ソードアート・オンライン~夢幻の戦鬼~   作:wing//

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お待たせしました。
ボスラッシュの初戦、デュソルバート戦です!

ちなみにアニメと違ってエルドリエを真正面から撃破してますので、デュソルバートのフォンたちに対する見方が上方修正されていたりします。

そして、フォンの大剣…というべきなのか、武器の真価が遂に発揮されます!

それではどうぞ!

追記 アニメでは遂にキリト復活しましたね!
アリシゼーションも終盤でかなり楽しみです!


第31話 「氷魔竜Vs不死鳥」

「悪い、遅くなった」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

カーディナルからの忠告を受け、俺と彼女はキリトたちの元へと戻った。いきなりのことに心配してくれていた二人はどこかホッとしていたようだった。

 

「フォン…一体何の話をしていたんだい?」

「ああ。さっき倒れたことに関してだよ。俺の体に異常がないか、カーディナルが調べてくれてたんだ。ちょっと疲れがたまってただけみたいで、何の異常もなしだったよ」

「…そうか」「…そっか」

 

俺の言葉に胸を撫で下ろす二人を見て、罪悪感に少し胸が痛む。そんな俺にこっそりとカーディナルが囁く。

 

「お主、意外と容赦なく嘘を吐くのだのう」

「貴女がさっきのことを黙ってろと言ったんでしょうが…!」

 

どこか悪戯めいた笑みを浮かべる彼女に、俺も二人に聞こえないように小声で言い返す。余計な心配を掛けたくないと思ったのは俺だが、口止めしたのはカーディナルなのでおあいこのはずだった。

 

「さて、それではそろそろセントラル・カセドラルの中へと向かうか?さっき渡した洋筆紙の内容は覚えたな?」

 

そんな俺の言葉をスルーし、話を本題に戻したカーディナルへと少しだけ恨み節を込めた目線を送るも、すぐに意識を切り替えた俺は頷き、二人の方を見た。

 

「はい!」「…た、多分」

「…おい、キリト。お前、まさかと思うけど…」

「お、覚えた!?覚えてるよ、ちゃんと!?」

 

自信満々に答えたユージオとは対照的に、俺の予想通りに曖昧な返答をしたキリトにプレッシャーを掛ける。

プレッシャーを受けたキリトは慌てて言い直した…が、ちょっと信用ならないので後でもう一度確認させておこうと思い、俺はカーディナルへと話をすすめてもらうようにアイコンタクトした。

 

「それでは、武器保管庫に繋がる扉を作る。ついてこい」

 

その言葉と共に先導し始めたカーディナルの後ろをついていく。俺たちがこの大図書室へとやってきた廊下を歩いていき、入ってきた扉があった場所へと着いた。そして、カーディナルが杖を振るうと、再び扉が出現した。

 

「さて、ユージオ、キリト、そして、フォンよ。わしはお主たちに告げるべきことは全て告げた。世界の命運はそなたらに委ねられておる…地獄の業火に包まれるのか、虚無に沈むか…もしくは…」

 

そこで俺とキリトへと視線を向けたカーディナルは微笑み、その先を言い続けた。

 

「第三の道を見出すのか…お主たちが信じる道を行けば、その答えを見つけることができるじゃろう…では、行ってくるのじゃ!」

「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」

 

カーディナルが扉を開き、俺たちに進むように告げる。俺たちは目線を交わし、覚悟を決め、扉へと向かう。キリトとユージオが扉を潜ったところで、俺はカーディナルへと声を掛けた。

 

「…必ず見つけてみせるよ…こんな絶望しか待っていない世界にも、何か方法があるってことを…その答えをさ」

「あまり期待せずに待っておるよ。もう期待するのには疲れてしまったからな」

「それもそうか……ありがとう、カーディナル」

「…行ってこい」

 

俺のお礼の言葉に照れてしまったのか、顔を背けるカーディナル。そんな姿に苦笑しながらも、俺は二人の後を追って、扉を潜った。

 

「…ここが、セントラル・カセドラルの中なのか」

 

先に進んでいた二人と合流した俺の目に入ってきたのは大理石らしき素材で作られた建物の壁や床だった。流石は公理教会の本部ともいうべきセントラル・カセドラル…その建築仕様もかなり豪華…いや、洗練されており、神聖らしさを感じるべきだというところなのだろう。

 

「確か、この階にある武器保管庫に僕たちの剣があるって言ってたよね?」

「ああ。まずはそこを探そう」

 

ユージオとキリトの言葉に頷き、俺たちは警戒しながら武器保管庫を目指して先を進み始めた。

周囲の気配に気を付けながら、慎重に進み続けるも、幸いなことにここには監視カメラみたいなハイテク技術があるわけもなく、監視用のトラップも置かれていないようだったので、人の気配にだけ気を付けながら進めば良かったので少しは楽ができた。

 

そして、2体の彫像が立つ、大きな扉の部屋を見つけた。俺が先行し、扉を開いて中を覗き込み、無人であることを確認して、二人へと合図を送る。

そのまま中へと入り、俺は真っ暗な部屋の中に明かりを灯すために神聖術を発動させた。

 

「システムコール…ジェネレート・ルミナス・エレメント…ディスチャージ」

「うわぁ…もしかしてこれ全部が武具?」

「急ごう…まずは俺たちの剣を見つけないと」

 

俺が放った神聖術で照らされた部屋の中は、ユージオの言う通り武器や防具で埋め尽くされていた。鍛冶師としてはどういったものがあるのか興味を惹かれたが、キリトの言う通り、今は先にやらなければならないことがある。手分けして剣を探し始めた俺たち。

 

「…あった。あったよ、二人とも!」

 

ユージオの言葉に他の場所を探していた俺たちはユージオの元へと駆け寄った。そこには俺の大剣、キリトの黒剣、そしてユージオの青薔薇の剣が鎮座していた。どうやら回収されたまま、ここに置かれぱっなしだったらしく、どこか傷ついているわけでもないようだった。

 

大剣を手に取ろうとして触れた時だった。

 

「っ!?」

「うん?どうした、フォン?」

「いや…なんでもない」

「そうか…おい、ユージオ。一体いつまで感動に浸ってるつもりだよ?」

 

俺の回答に首を傾げるキリトだったが、すぐに意識を切り替えたようで、青薔薇の剣を手に取って眺め続けているユージオへと声を掛けていた。

 

だが、俺は先程大剣触れた右手に電流が走った感覚に違和感を覚えていた。これまでこうなったことなどは一度もなく、初めての感覚に俺は再び大剣へと視線を向けた。恐る恐るもう一度手に取ってみると、今度はそのような感覚に襲われることはなかった。

 

安心した俺は鞘ごと背中に装備し直し、大剣を抜いてみた。刀身自体にも変化はないようだ。だったら、先程の感覚は何だったのだろう…?

 

「キリト…こんなに武具を貯め込んでいるなんて、教会は自前の軍隊でも作るつもりなのかな?整合騎士だけで十分だろうに…」

「多分逆だな…軍隊を作るためじゃない。作らせないために武具をここに集めたんだよ」

「作らせないために…?どういうことだい?」

「武具があれば、誰だって戦うことができるだろう?逆を言えば、戦う手段を奪ってしまえば、誰も教会に反抗しようとはしなくなる…つまり、教会の権威を一番信じていないのは最高司祭その人ってわけだよ」

「へぇ…そういうことか……そうだ。ねぇ、ここの防具を借りていくっていうのは駄目かな?」

 

思考の海に入っていると、ユージオとキリトがそんな話をしたので割って入ることにした。

俺の説明を聞いたユージオは納得したようで、保管されている鎧へと視線を向けながらそう尋ねてきた。

 

「それはどうかな。俺たちって鎧とか着たことないしな」

「慣れない武装は返って危険だし、止めておいた方がいいかもな」

「そうだな。それよりも、そこら辺にある服だけ頂いていこうぜ?」

 

俺とキリトの回答にユージオも頷き、服を着替え始める。キリトとユージオは似たような色の服をチョイスし、俺はダークブルーに近い蒼色の服を選んで着替えた。

 

それなりに上質な物らしく、修剣士服よりも着心地がいいと思ったのは余談だ。

 

そして、準備を終えた俺たちは外の様子を伺うべく、扉を少し開き、そこから外を覗き見ようとした。だが、

 

「二人とも避けろ!?」

「「っ!?」」

 

それにいち早く気付いたキリトの声に俺とユージオはすぐさま回避行動を取るために保管庫の奥へと飛び込んだ。

その数秒後、強力な何かにより扉が吹き飛ばされた。飛来してきたものを見ると、どうやら矢のようだ。

 

そして、そんなとんでもない威力の矢を放ってくる相手を俺たちは少し前に対峙したばかりであり、その正体に見当がついていた。

 

「さっきの整合騎士か!?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

真っ赤な鎧を身に纏い、次なる矢を放とうと弓を構えた整合騎士を確認し、俺は先程射抜かれた右腕を押さえながら、キリトたちとともに戦闘態勢に入った。

まずは弓使いの弱点を突く…そう思い、俺は高速で式句を唱える。

 

「システムコール、バーストエレメントディスチャージ!」

「ぬぅ!?」

 

数本の矢を同時に放とうとしていた奴だったが、俺が放った光により一瞬目がくらみ、放った矢たちは俺たちがいる場所から逸れた場所に放たれた。

 

「前だ!前に出るんだ!」

 

キリトの言葉に俺たちは保管庫から飛び出し、一気に距離を詰めるために駆け出した。

だが、奴がそう簡単に接近を許してくれる訳もなく、

 

「下らぬ真似を…!」

「…っ!しゃぁ!」

 

奴が迎撃用の矢を放つが、先頭を走るキリトがその矢を黒剣で弾き飛ばす。単発で効果がないと悟ったらしく、次に奴がとった行動は…

 

「これならばどうだ!」

「「「っ!?」」」

 

まさかの数十本同時発射だった…常人では考えられない量の矢を弓につがえ、空中へと放った。

予想外の攻撃に俺たちは接近を諦め、各自回避に移った。二人が矢を避ける中、俺は大剣で防御用スキル〈スピニング・シールド〉を発動させる。大剣を目の間で高速回転させることで次々と矢を打ち落としていく。

 

「よし、これでもう終わりか…二人とも無事か!?」

「こっちはなんとか…」

「こっちも大丈夫だ!」

 

矢の雨をすべて打ち落とし終えた俺の確認にユージオとキリトは無事だと返した。

反射神経が鬼レベルのキリトはともかく、ユージオも傷は負ってようで一安心したところで、俺は奴の方へと視線を向けた。

 

「どうやら自慢の弓はもう使い物にならないようだな?さっきので、矢も使い切ったんじゃないのか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

俺の言葉通り、奴の武器である弓は弦が切れてしまっていた。先程の攻撃はおそらく咄嗟に放ったものだったのだろう。奴が装備している矢筒にももう矢は残っていないようだった。

 

このまま一気に勝負を決める…そう思い、俺たちが距離を詰めようとした時だった。

 

「システムコール……エンハンス・アーマメント」

「っ…武装完全支配術!?」

 

その式句とともに、奴の持っている弓から炎が噴き出し始めた。その炎は弓から奴の体へと伝えわり、その身に炎を纏った姿へとなっていた。階段上にいる奴から階段下にいる俺たちまでかなりの距離があるはずなのに、その炎の熱が十二分に伝わってきて、その炎がただの炎でないことを物語っていた。

 

「凄いな、あの炎…あの弓は一体何が元になってるんだろうな?」

「感心してる場合かよ…!」

 

余裕なのか、ただ単なる感心からくるものなのか、そんなキリトの感想にツッコミを入れる俺。目を大剣でカバーしないといけないレベルの熱波が襲ってくる。

 

「こうして熾焔弓の炎を浴びるのは実に2年ぶりだ。

なるほど…騎士エルドリエ・サーティワンを倒したのはまぐれではないようだな。ならばこそ、我が出せる全力で貴殿たちを倒すことにしよう。

我の名はデュソルバート・シンセシス・セブン…生かして捕らえよとの命だが、こうして熾焔弓の炎を開放したとならば、消し炭とまではせぬが腕の一本二本が焼け落ちるのは覚悟してもらうぞ?」

「…武装完全支配術を使えば、弦や弓がなくても問題なしって反則だろう…!?」

「どうする…何か対策は?」

「連射は不可能…そう信じるしかない。初撃を俺がなんとか止めるから、二人は懐に一気に飛び込んでくれ!」

「そんな曖昧な…っ!?何だ…?」

 

キリトの楽観的な観測にツッコミを入れようとした時だった。持っていた大剣が何故か震え出したのだ。今の状況に、突然起こった不可思議な現象に俺も動揺が隠せないでいた。だが、俺の意志とは関係なく、徐々に震えを大きくしていく大剣。

 

俺の大剣の異常な動きにキリトたちも驚いていた。そして、両手で押さえているにも関わらず振動を続ける大剣が光ったと思った次の瞬間だった。

 

「…これは…槍?」

 

大剣の姿は消え、俺の手元には長槍が出現…いや、大剣から形を変えて存在していた。穂先は戦斧に近いデザインで、全てを凍らせ打ち砕く絶対なる力のようなものが手から伝わってきていた。

 

『…蒼輝勇槍『天零』…』

「っ!?」

 

ふと頭に聞こえてきた声に長槍の名を知る俺。そして、そんな俺の態度に応えるように長槍…天零から一気に氷気と魔力が溢れ出した。

 

「馬鹿な…形状変化…いや、物質変換術だと!?その術は最高司祭様にしか使えない筈……!?」

 

よくは分からないが、俺の武器が変わったことにデュソルバートは大きく動揺していた。それがチャンスだと思った瞬間、俺の頭の中に更に別の情報が流れ込んできた。

 

「っ…!キリト、サポート頼む。もしかしたら、この槍であの炎の矢をなんとかできるかもしれない」

「ほ、本当か!?」

「ああ…よく分からないけど、この槍の使い方が頭に流れ込んでくるんだ。俺を信じてくれ…!」

「…分かった。ユージオ…聞いての通りだ。お前は懐に飛び込んで、奴を倒してくれ」

「フォン、キリト……分かった!」

 

作戦が決まり、俺は前へと出て槍を奴へと構える。そして、深呼吸で息を整え、デュソルバートが矢を放つのを待ち受けた。

 

「この熾焔弓の炎を迎え撃とうというのか…その意気込みや良し!だが、射抜かせてもらうぞ!」

「やってみろ…システムコール…エンハンス・アーマメント!!!」

 

デュソルバートが言葉と共に炎の矢を放ったのと同時に、俺も天零の武装完全支配術を発動させた。天零の穂先から暴流と化した氷のレーザーが放たれ、熾焔弓の炎とぶつかり拮抗した。

 

「おおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

「ぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」

 

氷と炎…その衝撃が周囲に伝わり、階段の手すりや柱などがどんどんと崩れていく。そして、その拮抗を破ったのは熾焔弓の炎だった。

 

「その真なる姿を現せ、熾焔弓よ!!」

「何!?」

「フォン!?」

 

炎の矢が姿を変えたと思えば、それは不死鳥の姿を形取り、一気に天零の氷を押し始めた。徐々に押され始め、その反動で俺は後方へと後退りさせられる。咄嗟にキリトが背後に回って背中を支えてくれるが、不死鳥の勢いは止まらない!

 

「こ、このままじゃ…!?」

「っ…ぐぅぅ!」

「キリト!?フォン!?」

 

階段の途中から心配の声がユージオから上がる。刻一刻と不死鳥の炎が迫る中、天零を力の限り握りしめる…すると、

 

(っ…!?これは…この武器の記憶なのか!?)

 

またしても頭に映像が流れ込んできた…

 

…青髪の青年が戦っていた…

時には仲間と助け合い、自身の血と生まれと向き合い、その大いなる氷竜の力を完全に解き放ち、神々や魔神と戦い続け、

 

(…っ!そうなのか…だったら、見せてみろよ!魔神の力を完全に制御し、友と未来を切り開いた力を…!今、ここにいる友を守るためにも、その力を貸してくれ!!)

「全てを…氷尽くせ、天零!!!」

 

天零の記憶を完全に理解した俺が叫び、天零を前へと突き出す。放たれる氷の本質が変わり、全てを呑み込み、圧倒する紫の稲妻と魔力が混じった氷流が不死鳥を押し戻す。そして、

 

「な、何だと…!?」

「うおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

氷流がその真なる姿を現す…その姿にデュソルバートから驚きの声が漏れた。不死鳥の体を掴み、その炎を氷へと変えていく…まさしく竜の魔神ともいえるその姿は見る者に圧倒的な威圧感を与えた。

 

しかし、不死鳥もやられてばかりというわけもなく、最後の抵抗として竜人の首元へと攻撃を仕掛けた。そして、遂にぶつかり合うエネルギーが臨界を超え、

 

「ぐううぅぅぅぅぅぅぅ!?」「がはぁぁ!?」

「ぬぅぅぅぅぅ!?」

 

臨界を超えたエネルギーは大爆発を起こし、周囲が煙に包まれる。爆発が近かった俺とキリトは吹き飛ばされて壁に激突した。そして、デュソルバートも大きく体制を崩してしまっていた。

 

「フォン?!キリト?!」

「止まるなぁ、ユージオ!!」「行けぇ!!」

「っ!?」

 

俺とキリトの声に前を向き、煙の中から飛び出したユージオがデュソルバートへと空中から切りかかった。

 

「舐めるなぁ、小僧!」

(っ…どうする…どうすれば!?)

『この世界では、剣にどんな思いを込めるかが重要なんだ』

『…本当は気付いてるんじゃないか?お前が誰のためにその剣を振るっているのかってことをさ』

(…そうだ…僕が剣を振るってきたのは…ここまで来たのはたった一つ。

あの時に失った人を…あの笑顔を…あの時間を…!

アリスを連れ戻すために…今度こそアリスを助ける…それが僕の戦う理由だ!

だから…頼む、青薔薇の剣!前に進むためにも、僕に力を貸してくれ!!)

「うおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

今までで一番の気合とともにユージオが放ったソードスキル〈バーチカル〉をデュソルバートは熾焔弓で迎え撃った。

青薔薇の氷気と熾焔弓の炎がぶつかり、廊下を凍らせ、壁に炎が飛び散る。

 

「ぬぅぅ!?」

「くっ!?(…やっぱり凄い炎だ…!

けど、お前だってただの剣じゃないだろう!?お前は世界の創成から果ての山脈の頂きで極寒の吹雪に鍛えられてきたんだ!)

フォンだって勝ったんだ!お前も…こんな炎なんかに負けるなぁぁぁぁぁ!!!」

「っ…あれは!?」「な、何ィ!?」

 

痛む体をなんとか起こし、見守っていた二人の戦いに変化が起こった。ユージオの叫びに応えるかのように青薔薇の剣が熾焔弓の炎を掻き消し、弓ごとデュソルバートの左腕を凍らせたのだ。

それを見た俺はキリトの黒剣と同じ現象が起きたのだと理解し驚きの声を上げ、一方のデュソルバートもまさかの出来事に動揺していた。

 

「はぁぁぁぁぁ!」

 

その勢いと共に相手の動揺を突いたユージオが熾焔弓を弾き、デュソルバートの体制を大きく崩した。

そして、再びソードスキルを〈秘奥義連携〉で発動させる。一撃目はデュソルバートが後ろに飛んで回避したため、浅い一撃になってしまったが、

 

「逃がさない!…はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「ぬおおおぉぉぉぉぉぉ!?」

 

二撃目となる一太刀を気合とともにデュソルバートへと繰り出した。片手剣2連撃ソードスキル〈バーチカル・アーク〉…まさかの二撃目は予測できていなかった様で、決定打を受けたデュソルバートは遂にその場へと膝を突いたのだった。

 

「フォン…あいつ」

「ああ…すご、ぐぅぅぅぅ!?」

 

無事に勝利を収めたユージオを見て、ホッとした俺たち。キリトの声に答えようとした時だった…またしても頭痛が俺を襲い、頭を抱えてしまった。だが、図書室のように意識を失うことはなく、頭痛もすぐさま消えてしまった。

 

「お、おい…大丈夫か、フォン!?」

「あ、ああ……もうなんともない。あれ…?」

 

すぐに消えてしまった頭痛に疑問を感じつつも、キリトの心配にそう答える。

そして、そこで俺は長槍『天雫』が元の姿…大剣へと戻っていることに気付いた。未だに掴めない大剣の謎が更に深まってしまったが、今はそんなことよりもユージオと合流すべきだと思い、俺は大剣を鞘へと納め、キリトとともに階段を昇る。

 

「キリト、フォン!大丈夫なのかい?」

「ああ。俺は大した怪我はしてない」

「俺も大丈夫だ…ちょっと火傷したくらいだ」

 

階段を上がると、デュソルバートと対峙していたユージオがこっちに気が付き、心配の声を掛けてきた。キリトと俺はそれぞれ大丈夫だと答えると、

 

「氷の剣の使い手の小僧よ…あの秘奥義を連続して使った技は一体…?」

「………アインクラッド流〈秘奥義連携〉…最初に使った秘奥義が〈バーチカル〉、その後に使ったのが2連撃技〈バーチカル・アーク〉」

「連続しての秘奥義に2連撃技…そっちの…黒茶髪の小僧…貴殿が使った武器は一体…」

「俺が使ったのは蒼輝勇槍『天零』っていう、半魔半人の氷の勇士が使った武器だよ。どうして大剣からあの槍に変わったのかは俺にも分からない」

「…そうか。人界の端から端…その果てを超えた先までも見てきたつもりだが、この世には我が知らぬ剣や技があったのだな…ましてや、最高司祭様と同じ物質変換の術を使う者がいるとは思ってもみなかった」

 

いきなり割り込んできたデュソルバートの問いに、ユージオが一瞬答えるべきかどうか迷っていたが、もう戦意はないと判断し、その質問に答えた。俺も先程使った武器のことを尋ねられたが、どうやらかなり珍しい術の類いだと認識したようだ。

 

闘いの最中でもかなり動揺していたが、どうやら他の武器…というよりも物質を他の種類の物質へと変換させる術はかなり貴重なものらしい。

 

「騎士エルドリエを倒したのはエルドリエの油断もあったかと思ったが、そうではなかったようだな。貴殿らの技には真摯な修練を積み重ねた重みが籠っていた。

そんな貴殿らが騎士エルドリエを堕落させようとするわけがないな…そう判断した我の誤りだったようだ…名を教えてくれ」

「剣士ユージオ…性はない」

「俺は剣士フォン」

「剣士キリトだ」

「…カセドラルの50階…」

「「「えっ…?」」」

 

俺たちの名を聞いたデュソルバートがいきなり話しを切り出したため、俺たちは困惑してしまうも、そんなことなどお構いなしに奴は話を続けた。

 

「そこは霊光の大回廊と呼ばれる開けた場所になっているのだが、そこに複数の整合騎士が貴殿たちを待ち受けている。生け捕りではなく、天命を消し去れとの命を受けてな。我のように真正面から突撃すれば、刹那の内に息の根を止められるだろう」

「お、おい、オッサン!大丈夫なのか、そんなこと言って!?」

「ふむ…アドミニストレータ様のご下命を完遂できなかった以上、我は騎士の証たる鎧と神器を没収され、無期限の凍結刑となろう」

「そんな…たった一度の失敗で…?」

 

機密情報を教えてくれるデュソルバートにキリトが慌てて心配するも、その処遇について聞いた俺は思わずそんな言葉が口から出てしまった。凍結刑というのが何を指すのかは分からないが、ただで済むものではないのだろう。だからこそ、デュソルバートの次の言葉に俺たちは固まってしまった。

 

「そんな辱めを受けるくらいなら…貴殿らの手で我の天命を断ってくれ!」

「「「っ!?」」」

「迷うことはない…貴殿らは堂々たる剣の技によって我を倒したのだからな。この整合騎士…デュソルバート・シンセシス・セブンをな」

「……シンセシス・セブン?」

 

先程の闘いの最中にも聞いた名前に俺は思わず自身の記憶を辿った。どこかで聞いたことがあると思っていたが、俺はずっと昔にもその名を聞いていた…そうだ、この人は…

 

「貴方は…8年前にルーリッドの村からアリスを連れて行った整合騎士…」

「…あっ!」

「…アリス…ルーリッド…8年前…?」

 

そうだ…はっきりと思い出した。この人は8年前にアリスを飛竜にて連行していた騎士デュソルバート・シンセシス・セブンだ。俺の言葉にキリトも完全に思い出したようだが、当のデュソルバート自身は何も覚えていないようだった。

 

だが、その言動に黙っていることができない者もいて、

 

「覚えてないのかよ…!あんたはあの時…アリスを連行した癖に…!?」

「…ユージオ!?」「っ!?」

 

ユージオから殺気と怒気が放たれ、それに応えるかのように青薔薇の剣からも異常なまでの氷気が漏れ出していた。

 

「天命を断ってくれだと…堂々たる勝負だったって…たった!たった11歳だった女の子を鎖で縛り上げて!飛竜でぶら下げて連れ去った奴がぁ!?今さらそんな口を利くなぁぁぁぁぁ!?」

 

デュソルバートの言葉に激怒したユージオは感情のままに剣を振り上げた。そして、怒りの咆哮とともにその腕を振り下ろそうとしてしまったのだ。

 

 




【オリジナル武器解説】
・蒼輝勇槍『天零』
長槍のカテゴリーに属する武器。
穂先は戦斧に近く、青と金がメインカラー。
持つ者に勇蒼竜神の力を与え、一度振るえば全てを凍りつかせ、打ち砕くことで使用者の道を切り拓くとされている。
武装完全支配術は竜魔神を象った氷の化身を前方に放つ大規模攻撃。
フォンが大剣の真意をまだ理解できていないため、十二分に力を発揮できていない。
武器のモチーフとなったのは、スマホゲーム『ブレイブフロンティア』から主人公の頼れる戦友【氷勇の神皇騎カル】

激闘のデュソルバート戦はいかがでしたしょうか?

大剣が他の武器に変わったのは、武装完全支配術でも記憶開放術でもありません。これこそが大剣の真なる力の一片になります。
仮称として、武装変換(アームズオーダー)という形で、限定的ではありますが、フォンは様々な武器を扱うことができるようになりました。もちろん、発動した分に比例した負担がフォンにかかります。
ある意味で夢幻の戦鬼の原点回帰とも言える能力です。

実はかなり前から行っております武器アンケート(OS編3〜5話参照)を反映させた結果、第2位だった槍が初陣を飾ったという背景もあったりします。

次回はあの二人組との邂逅になります。

コレンスさん、外道inさん
ご評価頂きありがとうございました!

それでは。

次回更新 30日0次予定

カーディナルは生存させるべきでしょうか?(どちらでも前半の結末は変わりません。後半以降の物語に大きく影響します)

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