あいつらがやらかしてくれます。
それではどうぞ!
・・・ヤバい。もう20話なのにまだ半分すら終わってないだと( ̄~ ̄;)
リーナ先輩たちとの祝杯会を終えた俺は酔い覚ましも兼ねて一人で校舎をうろついていた。キリトはゼフィリアの花の様子を見に行くとのことで、酔いつぶれてしまったユージオを部屋に連れて帰った俺とは別行動になった。
(それにしても驚いたな・・・セルルト流剣術が生まれた経緯にそんな背景があったとはな)
祝杯会でリーナ先輩が語ってくれた事実を思い出しながら、俺は祝杯会での出来事を思い出していた。
リーナ先輩が使うセルルト流剣術は剣をメイン、鞭をサブとした実用的な変則戦闘を主とした剣技だ。
だが、リーナ先輩曰く・・・セルルト流剣術が生まれたのは、セルルト家が皇帝の不興を買ったためにハイ・ノルキア流剣術の伝承が禁止されてしまったことが起源なのだという。補足として、セルルト家が不興を買った理由は領民のことを思っての行動だったらしく、当時の皇帝があまりにも愚能だったための結果らしい・・・と、ハルト先輩が黒い笑みで語った時には、その場にいた全員(酔いつぶれたユージオとゴルゴロッソ先輩を除く)が何も言えなくなったのは余談だ。
そのことを気にし、無意識にハイ・ノルキア剣術を使うウォロ主席にリーナ先輩は畏怖に近い感情を持っていたらしい。だから、イメージによる力でもいつもの気迫を発揮できずに一度も勝つことができていなかったらしい。まぁ、キリトの試合に感化されてからか、リーナ先輩から迷いは消えたようなので、卒業トーナメントではどうなるかが楽しみだが・・・
(もっと驚いたのはハルト先輩の一言だったな・・・まさか、ウォロ主席がワザとキリトと戦ったかもしれないなんてな)
用意したお酒も空になろうしたところで、そんな爆弾をハルト先輩が放り投げたのだ。どこから聞いてきたのか、ウォロ主席はキリト、そして俺とユージオに興味を持っていたらしい。貴族出身でないこともそうだが、俺たちが使うアインクラッド流剣術や戦い方があまりにも他と違いすぎたことから注目していたらしい。
もっとも、貴族であるウォロ主席が傍付きを貴族出身でない者を選ぶわけにはいかない(家柄の問題的にらしい)ので、俺たちを傍付きに指名しなかったらしい・・・だが、機会があれば剣を交えてみたい、みたいなことを漏らしていたらしい。
それを聞いた俺とキリトは思わず顔を見合わせてしまった。下手すれば、俺がウォロ主席と戦っていたかもしれないと思うと物凄い嫌な汗が流れた。もっともリーナ先輩は初耳だったらしく、また別の意味で冷や汗を流していたが・・・
(はぁ・・・ちょっと飲み過ぎたか。酒を飲むなんて初めてだったからな・・・いや、酔ったことはALOでもあったか。あの時のユウキは大変・・・いや、忘れよう)
以前のALOでの悲劇が頭をよぎったが、忘れようと思い頭を振るう。窓から空を見ると月と星が何にも遮られることなく輝きを放っていた。
(この世界に来てもう2年か・・・現実世界じゃ1日経っているかどうかぐらいか・・・ユウキは大丈夫かな。母さんたちが上手くフォローしてくれていたらいいけど・・・ホームシックかな。ここまで現実世界と離れることになったのはSAO以来か?・・・うん?)
月を見て、ふとそんなことを感じてしまうのは日本人だからだろうか。もっともキリトも同じ立場なので文句は言ってられないのだが・・・その時だった。校舎の外から声が聞こえた。こんな時間に誰かと思い、視線を降ろしてみると・・・声の主はキリトと、ライオスとウンベールだった。
(キリトはともかく、どうしてライオスとウンベールがこんな時間に外に・・・?)
あの二人の行動に違和感を覚えた俺はキリトと合流すべく、校舎の外に出て花壇へと向かった。が、丁度入れ替わりでライオスたちとすれ違ったのだが、
「おやおや!こんな時間にどこに行かれるのですかな、傍付き殿!」
「まさかとも思いますが、貴殿もあんな植物のお世話に行かれるのですか?そんな無駄なことをしに行かれるとは、傍付き殿は本当にお忙しいのですな!」
なんて出会い頭に嫌みを言われたので、いつもみたく相手にするまでもないと思って無視して通り過ぎたのだが・・・いつもと違って奴らの歪な笑みが消えることがなかったのが、嫌な予感を増加させることとなった。
そして、その予感は当たったようだ。
俺が花壇に着いた時、目にしたのは・・・
ショックを受けしゃがみこんでしまったキリトと、キリトが育てていたゼフィリアの花が無残にも散らされていた光景だった。
その光景に、俺はさっきのライオスたちの言葉を思い出し確信した。一気に頭に血が上り、ライオスたちを問い詰めようとその場から駆け出そうとした時だった。
「止めろ、フォン!」
「っ!なんでだ、キリト!これはやったのはライオス達だろう!」
「・・・そうだろうな。だけど、証拠はない」
「そんなの・・・あいつ等を問い詰めればいい!こんな・・・人の所有物を無作為に傷つけるなんて、あきらかに禁忌目録違反だろう!?」
「駄目なんだ・・・!あいつらは花を傷つけたじゃない、あくまでも花の手入れをしていてだけのつもりで、花を散らしたんだ。禁忌目録には・・・違反してない」
「・・・!?そんなのありかよ!?」
冷静に状況を判断していたキリトの言葉に俺は思わず地面を蹴ってしまった。頭に血が上りすぎたせいで、カッとなって思わず力づくで行動しようとしてしまった。
この世界の住人・・・フラクトライトたちは禁忌目録に違反する行動を取ることができない。逆に言えば、禁忌目録に反しないと判断して行動することはできるということだ・・・それは、法の抜け道を見つけて動くことができることをも意味している・・・善悪を問わずにだ。
幼少期のアリスやキリトと同じように、ライオスたちも『花の手入れ』として、セフィリアの花を散らしたのだ。あまりにも幼稚で、傲慢で・・・如何にも悪意に満ちすぎていて思わずブチ切れそうになった。
もしキリトが止めていなければ、間違いなくライオスたちに掴み掛かっていただろう。今、思えば先ほどの挑発もそれを見込んでの言動だったのだろう。なんとか苛立ちを抑え、俺はゼフィリアの花の状態を見た。
根までは散らされていないようだが、この状態から花を咲かせようとするのは・・・不可能に近いと思った。だからこそ・・・落胆するキリトの気持ちがよく分かった。
(キリトから話を聞いた時は、俺も実験程度にしか考えていなかった。ゼフィリアの花は北帝国の土地では絶対に咲かないという特性があった。土なのか環境のせいなのかは分かっていなかったが、それをキリトが自身のイメージ力で咲かせることができるとしたら・・・そう思って始めた実験だったらしい)
それを聞いた俺は、時々キリトに協力していた。ゼフィリアの花の絵が載った図鑑を持って行ったり、どういう風にイメージすればいいのかを話しあったり・・・
だけど、花を育てるキリトの目はいつしか真剣なものに変わっていた。
ある日、キリトがこう言っていた。
「このゼフィリアの花って、なんかアンダーワールドに来た俺たちみたいだよな」
その言葉に俺は納得してしまった。俺と違って、ここに来た理由も知らず、更には初めて異界の地に飛ばされたキリトにとって、ゼフィリアの花に対する想いがどれだけのものなのかを・・・だからこそだった。
「・・・ごめんよ」
涙を流し、花たちに謝罪するキリトを見て・・・掛ける言葉が何も見つからなかった。いくつかの蕾はポリゴン化するのを黙って見つめることしかできない。
ここまで共に戦ってきた友に・・・俺は何も言う事ができないでいた。
そんな時だった。
『信じなさい』
「「!?」」
誰もいないはずの花壇に女性らしき声が響いた。慌てて周りを見渡すが、やはり花壇には人影は見つからない。だが、声は続く。
『信じるのです。異国の地でここまで育った花たちの力を』
「誰だ・・・?」
『そして、その花をここまで育てたあなた自身の力を』
声の主はキリトへ向けて言葉を送っているようだった。
「でも、花は・・・もうみんな死んでしまった」
『大丈夫。土に張った根はまだ生きようとしているわ。それに感じるでしょう?この花壇に咲くたくさんの生花たちが小さい仲間を助けたいと思っているのを・・・』
「・・・無理だ。俺たちにそんな高等な神聖術は・・・」
『あらゆる術式は『心意』・・・あなた方が言うイメージを整える道具に過ぎないわ。さぁ、感じて?花たちの祈りを・・・世界の理を』
「心から意する意志・・・『心意』」
「プログラムやシステムを超える・・・想像の力、ってことなのか?」
キリトや俺の言葉に応えたかのように花壇の花たち全てが一斉に光を放ち始めた。その光はまるで自分のたちの命を分け与えてもいい、そんな生命力に満ち溢れた光だった。俺の勝手な考えかもしれないが、それでも俺はさっきの言葉を・・・この光を信じてみたいと思った。
「フォン、協力してくれ」
「ああ、もちろんだ」
「すぅ・・・頼む。力を、命をほんの少しだけ分けてくれ」
キリトの言葉と共に俺は想像した。
ゼフィリアの花の根が生きているというのなら、俺の体を通して花の生を根へと伝える。自分の体を橋として、流れ行く生命エネルギーを頭に強くイメージする。
そのイメージ共に花たちが放つ光が一段と輝きを増す。そして、光が集結したかと思えば、ゼフィリアの花へと一気に降り注いだ。その結果・・・ゼフィリアの花は息を吹き返したかのように蕾を揃え、元の姿へと復活していた。
「これが・・・心意の力ってことなのか?」
「・・・多分。そうだ、さっきの声は・・・もうしないか」
「・・・・・ありがとう」
目の前で起きた現象に曖昧にしか答えられなかった。先ほどの声の主に聞いてみようとも思ったが、もう既に声は聞こえなくなっていた。虚空に向け礼を言うキリトに遅れながら俺も礼を言うのだった。
そして、迎えた先輩たちの卒業式。
卒業トーナメントを見学するため、大修剣場に来た俺たちの目下では激戦が繰り広げられていた。
リーナ先輩とウォロ主席のツートップの剣士。その一進一退の攻防は観客全ての目を釘付けにしていた。剣がぶつかり合うたびに剣圧が発生し、戦いの激しさを物語っていた。
だが、遂に勝負を決する時がきた。
ウォロ主席が剣を上段へと構えた。キリトとの試合の時にも放ったハイ・ノルキア流剣術秘奥義〈天山烈波〉の構えだ。それに対するリーナ先輩が構えるのは、セルルト流剣術秘奥義〈輪渦〉(両手剣ソードスキルのサイクロンだ)で迎え撃つようだ。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
気合いと共に放たれた両者の秘奥義がぶつかる。そのぶつかり合いに、会場全体が振動しているかのような錯覚を覚えた。そして、技の打ち合いを制したのは・・・
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
その気迫と共に、ウォロ主席の模造剣を叩き折ったリーナ先輩だった。流石のウォロ主席も剣を折られるとは思っていなかったのか、驚愕の表情を浮かべていた。そのまま、リーナ先輩はウォロ主席の首へと剣を突き付けた。
「そこまで!」
アズリカ先生の掛け声と共に会場に歓声が爆発する。二人の試合に拍手喝采の嵐が起こっていた。その歓声に手を振って応えるリーナ先輩、そして、やられたといったよう表情でその様子を見つめながら苦笑するウォロ主席の姿があった。
「良かったな、キリト」
「ああ!やっぱり、リーナ先輩は凄い人だぜ!」
ユージオと共に二人に拍手を送りながら、俺は隣のキリトにそう声を掛けた。キリトも自分のように喜んでいた。
そして、ゴングを終え、先輩たちと最後の時間。俺はユージオと共に、選別の品としてワインを送っていた。本当は自製のアクセサリなど送りたかったのだが、アンダーワールドでは残念ながらそんなスキルも持っていないし、持っていたとしても貴族であるハルト先輩にあまりテキトーなものも送れないこともあって、ユージオに相談した結果、ワインを送ることになった。
その横で、キリトが見事に花をつけたゼフィリアの花をリーナ先輩に送っていた。そのゼフィリアの花を見て、ハルト先輩は気が付いたようだ。
「・・・フォン君。あの花はキリト君が育てたものかい?」
「そうです。北帝国では育つことがないとされていたものを、キリトが必死に努力を注ぎ込んで咲かせたんです」
「・・・・・・・なるほどね。そうか、そうか」
「先輩はもしかして・・・そのことも知っていたのですか?」
ある確信を持って、ハルト先輩にそう尋ねてみた。だが、先輩は笑っただけで答えてはくれなかった。どうやらそういうことらしい。
「でも、あの花を育て上げたキリト君の方が、僕よりも既に詳しくなっているじゃないかい?この世界にはそういう力も働くことがあるのだと」
「・・・・・分かりました。先輩からの最後の課題として受け取っておきますよ」
「察しが良くて助かるよ。まぁ、僕が君を傍付きとして指名したのは、そんな探求心を一目見た時にあるんじゃないかと感じたからなんだけどね」
「・・・えっ!初めて聞いたんですけど、そうだったんですか!?」
「そうだよ。まぁ、来年からは君も傍付きを持つことだろうから、傍付きを指名する時にはしっかりと見極めることだね」
「まだ修剣検定試験は終わってませんよ。気が早すぎますよ」
「そうかな?君なら、きっと上級修剣士になれると思うけどね。それよりも大丈夫かい、君の友人。リーナ君があんな表情を向ける男性は初めて見たんだが・・・」
「・・・言わないでください。見ないようにしてるので」
ハルト先輩の指摘に俺は思わず表情が暗くなった。
まさかこの世界でもフラグを立てるとは思ってもいなかったのだから・・・こんなことをアスナが知ればと思うと、物凄く胃が痛くなる。
というか、間違いなくこちらに飛び火して、ユウキに詰問される未来が簡単に想像できる。
流石の先輩も俺の苦労を察してくれたのか、労うかのように手を俺の肩に置いて苦笑していた。
こうして、先輩たちは卒業していき、俺たちは上級修剣士になるための『修剣検定試験』を受けることになったのだが・・・
「フン!貴族の本気というのものを見せてやるぞ、平民!」
(・・・まさかこうも早くこんな機会に恵まれるとはな)
剣を抜きながらそう言い放つライオスを見て、俺は思わず笑みを浮かべてしまった。
そう・・・俺は検定試験でライオスと戦うことになってしまったのだ。
まさかのVsライオスルート・・・
次回フォンが大暴れします!
そして、謎の大剣にも変化が・・・
それではまた。
次回更新 6月7日0時予定
『外伝 鼠のボディガード』を読みたい人!
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