ソードアート・オンライン~夢幻の戦鬼~   作:wing//

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第8話の話がちょっと絡んできます。

この話が一番好きだという方も多いのではないでしょうか。

ちなみに作者はこの話をアニメで見て、SAOにハマりました(笑)


第10話 「青眼の悪魔」

再び索敵スキルに反応があったのは、強硬派で知られる『アインクラッド解放軍』だった。

深い緑色のマントに重厚なイメージの鎧を着た軍の恰好に、俺は以前関わった事件を思い出してしまい、思わず眉を顰めてしまった。

 

「あれは……軍の奴らか?」

「だが、あいつらは第一層を根城にしてるじゃなかったのか?」

「25層攻略の時に、大きな被害が出て……それで、今はアインクラッド解放団と解放軍の二つのギルドに分かれたんだよね?」

「……ああ。あいつらは、強硬派で知られる軍で間違いないが……確か、今は組織強化をしている最中だったはずだ」

 

キリトとクラインの疑問に、現状の軍の状況を確認するアスナに俺は同意しながら、そう答えた。俺たちがそんなことを話していると、

 

「休め!!」

 

リーダー格らしき人物……おそらくコーバッツだろう……彼が号令を下した途端、プレイヤーたちは一気に座り込んでしまった。

そのまま、コーバッツは俺たちに近づいて、

 

「私はアインクラッド解放軍、コーバッツ中佐だ」

「キリト、ソロだ」

 

そう名乗って来たので、キリトが代表して、応えた。

 

「君たちは、もうこの先も攻略しているのか?」

「ああ……ボス部屋までのマッピングはもう終わってるよ」

「ふむ…………では、そのマッピングデータを提供してもらいたい」

「「「!?」」」

「………………………………」

 

コーバッツのまさかの要求にキリトたちが驚く中、俺は冷静に状況を見ていた。

 

「タ、タダで情報を提供しろだと!?てめぇ!マッピッグの苦労が分かって言ってんのか!?」

「我々は、一般プレイヤーに情報や資源を平等に分配し!秩序を維持するとともに、一刻も早くこの世界から、プレイヤー全員を解放するために、闘っているのだ!

ゆえに、諸君が我々に協力するのは、当然の義務である!」

「あなたね……!」

 

コーバッツの言葉にアスナが反論しかけ、クラインも刀に手を掛けようとしていた。

それをキリトが手で制し、

 

「よせ……どうせ、街に戻ったら、公開しようと思ってたデータだ」

「マップデータで、商売する気なんてないしな……これぐらいなんともないだろう」

 

キリトの言葉に俺も同意し、キリトと共にそれぞれのマッピングデータをコーバッツに送った。それを受け取ったコーバッツは、

 

「協力感謝する」

 

それだけ言って、背を向けた。その背中に向けて、キリトが忠告した。

 

「ボスにちょっかいかけるなら、止めておいた方がいいぜ」

「それは私が判断する」

「「!!」」

 

その言葉に俺とキリトも言葉を失った。

 

「さっきボス部屋を見てきた!そんな生半可な人数で、どうこうなるレベルじゃない!」

「それに……あなたの部下たちは、ここまででもう疲労が溜まっているじゃないですか!?そんな状態でボスにいど「黙れ!」っ!?」

「私の部下たちは!この程度の事で音を上げる軟弱者ではない!!」

 

コーバッツの怒声に思わず、俺は黙ってしまう。そのまま、部下たちに指示を出そうとするコーバッツに俺は食い下がった。

 

「待って下さい!ここのボスはいきなり挑んで攻略できるレベルじゃない!?

それを、第一層で物資を搾取し続けていた貴方たちがどうにかできるレベルじゃないことぐらい、分かるでしょう!」

「黙れ!そんなこと、やってみなければ分からないだろう!」

「いいえ、黙りません!貴方たちのリーダーの指示かもしれませんが、これは自殺行為だ!!!」

 

コーバッツの怒声に、俺も負けじと大声を出す。なんとしても、この人たちを進ませるわけにはいかない、そう思い、必死にコーバッツを止めようしたのだが、

 

「いい加減にしろ、夢幻の戦鬼!元はと言えば、貴様が全ての元凶だろう!」

「っ……!?」

 

コーバッツの言葉に思わず、言葉が止まる。

 

「貴様が我が軍を……あのお方を貶め入れなけらば、我が軍は邁進できていたのだ!それを貴様が全て崩したのだろうが!!」

「…………………………………………」

 

その言葉に反論できず、俺は押し黙ってしまった。その間に、コーバッツは号令を掛け、そのまま、ボス部屋の方へと向かってしまった。

 

「お、おい……大丈夫か、フォン……?」

 

クラインが俺を心配して、そう声を掛けてくれた。

 

「……ああ、大丈夫だ、クライン」

「……軍と何かあったの?」

「……大したことじゃないよ。ちょっといざこざがあっただけさ」

アスナの心配に、俺は……嘘を吐いた。だが、今、ここでそのことを言えば、彼らを……特にキリトに気を遣わせてしまうと思い、俺は誤魔化すことにしたのだ。空気が重い中、俺達はもう少し休憩してから、迷宮区の攻略を再開するのだった。

 

 

 

「本当に良かったのかよ、キリト」

「……ああ。もう終わった事だぞ、クライン」

「そうだけどよ……」

 

クラインたち、風林火山とも合流して、迷宮区を探索することになった俺たち。

クラインは先ほど起きたことをまだ気にしているようだった。

 

「……ったく、人が良すぎるぜ、キリト。その上、様子見を見に行こうなんてさ……あいつら、ボスに挑んだりしないよな?」

「…………流石に指揮官がまともだったら、大丈夫だと思うけど……」

 

……多分、それはないだろう。クラインの言葉に同意しながらも、小説を……

先ほどのやり取りを思い出し、間違いなくボスに挑む気だろうと俺は思った。

できれば、今すぐにでも飛び出して行きたいくらいだが……今、ここで動けば、明らかに不自然な行動になってしまう……俺は歯がゆい思いをしながら、さっき止められなかったことを悔やんでいた……その時だった。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「っ……くそぉ!?」

「いくぞ、アスナ!」

「う、うん!」

「お、おい!フォン……キリトまで!?」

 

悲鳴が聞こえた直後、俺はすぐさまボス部屋と走り出し、キリトとアスナが俺に続いた。

そして、ボス部屋に着いた時、ボス部屋の扉は開かれており、その光景は地獄と化していた。

ボスのHPは3割も減っておらず、それに対し、軍のメンバーの何人かはHPがイエローにまで到達していた。

 

「おい!早く、転移結晶を使え!」

「そ、それが……結晶が使えないんだ!?」

「っ……!」

「そんな……!?」

「結晶無効化空間か……!?」

 

兵士の言葉にアスナとキリトは驚きの声を上げた……ここも原作通りなのか!?

俺たちが驚愕している間に、事態は最悪の方へと動いた。

 

「我々解放軍に撤退の二文字はありえない!……あってはならんのだぁ!?突撃ぃ!!!」

「っ……!?よせぇぇ!!!」

 

すぐさま、援護に入ろうとして、俺は背中の片手剣を抜こうとしたのだが……

『GOAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!』

 

その前にボスのブレスと大剣による無情な一撃が軍メンバーを襲った。

 

ドサササッ!

 

俺たちの前に一人の男……コーバッツが転がってきた。

コーバッツのHPはみるみる減っていき、そして……

 

「……あ、ありえない」

 

絶望の表情をしたまま、HPがゼロになったコーバッツは……ポリゴンとなって、消えていった。

 

「っ……バカ野郎……!」

 

俺は思わず、そう呟いていた。どうしてだよ……当てようのない憤りを感じていた。

だが、ボスはその動きを止めず、次なる獲物を手にかけようとし、事態も次の展開へと動いていた。

 

「だめ……だめ、よ……!もう……!」

「っ、アスナ……!?」

「だめぇぇぇぇ!!!」

「「アスナ……!!」」

 

ボスを止めようと、飛び出したアスナを援護するため、俺とキリトは彼女を追いかけた。

 

「くそっ、どうにでもなりやがれぇ!」

 

どうやらクライン達も援護してくれるようだ。

 

「せえぇぇぇぇい!」

 

アスナの一撃がボスの背中に見事命中したのだが……背部への攻撃にも関わらず、ほとんどダメージが入ってない。

そのままグリーム・アイズは大剣を振りかぶり、アスナに攻撃を仕掛けた。

辛うじて、アスナはその一撃を細剣で逸らすも、拳の一撃を食らい、大きく体勢を崩してしまった。

そこに追撃の一撃をボスが加えようとするのを、俺とキリトがなんとか受け止める。その隙にアスナは体勢を立て直し、クライン達は軍の救助に入った。

しかし……状況は芳しくなかった。俺達とボスが中央にいるせいで軍は撤退できず、アスナやクラインはタンク役に向いていない……俺とキリトが交互に攻撃を仕掛けていくも、通常装備の俺達ではパラメータ的に不利であり、徐々にボスに押されていく……こうなったら、

 

「キリト!」

「っ……フォン!?」

「10秒稼ぐ!その間に!」

「け、けど……あれは!?」

「迷ってる場合か!?ここでアスナたちを死なせてもいいのか!?」

「……っ……分かった。頼む!」

 

迷うキリトに発破をかけ、俺は10秒間攻撃を凌ぐことに集中した。

 

「フォン君!」「フォン!」

 

アスナとクラインも援護に入ってくれ、なんとか10秒凌いだ所で、

 

「よし、いいぞ!…………スイッチ!」

 

キリトの準備完了の声に、ボスの大剣を弾き、キリトと位置を入れ替わる……そして、俺もスキル《高速換装》を発動させ、装備を両手剣『エンプレス・ジェイル』と『蒼炎の烈火』に切り替え、すぐさまキリトの援護に入った。

 

「スター、バースト…………ストリーム!!!」

 

そのまま、キリトは二刀流16連撃ソードスキル〈スターバースト・ストリーム〉を発動させ、ボスの体を刻み始めた。だが、ボスも黙ったまま、やられるわけもなく、キリトに反撃しようとしたのだが……

 

「させるかよぉ!!!」

 

ボスの一撃を幻想剣《両手剣》単発ソードスキル〈フォール・ルイン〉を使い、攻撃を弾いた。そのまま、硬直が解けた所に、横から追撃の幻想剣《両手剣》8連撃ソードスキル〈クアンタム・カウント〉を放つ。

 

「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」」

 

そのまま、俺とキリトは夢中で剣を振るっていく。ボスの攻撃が俺とキリトを襲うが、そんなのお構いなしに攻撃を続けていく。そして……

 

「はぁぁぁぁぁぁ──────────!!!!!!」

『GAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!?!?!?!』

 

キリトの最後の一撃がボスを貫き、雄たけびと共にボスはポリゴンと化して消滅した。

 

「はぁ……はぁ……」

「お、終わった……のか……?」

 

ドサッ……!

「キ、キリト!?」「キリト君!?」

剣を持ったまま、倒れてしまったキリトに俺とアスナは慌てて駆け寄ったのだった。

 

 

 

少ししてキリトが目を覚ました。目覚めたキリトにホッとしたのか、アスナは涙を流していた。

「……ア、スナ?」

「キリ、ト……くん……!」

「…………悪い、心配かけた」

「……大丈夫か、キリト?」

「……フォン……どのくらい気を失ってたんだ?」

「ほんの数秒だ」

 

アスナと俺の声にキリトは大丈夫だというように答え、死闘が終わってから、どれくらい時間が経ったのかを尋ねた。

 

「おう……目が覚めたか、キリト」

「クライン…………何人死んだ?」

「……コーバッツの他に2人だ」

「そうか……ボス攻略で死者が出たのは67層以来か……」

「……バカ野郎が!死んじまったら、攻略なんて言えねぇじゃねぇか!?」

 

クラインの言葉にキリトも顔が悲痛に歪んだ。

その空気を変えようとしたのだろう。クラインがあの質問をしてきた。

 

「それはそうと、キリト。それにフォンも……さっきのは何だったんだよ!」

 

その言葉に俺とキリトは一瞬顔を見合わせ、頷いてからクラインの質問に答えることとした。これは言わないと駄目な空気だしな。

 

「……エクストラスキル『二刀流』だよ」

「「「おおぉ!!!」」」

「……マジか……それじゃ、フォンのさっきのも……?」

「ああ……俺のもエクストラスキル『幻想剣』のソードスキルだ。

あと、前からよく使ってる高速換装のスキル。あれも『幻想剣』のバトルスキルだ」

「「「おおおおぉぉぉぉ!!!」」」

 

キリトと俺の回答に驚きの声が響き合った。

 

「そ、それで!?出現条件は!?」

「……分かってたら、とっくの昔に公開してるよ。いつの間にか、スキル欄に出現してたんだよ」

「……俺もキリトと同じだ。そこからは一部スキルだけ使ってた、って訳だ」

 

クラインの言葉に俺たちはそう答える。キリトはともかく、俺にもユニークスキルが現れるとは正直思ってもいなかった。二刀流はプレイヤーの中でも最も反応速度が高い者に発現するらしいが……

 

「……どっちも情報屋のスキルリストには乗ってねぇ。ということはお前ら専用のスキル……ユニークスキルじゃねぇか!?……にしてもよぉ、なんで黙ってたんだ?」

「……分かるだろう?周囲がどんな反応するかなんてさ」

「……なるほどな。まぁ、確かにネットゲームは嫉妬する奴が多いもんな」

 

まぁ、俺は人間ができてるから違うけどな……というクラインに俺とキリトは思わず苦笑いしてしまうのだった。

 

「それで、75層の転移門のアクティベートはどうする?」

「……任せるよ。流石にな……」

「そうか。フォンは?」

「……俺も疲れたから、任せていいか?」

「……分かった。ほら、お前らもさっさと戻れ……それから、ちゃんと上に報告して、以後こういうことがないようにしっかり伝えろよ!」

 

クラインの言葉に軍のプレイヤー達は素直に従い、俺たちに一礼してから転移結晶で帰って行った。

 

「それじゃ、俺たちは行くぜ……それとよ、キリト。俺はよ、理由はどうであれ、お前が誰かを助けるために戦ってるのが……そのなんつぅか……嬉しかったぜ」

「……クライン」

「それに、フォンも……迷いなく動くお前も最高にカッコよかったぜ」

「……ありがとう、クライン」

「へへっ……よし、お前ら行くぞ!」

 

そう言って、クラインは風林火山を率いて、アクティベートに向かった。

残された俺とキリトたち……まだ泣き続けているアスナはキリトの胸に縋り付いていた。

 

「……それじゃ、俺も帰るよ」

「……ああ……フォン」

「うん……?」

 

転移結晶を使おうとして、キリトに呼び止められた。

 

「……悪かったな、お前まで巻き込んで」

「…………気にするな。良い機会だったしな……それじゃあな」

キリトの言葉にそう答え、俺は颯爽とその場を後にした。

 

 

 

次の日……

朝刊を見た俺は絶句するしかなかった。

 

『74層ボス攻略!!!黒の剣士と夢幻の戦鬼のコンビネーション爆発!』

『新たなスキル、二刀流!幻想剣!74層ボスに炸裂した100連撃ソードスキル!』

『最強の座は誰か!二刀流Vs神聖剣Vs幻想剣!!!』

 

……いやいや、脚色しすぎだろう……というか、最後の記事に至っては俺とキリト、そして、ヒースクリフの特集記事になっている。よくこんな記事が書けるよな。それほど、こういったゴシップが求められているということなのだろうか……

俺がそんなことをコーヒー(っぽい味の、緑色の飲み物)を飲んでいると、メッセージが届いた。差出人はアスナからで、もちろん内容は……

『団長が話がしたいって。今日、血盟騎士団に来れる?』

やっぱりか……そう思い、俺は身支度を整えるのだった。

 




オリ主&キリト、ユニークスキル初公表回

ちなみに、補足説明ですが・・・アルゴはオリ主のユニークスキルをかなり前から知っていますが(6話参照)、高速換装のスキルと共に、公表していませんでした。最後のゴシップ記事の幻想剣に関する情報源は彼女です。
また、6話のフィールドボス攻略戦にて、キリトとフォンは互いのユニークスキルについて情報を共有しております。

本日、もう一話は18時に投稿予定です。


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