ソードアート・オンライン~夢幻の戦鬼~   作:wing//

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説明回後半です。

ユウキさんに通報案件が発生しております。奥さんこっちです!
遂にフォンまでフラグ建築士になってしまうとは…(笑)

そして、大剣の正体に迫る武装完全支配術のイメージ回ともなります。
それではどうぞ!


第30話 「武装完全支配術」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「大丈夫か、フォンよ?」

「…ああ、大丈夫だ。話を続けてくれ」

 

菊岡たち、ラースの本当の計画を知った俺の様子がどこかおかしいと気付いたカーディナルが心配の言葉を掛けてくれた。

 

俺は噛み切ってしまった唇の血を拭いながらそう答えた…正直に言えば怒りでまだ頭が一杯だが、ここで話を中断させてしまってはしょうがないと思い、何とか怒りを抑えていた。

 

俺が冷静になろうとしている間に、代わりにキリトが先程の話の続き…最終負荷実験と呼ばれる戦争についてカーディナルへと尋ねていた。

 

「だけど、アドミニストレータはそのことを知っていないのか?」

「もちろん知っておるわ。じゃが、あやつは己と整合騎士のみで闇の軍勢を問題なく撃退できると高を括っておる。

貴重な戦力となってくれるはずじゃった東西南北の守護竜すらも、己の操作が効かぬというだけの理由で屠ってしまったほどじゃ」

「…己が支配する人界を今のままに永遠に保つ…目の前のことしか見えずに、先のことすら楽観視するなんて、支配者なんて語っているくせにどうしようもない女だな」

「……フォン。お主、意外と辛辣なことを言うのう。

その通りではあるが…」

「あー…こいつ、キレると言動がちょっと容赦なくなるんだよ」

 

俺が吐き捨てるように言った評価に、賛同しながらも驚きを隠せないカーディナルにキリトが苦笑い交じりでそう答えていた…否定できない俺は目線を逸らすことしかできなかった。

 

「オホン…話を戻すぞ?もちろんアドミニストレータと整合騎士だけで闇の軍勢に勝つというのは無理な話じゃ。質がどんなにあっても、絶対数が違いすぎる」

「それに、闇の軍勢にも強い奴はいるんだろう?もし質さえも同等…いや、整合騎士以上だったりしたら…」

「それじゃあ、例えアドミニストレータを倒そうと倒さまいと、結局この世界が辿る運命は変らないってことなのか?」

「その通りじゃ。ここに至ってはわしにすら、もう既にダークテリトリーからの侵略を防ぐ術はない」

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 

無情にも俺やキリトの言葉を肯定したカーディナルに絶句する他なかった。

今の状態であろうと、例えアドミニストレータの支配を終わらせたとしても、最終負荷実験そのものを回避する方法がないとなれば…

 

そうだとするのなら、俺の中で更に疑問が一つ生まれた。

そして、それを俺はカーディナルへとぶつけた。

 

「なら、貴女はどうするつもりなんだ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「アドミニストレータを倒して、目標を果たした貴女はこの世界をどうするつもりなんだ?そんな終わり方しか待っていないこの世界はもうどうなってしまってもいいと考えているのか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

どうしようもない結末しか待っていない現状…危険を冒してまで俺たちに接触してきた理由…アドミニストレータを倒した後の彼女がこの世界をどうしたいのか、それを知りたくて尋ねたのだが……カーディナルは少しの間沈黙していた。

 

そして、重たくなっていた彼女の口から出た答えは…

 

「…そう、かもしれない…」

 

それは肯定だった。

そして、その言葉に感情を更に乗せたカーディナルは話し続けた。

 

「しかし、わしは世界の終末を仕組んだラースを…世界の神を断じて認めん。故に、わしは唯一の結論に至ったのじゃ…

……アンダーワールドを…人界もダークテリトリーも全て纏めて無に還す」

「無に…還す?」

「言葉通りじゃよ。ライトキューブクラスターに保存されている全てのフラクトライトを削除するのじゃ…人界の民の物も闇の民の物も一つ残らずな」

「「っ!?」」

 

アンダーワールド全てを消し去る…世界を意のままにするラースへの、カーディナルの最後の復讐計画に俺とキリトは息を呑んでしまう。

 

「キリト、フォン。お主たちの助勢によりアドミニストレータを排除し、わしが全権限を取り戻せたら、この世界を消滅させる前に、限定的ではあるがお主たちの望みを叶えよう。

助けたいと思う者を指定すれば、その者たちのフラクトライトは消去せず、凍結させたまま残す」

「「……!?」」

「10個程度であれば、外部世界に脱出した後、彼らのライトキューブを確保することもできよう」

 

まさかの提案に俺たちは顔を見合わせる。それは助けたい命を俺たちが選べと言っているものと同じだった。

 

この世界で縁を結んできた人たちの顔が次々と頭をよぎった。

 

ルーリッド村で世話になったセルカ

 

神聖術と剣術の複合技を伝授してもらったハルト先輩

 

学院で傍付きとして慕ってくれていたマーベル

 

そして、ルーリッドの村から共にここまで辿り着いた親友…ユージオ

 

それはキリトも同じ筈だった。助けたい者を選べというのは、俺たちもラースも変わらないのではないか、終末しか待っていない世界を終わらせることはそれこそ命の冒涜にしかならないのではないか…その考えが俺の頭をよぎった時、俺はカーディナルへと尋ねていた。

 

「どうしてだ…どうして貴女は逃げようとしなかったんだ?」

「…どういう意味じゃ?」

 

咄嗟に口から出てしまった問いだったため、上手くカーディナルに伝わらずに聞き返されてしまった。本来であれば、そんな提案に反論が先に出てしまうところだったが、俺はそんなことよりも、カーディナルの真意を知りたかった。

 

「貴女は自分の魂はアドミニストレータの魂と同じ…コピーだって言ったよな?なら、どうして支配という欲望や利益を差し置いてまでアドミニストレータの打倒を目論むんだ?そんな状況なら全てを放り出して逃げることだってできた筈だ…それなのに、200年以上もこんな場所でその機会を待ち続けるだなんて……どうして逃げなかったのかと思ってさ」

「簡単な話じゃ…カーディナル・サブプロセスであるわしにとって、あらゆる利益、あらゆる望みはただ一つ…アドミニストレータの排除と世界の正常化だからじゃ。尤も、わしにとっては世界の正常化を図るには完全なる虚無に還すことでしか実現できぬのだがな…」

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 

カーディナル・システムとしての役目を果たす…それを目指した彼女が出した結論が世界を崩壊させること…本当にそれしかないのかと尋ねようとしたが、彼女が見せた表情に俺の言葉は出なくなってしまった。

 

「いや、そうではないか…わしにも欲望はある。たった一つ、この200年知りたかったことがある」

 

意外な言葉と共にどこか悲しげな表情をするカーディナルにどうしたのかと思い、顔を顰める俺たち。すると、カーディナルがいきなり立ち上がったと思えば、

 

 

「お主らのどっちか。ちょっとこっちに来てくれぬか?」

「…分かった」

 

そう頼まれ、アイコンタクトでの相談の結果、俺が行くことになった。どういうことかと戸惑いつつもカーディナルの前へと立ったが、

 

「ぐぬぬぬ…意外と身長差があるのう…致しかない。よっと…」

「…?…?…?」

 

カーディナルが何をしたいのか分からず困惑する俺。キリトへと視線を向けるが、あいつも計り知れていない様で困惑顔だった。

 

「これでよいか。おい、フォン。もっと近くに寄らぬか」

「こ、こうか?」

「うむ。それでは両手を広げよ」

「こんな感じか?」

 

カーディナルの指示通りに目の前に立ち、両腕を広げる。

すると、次の指示が飛んできた。

 

「前に回し、輪っかを作れ」

「えっと…こう?」

「違うわ、馬鹿もん!背中に回さぬか!?」

 

自分とカーディナルの前で輪っかを作ったら、彼女から叱責が飛んできた。未だにカーディナルの意図が分からず、とりあえず言われた通りに背中へと両腕を回した。が、次の瞬間、まさかの行動にカーディナルが出た。

 

「ええい!?じれったい!」

「へぇ…?」

 

なんと、いきなり胸に飛び込んできたのだ。突然の出来事に思わず呆けた声が出たが、一瞬で我に返った俺は状況を理解した。そして、カーディナルがどうしてこんなことをしたのかを知った。

 

「そうか…これが…これが人間であるということか。温かいのう…」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「あっ…」

 

どこかホッとした彼女の声を聞き、俺は先程のカーディナルの話を思い出した。200年間、今の体になってから、世界と隔離し続けていた彼女が人と触れ合う機会などある訳がなく、人というものがどんなものなのかを知りたかったのだと悟った。

 

だからか、思わず彼女を優しく抱きしめてしまった。すると、安心したのか、冷静に見えていた彼女の表情が崩れ、その目から涙が零れ出した。

 

「やっと報われた…私の200年は間違いじゃなかった。この温かさを知っただけで私は満足…報われた…」

 

その時、本来の彼女の顔が見えたような気がした。

 

使命を果たそうとするカーディナル・サブプロセスでもなく、

この大図書室で身を顰め、機会をずっと待ち続けた司書でもなく、

 

カーディナルというたった一人の少女の素顔が見えた瞬間だったと思った。

 

だが、それはほんの一瞬のことだった。いきなり抱きかかっていた重みが消えたと思えば、抱き着いた際に落ちた帽子を拾うカーディナルの姿が目に入り、彼女が俺から離れたのだと理解した。

 

「…うん?いつまでそうやってボーっと突っ立っておるつもりじゃ?」

「……切り替えの早さがエグイな」

 

司祭モードというべきなのか、先程の少女の素顔はどこにいったのやら、カーディナルは元の表情へと戻っていた。まさかの切り替えの早さに俺は苦笑し、一部始終を見ていたキリトも笑みが引き攣ってしまっていた。

 

「それで?結論は出たのか?わしの提案に乗るのか、それとも蹴るのか」

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 

カーディナルにそう問われ、俺はキリトと視線を交わした。俺のアイコンタクトにキリトも頷いたことからどうやら考えは一緒のようだ。

 

「分かった。あんたの作戦に乗るよ」

「でも、俺たちは全部を諦めたわけじゃない」

「…どういうことじゃ?」

 

キリトと俺の言葉に、今度はカーディナルが首を傾げる番だった。立ち上がりながら、俺の言葉をキリトが繋いだ。

 

「俺たちは考えることを止めない。何か他に手段がないのか探し続けるよ」

「悲劇を回避する方法を最後まで模索し続けるよ。アドミニストレータを倒して、この世界が平穏に続けられるような方法を…もしかしたら、何かあるかもしれないだろう?」

「……お主ら。意外と楽観的な考え方をするのじゃな」

「だってさ、できないことを考え続けるよりも、できるかもしれないことを考える方が良いに決まってるだろう?」

「ああ。それに…俺の中じゃ、貴女にも消えてほしくないと思っているのも理由の一つですから」

「…わしも?」

 

まさかの自分のことが言わると思っていなかったのだろう…カーディナルがぽかんとしてしまった。

 

「だってそうだろう?200年以上も世界と隔離し続け、ここまで逃げずにいた貴女を見捨てるなんて俺にはできないよ。それこそ、アドミニストレータを倒した後、もっと知りたいこと、やりたいことがあるかもしれないだろう?」

「…お主、わしの話を聞いておったのか?わしが脱出してしまえば、誰がこの世界を消去するというのじゃ?」

「それはフォンも理解してるさ。けど、俺もフォンも最後まで悪あがきを放棄しないってことだよ。特にこいつの諦めの悪さは凄いぞ?」

 

俺たちの言葉を聞いたカーディナルはどこか呆れ、そして、何を思ったのか、次のような言葉を口から出した。

 

「お主たちにもいずれ分かる時がくる…諦めるという苦さを味を知る時がな。力尽くして及ばぬ時ではなく、及ばぬであろうという推測を受け入れなくてはならぬ時がな」

 

それは忠告とも、まるで予言かのように放たれた言葉だった。

 

 

 

カーディナルとの話を終え、俺、キリトの順に風呂へと入ることになった。先程のエルドリエとの戦いやカーディナルから告げられた話により、肉体的にも精神的にも疲れていた俺たちには良い気分転換となった。

 

キリトの風呂上りを待っている間、本でも読もうかと思い、本棚を物色していると、歴史書らしき本に熱心に目を通しているユージオが目に入った。俺も歴史関係(偽りの神話や歴史であっても)はかなり興味があったのだが、邪魔をしては悪いと思い、その場を離れた。

 

代わりにアンダーワールドの剣術の歴史に関する蔵書へと目を通していた。ハイ・ノルキア流を始め、秘奥義が生まれた経緯なども載っており、かなり目を引かれる内容ばかりに時間を忘れて読みふけってしまっていた。気が付いた時には、

 

「もうそろそろよいか?」

「えっ…あー…大丈夫です」

 

ジト目のカーディナルに声を掛けられ、本から意識を戻すと、彼女の後ろに苦笑いを浮かべたキリトとユージオの姿も目に入った。どうやら気を遣って、キリの良いタイミングを見計らってくれていたらしい。

 

…というか、キリトを待っているはずが、逆に3人を待たせてしまったことに慌てて本を片付けながら合流し、これからの方針を4人で話し合うことになった。

 

「さっきユージオにも説明したが、俺たちはもう一人の最高司祭であるカーディナルの協力のもと、打倒アドミニストレータを目標にセントラル・カセドラルへと向かうことになった」

「いわゆる共闘ってわけだ」

「うん。それで…カーディナル様、でよろしいんでしょうか?お聞きしたいことがあるのですが、整合騎士のアリス・シンセシス・サーティはルーリッド村のアリス・ツーベルクと同一人物なのでしょうか?」

「すまんが、わしがこの場所で手に入れられる情報はごく限られておるのじゃ。アリスという名の整合騎士が誕生したことは承知しておるが、同一人物かどうかは分からぬ」

「そう、ですか…」

 

カーディナルの答えに少し落胆するユージオ。彼にとってはアリスを連れ戻すことも目標の一つなのだ。そうなってしまうのも無理ない話だった。

 

「じゃが、整合騎士を作り出すための儀式の解除方法なら教えることができる」

「…っ!?どうすればいいんですか?」

「彼らの額に挿入された敬神モジュールを除去すればよい。見た目は三角柱のオブジェクトのものじゃ」

「それって…」

「エルドリエの額から出てきたあれか」

 

ユージオの言葉に俺もエルドリエと戦った後のことを思い出した。あそこで邪魔が入っていなければ、エルドリエを整合騎士から元に戻すことができたのかもしれないと思う悔やまれる話だった。

 

「敬神モジュールは記憶の繋がりを阻害する形で挿入されておる。それで整合騎士となる者の過去を封じ、同時に公理教会と最高司祭への絶対の忠誠を強いておるのじゃ」

「それじゃあ、術を解くには整合騎士の過去…記憶を揺さぶるような言葉を投げてやればいいってことなのか?」

「それだけでは不十分じゃ。もう一つ絶対に必要な物がある」

「それは何なんですか?」

 

エルドリエの時のことを思い出し、方法をカーディナルへ確認するが、流石にそう一筋ではいかないらしい。その必要な物が何かをユージオが尋ねた。

 

「モジュールが挿入されておる場所に本来存在した物…つまり、整合騎士にとって一番大切な記憶の欠片じゃよ」

「欠片…でも、それは一体どこに?」

「アドミニストレータは慎重な女じゃ。騎士から抜き取った記憶はまず間違いなく自らの居室、セントラル・カセドラルの最上階にあるはずじゃ」

「っていうことは、整合騎士を元に戻すためには記憶の欠片が必要…」

「それを手に入れるためには、整合騎士たちの守りを突破して、アドミニストレータをも倒さないとまず難しいってわけか…はぁ、言うのは簡単だが、かなり難関だな」

「整合騎士は殺さずに倒そうなんていう考えが通用する相手ではないのは、直接戦ったお主たちが一番分かっておるはずじゃ」

 

カーディナルの言葉に、エルドリエとの闘いが頭をよぎった。あの未知なる術を他の整合騎士たちも使ってくるとするのなら、どの闘いも苦戦は必至だろう。

 

「わしがお主たちにしてやれることは整合騎士と対等な装備を与えてやるくらいじゃ」

「つまり、アドミニストレータのところまで辿り着けるかどうかは俺たちの実力次第ってわけか。その方がはっきりしてて逆にいいのかもな」

「でも…もしアリスが出てきたら…」

 

装備が対等で実力重視だというのなら話は早かった。少なくとも、俺とキリトは伊達に修羅場を何度も潜り抜けてきてはいない。それならばと俺が思っていると、ユージオからぼそりと言葉が漏れた。

 

「…もしアリスが出てきたりしたら、僕はアリスとまでは戦えません。僕はアリスを取り戻すためにここまで来たんです。だから…!」

「ふむ、そうじゃったな。ユージオよ、そなたの目的はわしも理解しておるよ。よかろう、もし整合騎士アリスがそなたの前に立ちはだかったのなら、これを使うがよい」

 

その言葉とともにカーディナルが取り出したのは3本の短剣だった。投擲用のナイフにちかいそれを一人一本ずつ受け取りながら、俺はこの短剣について彼女に尋ねた。

 

「この短剣は?」

「その短剣は刺したものとわしとの間に切断不可能な経路を生成することができるのじゃ。つまり、わしの用いるあらゆる神聖術が必中となるわけじゃ。

ユージオよ、整合騎士アリスの体のどこでも構わん。それを刺すのじゃ。その瞬間、わしの術でアリスを深い眠りへと誘おう…彼女の記憶を取り戻し、シンセサイズの秘儀を解除する準備が整うまでな」

「…分かりました。もしアリスが説得に応じなかった時はこれを使わせてもらいます」

「なに…元々はアドミニストレータ用に作っておいた予備の分じゃ。残りの2本で成功させられるのなら何も問題はない」

「あれ…?もしかしてこれ、俺たち責任重大だったりする?」「そう…みたいだな」

 

暗に絶対に成功させろよとカーディナルから念を押されたような気がした俺とキリトは顔を見合わせていた。つまり、これはいざという時にしか使えない切り札という認識で持っていた方がいいみたいだ。

 

「…そうだ。それなら、さっき言ってた整合騎士と対等の装備っていうのは一体何なんだ?」

「お主たち3人には強力な愛剣があるじゃろう?それを取り戻せるように協力してやるということじゃ」

「僕の青薔薇の剣と、キリトの黒い剣、それにフォンの大剣のことですか?」

「お主らの剣はカセドラルの3階にある武具保管庫に収納されておるはずじゃ。そこへの道をわしが開いてやる」

 

キリトとユージオの質問に答えていくカーディナル。そして、アドミニストレータがいる場所が何階なのかと気になっていると、丁度キリトが聞いてくれた。

 

「ちなみに、アドミニストレータがいる部屋っていうのは何階なんだ?」

「セントラル・カセドラルは年々上昇を続けておるからな。現在では100階に迫っておるかのう」

「「……100階」」

 

まさかの3桁に俺とキリトは絶句してしまう。丁度アインクラッドの階層と同じなのは因果なのか、単なる偶然なのかと現実逃避しかけてしまっていたが、そんな俺たちにカーディナルの口から容赦ない追撃が加わった。

 

「残念じゃが、お主らにはもう一つやらねばならないことがあるぞ?」

「ま、まだ何かあるのか?」

「お主らの剣は確かに強力じゃが、それだけでは整合騎士たちには勝てん。なぜなら、連中には武器の性能を数倍に増幅する恐るべき術があるからじゃ」

「もしかして、エルドリエが使っていた武装完全支配術とか記憶開放術っていう技のことか?」

 

エルドリエの霜鱗鞭…あれが異常なまでに伸びたり、鞭が数本に分かれたり、大蛇に変化したことを思い出し、俺はカーディナルに尋ねると、頷くことで肯定した。

 

「フォン、お主は聞いたことがあるじゃろう?神器級の武器には記憶…代償となったオブジェクトの性質を濃く受け継いでおる。完全支配術や記憶開放術は言うなれば、武器の記憶を全開放することで本来あり得ない超攻撃力を実現するものじゃ」

「…ハルト先輩が言ってた話か」

 

カーディナルに聞かれ、学院の時にハルト先輩から聞かされた話と神器に関する本のことを思い出した。もしかすればとは思っていたが、やはり武装完全支配術は神器の記憶に関する術だったようだ。

 

「3人とも目を瞑るのじゃ。そして、お主たちの剣を強く思い浮かべよ」

「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」

 

言われたように目を瞑り、自身の大剣をイメージする。

 

頭に浮かんだ大剣は…宇宙に浮かんでいた。

 

太陽と月に照らされ、その二つの光…赤き太陽の生命力溢れる光と水色の月の慈愛の光…それが大剣の刀身へと注がれていき、見事に半身ずつ光の色へと染まっていく。

 

そして、次の瞬間…金色の光が刀身から枝分かれするように宇宙へと広がり始めた。それはまるで何かを求め、様々な方向へとどんどんと枝分かれしていき、何かをつないだと感じた時だった。

 

ギィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!?!?!

「ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!?」

 

扉が開くような、もしくは錆びていた歯車が一斉に動き出したような、それともノイズのような奇音というもいうべきなのか…表現できない音と共に、言葉にできない痛みが頭に走った。

 

そこで俺の意識は途切れてしまった。

 

 

『………!?』

 

誰かが叫び声が聞こえ、意識が覚醒した。見慣れない場所に自分が気づいた時、何かが空中に舞って…いや、打ち上げられたのが目に入り、言葉を失った。それは先程まで図書室で話していたカーディナルの姿だった。

 

ボロボロの姿に明らかに致命傷となる一撃を受けた姿だった。

 

次の瞬間、再び光景が切り替わった。

だが、その光景は更に衝撃的なものだった。

 

(……誰だ…一体誰が倒れているんだ?)

 

血だまりの海が床に広がる中、倒れている人物にキリトが静かに寄り添っていた。そのキリトの右腕も失われており、明らかに尋常ではないことが起きていることだけは分かった。

 

だが、目の前に映る光景はモノクロに近く、時折ノイズが入ってしまっており、倒れている人物が誰かまで判別することができなかった。

 

分かるのは、キリトが慟哭する程の相手だということだけだった。そして、キリトに駆け寄ろうとしたところで、再び頭痛に襲われ俺の意識はまた途切れた。

 

 

 

「…おい!しっかりしろ!フォン!」

「……っ!?カ、ディナル…?」

 

聞こえてきた声に目を開けると、体を揺さぶるカーディナルの姿が目に入った。そして、自分が床に倒れていることに気付き、未だに覚醒し切っていない頭を振りながら体を起こした。

 

「大丈夫か!?いきなり意識を失ったから驚いたぞ…」

「大丈夫かい、フォン」

「キリト…ユージオ…」

 

心配そうに俺をのぞき込む二人の姿が見え、手で大丈夫だと答えながら俺は立ち上がった。

 

「一体何があった?俺はどれくらい意識を失っていた?」

「ほんの十数秒じゃ。本当に大丈夫なのか?」

「…ああ」

 

カーディナルの心配に答えながら、頭を右手で押さえる。何かを見たような気がしたのだが、それが何故か思い出せない。以前に見た悪夢…というか、奇妙な夢に似ていたような気がしたのだが…

思い出そうとすればするほど、どんどんと思い出せなくなっていくような気がした。思い出すことを諦め、俺はキリトとユージオの方は何ともなかったのかと思い、尋ねようとしたのだが…

 

「フォン、少しよいか?」

「えっ…あ、ああ」

 

先程以上に真剣なトーンのカーディナルに呼ばれ、俺は彼女に着いていく。

キリトたちが心配そうな表情を浮かべていたが、ともかくカーディナルに着いていくしかなかった。

 

二人に声が届かないところまで来た時、カーディナルが掌を叩いたかと思えば、その手元に一枚の洋筆紙が出現した。それを手に取った彼女はそれを手渡そうとして、その手を引っ込めた。

 

「……どうかしたのか?」

「フォン。お主、あの両手剣が一体何なのか理解しておるのか?」

「えっ…いや、俺も全然。この世界に来た時から持ってたから…もしかして、カーディナルはあの剣について何か知っているのか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

先程倒れたことに関係あるのかと思い、俺はあの大剣について知っていることがあるのならとカーディナルに尋ねた。だが、彼女の反応は思っていたものとは違い、とてつもなく苦々しい表情をしており、逆に俺が困惑してしまった。

 

「フォン。お主に忠告しておく…あの大剣の記憶開放術は絶対に使うな」

「っ!?」

 

まさかの忠告に俺は息を呑む。理解が追い付かず、混乱していると、カーディナルがその理由を説明し始めた。

 

「少なくとも、あの大剣の本質が分かるまではじゃ。わしにも把握できぬあの剣の記憶開放術を無闇に使えば…どうなるかが想像がつかぬ…武装完全支配術は単なる強力な術ではない。使い方を間違えれば、それは己に刃を向けることとなる」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「これは武装完全支配術の式句が書かれたものじゃ。お主のことを信じ、これを託す。

じゃが、使いどころはしっかりと見極めよ。もし使い方を誤れば、その刃はお主だけでなく、キリトやユージオまでも傷つけてしまうかもしれないことを忘れるでないぞ」

「…分かった……ちょっと待った。さっき、わしにも把握できぬって言わなかったか?」

「…言った。お主が持っていたあの両手剣…あれはわし…いや、カーディナル・システムのどのデータにも登録がない。詳細が全く掴めない未知なる武器じゃ」

 

そう告げたカーディナルの言葉に俺はあの大剣が単なる武器ではなく、あの奇妙な夢も何か意味があるものではないのかと感じてしまった。

 

それがこの先の何かを暗示しているのか、それとも俺へ向けての警鐘だったのか…嫌な予感が俺の胸の中で渦巻いていた。

 

 




大剣に関しては色々なフラグを立てていましたが、これでおおよそのフラグは立て終わりました。16話や21話でも似たような描写をしてましたがここに繋げるためのものでした。
ちなみに、この時点で大剣の正体を100%当てられれば凄いと思います。

次回のデュソルバート戦で早速その真価を発揮しますので、乞うご期待頂ければと思います。

カーディナルに関しては……御察し頂ければ有り難いです(笑)

また前話でご感想頂いた皆様、誠にありがとうございました!返信が遅くなってしまった方もいますが、できるだけ返せれるように頑張りますので、感想の他にもご意見・ご質問も頂ければと思います。

アルト・ゼロさん
ご評価頂きありがとうございました!

それではまた。

次回更新 23日0時予定

カーディナルは生存させるべきでしょうか?(どちらでも前半の結末は変わりません。後半以降の物語に大きく影響します)

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