ソードアート・オンライン~夢幻の戦鬼~   作:wing//

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ようやくアリシゼーションのヒロイン登場です。
キリの良いところまで書いてたら、ちょっと長くなりました。

今更ですが、アニメのOPが神曲すぎませんか?
そして、ベルクーリとベクタの戦い…続きが待ち遠し過ぎて、1週間が辛かったりしてます(笑)

それではどうぞ!


第27話 「決意を胸に」

「三人とも、出なさい」

 

翌朝

眠っていた俺たちを起こしたのは軟禁部屋の鍵を開けたアズリカ先生のその一言だった。指示に従い、ベットから体を起こして部屋の外へと出る。

 

「ユージオ修剣士、こちらへ」

「えっ…はい」

 

アズリカ先生に呼ばれ、一歩前と出たユージオ。そんなユージオに、アズリカ先生は神聖力が込められた結晶(神聖結晶という貴重な物だと記憶している)から高濃度の神聖力を抽出し、そのままユージオの右目に手を当てた。

 

「システムコール…ジェネレート・ルミナス・エレメント…リコンストラクト・オーガ」

 

上位の回復神聖術の式句をアズリカ先生が唱えると術が発動し、先生が手を離すと、

 

「目を開けてみなさい」

「……っ!あ、ありがとうございます、アズリカ先生!」

 

禁忌目録を破ったことで吹き飛んだユージオの右目が元に戻っていた。そのことについてお礼を言うユージオだが、アズリカ先生の表情はあまり良いものではなかった。

 

「いえ…それよりも貴方方3人をこれから迎えの者に引き渡せねばなりません。その前にこれだけは伝えておこうと思い、私はここに来ました」

 

そう告げたアズリカ先生の言葉に覚悟していた俺たちはさほど驚いてはいなかった。そして、アズリカ先生は言葉を続けた。

 

「ユージオ修剣士…貴方は私に破れなかった封印を破った。ならば、私が行けなかったところに貴方はきっと行くことが出来る筈です。その剣と、そして友を信じなさい」

「…はい!」

「…キリト修剣士、フォン修剣士。貴方方が何者なのかは、遂には私にも分かりませんでした。ですが、貴方方があのカセドラルに行った時には何かが起きる……だからこそ、その先に光があることを私はここから祈っています……ずっと…」

「これまで大変お世話になりました、アズリカ先生」

「…そして、すみませんでした。期待を裏切るような結果になってしまって」

「……結果はどうあれ、貴方方が自分の信じる道を歩んだのでしょう?ならば、その気持ちを忘れることなく前を見据えることです…気をつけなさい、セントラル・カセドラルは貴方方が思っているよりも影が見えない場所ですから」

「「「……っ!?」」」

 

アズリカ先生の忠告に思わず息を呑んでしまう。だが、アズリカ先生はそれ以上語ろうとはせず、俺たちについてくるように指示するのだった。

 

 

 

「…あれが迎えの使者か…」

 

アズリカ先生に連れられ、入った大広間には既に先客がいた。こちらに背を向けているので顔は分からないが、金の鎧に青のマント、その鎧に引けを取らない金髪のロングヘアーからして、その人が女性であること、そして、おそらく整合騎士なのではないかと思い、俺の口から言葉が漏れていた。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「「「……? 」」」

 

俺たちの存在に気付いている筈だが、一向に動こうとしない彼女に首を傾げつつも、俺たちは近づくことにした。そして、すぐ傍まで近づいた時だった。

 

「…っ!」

「どうした、ユージオ?」

「……彼女の恰好…あの金色と青色の組み合わせにどこか見覚えがあって…」

「私語は慎みなさい、罪人たち」

「「「っ!?」」」

 

何か違和感を覚えたらしいユージオにそう尋ねると、俺たちの会話を遮るように騎士の声がその場に響いた。そして、ようやく彼女は俺たちの方へと振り返った。

 

「セントリア地域統括公理教会整合騎士……アリス・シンセシス・サーティです」

「…ア、アリス…?」

「えっ…」「なぁ…」

 

ユージオが呟いた名前に驚くキリトと俺。慌てて視線を彼女…アリスと名乗った騎士へと向けるが、彼女はユージオと違って全く驚いてはいなかった。

 

「…アリス。君、なのか…?本当に…?」

 

目の前の光景が信じられないようで、ユージオはフラフラと彼女に近づいていく。だが、次の瞬間だった。

 

「っ!」

「えっ……ぐぅぅ!?」

「「ユージオ!?」」

 

手を伸ばそうとしたユージオを、彼女は思いっ切り抜刀していない両手剣で殴り飛ばしたのだ。その容赦のない一撃に吹き飛ばされたユージオに駆け寄る俺たち。だが、彼女は冷たく言葉を掛けるだけだった。

 

「言動には気を付けなさい。私にはお前たちの天命を7割まで奪う権限があります。次に許可なく触れようとすれば、その手を切り落とします」

 

忠告…というよりも警告を告げた彼女を呆然と見つめるユージオ。彼女が本当に昔連れ去られたアリスなのかと確認するため、俺たちはユージオに小声で話し掛けた。

 

「あれが…本当にお前が探していたアリスなのか?」

「……間違いない、と思う」

「分かった…ただその話は後だ。ここは素直に彼女に従おう。

セントラル・カセドラルに行けば、何か事情が分かるかもしれない」

 

キリトの問いかけに戸惑いながらも答えるユージオ。

彼がそう言うのなら間違いはないのだろう。ともかく、そのことは後回しにすべきだと思った俺の提案にキリトとユージオも賛同してくれたらしく黙って頷いた。

 

「さて…上級修剣士ユージオ並びにキリト、そして、フォン。そなた等を禁忌条項抵触の咎により捕縛・連行し、審問の後に処刑します」

「「「っ!?」」」

 

そう告げてからの彼女の行動はとても速かった。俺たちの手に手錠を填め、外へと連れ出した。校舎の外には彼女が乗ってきた飛竜が待機しており、飛竜の体に繋がれた拘束具で更に体を拘束されてしまった。

 

後は連行されるのを待つだけかと思っている時だった。校舎から誰かが駆けてくるのが見え、視線を向けると…

 

「マ、マーベル!?」

「えっ…!?ティーゼ!?」

「ロニエまで…!?」

 

その人物たちはマーベルたちだった。そして、彼女たちは俺たちの剣を必死に持ってきてくれていた。操作権限が足りていないせいで自在に持ち運べないにも関わらず、引きずりながらも彼女たちは持ってきていた。

 

そんな彼女たちにアリスも気づき、飛竜から降りてマーベルたちの前に立ちはだかった。そのアリスの前にマーベルたちは膝を突き嘆願した。

 

「整合騎士様!お願いがございます!!」

「私たちに…ユージオ先輩の剣を…」

「先輩たちに剣をお返しする時間を頂けませんか!?」

「………いいでしょう。但し、罪人たちに剣を帯びさせるわけにもいきません。これは私が預かりますがよろしいですね」

 

尋ねた形だったが、有無を言わせない様子でマーベルたちから剣を取り上げていくアリス。だが、彼女もただ冷徹に接したわけではなかった。

 

「…会話をするのなら一分間に限っては許可します。行きなさい」

「「「…!!」」」

 

そう告げたアリスは配慮してくれたようでその場から少し離れた。許可を貰ったマーベルたちが俺たちの元へと駆け寄ってきた。

 

「主席!」

「…また呼び方が戻ってるよ、マーベル」

 

いつものやり取りに思わず苦笑する俺だったが、それに対しマーベルは今にも泣きそうな表情をしていた。どう言葉を掛けるべきかと俺が迷っていると…

 

「私…強くなります…!」

「えっ…?」

「私も…主席みたいに正しいことを胸を張って言える人間になります!そして、騎士になって……必ず主席たちを助けます!私が憧れた先輩は決して間違ってなかったんだって……そのためにも強くなります!!」

「……!」

 

彼女の意思が宿った目を見て、どこか嬉しく思う自分がいてまた笑みが零れた。そして、言葉を掛けようしたが…

 

「そこまでです。離れなさい」

 

無常に告げられたアリスの言葉と共に、飛竜が翼を羽ばたかせたことで風が巻き起こる。マーベルたちが離れたところで飛竜が飛び上がり、体が持ち上げられたことで妙な浮遊感に襲われた。

 

「主席!……フォン先輩!!!」

「きっとまた会えるさ、マーベル!!」

 

必死に叫ぶマーベルに俺も大きな声でそう返す。そして、飛竜はどんどんと高度を上げていき、次第にマーベルたちの姿も、学院の姿も遠くなっていった。

それに対し、近づいてきたのは…

 

(セントラル・カセドラル……まさかこんな形で来ることになるなんてな)

 

近づいてくるセントラル・カセドラルの城壁を見ながら、俺はそんなことを呆然と考えていたのだった。これからはまさしく未知の領域……何が待っているのか見当もつかない中、俺たちを待っていたのは…

 

「まさか閉じ込めてから一日半の間、何もなしとはな」

 

まさかの牢獄での待機だった。何度目になるか分からない衛士の見回りを終えた頃、そんな感想が俺の口から洩れていた。

 

そう…尋問とか拷問を覚悟していた俺たちだったが、拘束を解かれたと思えば、地下の牢獄に閉じ込められたまま、何もされることなく一日と半分を過ごしていたのだ。

 

もちろん部屋の壁に繋がれた鎖を手に填められているので決して自由とは言えないが、覚悟を無駄にされたようで思わずため息が出てしまった。俺の覚悟と時間を返してほしいくらいだ。

 

「まぁ、体を休める時間ができて良かったじゃないのか?どうだ、ユージオ。少しは気持ちの整理も着いたか?」

 

俺の言葉に肯定的に答えるキリト。そんな彼が話題を振ったのは、ベッドで寝たまま体を壁の方へと向けていたユージオだった。ちなみに、牢獄の中にはベットが三つ備え付けで置かれており、左からユージオ、俺、キリトの順番だったりする。

 

「…なんだか…まだ夢を見ているような感覚なんだ。僕がウンベールの左腕を切ったことも、それにライオスがあんな風になったことも……」

「あんまり思い詰めるなよ。変えられないことよりも、今から先のことを考えた方がいいだろう?」

「そうだな…根を詰めてもしょうがないこともあるしな」

 

キリトの言葉に、SAOでのことを思い出した俺は苦笑しながらキリトに同意した。あの時の俺も確かに思い詰めすぎて色々とボロボロになってたことがあったなと思ったからだ。

 

「今から先のこと、か……二人の言う通りだね。なんとかこの牢屋から脱出して、アリスに何が起きたのかを確かめないと…!」

「ああ。その意気だ、ユージオ!…けど、ユージオ。あれは本当にお前が探していたアリスなのか?」

 

学院で途中になってしまっていた話を俺はユージオに問い掛けた。あの時はキリトの質問にユージオは彼女がアリスだと答えていたが、どうにも腑に落ちない点があったからだ。

 

「彼女…あのシンセシス・サーティと名乗ったアリスは本当に昔連れ去れたアリスなのか?とてもお前を知っているようには見えなかったぞ?」

「……間違いないと思うよ。あの声、あの金色の髪色に真っ青な瞳…僕が忘れるわけがない。彼女は間違いなくアリスだよ…雰囲気は全く別物だけど」

「なら、どうして幼馴染のユージオを覚えていないんだろうな。学院でも、容赦なくぶちのめしてたし…」

「そうだよな。それに確か、アリスの家名ってツーベルクだったよな?どうして別の名を名乗っているんだ?」

 

キリトの疑念に同意しながら俺も自分が感じていた疑念を打ち明けた。過去にユージオたちと過ごしたことを思い出した俺だが、あくまでも断片的な記憶がほとんどで、昔のアリスの容姿が思い出せないでいた。

 

それはキリトも同じようで、その点に関してはユージオ頼りとなってしまうのだ。それに、シンセシスという名にもどこか聞き覚えがあるような気がするのだが…

 

「なぁ…もしかして公理教会によって記憶や性格を何らかの手段で制御刺されているってことはないのか?」

「でも、そんな神聖術は学院の教本にも載っていなかったと思うけど…」

「いや…教会の最高司祭だけが知っている術だとすればどうだ?前に、天命を操る術を教会の偉い司祭が使えるかもしれないって話をしてくれたよな?

もしそうなら、記憶や性格をどうにかしてしまう術もあるんじゃないのか?」

 

ユージオの疑問に推測で答えるが、俺の中には確信があった。オーシャン・タートルで聞いた話とあの整合騎士のアリスの変わり様が同一のものではないかと思ったからだ。どうやらキリトも同じ考えらしく、俺の言葉に頷いていたが、何か引っ掛かる点もあったらしく、

 

「でも、もしそうだとすれば…あの時聞いた声は何だったんだろうな?」

「2年前の『果ての山脈』で聞いたあの声か…俺たちの名前を呼んで、セントラル・カセドラルで待ってるって…」

「ああ、確かに二人ともそんな声を聞いたって言ってたね。セルカと一緒に僕の傷を治そうとした時だよね?」

「てっぺんか…頂上に着いたらそれも分かるかもしれないな」

「……ともかくカセドラルに行ってみるしかないか。それじゃ、脱獄といきますか?」

「でもどうやってここから出るんだい?」

 

キリトの言葉を引き取り、俺は固まってしまった体を動かしながら脱獄の準備を始めた。そんな俺を見て、手段はどうするのかというユージオの言葉にキリトも俺へと不思議そうな視線を向けていた。

 

そんな二人の視線に俺は脱獄の手段であるそれを二人にも見えるように持ち上げた。

 

「この腕に繋がれた鎖だよ」

「「鎖…?」」

「ああ。閃いたのは、今朝、ステイシアの窓が開けるかどうか確かめた時だったけどな」

 

何もこの一日半…無駄に過ごしていたわけではない。何か脱獄するための鍵はないかと室内を観察していたところ、オブジェクトの優先度が気になったことがきっかけだった。

咄嗟にいつもの癖でステイシアの窓を開く動作をすると、この牢屋でも窓を開くことができることに気づき、鎖の優先度を見たのだ。

 

「この鎖の優先度は38だ。手に届く範囲のものは全部調べたが、この部屋の中で最も優先度が高いのはこの鎖だ」

「でも、繋がれてる鎖じゃどうしようもなくないかい?」

「このままならな……でも、ここには罪人を拘束している鎖が3本もあるんだぞ?」

「…そういうことか、フォン!」

 

俺の言葉にその意味を理解したキリトも笑みを浮かべていた。そして、遅れながらも鎖のステータスを見ていたユージオも気づいたようだ。

 

「そうか!同じ優先度同士の鎖たちをぶつければ…」

「ああ、この鎖を引きちぎれるかもしれない……善は急げ、早速やってみようぜ!」

 

俺たちのオブジェクト権限の数値は40を超えているため、38の優先度の鎖を引っ張り合うのはわけない話だった。

 

試しに少しだけ3本の鎖同士をぶつけ合ってみると、予想通り天命が少しだが減少していた。これならいけると確信した俺たちは鎖の音で看守が気づかないように注意しながら、今度は鎖を少しずつ引っ張り続けた。

 

「よし…ここまで減れば、後は思いっ切り引っ張ればいけそうだな。二人とも準備はいいか?」

「ああ」「うん」

「よし…じゃあ、いくぞ?」

 

そして、鎖の天命も残り2割となったところで最後の仕上げに掛かることにした。俺の掛け声に二人とも息を合わせ、鎖を持つ手へと力を込める。

 

「「「1、2の…3!」」」

バキン!

「おっとと…!」「うおっ…!」「ぐぅ…!」

 

勢いよく引っ張ったお陰で鎖は千切れたが、その反動で俺たちも後方へと倒れてしまった。俺は檻に背中を向けていたので尻餅を着くだけで済んだが、壁に背を向けていたキリトとユージオは壁との距離が近かったこともあり、盛大に頭と背中をぶつけて悶えていた。

 

「いたた…今ので天命が100は減ったよ」

「そのくらいで済めば安いもんだろう?それにしても、上手くいったな……フォン、どうした?」

 

そんな会話をしているキリトに話を振られ、俺は砕けた鎖の破片を拾っていたところだった。その欠片のステータスを見てみると、

 

「へぇ…欠けても優先度には変わりはないんだな。それに、この千切れた鎖であの檻を壊すのも問題なさそうだな」

「鎖の欠片か?」

「ああ。今は手元に武器がない状態だし、使えそうな物は持って行こうと思ってな」

 

キリトの疑問に答えながら、先程飛び散った欠片をいくつか制服のポケットにしまい、俺とキリトは檻へと近づいた。

 

「さてと…これから檻をぶっ壊して脱獄するわけだが…」

「本当にいいんだな、ユージオ?ここから脱出して、アリスに関する真実を探るってことは公理教会に真っ向から反するってことだ」

「もしまだ迷いがあるんだったら、お前は一緒に来るべきじゃない。ここからはルーリッドの村や学院なんかとは話が違う。本当に命を懸けることになる。覚悟が決まらないと言うのならここにいた方がいい」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

キリトと俺の言葉を受けたユージオ。だが、彼がはっきりと言葉を言い放った。

「…分かってる。でも、僕はもう決めたんだ…アリスと一緒にルーリッドの村へと帰るためなら何だってするって・・・公理教会に背くことも、そのために必要なら何度だって剣を抜いて戦うって…

もし、あの整合騎士が本物のアリスなら…記憶を失っている原因を突き止めて元のアリスに戻すんだ…僕にとってはそれが何より大切なことなんだ!」

 

その言葉と共にユージオが俺の方へと視線を向けたてきた。

 

「フォン…フォンはティーゼたちにこう言ったよね…例え法が禁じていたとしてもしないといけないことがあるって、それをするためなら罰されることを覚悟してでもやり遂げるって…」

「……ああ」

「僕にもその意味がようやく分かった気がするよ…それが僕の今やるべきことで、本当に覚悟を決めないといけない時なんだ」

「…そうか…なら!」

 

ユージオの言葉と覚悟を受け取った俺とキリトはそれに応えるように、自身に繋がっている鎖を檻の扉へとぶつけた。豪快な音を立て、檻の扉が吹き飛んだ。

 

「一緒に前へ進もうぜ、ユージオ」

「看守が来る前に脱獄するぞ!」

「…うん!」

 

俺の言葉にキリトとユージオが答え、俺たちは出口を求めて牢屋の外へと出た。牢獄に連れてこられた時に道順は覚えていたため、看守の姿にだけ気を付けながら、牢獄を走る俺たち。

 

だが、不思議なことに何故か看守がやってくる気配がなかった。檻の扉をぶち破った時にかなり豪快な音が響いたのだが……その疑念は看守室にまで辿り着いたときに払拭されることとなった。

 

「……ねぇ、キリト、フォン…あれって寝てるよね?」

「…ぐっすりと寝てるな」

「…看守の仕事も大変なんだろうな」

 

ユージオの言葉に苦笑いしながら答える俺たち。その視線の先には、看守室のベットでぐっすりお休み中の看守その人の姿があったからだ。とりあえずラッキー半分同情半分の感想を抱きながら、俺たちは牢獄を脱出して地上へ、セントラル・カテドラルの庭園へと出た。牢獄から距離を取ったところで追手がきていないことを確認して、ようやく一息を吐くことができた。

 

「…ここまで来ればもう大丈夫だろう」

「そうだな。脱獄にも気づかれてないみたいだし…あとはどうやってカセドラルの中に入るかだな」

「……うん?あれって…」

 

脱獄に成功したことにホッとしながらも、これからどうするかをキリトと話していると、ユージオが庭園に咲いている花を見て何かに気付いたようだった。何事かとユージオへと視線を向けると…

 

「…間違いない。咲いているものなんて初めて見たけど、これは薔薇だよ、二人とも!?」

「へぇ~、薔薇か……って、薔薇!?本当か!?」

「もしかして…この馬鹿広い庭園に咲いてる花が全部薔薇!?」

 

驚くユージオの言葉に、キリトと俺もびっくしりして慌てて周りの花を見渡していた。そもそも薔薇の花というアンダーワールドではかなり貴重な花なのである。央都や学院でさえ見ることはなかったのだから驚くのは無理ない話だった。

 

それに、飛竜で連行されてきた際に空から庭園の光景は目にしていたが、只でさえ迷路のように広がる庭園に薔薇が咲き誇っているのだとすれば、ここが以下に外部と比べて違う場所なのだということを認識させられたような気がした。

 

そして、それはユージオも同じ気持ちのようだったらしく、

 

「信じられないよ…僕たち、本当にあのセントラル・カセドラルに来たんだね」

「予定よりも大分早くな…最も罪人として連れてこられたという方が正確かもしれないがな」

「だけど逆に助かったのかもしれないな…もし整合騎士になってからここに来たら、俺たちも記憶を制御されていたかもしれない」

 

ユージオの言葉に冗談で答えたのだが、キリトの言葉でその可能性を失念していたことに気付いた。そして、同時にある疑問が俺の中で生まれた。

 

「だけど…もし記憶を操られているとすれば、整合騎士たちは自分を何だと思っているんだ?全ての記憶が封じられているわけじゃないだろう?」

「自分がどう生まれてとか、家族や故郷のことに関する知識は残っていないと変だよな。

だって、それが自分の根っこの部分…本来の起源に当たるわけだからさ」

「そんな大本の記憶まで操作するなんていくら何でも難しそうだよね……整合騎士は飛竜でどの地域にもすぐに向かうことができるわけだし…

本物の記憶を封じてから偽物の記憶を植え付けたとしても、自分の生まれ故郷を訪れでもすれば嘘だって気づくわけ……あっ」

 

途中まで言葉を言いかけたユージオの言葉に何事か思ったが、キリトはユージオの表情を見て、その訳に気付いたようだった。

 

「ユージオ…お前、このカセドラルで、もしかしたら俺たちの記憶を取り戻す手段が見つかるかもしれないって思ったんだろう?」

「……そういうことか」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

どうやらキリトの指摘が正解だったらしい。無言で肯定の意を示すユージオに思わず何も言えなくなってしまった。だが、キリトはそんなユージオ頭をつかむと、

 

「こいつめ!この、この…!」

「心配性だな…どこまで自分より人の方を気遣えば気が済むんだ、お前は」

「や、やめろよ、二人とも!?子供扱いしないでよ…!」

 

キリトがユージオの髪の毛をくしゃくしゃにする一方で、俺はユージオの頬を軽く引っ張っていた。そんな俺たちの悪戯を振り払って、少し拗ねたようにユージオは照れてしまっていた。

 

「言っただろう?記憶が戻ろうと戻らまいと、俺もフォンもお前に最後まで付き合うって」

「そこまで心配されると、逆にこっちが不安になるぞ?」

「……もちろん二人の言っていることを疑ってるわけじゃないんだ…何度も二人はそう言ってくれたわけだし。けど……僕たちの旅そのものが終わりに近づいているだと思ったら、なんだか…」

 

その言葉で、旅の終着点に辿り着けば俺とキリトはいなくなってしまうのだとユージオが考えていると気付いた。だから、俺とキリトは…

 

「だったら、旅の終わりは幸せな結果にしようぜ」

「そうだな…悲しい結末よりも、いつでも笑って思い出せる記憶にさ。アリスの記憶を戻して、ルーリッドの村に戻るっていうお前の夢を叶えてさ」

「あっ、そうなると、ユージオはまた転職を選び直さないといけないな。今からよく考えておいた方がいいぞ?きっと次のは一生ものになるだろうからな」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

俺とキリトの言葉に一瞬呆けてしまうユージオ。そして、いつもの調子に戻ったユージオは苦笑いしながら言葉を返した。

 

「それは気が早すぎないかい、二人とも。まぁ、もう木こりだけは懲り懲りだけどね」

「それは、あんな途方もない経験をすれば当然だよな」

「フフッ、そうだな。よし、それじゃ行くか?」

 

キリトの言葉に頷き、俺たちは再び中央の塔へと向かい出したのだった。

 

 

 

ともかく入り口を見つけなければならないと、塔を見据えて庭園を進んでいく。そして、噴水がある少し開けた場所へと出た時だった。

 

「流石は我が師アリス様…その慧眼はやはり素晴らしい」

「「「っ!?」」」

 

突如聞こえてきた男の声に視線を傾けると、観覧席のような場所に座っている人物に気が付いた。

そして、その恰好が、アリスが着ていた鎧と近いデザインのものだと気付き、俺はその人物の正体に当たりをつけていた。

 

「まさか、囚人の脱走という万が一の脱走を予期されていたのだからな。君たちの脱走に備えてここで一晩過ごせと命じられていたが、アリス様の予想に間違いはなかったな」

「アリスが…我が師?」

「正直私は半信半疑だったが、まさか本当に現れるとはな」

「……整合騎士か。脱走が予想されていたのは予想外だったな」

 

まさかの整合騎士の言動と待ち伏せに驚くキリトの横で俺も冷や汗を流していた。現状、手持ちで使えそうな武器を再確認しながらも、かなり不利な状況であることには違いがなかった。

 

「もちろん、すぐに地下牢に戻ってもらうが…その前に少々厳しい仕置きが必要なようだ。君たちも覚悟の上だろうがね」

 

前髪を払いながら、気障な台詞を放つのは余裕の表れなのだろう。だが、それは俺たちにとってもまだチャンスが残っているということでもあった。

 

「なら、アンタも分かっているだろうな?」

「罪人である俺たちが無抵抗で罰を受け入れるとでも思ってたら、逆に痛い目を見ることになるぜ?」

「……アハハハハ!威勢がいいね!その空元気に敬意を表して名乗っておこう……私は整合騎士、エルドリエ・シンセシス・サーティワン」

「……えっ!?」

 

整合騎士…エルドリエの名前にユージオが酷く驚いていたが、今はそれを気にしている余裕はなく、俺とキリトはいつでも動けるように構えた。

 

「ほんの一月前に召喚されたばかりで、未だ統括地も持たない若輩者だが……そこはお許し願おうかな?」

「…上等。その余裕な笑みと言葉が出せなくなっても知らないからな?」

 

エルドリエの言葉に、絶対にその態度を崩させてやると意気込んだ俺の言葉と共に戦いの火ぶたが切られたのだった。

 

 




まさかのエルドリエさんも登場です。
というわけで、次回は久々の戦闘回です。

それでは。

s22605077さん 
評価を付けて頂き、ありがとうございます

次回更新 8月2日0時予定

カーディナルは生存させるべきでしょうか?(どちらでも前半の結末は変わりません。後半以降の物語に大きく影響します)

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