ソードアート・オンライン~夢幻の戦鬼~   作:wing//

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前回のキリトとユージオの友情に感動したのは作者だけではない筈…アニメも佳境ですね。今日のは現実世界での戦いですね。

完成したのが5分前で慌てて前書き書いてます…!?
もしかしたら、後書きは途中になるかもしれませんが、そうなったらすみません!

それでは、ファナティオ戦です!
どうぞ!


第33話 「光を放ちし者」

もうすぐ50階だね…どうしたんだい、フォン」

 

フィゼル・リネルの暗殺コンビの襲撃から幾ばくか…

階段を駆け上がりながら、48階を超えた当たりでユージオが俺がしていることに気が付いたようで、声を掛けてきた。

 

「ああ。この大剣のことでちょっと試していたことがあってさ。もしかしたら、さっきの天零みたいな武器に変化させるのをコントロールできないかと思ってな」

「えっ!?できそうなのか?」

 

俺の言葉に慌てて振り返るユージオの横で驚くキリトにそう尋ねられ、俺は笑顔で、

 

「いや、全然できそうにないんだけど…」

「「…ええ~…」」

 

俺のまさかの言葉に脱力する二人。だが、俺もできないと思っていたのは計算の内だったりするので、そこまで落胆はしていない。

 

「まぁ、多分大丈夫だと思う。俺の推測が正しければ、いざという時には使いこなせると思うから」

「そ、そうなのか…?まぁ、フォンのことだからなんとかしちまいそうな気はするけど…」

「でも、どうするんだい?50階に待ち構えている整合騎士たち…やっぱり完全武装支配術で一気に先制攻撃をしかけるのかい?」

 

ユージオの問いかけに俺とキリトは顔を見合わせ、首を横に振る。

 

「相手の人数次第だな。相手が10人以上だっていうのなら、俺とユージオの武装完全支配術で制圧する。フォンの大剣はいざという時の隠し玉…というよりも、一か八かの奥の手だな」

「相手が4、5人くらいなら、最悪なんとかなるかもな。奴らだって完全武装支配術を闇雲に使えば、味方を巻き込む可能性があることを熟知してるはずだから、接近戦での乱闘に持ち込めれば…」

「ともかく50階に行かないと作戦の立てようがないってことか…結局、行き当たりばったりってことなんだね」

「「ア、アハハ…」」

 

まるで慣れた様子で呆れるユージオの言葉に立案者である俺とキリトは思わず乾いた笑いが口から出てしまった…そこは臨機応変と言ってほしいところである。

 

そんな雑な作戦会議を終え、俺たちは50階を目指して再び歩み始めた。そして、辿り着いたのは、

 

「…ここが50階…『霊光の回廊』か」

 

階段を昇った先には大きな扉が一つ存在する少し大きめな空間だった。おそらく、この先がデュソルバートの言っていた、整合騎士たちが集結する『霊光の回廊』なのだろう。

 

扉の先から殺気と闘気が漏れ出しているように感じたのは気のせいではないはずだ。それに気付いたのは俺だけでなく、キリトとユージオも同じようだった。

 

「さっきの作戦通りにいくぞ?まず俺が扉を開ける。相手が8人以下なら一人2~3人の配分で相手をする。もし8人以上いたら、俺が時間を稼ぐから武装完全支配術の発動準備をしてくれ」

 

扉を開く前に最後の確認を取る俺。俺の言葉にそれぞれの剣を確認するかのように握りしめ、二人は頷く。そして、俺は呼吸を整え、覚悟を決めて扉を開いた。

 

「ほう…まさか正々堂々と真正面からやってくるとはな」

「っ…!(……5人か)そっちこそ…たった3人の侵入者に、整合騎士5人で待ち構えなんて、かなり気合が入ってるみたいじゃないんですか?」

 

扉を開いた先には、5人の整合騎士が待ち構えていた。真ん中に立つ紫鎧の騎士が少し驚き、そして動揺することなくそう声を掛けてきたので、俺も平然としたフリをして答えた。予想よりも少ない相手の数に安堵しつつも、警戒を怠らず敵を観察する。

 

紫鎧の騎士がどうやらリーダー格のようで、他の4人は銀を基調とした鎧を身に纏っていた。5人一組での小隊みたいなものなのかもしれない。

 

「咎人たちよ。我らが整合騎士の本拠地で暴れてくれいるようだな?エルドリエに続き、デュソルバートまで破るとは…だが、お前たちの暴虐もここまでだ」

「そいつはどうかな?言っとくけど、俺たちがあんたたちより弱かったりしたら、他の整合騎士もこんなにあっさりと負けることはなかったんじゃないか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

俺の言葉にリーダー格の騎士が黙り込む…その体から一気に怒気が湧き出すのが肌で感じられた。俺自身、ワザと怒らせる言い方をしたのだ。これで少しは冷静さを欠いてくれれば、御の字なのだが…

 

「貴様ぁ!?ファナティオ様になんて口を…!?」

「ダキラ…口だけは達者なようだな」

(…流石にそう簡単に思惑通りにいってくれないか)

 

部下の一人が激高してくれたが、リーダー格…ファナティオと呼ばれた騎士は既に冷静になっていた。内心苦笑しながらも、俺はキリトとユージオに目配せした。二人とも準備万端のようだった。

 

「我が名はファナティオ・シンセシス・ツー…そして、我が配下の四旋剣がお前たちの命を断つ。苦しみたくなければ、大人しく投降することだな」

「まさか…最後の最後まで足掻くに決まっているだろう?」

「……愚かな。やれ」

「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」

「すぅ…剣士フォン」

「同じく、キリト」「同じく、ユージオ」

「「「参る!」」」

 

ファナティオの指示に静かに剣を抜く四旋剣たち。その動きに応えるかのように、俺たちも剣を抜き、一気に切り掛かった!

 

俺たちの動きに遅れながらも反応した四旋剣と呼ばれる騎士たち。俺がまず飛び出し、大剣でソードスキル〈サイクロン〉を放つ。周囲を大きく攻撃する範囲技に一旦距離を取る騎士たち。

 

そして、硬直で動けなくなった俺に一人の騎士が俺に切り掛かろうと、

 

「させない!」

「っ…こいつ!?」

 

その間にユージオが割って入り、青薔薇の剣でその一撃を受け止める。そして、硬直から回復した俺も戦線に復帰する。続け様に追撃を掛けてきた騎士たちの剣をいなし、俺はユージオと背中合わせになった。

 

「こいつら…できる…!」

「待て…もう一人はどこだ!?」

 

俺たちの剣技に驚愕する一方で、一人の騎士がようやく気付いたようだった。そう…キリトの姿が見えなくなっていることに…

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「っ!?」

 

物陰から飛び出し、ファナティオに奇襲を掛けたキリト。だが、その奇襲を受け切ったファナティオはキリトと剣を結び合っていた。

 

「「「「ファナティオ様!?」」」」

「よそ見してる余裕があるのかよ!」

 

ファナティオが奇襲を受けたことに一気に動揺する四旋剣。だが、そんな隙を見逃してる程、こちらも甘くはない。一人の騎士を大剣で吹き飛ばし、再びユージオに背中を預ける。

 

「ユージオ、そっちの二人は任せた!できるな?」

「…やってみるよ!フォンこそ、負けないでよ?」

「当たり前だろう?…いくぞ!!」

「咎人共が…舐めるなぁ!」「その命、刈り取ってくれるわ!」

 

ユージオの言葉に笑いながら答え、俺は対峙する二人の騎士に駆け出す。大剣の重さを生かし、トリッキーな動きで騎士たちの攻撃を躱していきながら、カウンターで反撃していく。だが、流石は整合騎士というべきか…決定打が見つからず、二人掛かりで攻められてしまい、俺も防戦一方になっていた。

 

だからといって、ユージオやキリトに応援を頼める状態でもなく、俺は息を切らして、一旦騎士たちから距離を取った。

 

「どうした?さっきまでの威勢はどこにいった?」

「…いや、ちょっと休憩していただけだよ。それじゃ、やってみるか?」

 

騎士の挑発に俺は笑いながら答え、意識を大剣へと集中させる。俺の動きに一瞬警戒する騎士たちだったが、チャンスと捉えたのか、一気に俺へと距離を詰めるために駆け出した。

 

だが…俺の方が一足早かった。

 

デュソルバートの時と同じ感覚が体に走り、俺はそれを意識の中で掴み取った。それと共に、大剣が光を放ち、形を変える。

 

「な、なんだ…!?」

「っ…避けろ!?」

「しゃぁぁああああああああああああああ!!!」

 

光と共に変化したそれを俺は投げる。その気配に危機感を覚えた騎士たちが咄嗟に横に回避した。そして、その騎士たちがいた場所を俺が放ったそれが通り過ぎていた。

 

「…武器が…変わった?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

騎士の言葉の通り、俺が持っていた大剣は全く形を変えていた。ジャラジャラと金属音を立てながら、俺は放ったそれを手元に引っ張り回収する。

 

俺が大剣を変化させた武器…チェーンハンマーを模した投擲物…白古擲球『頑駄鎚』を頭上で振り回しながら、俺は騎士たちを牽制する。一方の騎士たちも武器が変化したことに驚きながらも、警戒を緩めることなく俺と対峙していた。

 

「まさかここまで上手くいくとは…チェーンハンマーっていうセレクトはどうかと思うけど…使わせてもらう!」

 

驚き半分納得半分で俺はハンマーを再び投げる。今度は真っ直ぐではなく、横に薙ぎ払うように振り回す。流石の騎士たちもいきなりのことに動揺しつつも、その一撃を躱す。

 

「ちぃ…やっかいな真似を…!」

「まだまだ!」

 

相手に隙を与えることなくハンマーを乱れ打ちしていく。騎士たちに動きを軌道を読ませまいと縦・横・斜めと繰り出していく。だが、

 

「小賢しい真似を!一気に距離を詰めれば…!」

「迂闊だ、ダキラ!?」

 

俺の攻撃に痺れを切らした騎士…ダキラが一気に距離を詰めようとハンマーの軌道を見切り、特攻を仕掛けてきた。しかし、

 

「そこだ…それを待っていたんだ!!」

 

手元に素早くハンマーを巻き戻した俺は、すぐさまダキラ目掛けてハンマーを繰り出す。真っ直ぐ放たれたハンマーはダキラを…

 

「舐めるな!そんな野蛮な武器など!!」

 

剣を盾にハンマーの直撃を受け止めた。勢いを殺されたハンマーはダキラの防御を抜くことができず、剣の前に失速寸前の状態に陥ってしまった。

 

「見たか!これが我ら四旋剣の「まだだ!エンハンス・アーマメント!!」っ、何ィ!?」

 

完全に勝利を確信したダキラに、俺は『頑駄鎚』の武装完全支配術を発動させる。その言葉と共に、失速していたハンマーが再度回転を始める。まさかの再起動にダキラから思わず驚きの声が出る。

 

「墜ちろぉぉ!!」

「ぬぅぅぅ…がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

高速回転し、ダメ押しとばかりにハンマーからブースターのような加速が入り、一気にダキラを壁へと叩き付ける。その一撃にダキラから苦痛の声が漏れ、騎士は壁へと減り込んだ。

 

「ダキラ!?…馬鹿な…武装完全支配術だと…!」

「あと一人…このまま…!」

 

武装完全支配術を発動したことで未だ回転を続けるハンマーを空中で振り回すことで制御しながら、俺はもう一人の騎士も制圧しようと身構えた。その時、

 

「避けろ、フォン!?」

「っ…!?」

 

キリトの叫びに俺は思わずその場から飛びのいた。次の瞬間だった…引っ張られていたせいで突いてくるのが遅れたハンマーのチェーンが何かによって消し飛ばされた!

 

「フ、ファナティオ様!?」

「…まさか武装完全支配術を使うとはな。だが、我の天穿剣の前では無意味。ジェイス、その茶髪の咎人を押さえよ。ジーロ、ホーブレン、離れよ。エンハンス・アーマメント…」

「マズイ…ユージオ、逃げろ!?」

 

先程の攻撃はどうやらファナティオによるものだったらしく、キリトもその攻撃によりダメージを受けているようだった。左腹を押さえ、柱に身を隠していた。俺もチェーンが破壊されてしまったことで、ハンマーから元に戻ってしまった大剣でジェイスと呼ばれた騎士の攻撃を受けながら、ユージオに叫んだ。

 

ファナティオの次の狙いはユージオだった。その獲物…天穿剣の矛先をユージオに向け、武装完全支配術を…

 

「させるかよぉ!?」

「っ…まだ、そんな力が…!?だが…」

 

ユージオから狙いを自身へと変えさせるために、キリトがファナティオに再度攻撃を仕掛けた。しかし、次の瞬間、俺は先程ファナティオが放った攻撃の正体を目の当たりにし、驚愕した。

 

剣の矛先から放たれたのは、まさしく光のレーザーともいえるような光線だった。なんとかファナティオに接近しようとするキリトだが、あまりにも早すぎるそのレーザーに防戦一方で、空中で躱しきれない所で足に直撃を食らい、地面に倒れた。

 

「キリト!?っ…!」

「仲間のところに行かせはしない!」

 

このままでは…キリトの援護に行こうとしたところで、ジェイスが切り掛かってきた。流石にその攻撃を振り切ることができず、俺は足止めを食らってしまう。それはユージオも同じ状況で、ファナティオはキリトに止めを刺そうとばかりに近づいた。

 

「ここまでだな…咎人とはいえ、王都に暮らしていたのなら鏡というものを知っているだろう。あの道具はソルスの光をほぼ完全に跳ね返すことができる。かつて、最高司祭陛下は一千枚ものの大鏡により真夏のソルスの光を一点に集約させることで純白の炎を生み出した。その炎はたった数分で身の丈程の大岩を溶かし尽くした。

そして、その一千枚ものの大鏡を集約させて作られたのがこの神器『天穿剣』だ。分かるか…お前の腹と足を貫いたのは紛うことなきソルスの威光そのものなのだよ」

 

(鏡…光を反射させて集約させるのがあの神器の記憶…?って、ことは…!)

 

ジェイスの剣を受け止めながら、俺はファナティオの説明にあることに気付いた。それはつまり、奴の完全武装支配術の性質は光そのものだということであった。ということは…

 

「では、さらばだ…若く愚かな咎人よ」

「キリト、鏡だ!」「っ…!ディスチャージ!」

 

俺が叫ぶのと同時にキリトが両手を突きだし、神聖術を発動させた。キリトの目の前に出現した鏡がファナティオの放った光線に直撃する。流石に一千枚の鏡により集約された光に鏡はあっという間に溶解してしまったが、光線の一部はファナティオへと跳ね返った。

 

「っ!?くぅ…!」

 

まさか跳ね返されるとは思っていなかったようで、ファナティオは慌てて光線を避けるが、躱しきれず兜に光線が直撃し、その素顔が露わになった。だが、

 

「なぁ…」「っ…まさか…」「えっ…」

 

ファナティオの素顔を見たキリト、俺、ユージオに激震が走った。そして、何故か四旋剣の3人まで動揺していた。男口調ですっかりそう思っていたが…そうではなかったのだ。

 

ファナティオ・シンセシス・ツーは女性の整合騎士だったのだ。

 

「……見たな…!」

「「「…っ!?」」」

ファナティオのその言葉に俺たちは思わず圧倒されてしまう。だが、その言葉にはどこか私怨が混じっているようにも感じられた。

 

「貴様も…貴様たちもそんな顔をするのか!?あの男のように!!」

 

後半の言葉の意味が分からず困惑するも、そんな俺たちのことなどお構いなしにファナティオは更に激高していく。そして、その姿に連動するかのように四旋剣までもが怒りを露わにしていく。

 

「教会に弓引く大逆の徒である貴様ですら、私が女であることを知った途端、本気では戦えないというわけか!?」

「っ!?」

 

その咆哮と共にファナティオが怒りの一撃をキリトにぶつけるが、キリトも黒剣で剣戟を弾きファナティオと切り結ぶ。

 

「私は…整合騎士ファナティオ・シンセシス・ツーだ!!」

「くぅ…なるほど。それでその剣技にその武装完全支配術か?撃ち合って、自分が女だってバレないように済むようにってことか……そうだろ、ファナティオお嬢様?」

「っ…貴様ぁァァ!?」

「言っとくけどな…!俺がさっき驚いたのは兜が壊れた途端にあんたの剣気が嘘みたいに弱くなったからだ!顔を隠し、剣筋を隠し……自分が女だってことを誰よりも意識しているのはあんたじゃないのか!?」

「…!?うるさい…うるさい!!殺す……貴様だけは絶対に殺してやる!!」

「こっちだって最初からそのつもりだ!あんたが女だからって手を抜くつもりはさらさらないぜ!これまで何度も女剣士には何度も負けてきてるんでな!!はぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

キリトの言葉を皮切りに壮絶なラッシュが始まった。キリトとファナティオ…互いに一歩も引かない剣技が繰り出されていく。

 

「ファナティオ様!?」

「キリトの邪魔はさせない!」

 

主の危機にジェイスが加勢に入ろうとするも、今度は俺が足止めをする番だった。俺の大剣を受け止め、ジェイスが言葉を発する。

 

「貴様…!ファナティオ様の素顔を晒すなど…万死に値する!」

「それがどうした!?あんたには見えないのかよ!今、あいつが…ファナティオという剣士と真剣に戦っているのが分からないのかよ!?」

「っ!?」

 

その言葉にジェイスの目が見開かれる。だが、俺は言葉を止めない。

 

「あの人がどんな経験をしたのかなんて知らない…けど、キリトはそんなことなんて気にしてない!男とか女とかそんなの関係ない…!それを気にしてるのはあんたらの方じゃないか!?」

「な、何を…!?」

「あんたらが怒るところはそこじゃないだろう!?あんたたちのその行動はファナティオを守ってなんかいない!ただ彼女の目を背けさせているだけだ!それしかできないっていうのなら…!」

 

言葉と共に、俺は大剣へと意識を集中させる。そして、再び光を放つ大剣でジェイスの剣を打ち払い、

 

「俺たちが…その悪夢を払ってやる!来い、『絶』!!」

 

大剣を新しい武器へと変化させ、その刀身を大きく振り回す。魏王覇鎌『絶』…鎌を模した武器を手に俺は再びジェイスへと切り掛かる。

 

「な、なんだ…!?この気迫は…!?」

「俺の知ってる女性はそんな弱気なことは言わない!だから、俺はあんたたちを否定する!!だから…あんたをここで倒す!!」

 

『絶』から伝わる覇気が俺の闘気を一段と高めていく。その気迫に…

 

(わ、私は…幻でも見ているのか…!?あれが人の出せる気だとでもいうのか…)

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

動揺するジェイスに俺は鎌を振り被り、一気に剣へと乱打を叩き込む。火花が散る度にジェイスが一歩ずつ後退していく。なんとか反撃しようと剣を振るが、それを最低限の動きで躱し、回し蹴りをジェイスのボディに入れる。

 

そして、完全に体制を崩したジェイスに、

 

「これで終わりだぁぁ!!」

 

着地の反動を生かし、一気に懐に飛び込み、すれ違い様にジェイスの体をクロスに切り裂く。その一撃に鎧ごと切り裂かれたジェイスは、

 

「…馬鹿、な……」

 

その言葉と共に崩れ落ちた。鎧ごと切り裂いたが、2撃目はみねうちに済ませたため、死んではいない筈だ。すぐさま鎌の血を振り払い、俺は残る敵を見定める。

 

(キリトはファナティオと撃ち合ってる最中か!なら、ユージオの方を!)

 

未だに激しい剣戟をぶつけ合う二人をチラ見し、俺は残りの騎士たちに善戦するユージオへと加勢に入った。騎士一人に手傷を負わせているようだが、慣れない多人数戦にユージオにも疲労の色が見えていた。

 

「ユージオ!」

「フォン!ゴメン…!」

「問題ない。一気に勝負を決めるぞ!」

「まさか…ジェイスまでやられたのか!?ジーレン、下がれ!」

 

怪我をしている方の騎士をユージオに任せ、俺はもう一人と武器をぶつけ合う。このまま、一気に制圧しようと一旦距離を取った時だった。

 

「私は貴様を倒せねばならぬ……例え騎士の誇りを踏みにじってもな!!………リリース・リコレクション!!!」

「避けろ、二人とも!?」

「「!?」」

 

ファナティオのその式句とキリトの叫びが聞こえたのは同時だった。何事かと思った時には俺たちの視界を閃光が襲った。

 

時は少し遡る…

 

「ふっ…なるほどな。咎人よ…貴様はこれまで戦ってきた輩とは少し違うようだ。この忌むべき面相を見て、こうも本気で切ろうとしてきた奴はこれまでいなかった」

「忌むべき、ね…なら、あんたは誰の為にその髪に櫛を入れ、唇に紅を刺しているんだ?」

「っ…!?」

 

キリトの指摘に思わずファナティオは下唇を噛んだ。それはキリトの指摘が図星だったことを意味していた。

 

「俺は…いや、俺たちは…教会と最高司祭をぶっ倒して、あんたみたいな人間が普通に恋して、普通に暮らせるようにするために闘ってるんだ!だから、俺はあんたをここで倒す!」

「そうか……貴様は元老長が言っていたような闇の手先でも、只の下手人にでもないようだな。しかし、甚だ危険なことに変わりはない」

 

キリトの覚悟を聞いたファナティオ…だが、彼女も整合騎士としてこの場を引き下がるわけにはいかなかった。静かに天穿剣を頭上に掲げながら、彼女は言葉を続けた。

 

「その剣だけでなく、言葉でも教会や騎士たちを揺るがしかねない程にな…我ら整合騎士の最大の任務は!人界とそこに暮らす民を守ること!だからこそ…私は貴様を倒せねばならぬ……例え騎士の誇りを踏みにじってもな!!」

「っ…まさか?!止めろぉ!?」

「天穿剣に秘められた光よ…今こそ枷から解き放たれよ!リリース・リコレクション!!!」

「避けろ、二人とも!?」

「「!?」」

 

キリトの叫びが聞こえた時には俺たちは思わずその場から飛びのいていた。その瞬間、縦横無尽に光の光線が乱射された。狙いもあったものじゃないその乱光は部屋の人・物を無尽蔵に破壊し始めた!

 

「ユージオ、こっちだ!」

「フォン!?」

 

このままでは危険だと判断した俺は『絶』を大剣へと戻し、三度変化させる。右手に構えた盾…光翼盾『霧霞』…を地面へと叩き付け、ユージオを庇うように前へと出た。盾から伝わる強烈な衝撃に耐えながら、俺は彼女を見た…見てしまった。

 

「なぁ…自分まで巻き添えに…っ!?」

 

掲げられた天穿剣から放出された光の塊…そこから無尽蔵に光線の雨が周囲に降り注いでいた。それはファナティオも例外ではなく、光線が次々と彼女の体に穴を開け続けていた。その光景に俺は…

 

「ぐぅぅ……馬鹿やろぉォォォォォォ!!!」

「フォン!?」

「……エンハンス・アーマメント!!!!!」

 

自身の命さえも犠牲にしようとする彼女のやりかたに俺は飛び出していた。背後からユージオの叫びが聞こえるが、俺は構うことなく盾を突き出し、武装完全支配術を発動させる。

 

盾の記憶が解放され、機械的なデザインの一部が動き、盾から一組の翼が出現する。その翼による推進力で俺は宙を自在に駆け、一気にファナティオの元へと飛び込んだ。

 

「いい加減にしやがれ!?」

「なぁ…!?」

 

空中から盾で掲げられていた天穿剣を叩き付ける。その衝撃で記憶開放術が解け、ファナティオの動きが止まる。そして、俺は叫ぶ。

 

「今だ!やれ、ユージオ!」

「っ…頼む、青薔薇の剣!エンハンス……アーマメント!!!」

 

俺の叫びに応えるように、事前に発動準備をしていたユージオが青薔薇の剣を地面に突き刺し、武装完全支配術を発動させた。その瞬間、地面を伝い、部屋全体を永久凍土の氷が押し寄せた!

 

「咲け!青薔薇!!」

「っ…!?」「これは…!?」

 

ユージオの咆哮と共に残っていた騎士たちも一瞬の内に氷に包まれる。そして、盾の推進力で飛んで氷を回避していた俺も、

 

「おのれ…!っ…!?」

「墜ちろぉぉぉ!」

「ぬぅぅ…!ぐっ!?」

 

咄嗟に空中に飛ぶことで回避していたファナティオを踏み台にして、地面へと叩き付ける。その勢いで一気に後ろに下がり、ユージオの後方へと着地した。

 

「フォン!怪我は…!?」

「まだだ!まだ終わってないぞ、ユージオ!?」

「っ…そんな…」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

俺の言葉に意識を前へと戻したユージオが絶句していた。なぜなら、下半身が氷に包まれ、上半身ももう間もなく凍ろうとしているのに、未だに天穿剣をこちらへと向けているファナティオの姿があったからだ。

 

「(くっ…まだ抵抗する力が…なら…っ!?)ぐぅぅ…!あああああぁぁぁぁ!?」

「フォン!?」

 

このままではマズイと思い、盾の武装完全支配術でファナティオの最後の一撃を受け止めようとした時…デュソルバートの時と同じ様に頭痛が俺を襲った。しかも、今度の頭痛はすぐには消えず、その場から動くことができなくなる程の痛みだった。

 

「くっ!お前に…お前らに正義なんかない!?」

 

俺の代わりにユージオがなんとかファナティオの一撃を止めようと、青薔薇の剣の力を更に解放する。だが、

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「止まれ…!止まれよぉぉォォォォ!?」

 

血が流れようが、いくら青薔薇の氷で全身を包まれようが、ファナティオはその一撃を放つことを止めようとはしなかった。だから、ユージオの目が諦めの色に変ってしまった。

 

(勝てない…?今の僕じゃ……あの人には勝てない)

「憎しみじゃ…あいつには勝てないよ、ユージオ」

「…!?」

「っ…キ、リト…?」

 

先程までファナティオの記憶開放術のダメージで動けずにいたキリトが、ボロボロの身をなんとか動かし、そうユージオに告げた黒剣を構えていた。その姿に、俺も痛む頭を押さえながら、キリトに視線を向けていた。

 

「お前は整合騎士が憎いからここまで来たわけじゃないだろう?アリスを取り戻したいから、アリスを愛しているからここにいるんだろう?その気持ちはあいつの正義に決して劣るものじゃない!

俺だってそうだ…フォンだって…俺たちもこの世界の人たちを、お前を、アリスを…あいつだって守りたい!だから、今はここであいつに負けるわけにはいかない。

そうだろ?ユージオ、フォン!」

 

そう言い切り、キリトは目を瞑り意識を黒剣へと集中させ、その言葉を放つ。

 

「エンハンス・アーマメント!!!」

 

武装完全支配術の式句が放たれ、キリトの黒剣が姿を変える。全てを飲み込むような闇を模した奔流が一気に黒剣から放たれ、同時に放ったファナティオの光線とぶつかった。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「はああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

黒の奔流が周りを削り、光線の流れ弾が周囲を溶かす。俺は流れ弾からユージオを庇うため、なんとか体を動かし、無理矢理前に立った。盾に無数の衝撃が襲うが、俺は二人の攻撃がどうなるのかを見続けていた。そして、

 

「うああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

「……ふっ………」

 

キリトの咆哮と共に闇が光を呑み込み、ファナティオを屋上へと跳ね飛ばした。負けを悟ったファナティオの顔は…どこか清々しいものになっていた。そして、勝利したキリトも、

 

「…ううぅ…!?」

「「キリト!?」」

 

全力を出し、限界が来てしまったのか…俺たちの目の前で倒れてしまった。すぐさま俺とユージオはキリトへと駆け寄った。

 




【オリジナル武器解説】
・白古擲球『頑駄鎚』(はくことうきゅう:がんだづち)
ハンマーのカテゴリーに属する武器。誰がどう見たってガン〇ム・ハンマーの形をしている。
太古から伝わる兵器。髭が生えた機械人形が多くの敵を屠ってきたとされている。特殊な素材で作られており、ハンマー本体にも機械的なギミックが搭載されていることかかなり高度な技術が使われているとされているが、詳細は不明である。
武装完全支配術ではハンマーが高速回転し、ブースターが点火して威力が増加する。ちなみに記憶開放術はハンマーが超巨大化するという代物だったりする。
モチーフは『∀ガンダム』(ちなみにTVアニメの中でも、ハンマー使用の回に『野蛮な兵器』と称した敵が返り討ちにあった記憶があったので、台詞で流用したりしてます(笑))。
・魏王覇鎌『絶』(ぎおうはがま:ぜつ)
鎌のカテゴリーに属する武器。死神のような大鎌ではなく、少し小さめで扱いやすいサイズの鎌。
『外史』と呼ばれる世界において、魏の覇王が使っていたとされる武器。元々、自身の長所・弱点を理解した上で本武器を運用していたという説があり、この武器を伝い、覇王の力を使用者に付与すると言われている。
モチーフは『真・恋姫夢想』より魏の王:曹操こと華琳が愛用していた武器『絶』。
・光翼盾『霧霞』(こうよくだて:きりがすみ)
盾のカテゴリーに属する防具。黄色をベースに青と白のアクセントが特徴的なメカメカしいデザインの盾。
盾の中でも大型のタイプになり、味方だけでなく身を伏せれば自身の身を守ることもできる。機械型の盾であるため、ギミックも細かく盾以外の機能も備わっており、盾というよりも複合兵装型盾という代物に近い。内部にエネルギー機構を擁している。
武装完全支配術では、盾の横部分からエネルギー体の翼が出現し、飛行できるほどの推進力・翼を盾に重ねることでの防御能力の強化などを行うことができる。
モチーフは『Vガンダム』よりV2ガンダムの『光の翼』と『メガビームシールド』。サブタイの『光を放ちし者』の半分の意味はこっちだったりする。

キリト君がちょっと影薄いですが、大剣が便利すぎるのが悪いです(笑)

さて、実は今回登場した三つの武器はそれぞれセレクトした理由があってのことでした。
ハンマー→主人公の声優さんがTVアニメシリーズで初めて主人公のCVが女性&主人公が女装(しかも、エースパイロットの切れ者にバレないほど似合ってる)していたりする。
鎌→女性が強い世界でのお話・・・その中でも、そういう男女だからという理由を最も嫌うであろうキャラの武器(というか、華琳さんがここにいたら、確実に心折るレベルで論破してくれそうだなと思ったのも大きな要因だったりします(笑))
盾→『女性』が作品のテーマの一つに挙げられているから。

という、ファナティオに対するアンチテーゼ的な意味でのセレクトだったりします。以前の天零みたいなややこしい描写は無くしましたが、いかがでしたでしょうか?人によってはどこかでニヤリとされた方もいらっしゃったかもしれませんね。

次回はインターバル回とアリス…そして、イーディスとの戦闘回前半になる予定です(多分…!)そして、物語の大きな転換期になるかと思います。

野山の梟さん 
ご評価ありがとうございます。

それでは!
(今回登場した武器の解説は後程に!)

カーディナルは生存させるべきでしょうか?(どちらでも前半の結末は変わりません。後半以降の物語に大きく影響します)

  • 生存ルート
  • 死亡ルート
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