インフィニット・ストラトス ~とある青年の夢~ 作:filidh
学園に帰って次の日。
俺はすぐさま倉持技研の方に派遣されたっていうか…半分拉致された。
理由は簡単である…俺のISについてだ。
俺のIS…いや、正確にはISらしきものの研究をおこなうつもりが…
待機状態のISがまったく反応を示さないのだ、まるでただのサングラスのように…
それで一応俺が展開できるかどうかの話になり、連れ浚われた。
そして現在倉持技研の実験室らしき場所で俺はおっさんとそのほか数人の科学者らしき人物が居るところにいるのだ。
「えっと……おっさん、話には聞いてたんだけど…なんでこんなに人がいるの?」
「お前のISの研究のためだよ。」
「いや、一夏の方は?」
「あっちはあっちでいるが…お前の方が異常なんだよ。」
とおっさんと俺はひそひそと話し始める。
「いいか、恐らくお前の機体に起きた現象はセカンドシフトだと思われるんだが…」
「だが?」
「そこまで形状が変ったのは初めてなんだよ。普通どこか機体の特徴が残るもんなんだが…さらに言えばここまで反応がないとなると……」
「ただのコートみたいになってたね。」
「ああ、それでここにいる科学者たちは
「そういうこと…」
ようは普通じゃありえないデータを得るために来たのか…
まぁ俺としてはこのデータはすべて公開するつもりだし問題は無い。
「で、まず何すればいいの?」
「ISを展開してくれ。」
「了解。じゃあ一応離れてくれ。」
そういうとおっさんが距離をとる。
その後ISを展開する。
普通ここで光に包まれて…ってなるのが普通なんだが、やはり俺の機体は赤いドロのようなものが俺の体に巻きつくようになり…全身を被いコートになった。
そしてこのドロどうなってるのかな?と思い触ってみるとそのまんま布みたいな手触りだった…
「それで展開は終了か?」
「……多分。」
「じゃあ武器も展開してそこに立ってくれ。お前ごとスキャンする。」
「了解。」
そう言って俺のISのデータ取りが始まった。
まぁ…俺はこの後一週間研究所に泊まりになる事はこのとき考えもしなかった。
一時間後研究員は全員頭を抱えていた。
以下の事が今回の研究でわかったことだ。
・スキャンの結果⇒武器含めスキャンが成功しないことがわかった。
・材質の検査⇒材質不明、サンプルを取ろうにも機体から一部もはずす事が出来ない。
・機体性能⇒PICの強化は確認されているがそのほか、拡張領域等のデータは不明。
・他の機体からのコンタクト⇒表面的なところは方法次第で可能だがデータの引き抜きは不可。
・基本的なISの機能⇒一部除きすべて確認。
といういわば何もわからないと言う事がわかった。
いろいろとテストを受けていてわかったのがまずこの機体『近接戦闘は一切できない』。
普通ISと言うのはパワードスーツだ。
いろいろな機能を使って普通の人間では出せないような力を出す事ができる。
だが俺のこの機体は……それが無い。
出す事ができるのは俺の筋力分の力だけだ。
そしてこれが恐らく全力でこの機体を動かせる理由だろう。
今まで俺が全力で動くたびに壊れていた理由。それはISのこの強化部分が俺の反応速度やスピードについてこられずそこに負荷がかかり壊れる事により動けなくなっていたのだ。
おっさんはそこを機体の反応速度を限界まで上げ、さらにイメージ・インターフェイスで直接機体そのものを反射で動かすと言う力技で制限時間付きで動かせるようにしたのだが。
……ISのコアの方はそんなもの邪魔になるならいらないと判断したんだろう。
綺麗さっぱりなくなっているらしい。
これでは他のISと近接戦をしようものなら確実に力負けることになるだろうが…
正直近接戦闘なんてやった記憶の方が少ない、パニッシャーで殴ったときくらいだろうか。
まぁ筋力が俺の力そのままだと確実にパニッシャーは使えない…そこだけが少し寂しい。
続いて装甲、これがある意味研究者たちを一番驚かせた。
俺の体に当たらないコートの端の所に攻撃を当ててみた結果、攻撃の当たったところだけ硬化したような反応が見れた。
普段は布のように柔らかいが、当たった瞬間硬くなる…ある意味理想的な装甲だろう。
だが問題として…衝撃は通る。
何も考えずにシールドバリアを張らずに弾丸を喰らおうものなら確実に衝撃でダメージを受ける。
機体は無事だがパイロットがダメージを受けるのだ。
そしてサンプルを取ろうと機体を削ろうとしたのだが…削れない、切れないと言うことになり一夏を召集。零落白夜で少し端のほうを切ったのだが…切り離されたとたんそれは煙のように消えて無駄に終わった。
さらに元々颶風についていた特殊兵器だが、ほぼすべて消失した。
戦闘中にも気がついていたのだが俺の颶風はシャルロットの烈風のように行動予測をおこなわなかった。研究中もその機能を使おうと試してみたが…一切起動する事は無かった。
さらにイメージ・インターフェイスで直接動かす機能。これもなくなっていた。
まぁもう全力で動けるから使う必要も無いんだが…これでは最早第三世代ではないな。
だがシャルロットの烈風とのラインは生きているらしく俺が研究中に集めたデータはすべてそちらの方に向かっていた。
これで一応第三世代を名乗れるのだろうか…いや無理だろう…
イメージ・インターフェイス使ってないし…むしろ存在するかどうかもわからん。
そしてこの機体の武器について。
弾は内部で生成したのか…それともどっかから持って来たのかかなりサイズは小さい、だが造れないわけではない弾丸らしい。そう、この弾丸が特殊と言ったわけではないのだ。
特殊なのは銃本体の方、だが二つ銃の異常な威力と加速、さらにエネルギー兵器をかき消す能力はなぜだかわからなかった。
さらに言うとリボルバー式の銃なのに弾をこめるところに弾が転送されない…だが引きがねを引けば弾丸が出るのだ。ならばなぜリボルバー式にしたんだろうか…
ただ考えられる可能性としては銃の形は俺の武器のイメージ、さらに能力に関してはイメージ・インターフェイスを使用しているのでは?という結論に落ち着いた。
最後に機体そのもの。
一つ目としてはPICが普通のISの何倍も優秀なのだ。
特に空中移動に関しては基本的な浮遊のや移動だけでスラスター無しで高速機動戦ができる。
さらにG対策も優秀らしく結構無理な動きもいける。
弱点としてはスラスターが無いので瞬間加速は使えないことである。その分普通に動く分ならかなり優秀だ。
二つ目に一番初めに…いや最初から最後までわからなかった事はISコアがどこにあるのか判明しなかったのだ。
さまざまな方法でそのコアの位置を探したのだが見つかる事は無かった。
そのため能力に関しても詳しいことが解らず、さらに少し判明しても深く調べられないのである。なのでこうではないだろうかという仮定を元に研究をしているらしい。
そこでどうやって機体とコンタクトをとったかと言うと『烈風』である。
烈風が今現在俺の機体と一番深くつながっている。
そして通信が出来たと言う事はとりあえずISコアはどこかにあるんだろう。
だがそれがわかった上で重大な事が判明した。
この機体のデータをとる上で一番確実なデータの集める方法が烈風しかないのだ。
他の方法はほとんどすべて失敗に終わっているらしい。
はじめ倉持技研としては烈風を完全にデータ取りとして使いたかったらしいがデュノア社としては自社の命運をかけた機体だ。そういうわけにもいかない。
ということでデータ集めはこれから随時おこなっていく事になった。
最終的に俺の機体の扱いはセカンドシフトした第三世代。
イメージ・インターフェイスを使用した液体金属装甲と武器の強化と言う事で一端の結論がついた。
さらに名称は一応『颶風』のままだが…もうほとんどその名前ではなく『アンノウン』と呼ばれるほうが多い。
まぁこれのデータを発表した結果さまざまなところでしっかりとしたデータを公開しろと言われたが……本当にこれしかわからないのだ。どうしようもない。
俺からこのISを取り上げる事も提案されたのだが…
俺以外にこのISは展開すら出来ないのだ。
せっかくセカンドシフトをおこなった機体の、しかもデータはすべて公開される事になっている機体だ。それはすぐさまに却下された。
ということで結局のところ俺は新しいISを手に入れた…
そして一週間後。
ようやく俺はIS学園に帰ってきた。
夜中に部屋に帰ると一夏は眠っていた。まぁ別に話す必要は無いし…何より明日は休みだ。話す時間はたっぷりある。とりあえずゆっくりと休もう。やらないといけない事は山ほどあるんだ。
明日は訓練も休もう…そう考えてゆっくりと眠る。
朝いつもの時間に目を覚ますが二度寝をする。
ああ、なんて気持ちがいいんだろう、二度寝。
そう考えながら再び眠りにつく。
………その考えがいけなかった。
しばらくした後目を覚ますと一夏のベットに一夏が居ない。
枕元の時計を見ると既に時間は九時だ。
まぁ…何か予定があったんだろう。それにしても水臭いな、一言くらい声をかければいいのにと思い起き上がると。
「おはよう……ソウ…」
「………おはよう。シャルロット。」
なぜか部屋にシャルロットが居た。
しかも目が据わってる。
おっと?俺なんかやったか?
とりあえず一夏がどこに行ったか聞いてみよう。
「そういえば一夏は?」
「…さっき部屋を出て行ったよ?なんか用事があるみたい。」
「そうか。そういや久しぶりだな。」
「そうだね…突然なんにも無しに居なくなるもんねソウは。」
あ、そういや居なくなる時も何にも言わないで出てきたし…外部との連絡も取れない場所にいたんだったな……でも先生方に聞けば…
「居なくなった一日目、本当に探したんだからね。一夏も知らないって言うし…」
「いや、先生に聞けよ…」
「…それは心配しすぎてすぐには思いつかなかったの。」
「じゃあそれはお前が悪い、それに俺も突然で話す時間もなかったんだよ。居たところも外部との連絡は取れなかったし……」
と俺が笑いながら言うと今度はシャルロットは心配そうな顔で俺を見る。
「でも……」
「心配しすぎ。何か思い当たるところはあるの?」
「………篠ノ之博士の事…」
「何の事だ?」
「……私も旅館で織斑先生に聞いたんだ…」
話を聴いた瞬間一気に目が覚める。
おい…千冬さん…何でシャルロットを巻き込んだ…
流石にこれは見逃せない…
そう考えて無言で立ち上がろうとするとあわててシャルロットが止めに入る。
「ソウ待って!!」
「すまん、これは流石に――」
「落ち着いて!!私が無理やり聞きだしたの!!」
「…え?」
なんだって?あの千冬さん相手に?お前が?
そう考えてシャルロットの方を見ると顔を伏せながら話し始める…
「ソウが居なくなった後一回織斑先生に詰め寄って…嘘ついて聞き出したの…」
「…どういう風にだ」
「…『ソウとの話し合いはどうなりましたか?まさか織斑先生は…ソウの敵に?』って…」
「待て待て、何で千冬さんが敵になるんだ?」
「だって…ソウが海岸に居た時に銃を持って落ち込んでたじゃない…それで喧嘩した…そして織斑先生の名前を出したら否定もしなかったでしょ…それで織斑先生に話しかけたら『私はお前たちの味方だ…信じてもらえんかもしれんが』って言ってたんだ…それで…」
「それで?」
「おかしいと思ったの…なんでここで織斑先生が『私は』って言ったんだろうって…それにその前にソウが喧嘩を売ったってときも…ソウが武器を持ってそんなことするなんてよっぽどだと思ったんだ。それにソウが喧嘩をわざわざ売るような相手で織斑先生の関係者…そう考えたら一番最初に思い浮かんだのが……」
「篠ノ之束だって事?」
「……うん。その後それを知ってる風に話をしたらすぐに認めてくれて…その後すぐにばれたんだけど…」
「なるほど……」
これは…完全に俺の責任だな…
油断してシャルロットに武器を見せて、さらに落ち込んでたとは言えシャルロットへの対応を間違いすぎた…だからシャルロットも疑問を覚えた。
さらに千冬さんを落ち込ませた状態で放置した…だから千冬さんに隙が生まれた。
…なんという無様だろうか…頭を抱えながら話を進める。
「その事は他の奴には?」
「ううん……誰にも言ってない…」
「千冬さんはなんて?」
「すごい…落ち込んで私に『頼むから…奏の言うとおりに動いてくれ…あとこの事は誰にも言わないでくれ…頼む』って…あんな織斑先生…初めて見た…」
それが千冬さんがおかしくなっていた理由か…
うわぁ…思ったより千冬さんを追い込む結果になってるな…
さらにここでばれちまったか…いつかは言わなければと思っていたが…このタイミングでか…
これをきちんと説明するためには…千冬さんのことも言わないといけない。
それだけは絶対に出来ない。
「シャルロット…頼む…聞かなかったことにしてくれ」
「そんな!?」
「後で必ず理由は説明する。だが今はそれが出来ないんだ…」
「……」
「納得は出来ないと思う…だがこれが最善の手段だったんだ。」
「ソウが犠牲になるのが?」
「いや?俺は一人で戦うつもりは無いよ?」
「え?」
と驚くシャルロット。
恐らく俺が一人で篠ノ之博士と戦うつもりだと思っていたのだろう。
俺はにやっと顔を笑わせる。
「シャルロット、お前千冬さんからなんて聞いた?」
「えっと…『奏が束に自分を殺してみろって言って…』って。」
「ああ、まったく聞いてないわけか…約束の内容はな『アイツが俺を卒業までに殺せたら向こうの勝ち、俺がIS学園を卒業するまで殺されなかったら俺の勝ち』なんだ。」
「うん。」
「で、細かいルールとしては『周りを巻き込むように戦うな殲滅はなし』『政治的な攻め方はなし』この程度だ。」
「………ちょっと待って…これって…」
としばらく考えたシャルロットも気がつく。
俺はさらににやりとする。
「そう。別に俺が防衛する時集団で守ってもいいし、向こうが攻めるときに集団で攻めてもいい。だからある程度皆強くなったら頼むつもりだったんだよ。」
「で、でもそれなら向こうだって…」
「誰が協力するんだ?」
「え?」
「例えば他の国家。IS学園に攻め込むなんて自殺行為だ、義も無ければ理も無い。よってこれはなし。例えばテロリスト、でもそんな奴らが殲滅戦をしないなんてルールは守れない。」
「でも…ルールを守らなかったら…」
「その時は…考えはある…最後に亡国機業、こいつらが一番ありえるだろうが…確実に無料じゃ動かない。それにこの亡国機業の恐ろしいところは実態が見えないところだ。それが表立って攻めて来るならそれはそれで潰しやすい。」
亡国機業の恐ろしさ。それは組織が見えてこないところにある。
影で暗躍しそして動いた時には証拠が残らない…これが恐ろしいのだ。
だが仮に表立ってこちらを攻めてくれるのならば話は別だ。
対応もしやすいし何より潰しやすい。
「……じゃあ篠ノ之博士は?」
「恐らく無人ISとどっかの組織と複合で攻めて来ると思うよ。」
「そうなんだ……でも…」
と俺の考えは納得できたようだが…篠ノ之束の危険性がわからないシャルロットには意味がわからないだろう。ある意味俺が勝手に危険視して喧嘩を売ったようなものだ。
「まぁ…しばらく後の話だ、気にするなよ。」
「うん…わかった。でもちゃんと私に説明してよ?」
「了解。」
そう言って話を打ち切る。
こうは言ったものの……実際は俺一人で戦うつもりだ。
下手に一夏と箒以外の誰かを巻き込んでしまえば束は確実に容赦しないだろう。
さてとりあえず
後早いうちに千冬さんのカバーをしておかないと…
そう考えながら一日が始まっていくのだった。
昨日から学び、今日を生き、明日へ期待しよう
~アインシュタイン~
少しずつ事態が奏の手から離れていきます。
事態がどう動いて言っているかそれとも動いていないのか…それは誰にもわかりません。