殺人鬼。
それは、殺人を犯した者の中でも、とてつもないドス黒さを持つ者を指す言葉だ。
その証拠として、殺人鬼と呼ばれるものが残したものからは、その者の異常性が滲み出ている。
普通に生きている者たちにとっては無縁の言葉…と言うわけでもない。
とあるものが言うには、「元々人間は、法や道徳教育を抑制本能に無理矢理押し込んで、殺戮衝動を抑制している。その法や道徳教育に間違いがあれば、誰でもなる可能性はある」とのこと。
この指名手配書に書かれている男の名は、
凶悪な殺人鬼だ。
殺人鬼と化す前は、社内成績優秀、他の人のために多くの事をし、部下を大切にしていると同時に、信頼されており非の打ち所がなく、みなが憧れる存在だった。
一見、殺人鬼になどなりそうにもない彼だが、そんな彼にも一つの悩みがある。
それは、周りの声が全て自分を悪く言っているように聞こえることだ。
自分がミスをした時にかかる励ましの言葉や噂話などが、自分をけなしているように聞こえている。
実際にそう言っていないのは分かっているが、どうしてもそう聞こえてしまっているのだ。
これには、幼少の頃から悩まされていた。
自分が他の者より劣っていると感じている時にかかる言葉が、全てそう聞こえていた。
彼にとって、自分が下だと思われることが一番の屈辱だった。
毎日のように、それを感じるのが嫌いだった。
一時期、自殺をしようとも考えていた彼だが、ある事をキッカケに、自分が全ての人の頂点に立つ事を目指し始めた。
しかし、彼の限界は近づいていた。
どう対策しても、自分が侮辱されているように聞こえる。
そして、遂には周りの声全てが、侮辱の声に聞こえてきた。更には周りからの視線さえも…
あの頃以上の苦痛を味わう。
今まで味わったことのない苦痛を。
膨大なストレスを抱えたせいで、ミスが多くなってきた。
その度に、貶される、侮辱される。
そして、限界に達してしまった。
遂に彼は、人を殺めた。
自分の上司を一人殺した。
普通の人は、こういう時にとんでもない焦りが来るものだろう。
しかし、彼の場合はそうではなかった。
不思議なことに、焦りや後悔はなく、心の中にあった汚れがきれいさっぱり取れたかのような、解放感と幸福感に満ちていた。
そう、彼は悩みの解消法を見つけたのである。
それから少し経って、彼は仕事を辞めた後、行方をくらませた。
彼がどこにいったのか、何故行方をくらませてしまったのかそれを知る者は彼以外存在しない。
彼は人を殺すことで、悩みを解消していった。
だが、一度殺したところでそれが解消されることはない。
彼が見つけた解決策も、所詮は一時的に抑制するための治療薬だ。
薬の効果が切れれば当然、抑えていたものが解き放たれる。
それを再び抑えるためには…言うまでもない。
未だ続く悩みに効く特効薬はない。
苦痛を消すために、ただただ殺し続ける…
この選択は正解だったのだろうか?
答えを知る者は彼を含めて誰もいない。
今もなお、彼はどこかに潜んでいる
仮にもし、会ってしまったら…
霧生智茂の気を損ねるようなことはしないよう、気をつけるべきだ。
でなければ……