ソードアート・オンライン~夢幻の戦鬼~   作:wing//

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短いですが、後のGGOに繋がる大事な回になります

ちなみに、軍が二つに分かれたのは、オリ主がディアベルを助けたことで起きた現象・・・パラレル設定です。
後のお話でも、少しだけ関わってきます。

※修正に伴い、加筆しました。それに伴い、オリ主による容赦のない残酷描写が少しあります。
お気をつけください。


第8話 「殺しの記憶」

リズベット武具店を訪れてから2か月……

俺は一人で第55層の血盟騎士団本部に来ていた

 

「あっ!キリト君、フォン君、もう来ていたんだな!」

「ああ。ディアベル、久しぶりだな」

「元気そうで良かったよ。あれからギルドはどうだ?」

「おかげさまでなんとかやってるよ」

 

向こうからディアベルがやってきて、俺たちに声をかけてきた。

ディアベルと会うのは、久しぶりだな……以前、相談事を受けた以来か?

 

「ディアベル……解放団もこの討伐戦に参加するのか?」

「ああ。俺たちにだってできることはあるはずだからな!」

 

そう……以前、アインクラッド解放軍、通称『軍』と名乗っていたギルドは、今は大きく二つに分かれているのだ。ディアベルやリーダーであるシンカーを始めとしたメンバーで構成された、良心的攻略ギルド、アインクラッド解放団……通称『解放団』。

一方、強硬派で有名なのが『軍』を名乗っているのだ。そのことでディアベルに相談を受け、解放団設立に協力したのだ。今やほとんどのプレイヤーが解放団に所属しており、軍に所属するプレイヤーの方が少ないのだ。

 

「みんな、そろそろ最終確認を行いたい!静粛に頼む!」

 

青龍連合の鎧を来た男が、そう言って場が静かになった。

 

「……ありがとう。では、これより、『笑う棺桶』討伐作戦の最終ミーティングを始める!」

そう言って、作戦会議が始まった……

 

 

 

「…………………………………………」

作戦会議を終え、俺はプレイヤーたちとともに『笑う棺桶』がいるとされるフィールドへと向かっていた。

キリトやアスナ、クラインたちもどこか緊張した表情をしていた。

(……まさか、プレイヤーと戦うことになるとは)

俺も緊張しているのか、気軽に声をかけることができなかった……そして、作戦ポイントに着いた直後であった……

 

「……っ!?」

「「「!!!!!!!」」」

 

俺はふと殺気を感じ、周囲を警戒する。俺の動きに何人かのプレイヤーが気付き、周りの光景を見て、驚いた。なぜならば、俺たちは『笑う棺桶』のプレイヤーたちに囲まれていたからだ。

 

「かかれぇぇ──────────────!!!」

「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」

「来るぞ!迎え撃て!」

誰かの叫びによって、一斉にレッドプレイヤーが俺たちに襲い掛かって来た。そして、笑う棺桶との戦火が切られた。

 

 

 

「これで!……こいつを頼む!」

「ああ!」

俺はオレンジプレイヤーの武器を破壊し、無力化し、近くのプレイヤーたちに預けた。

そのまま、次のプレイヤーに向かおうとした時だった。

 

「ヒャハァァァァ!」

「くっ……お前は!?」

 

ダガーの奇襲を俺は片手剣で受け止めた。

 

「ハハァ、流石は夢幻の戦鬼だな!簡単には殺れないか!」

「ジョニー・ブラックか!悪いことは言わない、投降しろ!」

「投降だぁ……?てめぇ、舐めたこと、言いやがって!殺してやるよぉ!」

 

俺の勧告が気に障ったのか、奴はダガーで俺に攻撃してきた。

作戦会議で聞いた情報では、こいつは確か麻痺毒を得意とするんだったな。

俺はダガーに触れないように奴の武器の一点を攻撃し続けた。

(そろそろか……)

俺はタイミングを見計らい、わざと隙を作った。

 

「もらったぁ!」

「くっ……!」

 

俺はジョニー・ブラックのダガーの一撃を受け、麻痺毒にかかってしまった。

HPバーの横に麻痺毒のステータスが表示された。

 

「ヒャハハ!おいおい、さっきまでの威勢はどうしたぁ!これだから、ガキはぁ!

まぁ……死ねヤァ!!!」

「…………………………………………」

 

奴は高笑いしながら、俺にダガーを刺そうとした……

 

パキン……!

「はぁ……?」

「………………………………」

 

奴のダガーはポリゴンとなって消滅していた。俺の片手剣ソードスキル〈ホリゾンタル〉が奴のダガーを砕いたのだ。

 

「な、なんでぇ……!?」

「はぁぁぁぁぁ!」

 

何が起こったのか、分かっていない奴に俺は片手剣ソードスキル〈スネークバイト〉を叩き込んだ。

 

「な、なんで動けるんだ……お前!?」

「……悪いな。俺は全バッドステータス耐性強化スキルを習得してるんだ……それにお前と戦いながら、《セイクリッド・ソング》を発動させてもらった。お前の麻痺毒なんて数秒もあれば、簡単に解毒できる」

 

奴のダガーの耐久率を削りながら、俺は同時にバトルスキル《セイクリッド・ソング》を発動させていたのだ。このスキルは再発動までに時間がかかり、効果時間も短いが、状態異常耐性と状態異常回復の時間短縮を同時に付与することができるのだ。そこにエクストラスキルである全バッドステータス耐性が重なったというわけだ。

俺の一撃で動けなくなったジョニー・ブラックを拘束しながら丁寧に説明してやった。

 

「放せぇ!この……てめぇは俺が、必ず殺してやる!!!」

動きを封じたジョニーを他のプレイヤーに引き渡し、俺は戦場へと戻った。

 

 

 

(…………このままなら、何事もなくいけるか?)

 

戦闘開始からどのくらい経っただろうか……俺は戦況を見渡しながら、そんなことを考えていた。今のところ、こちらに死者は出ておらず……次々とレッドプレイヤーが監獄へと送られていった。その時だった……

 

「うわぁぁぁぁぁ!」

「っ!?」

 

プレイヤーの叫びが俺たち攻略組の耳に響き渡った……

俺は声のした方向を見た。

 

「アハハ…………ヒャハハハハハ!!!」

 

HPがレッドになったレッドプレイヤーが狂ったように笑いながら、攻略組プレイヤーを襲っていたのだった。攻略組はためらって反撃ができずにいた。

 

「死ねぇ!死ねぇ!死ねぇ!ヒャハハハハハ!!!」

「っ……貴様ぁ!!!」

 

その姿に俺の中の何かがキレた……

俺は《高速換装》スキルを使い、『蒼炎の烈火』を纏い、自作の槍『鬼電』を持ち、ソードスキルを発動させた。

 

「はぁぁぁぁ!」

俺はレッドプレイヤーを貫き、そのHPをゼロにした……そして、

 

「へぁ……?」

パリン…………!

何が起こったのか理解できないまま、プレイヤーはポリゴンとなって、消滅した。だが、

 

「た、助けてぇ!?」

「っ!!」

 

再び悲鳴がした方を向けば、ソロプレイヤーらしき人物がレッドプレイヤーに襲撃を受けていた。『幻想剣』の効果で速度を増した槍の一撃で、その間に割って入る。

 

「今のうちに逃げろ!」

「す、すまない……!」

 

そう言って、プレイヤーは体勢を立て直すために、後ろへと下がった。

そのまま、俺はレッドプレイヤーをどう捕縛するかを考えながら、武器をぶつけ合っている時だった。

 

「や、止めろぉ!?」

「死ね!死ねぇ!!!」

「あいつらを止めろぉ!」

「殺せ!皆殺しだぁ!」

 

戦場は地獄絵図と化していた。殺すか、殺されるか……奪うか、奪われるか……キリトもアスナも、全員がその空気に呑まれていた。

 

そして、俺も……

 

「殺してやるよぉ!お前ら、全員!」

「…………そうか」

 

目の前のレッドプレイヤーの言葉に、心が冷たくなるのを感じ、俺の中で何かが静かに壊れた。鍔競り合いから、いきなり力を抜き、レッドプレイヤーの体勢を崩す。

 

「おぉ……!?」

「……沈め」

 

そのまま、背後から首を切り飛ばす。頭を切り飛ばされたレッドプレイヤーは、そのHPに関わらず、一撃でポリゴンと化した。

俺の容赦のない攻撃は、捕獲を目的とした討伐隊の中では異常な行動だった。

だが、混沌とした戦場で、俺の行動に気付く者は敵にも味方にもいなかった。

 

「……………………………………………………」

「こ、こいつ!」

「殺せ!あいつを血祭にしてやれ!」

 

俺の闘気に当てられたのか、レッドプレイヤーが俺に迫ってくる。だが……、

 

「……堕ちろ……地獄にな」

 

レッドプレイヤーたちの攻撃を躱し、すれ違いざまに手首を切り飛ばし、

そのまま、背後から心臓を高速で突き刺す。その攻撃で二人のプレイヤーがポリゴンへと姿を変えた。

 

「……ああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

次へと意識を切り替えた俺は、叫び声と共に考えることを止めた……

 

…………………………………………

…………………………………………

…………………………………………

 

そこから先はよく覚えていない……必死になって武器を振るっているうちに、

気が付けば、戦闘は終わっていた。

 

「はぁ……はぁ……」

 

息を切らし、周りを見渡した。キリトやアスナ、クラインと風林火山、エギルさん、ディアベル……見知った顔は全員無事なようだ。

一安心し、ふと手を見た時だった。

 

「っ!?」

 

俺の手が真っ赤に染まっていた。驚き、思わず武器を落としてしまった。

もう一度見た時には、手には血が付いていなかった。どうやら、幻覚を見たようだ。

落とした武器を拾い、鞘に納めた。そのまま、俺はもう一度右手を見た。

 

「………………………………………………」

 

手はいつもの様子だった。だが、俺の手には人を殺した感覚が確かに残っていた。

(俺は……一体何人殺したんだ……?)

さっきの幻覚は、俺の罪の証だったのだろうか?

俺に人を殺す権利があったのか?それで、一体何を守れたのか?

 

一つだけ、はっきりと言えることは……

俺は決してこのことを忘れることはできない、忘れてはいけない……そう思った。

 

 

そこから、どう移動したのか。クラインやエギルさんに何か言われたような気がしたが……そんなことを気にする余裕は全くなかった。

考えることを放棄した俺は、気が付けば、第55層の宿屋に泊まっていた。

 

「……………………………………………………」

メッセージが届いていたが、見る気力がなかった……

今は……誰にも会いたくなかった。




この事件ともう一つの事件が、GGOへの因縁に繋がります。


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