そして、物語は最終局面へと…
それではどうぞ…
追記 UA100,000達成しました!
「絶対に思い出せてやる…ぶっ飛ばしてでも!さぁ…こっからが本番だ!!!」
青薔薇の氷を溶かし尽くし、俺は炎を纏った刀をユージオへと突きつけた。何が起こったのか、理解を超えた現象が起きていた。だが、今まで武装変換術で使ってきた武器とは異なる力が体から溢れ出していた。
(これは…この衣は…?っ……左目が銀色に…!?)
武具庫で手に入れた服の上に纏った深紅の衣から不思議な力を感じると共に、刀で反射した自身の顔が見え、俺は驚く。左目が銀色の光を宿していたからだ。特に異変や何かが変わったような感じはないが…オッドアイとなった眼に少し違和感があった。だが…
(…信じられない…さっきまで重力を何倍にも感じていた体が、羽の様に動かせる!もしかしてこの炎…)
「…驚いたよ。永久凍土の氷を燃やすなんてね」
「この炎もただの炎じゃないからさ」
武装変換術で変化した刀…不知火刀『黒暁』から流れ込んできた記憶と炎の性質から、ある可能性に気付いた俺は驚きながらも、ユージオの言葉に答える。
「この『黒暁』が放つ炎は不知火の炎…俺の意志によってその強さも焼き尽くすものをも選ぶことができる。それは術だろうと破壊不能オブジェクトであろうと…痛みや傷であっても関係ない…全てを焼き払う覚悟の炎だ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「お前が…お前がどんな氷に閉じこもろうとも、俺はお前の心を信じる!だから、この刀でお前の魂を呼び覚ましてやる!いくぞ、ユージオ!」
その言葉と共に、刀と衣から不知火の炎が一気に噴き出す。不知火の炎で心身のダメージを焼き尽くすことで万全な状態に戻った俺は、ユージオへと切り掛かった。青薔薇の剣で斬撃を受け止めるユージオ…炎と氷がぶつかり合い、強力な衝撃波が発生した。
だが、そのまま拮抗するかと思われた鍔競りは…続くことはなかった。
(な、なんだ…!?この気迫は……炎じゃない…この剣士の気迫を…僕は知っている…!?)
「…うおおおおぉォォォォォォォォ!!!」
気迫と共に俺は青薔薇の剣を押し飛ばし、その勢いで次々と剣戟を繰り出していく。初めて使うとは思えない程に手になじむ黒暁を握りしめ、俺はユージオへと迫る。
「お前は言った筈だ!自分に後悔したくない、嘘を吐きたくない、同じ間違いを繰り返したくないって!!お前が剣士になったのは何のためだ!?」
「…っ!?」
刀ソードスキル〈辻風〉を放ち、ユージオを吹き飛ばす。青薔薇の剣で防がれてしまったが、完全に隙だらけとなったユージオに俺は追撃を掛ける。俺の放った刀ソードスキル〈浮舟〉と、ユージオが迎撃で放った片手剣ソードスキル〈スラント〉が激突する。
そして、相殺された互いの剣が勢いを失ったところで、ユージオが反撃に出た。秘奥義連携で片手剣2連撃ソードスキル〈バーチカル・アーク〉を繰り出してきたのだ。その技を俺はただ見ているだけで…
「…なぁ…」
…斬った…そう確信していたユージオから驚きの声が出た。ユージオの放った〈バーチカル・アーク〉は俺に当たらなかった…いや、正確には俺を捉えることはなかった。ユージオの眼前で炎と化した俺にソードスキルは空振る形となった。
「そこだ!!」
「っ!?……ぐぅぅ!?」
そして、炎から元の姿に戻った俺は天井近くから一気にユージオへと切り掛かった!全体重を掛け、急降下から放たれた一撃に防御したユージオから苦痛の声が上がる。
「セルカと約束しただろう!必ず4人で帰るって!その約束のためにお前はここまで来た筈だ!あの時のセルカの涙を、お前だって覚えてる筈だ!!」
「…ぐぅ…やく、そく…?」
俺の言葉に頭を抑えるユージオ。もう一息だと俺は刀を振るうと共に更に畳みかける。
「修剣学院でキリトとウォロ先輩の試合を見て、お前は俺に聞いた筈だ!自分が何のために剣を振るえばいいのかって…デュソルバートやファナティオたちとの闘いを経て、お前だって感じたことがあった筈だ!お前の護りたい者を思い出せ!!」
「っ…!?っ…!?」
「ティーゼやロニエを助けた時、お前は禁忌目録に逆らった!それは、自分の信じることが正しいと思ったからの筈だ!あの涙を見た時…笑顔を守れた時に何かを感じた筈だろう!?」
「…ううぅ!?ううううぅぅぅ…!!」
俺の剣圧と言葉にユージオの闘気がどんどんと弱くなっていく。このままユージオを記憶を呼び起こすことができればと思ったが、流石にそう上手くはいかないようで…
「うるさい…うるさい!僕の守るべきは最高司祭様ただ一人!その他なんて……他に必要なものなんてない!?」
「くっ…!?」
「僕は32番目の騎士!それだけだ!」
「違う!お前はユージオだ!俺たちの友で、優しくて、気弱で…一人の女の子のために立ち向かえる剣士だ!!」
片手剣重3連撃ソードスキル〈シャープネイル〉と刀3連撃ソードスキル〈緋扇〉が言葉と共にぶつかり合い、俺たちは互いにノックバックにより吹き飛ぶ。そして、激高したユージオが一気に距離を詰め、乱撃を繰り出してきた。だが、
(あ、当たらない…!?そんな馬鹿な…見切られている!?)
ユージオの放つ斬撃をギリギリで見切り、全てを躱していく。高速の剣戟を全て躱され、ユージオの表情に焦りが出ていたが、一方の俺は冷静に青薔薇の剣の軌道を見切っていた。
(なんだ、この感覚…剣の軌道がとてもゆっくりに見える。どこにどう避ければいいのかがはっきりと分かる。これなら…いける!)
まるでスローモーションと化したユージオの動きを完璧に見切り、俺は刀の鞘頭でユージオの顎目掛けて、カウンターの突きを放った。隙を突かれたユージオはまともにその一撃を食らい、初めて地面に倒れ込んだ。
「…くっ…!?」
「思い出せ、ユージオ!お前がその青薔薇の剣に込めた想いは、そんな偽りの記憶や使命なんかに負けるものじゃなかった筈だ!お前はアドミニストレータの駒なんかじゃない!」
「………違う…!そんなことはない!!」
「いい加減に…しやがれ!!」
「「エンハンス・アーマメント!!!」」
互いに譲れない言葉と共に俺たちは武装完全支配術を開放する。黒暁の不知火の炎を凍らせようと、青薔薇の氷が一面を覆い尽くすが、俺は不死鳥と共にその場に顕在していた。
「なんで…なんで凍らないんだよ!?君に…お前なんかに正義がある筈が…!」
「…想いの籠っていない剣じゃ俺は倒せないぞ。守りたいものも分かっていないそんな氷で、俺の炎は絶対に燃え尽きない!見せてやる…お前が信じた心の強さを!!」
混乱するユージオに俺は不知火の炎を全開にし、意識を集中させる。今の俺ならできる筈だ…あの世界で繰り出してきたあの刀最強の剣技を頭に強くイメージさせる。そして、深呼吸と共に、炎を刀へと宿して俺はユージオへと飛び掛かる。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「くっ…まだ…まだ負けるわけにはいかないんだぁぁぁ!!」
俺とユージオの咆哮が重なり、互いの剣技が放たれようとした。だが、先に斬撃が届いたのは俺の刀だった。間合いに入る直前、神速のスピードを宿した俺は一気にユージオの懐へと飛び込んでいた。ユージオが気付いた時には既に遅かった。俺はそのまま高速の連撃…いや、5つの同時斬撃を放った。
「幻想剣……五行流星!!!」
「がぁぁぁぁ!?」
幻想剣《刀》神速5連撃ソードスキル〈五行流星〉…この世界には存在しない『幻想剣』スキルを心意で発動し、俺はユージオの頭部・両腕・両足へと認識負荷の同時斬撃を繰り出した。
その斬撃を防ぐ術を持たないユージオは直撃を食らい、大きく吹き飛ばされたことで壁へと叩きつけられた。だが、すぐさま立ち上がり、フラフラとなりながらもまだ闘う意志を見せていた。
「止めろ、ユージオ!これ以上闘ったら、お前の体が…!」
「負けられないんだ…あの人のためにも…あの人の愛を受けるためにも…!」
「そんなのはアドミニストレータの思うつぼだ!お前に愛を与えると言っておきながら、どうしてお前がここまでボロボロなのに助けようともしない!そんな奴の言葉に騙されるな!」
このままではユージオの体が持たない…不知火の炎で傷を治してやりたいところだが、シンセサイズから解放されていないユージオに使えば、戦いが続いてしまうことになる。硬直状態から抜け出せず、俺が手をこまねいている時だった。
「フォン!…これは一体…!?」
「誰が闘って…あれは、ユージオなのですか…!」
背後から聞こえてきた声に振り返ると、下の階段から駆けつけてきたキリトとアリスの姿がそこにはあった。
(キリト、やっぱり無事だったか…アリスも一緒とは…色々あったみたいだな。だけど、今の状況での登場はあんまり良くなかったな)
「フォン、どうしてお前がユージオと闘ってるんだ…!?それに、その左目は何が…」
「悪い、ちょっと簡単には説明できない状態だ。お前は手を出すなよ、キリト…」
「…まさか…ユージオまでもがシンセサイズされてしまったというのですか…そんな…!?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
アリスの言葉に俺は言葉を返すことができなかった。俺の沈黙が肯定を意味していることを知り、キリトとアリスに驚愕が走っているのが背中で分かった。
友と闘うなんていう非情なことなど、キリトにはさせられない…旧ALOで、操られていた俺を斬ったあいつに二度とあんな真似をさせるわけにはいかない…その一心で俺はユージオへと再び闘気を放つ。
だが、俺が二人に注意を向けていた時、ユージオにも異変が起こっていた。
「っ…!?き、みは……君たちは…!?」
「…!ユージオ、思い出したのか!」
アリスとキリトの姿に、今まで以上に苦しそうに頭を抑えるユージオ…その額には敬神モジュールが埋め込まれているであろう紫の紋章が浮かんでいた。だが、
「…違う…僕の大切な人は…あの人だ…僕は……僕はぁぁぁ!?」
「っ…!?止めろ、ユージオ!?」
苦悩するユージオは叫びと共に青薔薇の剣を大きく振り上げる。青薔薇の剣から放たれる凍気に、2度も味わった似た気配を感じ、嫌な予感を覚えた俺はユージオを阻止しようとするが…既に遅かった。
「リリース・リコレクション…!」
「っ…くそぉ!?キリト、アリス!!」
「「っ!?」」
記憶開放術を解き放ったユージオ…青薔薇の剣から部屋全体を一気に永久凍土の氷が覆い尽くそうとする。俺は氷を回避すべく刀から不知火の炎を発する。そして、翼衣をキリトたちへと向かって投げる。
不死鳥と化した翼衣はキリトとアリスの周りに不知火の炎を形成し、青薔薇の氷から二人を守った。そして、俺は刀から放たれる炎でなんとか身を守る。だが、この炎が破られるのも時間の問題だった。
(くっ……こうなったら、やるしかない…青薔薇の氷を切り裂いて、ユージオを正気に戻す…あと少しなんだ…だから、俺に力を貸してくれ!!)
不知火の炎を刀身に纏わせ、俺は鞘を抜き、疑似二刀流で構える。そして、意識を集中させ、未だに周りを凍らせようとする青薔薇の氷へと突っ込んだ。
「いくぞ!ユージオォォォ!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
その場から前方に飛び込み、その勢いで刀ソードスキル〈旋車〉を放ち、地面に叩きつけた剣圧と不知火の炎で氷を砕く。そのまま、意識を左腕の鞘へと切り替える。不知火の炎が鞘に移るとともにライトエフェクトが発生する。
「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
鞘で片手剣ソードスキル〈レイジスパイク〉で更に前方へと突き進み、再び刀へと意識を切り替える。
スキルコネクト…ALOで最も放ってきた技術で俺は青薔薇の氷を次々と無効化していき、無理矢理前へと進んでいく。刀3連撃ソードスキル〈羅刹〉でユージオへとあと少しという距離にまで近づいた。
(いける…!このまま、ヴォーパルストライクで一気に貫く…!!)
全身の至る所に霜が降り、凍気に襲われながらも、俺は最後の一撃を放とうと構える。だが、そうはさせまいと青薔薇の剣から更なる氷が生み出された!
あまりにも大きすぎる氷は俺を覆い尽くそうと、大波の如く振り掛かってきたのだ。まさかの氷の波に、俺は咄嗟に技を切り替える。
片手剣8連撃ソードスキル〈ハウリング・オクターブ〉による高速5連撃突きで波を砕き、斬り下ろし、切り上げからの上段斬りで氷の波を相殺することに成功したが…完全に俺はユージオへと距離を詰める手段を無くしてしまった。
(くそぉ……あと少しなのに…あと一歩!?)
思いつく刀のソードスキルではこの距離を詰めることができない…スキルコネクトで続けて放てるソードスキルはもう右手に残っている刀の一回のみだった。内心でそんなことを思いながら、俺は虚ろな瞳で青薔薇の氷を操るユージオへと視線を向ける。
「(…まだだ…まだ終われない…!?あと少し…届け…届け…!)…届けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーー!!!!」
右目が熱くなるのを感じながら、俺は叫ぶ。その瞬間、俺の体と思考は不思議な感覚に襲われる。そして、
「な、何ぃ…!?」
「…っ!?はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
刀でソードスキルを発動した瞬間…俺はユージオの眼前へと迫っていた。瞬間移動といってもいい程の速さで間合いに入られたユージオが驚愕する中、俺はユージオへと刀を振り降ろした!不知火の炎とソードスキルのライトエフェクトが合わさり、ユージオの鎧を打ち砕いていく。
「思い出せ…!アリスのことを…!お前の願いを思い出すんだ……ユージオォォォ!!!」
「っ…!?」
刀を振り抜き、叫びと共に俺はユージオを壁へと叩き付けた。叩きつけられたユージオはそのまま地面へと落下し、動かなくなった。主が倒れたことで、部屋を覆い尽くそうと暴れまわっていた青薔薇の氷も止まり、部屋も徐々に元の光景へと戻り始めた。
「はぁ…!はぁ…!っ…!?」
「フォン…?!」
死闘を終え、集中が切れた俺は地面へと膝を突いた。その様子に闘いを見守っていたキリトが息を切らす俺へと駆け寄ってきた。
「フォン、大丈夫なのか!?」
「あ、ああ…なんとかな。それに、ユージオも大丈夫だ」
「えっ…?」
「……さっきユージオに不知火の炎を打ち込んだ。この刀の炎は、バフや神聖術だけでなく、傷までを焼き尽くす。怪我はもう心配ないはずだが…けど、もしシンセサイズから解放されてなかったら、覚悟しろよ…」
「それって…っ…フォン、お前、眼が…!?」
「眼…?っ…(左目だけじゃなくて、右目も金色に…!?)」
俺の言おうとしたことが分かったキリトだったが、その言葉が途中で止まった。どうしたのかと思っていると、眼を指摘され、俺は黒暁の刀身に映る自身の眼を見た。銀色に変わっていた左目だけでなく、右目までもが金色に変わっていたのだ。
その事実に俺が驚いている内に、役目を終えたかのように黒暁は大剣へと姿を戻してしまった。そして、それに合わせるかのように俺の眼も元に戻っていた。一体今のは何だったのか…そんなことを俺が思っていると、
「ぐぅぅ!?あああああぁぁ!?がぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁぁ?!?!」
「フォン!?」
今までの数倍の反動…まさしく頭が割れそうになるほどの頭痛が俺を襲った。あまりの痛みに地面へと頭をつけるが、痛みは一向に治まる気配がなかった。遂に地面へと伏してしまった俺にキリトの心配の声が聞こえるが、全く応える余裕がなかった。そして、
「…ぐっ……」
「っ…ユージオ…」
気絶していたユージオが立ち上がり、キリトは俺を庇うように前に立ち身構える。もしユージオが未だ整合騎士のままであれば…そう思い、いつでも剣を抜けるように警戒するキリト。
「……ア、リス……」
「…!ユージオ、思い出したのか…!?」
キリトたちではなく、奥に控えているアリスを視線に捉え、ユージオが呟いた。その言葉にユージオが記憶を取り戻したのではと思ったキリトが駆け寄ろうとしたが…
「っ…!?キリト、逃げなさい!?」
「「…!?」」
ユージオの動きに気付いたアリスが叫ぶが、油断していたキリトは反応が遅れてしまい、ようやく頭痛が治まってきた俺も頭を起こしたことで、アリスが叫んだ理由を悟った。
「…エンハンス・アーマメント…」
三度放たれた青薔薇の氷が俺たちへと襲い掛かった。倒れ込んでいた俺や、近距離にいたキリトは抵抗する間もなく氷に捕らわれてしまい、アリスも体を拘束されてしまい、俺たちの視界に氷が迫っていた。
「くっ…ゆ、じお…!?」
「……(ボソボソボソボソ)…」
(っ…まさか、お前…!?)
閉ざされていく視界の端に見えたユージオの動く口に驚く俺…そこで俺の意識は再び失われてしまった。
〈Other View〉
「ホヒヒヒィ!それで…反逆者はちゃんと始末してきたのでしょうね…32号?」
「反逆者とその仲間2人はちゃんと氷の中に閉じ込めてきました…元老長閣下」
フォンたちを完全武装支配術で氷漬けにしたユージオは昇降盤に乗り、アドミニストレータの居室である100階へと戻ってきていた。
任務の完了を歪な笑みと共に問うチュデルキンに抑揚のない言葉で答えるユージオ。フォンとの闘いで傷ついた鎧を脱ぎ、礼服の姿へと戻るユージオ。
「それにしても、その鎧をその状態にまで傷つけるとは…まぁ、整合騎士になったばかりのお前にしては上出来といったところでしょうか!ああ、そうだ…ちゃんと反逆者共には止めを刺したんでしょうね?」
「…いえ。止めはさしておりません、元老長」
「…はぁ…?…はあぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
ユージオの報告に愉快に笑っていたチュデルキンの白い顔に怒りの色が映った。どういうことかと慌てて問い質し始めた。
「それはどういうことですか!?何故止めを刺さなかった!?」
「…反逆者を足止めせよ、というのが最高司祭様のご命令でしたから」
「いけません!?いけませんね~、それは!?…それと、あたしを呼ぶ時は元老長閣下と言いなさい…『閣下』ですよ、『閣下』!フフフっ!!次に閣下を付け忘れたら、罰としてお馬さんになってもらいますよ~?あたしを背中に乗っけって、四つん這いでハイドー、ハイドー、ですよ?ホヒヒヒィ!」
馬に乗った騎手を、醜いポーズで真似るチュデルキンの嗤い声が居室に響き渡る。だが、ユージオは何も反応することなく、黙ってそれを聞き続けていた。
「ふぅ…では、あたしも猊下のご命令を遂行してきますかね?ホホウゥ!!」
一通り笑ったことで満足したのか、フォンたちの元へと向かおうと、チュデルキンはその体を玉へと変化させ、無駄に飛び跳ねて昇降盤に移動する。そのまま、チュデルキンが下の層に降りて行ったのを見送ったユージオは、天幕で覆われたベットへと近づいた。
「…最高司祭様…」
「おかえりなさい、ユージオ。ちゃんとおつかいを済ませてきてくれたのね?」
「はい」
天幕の奥から聞こえてきた女性の声に素直に答えるユージオ。その甘く、美しい声は聴く者全てを誘おうとする音色のようだった。
「偉いわね。じゃあ、ユージオにごほうびをあげないとね?こっちに…ベットにいらっしゃい」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
女性の声に従い、礼服の襟元を緩めてベットへ進んでいくユージオ。
「さぁ、ユージオ…約束通り、貴方の欲しい物をあげましょう。貴方一人だけの愛を…でも、その前に…」
ユージオを抱きしめようとする前に、彼の頬を優しく撫でる女性。
「貴方の顔をもう一度見せて頂戴…おあつらえ向きに記憶の穴があったから、そこに敬神モジュールを挿入してみたけど、横着は良くなかったかしら?モジュールが外れかかっているわね」
「…そうですか」
「ええ。だから、シンセサイズし直すことにしましょう。ご褒美はその後でね…ユージオ」
その言葉と共に女性はユージオの額へと手を当てた。すると、敬神モジュールがユージオの額から抜け出した。そして、
「…っ!?」
モジュールが抜けると共に、ユージオの脳裏にある光景が蘇っていた。まだユージオが小さい頃…森の中をユージオは走っていた。その先には、
『ほら、ユージオ!早く、早く!』
『ま、待ってよ、アリス!?』
先を行くアリスを必死に追いかけるユージオ。森を抜けた先には、将来自分が天職として切り倒すことが定められたギガスシダーが顕在していた。その巨体を見上げるユージオ。すると、いきなりその背中が押された。その人物たちは…
『『ユージオ』』
(…そうだ…思い出した…僕はアリスと…キリトとフォンの4人で一緒だった。みんなで遊んで、笑って…僕たちはあの時を一緒に過ごしていたんだ…!)
零れ落ちる涙と共に、失っていた記憶…フォンとキリトがテストダイブしていた時の、ラースによって消された記憶を取り戻したユージオ。だが、そんなことを知る由もない女性は構うことなくモジュールを抜き続ける。
「そのままじっとしててね…いい子ね」
モジュールをユージオから抜き取った女性は、それを確かめるように握りしめていた。一方のユージオは力が抜けたように崩れた。
「このモジュールは完成したばっかりの改良型なの。これでシンセサイズすれば、その瞬間から心意の力を使えるようになるわ」
脱力したユージオを自身へと引き寄せ、女性はモジュールの説明をしていく…それがユージオに聞こえているわけがないと分かっていながらだ。フォンと対峙した際に、ユージオの戦闘力が飛躍的に上昇していたカラクリは改良型の敬神モジュールの効果だったのだ。そして、女性はユージオへと更に甘楽の手を伸ばす。
「また貴方の記憶を見せて頂戴?今度こそ、一番大切にしている記憶の場所に、これを埋めてあげるから」
先程女性が言った『横着』…それはユージオをシンセサイズした際に、ユージオがラースによって消された記憶の部分に敬神モジュールを挿入したことを意味していた。そして、今度こそユージオを自身の忠実なる駒…完全なる整合騎士にしようと画策していたのだ。
「口だけは動けるようにしたわ。さぁ、先程と同じようにシンセサイズの術式を唱えて?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「…?術式を忘れてしまったの?しょうがない子ね…リムーブ・コアプロテクション…復唱して頂戴?」
「…っ…」
「…フフッ」
これでまた一つ、忠実な駒が生まれる…そう確信した女性から笑みが零れる…だが、次の瞬間、その表情は崩れることなる。
「っ…!?」
「…あぁ…!?ぐぅぅ……おおおおおおおおおおおおぉぉぉぉ!?」
「お前…まさか!?」
女性が気付いた時には既に遅かった。気合と共にユージオは女性を突き飛ばし、襟元からカーディナルの短剣を取り出し、女性に向けて突き刺した。
「アドミニストレータァァァァァァァァ!?」
アドミニストレータへ短剣を突き刺し……ユージオの咆哮が部屋へと木霊した。
●オリジナル武器解説
不知火刀『黒暁』(しらぬいとう:くろあかつき)
刀のカテゴリーに属する武器。二種類の異なる黒から成る刀身が特徴な刀。鞘は黒一色に金の桜装飾が施されている。
ある若き剣士が愛用している逆刃黒刀。元々は黒刀ではなかったが、幾多の激戦を潜り抜けた際に破損した逆刃刀に、ある家に伝わる当主が持つとされている黒刀を融かし合わせて生み出された。元々の武器は純粋な刀で炎を生み出す力はなかったが、剣士が重用した剣術や意思までもが武器に宿され、使用者の意志が尽きぬ限り、力を貸し続ける武器と化した。
逆刃刀であるため、殺傷能力は高くはないが、武器の性能は青薔薇の剣と互角以上に打ち合えるまでに高い。武装完全支配術が二種類存在し、刀身から全ての術・物・傷・疲労といったありとあらゆる異常を焼き尽くす『不知火の炎』を放つ常時発動型、刀身から記憶の元となった8枚羽の不死鳥を呼び出して周囲を不知火の炎で焼き尽くす範囲攻撃を使用できる。どちらも追加装備である『不知火の翼衣』により、効果を強化できる。
未使用だが、記憶開放術では不死鳥と一体となり、ありとあらゆる攻撃を炎の体により無効化する状態になれる。
一見するとかなりのチート武器に思えるが、実は不知火の炎は人を傷つけることができない炎(吹き飛ばすことはできる。人を燃やしたり、火傷を負わせるといったことができない)なため、攻撃性能は全くといってない。あくまでも、使用者の障害を取り除くことを目的としたものであり、刀自体の性能が高いといっても、使用者の腕が伴っていなければ、鈍と化するハイリスクハイリターンの武器となっている。
(元の使用者の性格や武器に対する意図が大きく反映されたからとも言える。また、ユージオを殺すのではなく、助けるために倒そうとするフォンの意志に反応した結果でもある)
フォンの意志に応える形で大剣が発現させた武器であるため、その性能を十二分に発揮出ているが、大剣の真意を理解せずに使用しているため、反動も凄まじいものとなっている。
モチーフは前日譚『バーサス』で登場したオリキャラ「櫻木総司」と愛刀『黒暁』。
不知火の翼衣
『不知火刀「黒暁」』の専用装備。深紅の衣に、腕や裾の部分に紫色の稲妻のアクセントが特徴。
フォンが黒暁の力を最大限に引き出したために発現した装備。実は全ての元となる翼衣が存在するのだが、今回はイレギュラーな形で発現したため、その過程を通り越している。
黒暁が放つ不知火の炎を強化する力を持ち、翼衣自体からも大量の炎を放つことが出来る。使用者の身を守る・不知火の炎で心身を回復させるといった他に、翼衣を他者に渡すことでもその能力を譲渡することができる。劇中では、青薔薇の剣の記憶開放術からキリトとアリスを守ったが、その代わりにフォンは自身の防御がおざなりになってしまった。
また、使用者の五感を超絶強化する能力もあり、その場に応じて効果が発動する。劇中では、視覚強化によって、フォンはユージオの攻撃を全て見切っていた。
モチーフは「櫻木総司」のパーソナルカラー。紫電は彼のヒロインのパーソナルカラーから。
●オリジナルスキル解説
幻想剣《刀》神速5連撃ソードスキル〈五行流星〉
上段から繰り出す5撃同時に放つ神速のソードスキル。そのスピードはキリトでさえ見切れず、ユウキでようやく目に捉えることができる程。
頭・右手・左手・右太もも・左太ももを狙うため、五芒星を描くように斬撃を放つのが名前の由来。
間合いに入る直前に超加速するため、ソードスキルの打ち合いでも大体勝てるが、SAO・ALOで使用すれば、使用直後にHPが1、回復が(アイテム・魔法を含め)全て無効化な上に、防御力が0となる超絶なデメリットが存在する。この技で仕留められなければ死するのみ、という概念からなる技でもある。UWでは心意による発動なため、上記デメリットは存在しない。
幻想剣《刀》最上位ソードスキル〈俊過瞬刀〉
スキルコネクトでフォンが最後に使用した、ユージオへの決定打となったソードスキル。本来は目にも止まらない(使用者が自身の攻撃を自認できない程)居合術を放つソードスキルだったが、心意により技の性質が変化し、攻撃対象の目の前へと瞬間移動して技を放つようになった。
ちなみにこの時のフォンは心意を無意識の内に限界まで引き出しており、右目が金色へと変化していた。(直接の描写はないが、GGOでのキバオウとの決戦においても、止めのヴォーパルストライク時に発現している)
…まぁ、色々とご都合主義ってことでご納得頂ければと思います。
フォンの左目が銀色に変化しているのは、武装変換術の武器を完全に使いこなしている証拠になります。(俗に言うなら、アームズオーダー・オーバードライブといったところでしょうか?)
そして、遂に登場した最高司祭アドミニストレータ…
次回からお話は最終決戦へと突入します。その結末は…是非ご期待頂ければと思います。感想・ご意見もお待ちしておりますので、宜しくお願いします!
それでは!
おふらいんシリーズ ゲストで登場してもらいたいのはどのペアでしょうか?
-
キリト・アスナ
-
リーファ・シノン
-
リズ・シリカ
-
クライン・エギル
-
アルゴ・シグ(オリキャラ)