異世界レイヴンズ   作:ローグ5

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プロローグを投下します。





0.Prorogue

その日の空は暗かった。重厚な雲が幾重にも広がり星々を覆い隠し陰鬱な雰囲気を醸し出す。まだ雨は降りだしていないが見る者を陰鬱な気分にさせる暗い空から光は差し込まない。ただたまに気まぐれのような切れ目から、()()()()()()()()()()のいずれかがちらりと見えるだけだった。

 

曇天の下、一羽の鴉がじっと眼下の街並みを見つめる。濡れたような黒い体に赤い目をした鴉が見るのは廃墟だ。

洋風の背の低い建物が並び、街内を流れる川には橋が架かっている。そしてその中心部には、完膚なきまでに破壊された巨大な建物の残骸がある。かつて宮殿であった建物の荒廃具合は、この街の有様を象徴するような状況だ。

不意に鴉があわただしく飛び立つ。鴉が飛び立った理由は止まり木にしていた建物が震えたから。ただしそれは自身が原因による物ではない。街内を通過する物があったからだ。

 

街の主要道路を行軍するのは人体をデフォルメした形をしたオリーブドラブ色の機動兵器だった。腕や背部に太いパイプのような砲身を計4つ生やしたそれは地球世界よりもたらされたポピュラーな兵器であるMT(マッスル・トレーサー)の1種であった。そしてその肩にはいずれもこの土地に在った王国―――――もう滅びて、正確には地球国家の後押しを受けた敵国に滅ぼされた王国の騎士団のエンブレムを抱いている。

 

地球製の機動兵器に亡国の騎士団のエンブレム、一見ちぐはぐな光景だが地球世界の人々がアルカピアと呼称する

この異世界においてはありがちな光景である。ボクシーで武骨な姿をした一群はその身に秘めた苦難と怒りをどこか感じさせる押し殺したかのような重々しさ。彼らは今は亡き王国を再興せんと立ち上がった者達であり、その数は少なくとも苦難の中でも再度剣をとった忠義の志士だ。

 

しかしそうした見方はあくまで彼らからの視点の物である。かつて王国を滅ぼした国家やその背後にある地球のメガコーポや国家からするとその行いは紛れもなくテロリストのそれだ。如何なる理由があろうと許されざる物なのである。

 

 

故にこの地には”鴉”が派遣された。自由な気世界にてなおも自由に飛び続ける鋼鉄の鴉が。

 

 

陰鬱な街の空に爆音が鳴り響く。彼方より迫りくる爆音の主は平たい形をしたティルトローター機。MT達の遥か前方より空中を飛翔するそれは最新型故の速度を見せつけるかのように迫る。そしてその下にワイヤーにより後生大事に抱えた物を投げ落した。

 

落下物はそのまま街道に叩きつけられ――――――否、巧みに減速し二本の脚で大地に立った。射程圏外、その様を緊迫と共に見て取った亡国のMT群は戦闘準備を整える。降り立たのは彼らの敵だ。そしてそれは彼らの駆るMTの上位交換とも呼べるAC(アーマード・コア)と呼ばれる機体の一つだ。

 

降り立ったのACは彼らと同じ二足歩行の機動兵器。ただしそのシルエットはより人間に近く、オレンジ色の単眼も相まってより強靭に感じられた。濃い青と鈍色で塗装された機体は鬼神の手斧の如きマシンガンを構える。

 

ACコックピットの中で操縦者たるレイヴン(ACを駆る独立傭兵達の通称)は目を細める。FCSはすでにMTを捉え解析を始めた。後は交戦を開始するだけだ。レイヴンは両手でそれぞれ一本ずつ握る操縦桿のボタンを同時に押し込む。まだ遠くに居る敵機を彼は見据えた。

 

ACの背部が開き轟音と共にブースターが起動する。高速で弓より放たれた矢のように、淡い光の帯を引いてACがMTに突撃し、戦闘が始まった。

 

 

 

 

 

幾つもの放火が乱舞する市街地に小型のドローンが浮遊する。ターレット付きのカメラアイを持つそれ等はレイヴンをサポートするオペレーターに目となる小型無人機である。それらの目を通したオペレーターの監督の元レイヴンは任務を遂行するのだ。数機のドローンの視線の先ではレイヴンの操る青いACとMTが交戦中。すでにMTの半数は撃破されており、戦況は順調となっている。

 

ACは主武装のマシンガンを孤立した敵MTに対して固め撃ちする。装弾数計1000、段数に重きを置いているとはいえどAC用の大口径弾頭はそう耐えられる物ではない。固め撃ちを喰らった敵MTは無数の弾痕に穿たれ崩れ落ちる。

 

報復と言わんばかりに2機のMTが砲口を並べてACを狙う。だがACは全身に装備された大小のブースターを活かして急速に後退し建物の影に隠れてしまう。

 

経験が少ないのか戸惑うMT2機。しかしそんな逡巡はこの戦場において遅すぎた。斜め上から飛び出、巧みにブースターをふかして浮遊するACは動きの鈍い2機をロックオン。背中の連装型ミサイルランチャーから次々とミサイルが放たれ、MTに向かって白煙を引き、突撃していく。

 

放たれたミサイルは狙いを過たず炸裂し敵機を堕とした。これで残りはほんの数機。そこで不利を悟ったのか敵MTは急速に後退していく。まるで何らかの指示があったかのように。

 

角のある指揮官機を堕とさんと青のACは再度背部のブースターを起動しようとする。だがこちらも何らかの指示があったかのように大きくジャンプし飛びのいた。

 

ACが飛びのいた地面に突き立つのは鮮やかな̠緑色の閃光。青いACは単眼より残光を引くようにして地面に降り立ち敵位置を捜索する。新手の敵が現れたのだ。

 

一際背の高い建物の屋上から狙撃したのもまたACだ。その色は瀟洒なワインレッドを中心としている。ただしこちらは武骨な印象の強い青のACとは対照的に曲線を多用した未来的なラインをしており、先ほど狙撃に使用したレーザーライフルを始めとして武器もそうしたどことなく洗練を感じさせるデザインセンスが現れている。同じACにしても対照的な姿をした2機である。

 

ワインレッドのACはダイブするかのように建物を飛び降り、そのまま飛行して青いACの側面を獣のように狙う。、対する青いACは左腕のりゅう弾砲を発砲。弧を描いた榴弾が飛ぶがまるでUFOの如きワインレッドのACの空中機動に拠り背部の建物を爆散粉砕するにとどまった。

 

微塵にあたり一面が包まれる中地面に降り立ったワインレッドのACと青いACはお互いを射程圏内にとらえて発砲。マシンガンの火線とレーザーの光線が幾重にも砂煙を切り刻み互いの装甲をかすめる中、両者は滑るように街路を並走し再び撃ちあう。

 

双方ともに速度に秀でる彼らは建物の遮蔽に阻まれながらも並走していく。幾多の弾痕が周囲に刻まれる中互いの姿が途切れた。かつて城壁であった長い壁が互いの視界を遮ったのだ。しかしそれはACの速度からすると一瞬の事。青いACは城壁の切れ目からワインレッドのACを狙おうとする。が、敵の姿はない。

 

青いACのコックピットにアラート音が鳴り響く。ワインレッドのACは空中機動に自信があるのかまたしても空中に居た。遮蔽を利用して距離をとり冷静に自分の武器を活かせる距離をとる。単純だがタイミングを選んだ見事な機動だ。その背部に背負うミサイルランチャーからはすでにミサイルが発射されている。万事休す。

 

だが青いACのパイロットは背部のブースターを緊急起動し、ミサイルの下を潜り抜けるようにして回避する。

無論それはワインレッドのACの下に入るという事であり、隙を晒した。着地した敵からゼロ距離でレーザーライフルが発射される。

 

特徴的な発射音が重なると共に青いACの頭部が抉れ肩が焼け左腕がズタズタになる。しかしスパークを各所から上げ爆発を待つばかりの壊れた左腕で――――――青いACはワインレッドのACのレーザーライフルを殴りつけた。繊細なレーザーライフルの機関部に接触するとともに左腕はごっそりと肉が抉れるようにはじけ飛ぶ。それは確かにレーザーライフルをも破壊した。

 

動揺するワインレッドのACに対して青いACは体当たり。2機はそのまま半ばより折れた党の残骸へとなだれ込み、互いを突き飛ばしあうように離れる。

 

戦闘前にはミリタリーチックな輝きを宿して居た両者の装甲はすでに戦塵に汚されており、損傷も少なくない。

コロシアムのような狭く閉鎖された空間の中、それでも両者は睨みあった。青いACの単眼と、ワインレッドのACのバイザー奥の双眸が相対する。

 

青いACは右腕にまだしっかりと保持していたマシンガンを構え、対してワインレッドのACはデッドウエイトとなるパーツをすべてパージ。左腕から血のように赤い光刃をひらめかせて躍りかかる。

 

獣のように凶器をひらめかせ襲い掛かる相手に対し、青いACは僅かに下がりながらマシンガンの引き金を引く。

一発、二発、三発四発。五発。確かにワインレッドのACに対して撃ち込まれた徹甲弾はその薄い装甲を突き破り、光刃が青いACを両断するよりも早くコックピットを貫き、空き缶がつぶれるかのような空しい音が響く。

 

薬莢が地面に落ちマシンガンがうなりを上げると共にワインレッドのACに穴が穿たれていく。バチバチとスパークを上げ壊れた玩具のように踊り、やがて崩れ落ちる。そして崩れ落ちたワインレッドのACは各所より炎を噴き上げ爆発炎上した。

炎上に照り返され青いACは輝くが、やがて白い蒸気が兵の輝きを覆い隠していく。

 

いつの間にか雨が降り出していた。

 

 

 

 

 

 

何処かおぼつかない足取りで片腕を欠損させた青いACが街から出ていく。替わって進軍していくのは白い数機のACを戦闘とした多数のMTや戦車と言った機動部隊たち。彼らの機体の肩や側面には日本と呼ばれる地球世界の国家の国旗だという白地に赤丸のエンブレムが、さらにその下には三つの紅の葉が連なりそれぞれ一葉ずつにA・E・Iと刻まれたエンブレム―――――日本のメガコーポである秋津国電子工業のそれが刻まれている。遠方に見える戦闘攻撃機と護衛された輸送機はアメリカのスペリオル・ア―マメンツの所属のようだ。

 

AEIの白いACが独自開発だという武器と一体化した腕を掲げて挨拶し、それに単眼を向けて会釈すると青いACは街の外にて彼を回収すべくホバリングするAC輸送用のヘリに向けて歩いていく。ひとまず今日、青いACと機体を駆るレイヴンは生き残ったようだ。

 

いつの間にか雨はやみ、曇天は崩れ、星空からは異世界『アルカピア』を象徴するかのような二つの月が輝いていた。その下を黒い鴉が飛んでいく。ここではない何処かを目指すようにして

 




第1話は1時間後に投下します。

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