糸がきれて安心した…そんなところだろう。

起こさないようにキッチンの辺りで電話をかける。

昔デュノア社長からもらった名刺。

その名刺に書かれている電話番号。

それを自身の携帯からかける、この名刺に書かれた電話番号のうち恐らく社長の電話番号と思われる番号に電話をする。

つながるか……と考えつながると同時に声を出す

 

「もしもし!?」

『おかけになった電話番号は、ただいま使―――――』

「やっぱりか……」

 

というメッセージが聞こえたためすぐ様に切る。

これで一つ目の連絡先は消滅か……

まぁいい、正直これはつながるとは思っていなかった。

では次はラウラについての情報だ。

俺があいつに話しかけても情報が手に入るとは思わない。

ならば直接ドイツ軍に聞いてやろう。

一応切り札はあるが……分の悪い賭けになりそうだな…

そう考え携帯の『ランベルト』と書かれたところに電話をしようと考えると突然知らない電話番号から電話がかかる。

…タイミング的にデュノア社長だと良いんだがそれは無いだろう……

俺が電話に出るといつか聞いたことのある声が聞こえる。

 

『ハァイ、こんな時間にデュノア社長が元々使ってた電話番号にかけるなんて――』

「……なんであんたが俺に電話して来るんだ?」

『あら?美女からラブコールをされるなんて光栄じゃなくて?』

 

と愉快に話すこの甘い声。

間違いないあの『ドS』だ。

 

『ちょっと、今失礼な事考えなかった?』

「気のせいじゃないでしょうか?というかどなたでしたっけ、あなた?」

『あら、今それはちょっと遅いんじゃないカザネ。』

「……ハァ、あんたとは二度と話したくなかったんだがな……スコールの姉さんよ……」

 

知らない電話番号からかかってきた電話。

それは間違いなくあの亡国機業の『スコール』その人からだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんなさい、電話してもらったところ悪いんだけど切るわ。」

『ちょっと、待ちなさいよ!!美女の電話を切るってどういうつもりよ!!』

「こっち台詞だ、何で俺の電話番号をあんたが知ってる。」

『愛の前には不可能は無いのよ?』

「怪奇現象だな、お払いに行こう。」

『その結果残るのは赤い糸だけよ?』

「その糸、首に巻きついてるんですね。怖いから切らせてもらいます。」

『相変わらずの減らず口ね、まぁそこが良いんだけど。』

 

楽しそうに会話をしてくるスコール。

なんというかこの女性、口の相性はすこぶるいいのだ。

性格のほうはどうだか知らないが。

とりあえず相手の真意が解らない少し引き出してみよう。

 

「あんた、どSの上にMっけまでであるのかよ、救えないね。」

『それはすべてあなたのせいよ。責任を取りなさい?』

「今すぐ豚箱に入れば治るんじゃない?本題はなんだ。」

『愛の墓場に入るならすぐに治るわよ。本題ねぇ……あなたの声が聞こえたから電話したのよ。』

 

マジで考えなしかよ……

いや、ということは先ほどのデュノア社長の携帯番号をこいつがなぜか盗聴していた……

そういうことか。

 

「盗聴癖はお勧めできないね。」

『仕事ですもの仕方ないわ。』

「はぁ……なんでデュノア社長の盗聴を?」

『う~ん……教えても良いけど…言う事を聞いてくれればね。』

「……なんだ?」

 

こちらが不利になる条件じゃなければいくらでも飲もう。

 

『まずは私の事は【あんた】じゃなくて【スコール】と呼びなさい。』

「了解しました、Ms.スコール。これでいいかい?」

『じゃあ次はね――』

 

ここで追加条件を許したらこちらがどんどん押される。

そう考えすかさず言葉を挟む。

 

「要求一つに対し答えは一つだ。駄目だって言うのならこのまま切る。」

『いけずね……まぁ良いわ【私たちが今探しているものを見つけるため】ね。』

 

探し物……しかも国ではなく企業への盗聴……

もしかしてアレを探しているのか?

だがなぜこいつらがアレを探しているとしたら……

こちらが勝負に出る事はできるな。

 

「探し物ね……じゃあそれは何?」

『そうね……じゃあ次は【愛してる】ってささやいて。』

 

このアマ……とんでもない事言いやがる。

恐らく電話越しで彼女は今ニヤニヤしているだろう。

 

「……別のじゃ駄目?」

『ダ~メ♪』

「ジーザス……『愛してる…』これ良いかい?」

『う~ん……どこかやらされてる感があるけど良しとしましょう。』

「そいつはどうもありがとさん。」

 

当たり前だ無理やり言わされてるようなものなんだからな。

俺はため息を付きながらその答えを待つ。

 

『【VTシステム】……知ってる?』

 

ビンゴ、やはりこいつらの探しているものはそれか。

ラウラのことを思い出しているときに一番最後に思い出したのがそれだ。

それがトーナメントマッチ中に発動して試合はめちゃくちゃになるといったもの。

だがなぜこいつらがそれを?

正直な話そこまですごい性能は秘めていなかったはず。

後に出てくる銀の福音の方がはるかに性能が良いはずだが……

まさか…

 

『じゃあ次はどうしましょう?』

「篠ノ之束」

『………彼女がどうしたの?』

取引はどこまで行っている(・・・・・・・・・・・・)。もうISを開発してもらっている…のは無理か。そちらが差し出すものでは彼女の興味を引けるものがなさ過ぎる。」

『ふぅん…こけおどしで言ってるわけじゃないのね?どうしてそれが?』

「俺は【VTシステム】がどこにあるか知っている、といったら?」

『………話が見えないわ。』

「あの程度のおもちゃをあ…君たちの組織が求めるとは思えない。ならばなぜそれを求めるか、答えは単純、取引上の条件かなんかじゃないのか?」

『………』

 

緊張しながら返事を待つが反応は無い。

だが否定もしないという事は……攻めてみるか。

 

「沈黙は答えているようなものだぞ?」

『あら?隠す程度の事じゃないもの。ただやっぱりあなた良いわ。最高。身震いしちゃった。』

「………さいですか。」

『じゃあ本格的な取引と行きましょう。あなたがその情報を渡したら私があなたのものになってあげるわ。』

「何で二重に損しなきゃいけないんだよ。渡してもいいが条件が二つ。」

 

というと考えているのか、それとも他の上司と連絡を取っているのか返事は無い。

強気に出てみようかと考え口に出そうとした時、向こう側が爆発した。

 

『損って何よ!!損って!!』

 

そこ!?そこに反応してるのあんた。

ため息をついて話す。

 

「……スイマセン、話進めてよかでしょうか。」

『まず損って発言をあやまりなさいよ。』

「どーも、スイマセンでした!!私が悪うございました!!コレで良い!?」

『仕方ないから許してあげましょう。』

 

そう言って満足げに許してくれた。

もうやだこの人。

すごい疲れる、だが情報を得るためだ……ここは我慢しよう。

 

「はぁ……こっちの要求はデュノア社の内情および社長への直接の連絡先、後は手に入った【VTシステム】のデータを渡してくれ。」

『前者はともかく後者は何で?』

「言う必要がある?無理ならいい、がんばって世界各国の会社や研究機関を探してちょうだい。」

『………良いでしょう、ただ【VTシステム】についてはどのくらいのデータが欲しいの?』

「開発場所から責任者まで一切すべてだ。」

『…欲を張りすぎじゃない?』

「じゃあ篠ノ之博士の機嫌を損ねるかい。どうやって彼女の機嫌を取り戻すかは解らないけど。」

『……わかったわ、それで条件を飲むわ。』

 

そう言って彼女は条件を飲んだ。

別に俺の取引相手はこいつらじゃないんだ。いくらでも情報はくれてやる。

まぁあんまり話し合いたい相手でも無いけどな……

そう言って俺はドイツの部隊の内一つ『シュヴァルツェ・ハーゼ』の整備付近を洗うように情報を渡す。

 

『なるほどね…ドイツ軍か…本当だったら一週間くらいで返事をしてあげる。』

「それを過ぎたら失敗したって事?」

『いいえ?あなたの情報が嘘だったってだけよ。』

「そうですか、まぁこれで取引は終了だ。アドレスはさっき言ったところに頼む。」

『解ったわ、じゃあまた一週間後に、バァイ。』

 

そう言ってスコールは楽しそうに電話を切る。

ただで情報を渡したような感じだが既にこちらは『亡国機業が篠ノ之束とコンタクトを取っている』という情報は手に入れたんだ。コレは使い様によってはIS学園とのお偉いさんとも交渉が出来る可能性もある。

ならば後もらえる情報はほとんどおまけのようなもの。

こちらからも電話を切り同時に録音も切った(・・・・・・・・・)

さ~てこっからさらに忙しくなるな…

そう考えながら俺はシャルロットの隣のベットで眠りに付いた。

なお翌朝シャルロットを起こしたときに凄まじく混乱していたがそれはなぜだかは解らない事にした。

 

 

 

 

 

 

命と引き換えに金を欲しがるのは強盗であるが、女はその両方とも欲しがる。

                                    ~バトラー~




ということでまさかのスコールさん登場です。
ここからちょくちょく出てくると思います。
ということで読んでいただいてありがとうございますwww
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